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39話【交渉成立】

1週間後。

手渡された紙に記載された住所へとやってきた。約束通り一人で。

マルシア商会、ベネルガンデ支部の屋敷。

ここまでは馬車に送迎してもらったが、中へはメイド一人も同行させない。リーシャは相当心配していたけど大丈夫。セレスさんが悪いことをするとは思えないもの。

それにしても大きな屋敷ね。公爵邸には遠く及ばないけど、住宅街に聳えるこの建物は一際存在感を放っている。

「お待ちしておりました、アルミラ公女殿下。商会長様がお待ちです」

屋敷の内部に入ると、従業員の男性が屋敷の奥へと案内してくれる。

1番豪華な扉の前に案内される。ここが会長室であろう。

さて、まずはお金儲けへの第一歩である。


《セレスティーヌ視点》


不思議な子だったわ。

青雲のような純白の髪に、ブラックダイヤモンドのような黒い瞳。肌は色白で、か弱さの体現のような華奢な体。

ランドリス家の悪魔。そう言われるあのお嬢ちゃんは、実際見ると天使のような人だったわ。

まるで天界から神が地上へ送り出した創造物のよう。男色のアタシでさえ、見ているだけでウットリするような美貌だわ。

その腹の中にはどんなドス黒いものが詰まっているのか、軽く覗いてみるつもりだったんだけど。

『愛は何より尊いからです』

馬鹿みたいなことを馬鹿みたいに真剣に言う子。神官でも呆れそうなほど慈悲深いようね。


「面白い子♡」

会長室にて、一人呟く。

噂とは正反対な外見に内面。実は偽物のアルミラ・ランドリスなんじゃないかと疑いたくなるほどね。

でもまぁ、偽物でもいいわ。いいビジネスの話を持ってきてくれるのなら。それに……。


『落ち着いてリーシャ、彼女は――』


「初めてなのよねぇ~……」

アタシのことを『彼女』と呼んだ。

初対面で、女性と認めてくれた。

普通あの子のメイドみたいな反応するでしょう? なんで平然と受けいれてくれるのかしら……。

本当に……不思議な子。


「商会長様、アルミラ公女殿下をお連れしました」

ノックと共に従業員の声が聞こえてくる。

「どうぞ入ってぇ~」

扉が開かれると、天使ちゃんが優雅にお辞儀をしていた。

「本日はお招き頂きありがとうございます。セレス様」

「こちらこそ来てくれてありがと♡ じゃあ早速、仕事の話をしましょうかぁ?」

そんな不思議な子が持ってきたアイデアとやら、とっても興味があるわ♪


《アルミラ視点》


「へぇ~面白い素材ねぇ~」

セレスさんは興味深そうにシリコンの素材をグニグニと触っていた。

出されたお茶を一口味わってから、対面に座る彼女に話を続ける。

「シリコンという人工素材です。撥水性、耐熱性、耐寒性、様々な点に秀でています。柔らかく様々な形に加工可能で、応用性が高いかと」

「悪くない、むしろとっても良いわぁ。軽いし、衝撃にも強そうねぇ。盾の間に挟めば耐久力が向上するかもぉ~」

「流石はセレス様です。そこまでは考えつきませんでした」

一流の商会主なだけある。発想力が良い。軍事利用出来れば国から安定した利益を得られる。盾の案はとても悪くない。


「それでぇアルミラさん。これはなにを素材にしているのかしら? 海藻の合成物質とか?」

「いいえ、こちらです」

シリコンの元となる珪石を机に置く。

「鉱物? これ石からできるの?」

「はい、珪石と言います。加工方法はこちらの書類に記しております」

親愛なるお母様に書かせた珪石をシリコンに変換する方法、そのレポートも珪石と一緒に見せる。彼女が三日三晩苦労した甲斐があった。ラズリアの犠牲は一生忘れないわ。

「すごく緻密な製法ね。この珪石が沢山あってもちょっと量産は難しいかしら」

パラパラと書類をめくりながら感心していた。うちには優秀な馬しゃ――魔法技師がいるのだから当然ね。

しかし、量産は難しいのね。となると富裕層をターゲットにした製品開発が主になる。


「単刀直入にお伺いしますが、この素材を使用した商品は利益を見込めますか」

「アタシを誰だと思ってるのぉ? マルシア商会の会長よぉ♪ 最高の利益を生み出してあげるわぁ♡」

「ふふっ、それは頼もしい限りです」

商人としての経験が長い故、自信も豪胆さもある。彼女と組めたのは本当にラッキーだった。


「まぁアタシでなくてもこの素材に目を光らせる商人はゴマンと居そうねぇ。全く新しい人工素材、これだけでも商売価値はとんでもないわぁ~。一製品を売るより圧倒的に利益が見込める、様々な分野に活用出来ればシリコンの需要は爆上がり♪ ――アルミラさん、アナタって実はとんでもない天才ぃ? こんなのを一人で作り上げちゃうなんてねぇ~」

「一人で作り上げた訳ではありません。人望と運に恵まれただけです」

「んふ♡ 謙虚なのねぇ~。そういう所もチャーミングで素敵よ♡」

パチッと上手なウィンクで魅惑的に褒めてくる。これって口説かれてる? 本気にしてもいいの?

内心ドキドキしながらも商売の話を続ける。


「こちらの製法とシリコンの応用アイデア、そして珪石の鉱山を纏めてマルシア商会にお売りしたいのですが、いかがでしょうか」

「勿論買うわぁ♪ むしろこっちからお願いしたいくらいよぉ~♪」

即決。交渉成立である。

「それでぇ? いくら欲しいのかしらぁ? 勿論いい値払うわ♪」

「即金ではなく、利益の一部が欲しいのです」

「あらっ、ちゃっかりしてるわねぇ♡」

シリコンの商売価値は計り知れない。ならばこそ、目先の大金より長く得られる利益の方がより多くの金銭を得られる。

「それでぇ? 配当はどれくらい?」

「まあそうですね9︰1といったところでしょうか」


私の言葉でピシャリと空気が張り詰める。

セレスさんの顔からは表情が抜け落ち、睨みつけるように私を見る。

「ふぅん……アタシも随分侮られたものねぇ」

長い前髪を片手でかき上げ、不愉快そうに言葉を漏らす。

「アタシが下に出たから、調子にでも乗っちゃったのかしらぁ」

長い足を組み、淡々と声を発する。

「残念ねぇアルミラさん。アナタは変わっているけど、いい子だと思っていたのだけど……」

どうやら配当に不満があるらしい。


「9割では足りませんか? セレス様」


「ええ、全然足り――は?」

怒りに満ちた声が急に間の抜けた声に変わる。

「え、あ、アタシが9なの? そっちが9じゃなくてぇ?」

「……? 当然ではありませんか。販売も加工も製造もそちら側してくださるのに、何故私が多く貰うのですか?」

1割でも多いかもしれないと思っている。私はシリコンの潜在価値を信頼しているから、五パーセントまでなら許容するつもりだった。

「で、でも! 普通こういう場合って良くて半々、普通なら7︰3よぉ! もちろんアタシ達が3だわぁ!」

興奮気味に市場価格を訴える彼女。私の提示価格が良心的過ぎてるなら、配当割合を変えるつもりはない。

「それだとセレス様にもマルシア商会の方々にも失礼ですわ。労働には対価を支払うべきですものね。何もしてない人間が吸っていい甘い蜜には制限がありますから」

私はアイデアを売って丸投げするだけなのだ。他は何もしない。ならば、マルシア商会以上に貰う訳にはいかない。

「っ……、何もしてないことはないでしょう。――こんな凄いものを作って欲張らないなんて……本当に不思議な子だわぁ~……」

「褒め言葉として受け取っておきます♡」

彼女は怒りを収め、むしろ関心さえしている様子であった。

「アナタがそれでいいなら、アタシは何も言うことないわぁ。交渉成立ね♡」

「はい、今後ともよろしくお願いします」

固い握手を交わし、シリコン販売の目処がたった。あとはマルシア商会に全部おまかせ。とても有難い。


さて、商売の話はこれで終わりとして――。

「ところでセレス様! 実は私、マルシア商会に開発をお願いしたい製品があるのです。このシリコンを使って!」

私は前のめりに、心躍らせながらとある提案をする。

「な、なになにぃ? 急にはしゃいじゃってぇ……」

若干引いている様子のセレスさんだが、そんなことも気にならない。今はそれよりコレの制作が第一よ♡

「こちらの図案をご覧下さい!」

興奮冷めぬまま私が書いた図案を広げる。詳細に事細かく書いた図案だ。

「あらぁ♡ これって……」

「作れますか?」

「んふ♡ ええ、もちろんよん♡ 構造自体はシンプルだし……うん、一週間で作ってあげられるわぁ♡」

「ふふふ♡ それはとっても楽しみです♡」

「ええ♡ アタシもコレができるのは楽しみだわぁ♡」

ふふふ♡うふふ♡と会長室では私とセレスさんの笑い声が響く。

嗚呼楽しみ♡ 出来たら早速リーシャに使ってあげましょう♡


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