【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十六章 その7
第二十六章 その7:終焉の光と、強制的な「再演」
エルフィの嘲笑と「真実」の残滓
「……ふふ、茶番はそこまでかしら」
不意に、頭上から氷のように冷たい声が降り注いだ。
浄化の光に満たされていた玉座の間が、一瞬にして凍りつくような静寂に包まれ、世界が真っ白な虚無に染まっていく。
空中に音もなく浮遊するのは、感情の希薄な、透き通るような瞳をしたフェアリーの少女――エルフィ。
彼女は、絶頂の余韻に震えるルクセリアと、彼女を抱きとめる奏太を見下ろし、残酷なまでに美しい笑みを浮かべた。
「……ふふふ。謎は解けたかしら、奏太?」
その姿はあまりにも無垢で、それゆえに悍ましいほど冷酷だった。奏太はこの世界に召喚されて以来感じていた違和感の正体が、目の前の少女に収束していくのを感じた。
「ルクセリアも、このシステムの犠牲者。私の『記録』の一部に過ぎないわ。あなたがその地獄を暴き、欲望に溺れず、その頑なな『童貞』のままここへ辿り着くなんて。……この世界(箱庭)で初めての『クリア』だわ」
奏太は歯を食いしばり、腕の中のルクセリアを庇うようにして宙に浮く少女を睨みつけた。
「エルフィ……お前だったのか! 全ての黒幕は、魔王さえも玩具にするようなこの歪んだルールを作ったのは、あんただったのかッ!!」
「そうよ。さあ、クリア報酬を与えてあげる」
エルフィが重力を無視して音もなく舞い降りた。冷たい指先が奏太の頬をなぞる。その指先からは、生命の温もりを一切感じない。
「私とのキスで、あなたは元の世界へ帰れるわ。でも――」
強制送還と永遠の重み
「ふざけるなッ! 誰が勝手に――!」
奏太が叫ぶより早く、背後から凄まじい魔力の奔流が渦巻いた。
浄化され、本来の力を取り戻しつつあるルクセリアが、必死の形相で奏太の背中にしがみついたのだ。彼女はその豊かな肉体で彼を包み込み、文字通り「離さない」とばかりに、骨が軋むほど力を込める。
「この男は私の独占物! たとえ創造主であろうと、私の『予約』を横取りさせるものですかッ!!」
魔王としての意地と、一人の女としての執念。Lv.∞の魔力がエルフィの虚無に抗う。しかし、エルフィは感情のない、しかしどこか楽しげな微笑を崩さない。
「あら、残念。ルールは絶対よ。……久我奏太、あなたは本当によくやったわ。でも、今のあなたではまだ私には届かない」
エルフィの顔が至近距離に迫る。
「待て……! まだ聞きたいことが――!」
奏太の拒絶を置き去りにして、エルフィの唇が柔らかく、そして凍えるほど冷たく奏太の唇に触れた。
その瞬間、脳が焼き切れるような爆発的な光が視界を塗りつぶした。
肉体が粒子に分解され、次元の狭間へと引きずり込まれる感覚。腕の中にあったルクセリアの確かな温もりが、指先からこぼれ落ちていく。
「……また会いましょう、私の『特別な観測対象』」
遠ざかる意識の果てで、ルクセリアの悲鳴にも似た、しかし力強い絶叫が鼓膜にこびりついた。
「いい、奏太! 向こうの世界でも浮気は絶対に許さないわよ! その童貞は、この私がいつか必ず奪いに行くんだからっ!!」
エルフィの冷徹な嘲笑と、ルクセリアのあまりに騒がしい愛の宣告。
二人の強大な意思に挟まれ、魂を引き裂かれながら、奏太の意識は加速し、白銀の彼方へと消えていった。
――残されたのは、魔王の「予約」という名の呪いと、神の「観測」という名の期待。
久我奏太の本当の戦いは、ここから始まるのだ。




