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第21話「模倣体の群れ」

 仮面の群れが、同時に首をこちらへ向けた。

 その動きは機械的だが、不気味な統一感があった。

 直後、耳の奥に声が響く。


 ――真、後ろだ。

 ――榊原、撃つな。

 ――水無瀬、逃げろ。


 誰の声にも聞き覚えがある。訓練場で流された録音とは違う、生々しい呼吸や抑揚まで再現されていた。

「惑わされるな!」榊原が叫ぶと同時に、前列が飛び出す。


「面っ!」

 俺は正面の一体に踏み込み、頭部の赤部位を正確に打ち抜く。

 仮面が砕け、黒い靄が漏れ出した。だがすぐ隣から二体目が肩口に斬りかかってくる。

「小手っ!」

 反応なし。外した――。

 すかさず榊原の銃声が響き、相手の動きが止まる。

「次!」

 胴を狙い、今度は沈める。


 背後から複数の足音。水無瀬が短剣で牽制し、俺の背を守る。

「真、左!」

 左方から迫る一体の突きを竹刀で弾き、返す刀で喉部へ突き込む。

 手応えと同時に、再び靄が溢れた。


 しかし、相手は止まらない。次々と飛び込んできては、仲間の声を混ぜた言葉を吐く。

 ――真、本当に斬るのか?

 一瞬、手が止まりかける。

 だが、足元を過る黒い影が、迷いを吹き飛ばす。

「行くぞ!」

 面、小手、胴と連続して叩き込み、三体をまとめて崩す。


 銃声と打撃音が交錯し、空間が混沌に包まれる。

 榊原は射撃で動きを止め、俺が仕留める。

 水無瀬は間合い外から援護し、相手の包囲を崩す。

 その繰り返しで、徐々に柱の根元へと距離を詰めていく。


 だが、柱の陰から現れた一体は他と違った。

 全身に追加装甲を纏い、仮面の中央には縦に走る赤いライン。

「……ネームドか」榊原が低く呟く。


 そいつは声を発しなかった。ただ無言でこちらに向かい、右手の刃を振り下ろす。

 俺は受け流し、面を狙う――が、硬い。反応なし。

「効かない!?」

「頭部以外にも耐性か!」水無瀬の声が飛ぶ。


 装甲の隙間を探り、胴を狙う。二撃目、発動。

 しかし倒れない。

「……二本先取か」

 確信はないが、昨日の記憶が脳裏をよぎる。


 相手は一瞬後退し、再び踏み込んでくる。

 受け太刀から返し胴。二撃目でようやく崩れる。

 黒い靄は他よりも濃く、ゆっくりと柱の内部へ吸い込まれていった。


 呼吸を整える間もなく、残存の模倣体が一斉に退いた。

 まるで、柱の奥へ誘い込むかのように。

「……追うか?」水無瀬が問う。

「いや、今は情報を持ち帰る」榊原の判断は即断だった。


 振り返ると、床には黒い靄の痕跡が点々と残っている。

 あの奥に何があるのか――それは、まだ闇の中だ。

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