第30話「作戦会議」
翌朝、署内の会議室に三人が揃った。
壁にはダンジョンの地図が投影され、新たに判明した通路や階層の構造が赤線で記されている。
室内の空気は、昨夜の居酒屋とは別物だった。
「今回の潜行目標は、第四層の奥に出現した未確認エリアだ」
資料を配ったのは課長の大森だ。無精ひげに無表情、しかし目だけは鋭い。
「先行偵察班が入ったが、通信が途中で途絶えた。原因は不明。気配遮断か、妨害スキルの類だろう」
榊原が手を挙げる。
「遭遇する可能性のある敵は?」
「大型の鎧系が確認されている。前回お前らが倒したものと同系統だが、個体差がある。攻撃の通らない部位が違う可能性もある」
俺はその言葉に眉をひそめる。
防具の上からでも有効打突が通用した、あの感覚。だが、通じない相手もいる――ネームド戦の記憶が頭をよぎった。
「連携確認だ」榊原が全員を見渡す。
「真が前衛、水無瀬が機動支援、俺が後衛で援護射撃。これまで通りだが、通信が切れた場合の撤退判断は各自で行う」
「了解」水無瀬が短く答え、俺も頷いた。
会議が終わると、装備チェックに移った。
竹刀の柄を握り、感触を確かめる。面、小手、胴――全ての打突を迷いなく出せる状態にしておく。
「真さん、グローブの交換忘れてません?」水無瀬が声をかける。
「今やります」短く返し、備品袋から新品を取り出した。
榊原が弾倉を装填しながら言う。
「今回は俺がカバーする」
「助かります」
装備を整え、出発準備が完了した。
昇降機の前に立つと、金属音とともに扉が開く。
奥から吹き込むのは冷たい空気と、湿った土の匂い。
その先が戦場だ。
「行きましょう」
三人は無言で頷き、昇降機に乗り込む。
扉が閉まり、暗闇の中へと沈んでいく。
――そこで、かすかな振動と、聞き覚えのない低い唸り声が響いた。




