18.
色々あった俺達の新拠点幽霊騒ぎも収まり、数日が経った。
「ほんで、何でナナちゃんも一緒に住んでんの?」
「もう、言ったじゃないですか。両親には説明して納得してもらったって」
「うーん…。ナナちゃん、言いくるめ上手いからな…」
「信用して下さい!誓ってそんな真似してません」
「まあ、そこまで言うなら…」
そう、何故かナナちゃんが居るのだ。
俺達は、新拠点のゴタゴタを片付けてナナちゃんの家から引っ越して来たのだが、何故か着いてきた。
困る訳ではないが、学校とか大丈夫だろうかと言う心配がある。
この新拠点、立地が悪い訳では無いのだが。ナナちゃんの通う学校からは遠い。
「通学とか大丈夫?」
「ええ、問題ありません」
「そっかー…」
まあ、本人が問題ないと言うのなら問題ないよね。
そんなことよりも、俺達はある問題に直面している。
「お金、どうしよ…」
溜め息を吐きながら頭を抱える。
何を隠そう、俺達は一文無しだ。そして、この館に住む人間の過半数が戸籍無し。簡単なバイトすら受けられない。
住む場所はこの館があるし、水はこの館の持ち主がここに住む限り全部負担してくれるらしいので大丈夫だが。
食費がヤバい。
スレイヤーは食べなくても平気だが、俺とオウカちゃん、ナナちゃんは食べなきゃ死ぬ。
「お金…」
「クオンさん、私が出しましょうか?」
「いや、それはダメだ」
「大丈夫です、クオンさんにあげます。返せとも何かしろとも言いません!」
ふーん、人をダメにするタイプの子だねこの子。こんなに可愛くて決断力もあって家族想いのいい子なのに更に人をダメにする包容力まで持ってる。
クラスに何人くらい勘違いしてる男子がいるんだろう…。俺も男のままだったらヤバかったな。勘違い待った無しだった。
「ナナちゃん、そんなことを気安く言ってはいけません」
「え、いや。私は…」
「まったく、勘違いしたらどうするの?」
ナナちゃんが何か言おうとしていたが、これ以上魅惑の提案が続いたらダメになりそうなので、話を打ち切って部屋を出る。
「ちょっと出掛けてくるね~」
クオンが出ていったドアを見つめナナは呟く。
「勘違いしても良いのに…」




