【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第十九章 その4
第十九章:血脈の崩壊 その4
〜奈落への招待状〜
牙を剥く「知」の暴力
「……はぁ。挿入の前に消滅ですか。これでは、数値が足りませんね……」
妹の残滓をかき抱くヤマトの慟哭が響く中、レイジの放ったその一言が、奏太の脳内の逆鱗に触れた。
「レイジ……お前、今なんて言った?」
奏太がゆらりと立ち上がる。その全身からは、怒りに呼応して黒く変質した風の魔力が、闘技場の石畳を削りながら噴き出していた。
「お前……ガランがエルスだって知ってたんだろ。わかっていて、ユリアを止めなかった。それどころか、あいつの死を『数値が足りない』だと?」
「事実を言ったまでですよ、久我様」
レイジは冷酷な光を反射させた。
「天空への唯一の『足』を、あなたの女が壊した。その結果を嘆いているんです。……おや、やる気ですか?」
「……レイジ様。今の私たちなら、あなたとだって差し違えることくらい、造作もありませんわ」
ユリアが拳を構える。奏太、ヤマト、ユリア。三人の殺気が、レイジ一点に集中し、闘技場の大気がミシミシと軋みを上げた。
「フフフ……。確かに、ようやく私と戦える土台には上がったようですね。よろしい、特別講義といきましょうか」
レイジが細身の剣を抜く。それは、ガランの巨剣のような威圧感はない。しかし、そこから放たれる圧は、ガランの「無属性」とはまた異質の、理をねじ伏せるような絶対的な支配力だった。
「いきますよ」
三位一体の猛攻、そして「合格」
「行くぞッ!! 『風の極大魔法:テンペスト・レイザー』!!」
奏太が咆哮し、真空の刃を解き放つ。
「『光の極大魔法:ディバイン・ジャッジメント』!!」
ユリアが間髪入れず、天からの裁きを重ねる。
「ガランの仇だぁぁッ!!」
ヤマトが、己の血を媒介にした最凶の『毒魔法:ブラッド・ヴェノム』を剣に纏わせ、死神のような一閃を繰り出す。
光、風、そして命を削る毒。三つの極大の力が、レイジを八つ裂きにせんと殺到した。
だが――。
「甘い」
レイジが剣を一閃させた。魔法を放ったのではない。ただの、物理的な一振り。
それだけで、三つの極大魔法がぶつかり合う爆心地のようなエネルギーが、鏡のように「相殺」され、霧散した。
「なっ……相殺しただと!?」
奏太が驚愕に目を見開く。
――その瞬間。
レイジの瞳が、ほんの刹那だけ細められた。
温度のない理性の光ではない。獲物を見定める捕食者の、それに近い“本気”の色。
だが、それは次の瞬間には消えていた。
「……フフフ、良いですね。合格です」
レイジは剣を収め、不敵な笑みを浮かべた。
「今の合体技……レベル差を知識で埋める、素晴らしい連携でした。これなら、連れて行ける」
「……?? 合格だと? お前、一体何を言っているんだ」
崩れた計画と「積みの回避」
レイジはふっとため息をつき、再びいつもの事務的な口調に戻った。
「……私は貴方方を裏切った訳ではありません。実は、私の計画では、ガラン様と交わり、絶頂の中で限界突破を果たす……。そのエネルギーで全員が『9999』となり、ここでガランを味方に引き入れる予定でした。彼女は両性具有という特異な肉体を持ち、男とも女とも交わって強者の生命力を吸い上げ、わずか五年で魔王軍のNo.2になった純粋な武人。……そして何より、単純で良いヤツだった」
「……なんだって?」
「彼女と協力し、その飛行能力で一気に天空の城へ運んでもらい、魔王ルクセリアの喉元を突く。それが最短ルートでした。ですが……誤算が二つ。一つは、彼女が魔王に精神操作されていたこと。そしてもう一つは、ユリア様がそれを『慈悲』で消滅させてしまったこと。魔王に操作されていたことを考えれば仕方ありません」
奏太とヤマトは言葉を失った。ガランが生きていれば、彼女と共に天空へ昇るはずだった。それが、魔王の罠と自分たちの過失によって、今、完全に閉ざされたのだ。
「もはや天空へ至る手段はない。魔王にこちらから仕掛けることもできない。普通に考えれば、ここで『詰み』です。……ですが、方法はまだあります」
レイジは足元の石畳、その深淵を指差した。
「久我様、あなたの魔力の風で飛ぶのは酸素の関係で無理。魔王に来てもらうのも無理。ならば、方法は一つ。……太古の神クラスが封印されている『地底の地下迷宮』へ行き、そこに眠る力を力尽くで動かすしかありません」
「地下の……迷宮?」
「ええ。魔王も恐れる神々と戦うことになりますが、今のあなた達ならやれるでしょう。……行きますか? 地下の深淵へ」
奏太はヤマトとユリアの顔を見た。失ったものは大きいが、まだ終われない。
「……行く。エルスのためにも……魔王をぶっ飛ばすまでは」
「結構。では、地下迷宮への入り口を開きましょう。……ここからが、真の地獄ですよ」
一行は、天空の風を捨て、奈落の底へと続く暗い階段へと足を踏み入れた。




