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最終話 最後に一花咲かせることができた

 三年後、ジェックとエルシーはSランク冒険者となっていた。

 Sランク冒険者は数えるほどしかおらず、いざという時には国家的な危機となりうる怪物や災害に立ち向かう冒険者である。

 そんな重要な職務を二人は立派にこなしていた。


 今日もある国家転覆を狙う組織が呼び出した大悪魔を、二人で退治したところだった。


 国から表彰される前に、二人はあるところに向かう。

 マーティの家である。


「おやっさーん!」


 ドアをノックする。

 すると、マーティが出てきた。

 

 マーティはドラゴンとの戦いを最後に、剣士を完全に引退した。

 しかし、ジェックたちを優れた冒険者に押し上げた功績を認められ、国から老後の生活は保障してもらえることとなった。

 ボロボロだった体もリハビリの成果が出て、日常生活が送れるほどには回復している。

 マーティは二人のためにコーヒーを淹れてくれた。


「聞いてるよ、大悪魔をやっつけたんだって?」


「あの野郎、体術も魔法もすごくてさ……さすがに強敵だったよ」


「あたしも大活躍したんだから!」


「二人とも、すごいよ」


 微笑むマーティにジェックが言葉を返す。


「今の俺たちがあるのは、おやっさんのおかげだ。本当にありがとう」


「俺も君たちがいたからこそ、楽しい余生を送ることができてるよ」


 和やかな会話が続き、ジェックは出された菓子をつまみながら、切り出す。


「それでさ、俺たち……今度結婚することになったんだ!」


「ホントかい!?」


「うん、ホント……」


 エルシーも顔を下に向けてはにかむ。


「出会った時は恋人同士じゃないって言ってたのに……」


 マーティがからかうように言う。


「そりゃまあ、ずっと一緒にいればさ」


「色々あるよ……ね?」


 冒険を積み重ねるうち、二人には“色々”あったようだ。

 赤くなった二人を見て、マーティも唇を吊り上げる。


「なんたってSランク冒険者の結婚だし、盛大な式にするから、是非来てくれよ、おやっさん!」


「ああ、喜んで!」


「スピーチもしてもらうからね! ちゃんと準備しておいてね!」


「ええっ!?」


 エルシーにスピーチを頼まれ、マーティは狼狽する。

 しかし、悪い気はしない。大勢の前で彼らに言いたいことは無数にある。

 そして、ジェックが席を立つ。


「じゃあ、これから国王陛下のところ行かなきゃならないから、ちょっと行ってくる!」


「おいおい、そっちを先にしなきゃいけないだろ」


 王への謁見より自分の家に来るのを優先したのかと、マーティは呆れてしまう。


 ジェックとエルシーを見送る。

 二人の背中はもう、一人前のそれだった。

 冒険者としても夫婦としても立派にやっていけるだろう。


 それを見届け、家に入り、マーティは椅子に座る。

 もう体は満足には動かない。

 だが、心は軽やかだった。

 マーティは独りごちる。


「最後に一花咲かせることが……できたな」






これで完結となります。

お読み下さいましてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大変遅くなりましたが、完結おめでとうございます\(^o^)/ 私もやっと最後まで拝読させて頂く事が出来るようになりました(笑) そうですね。 見事に咲きました。 「昔はこうだった」という…
[良い点] ホント、異世界でもそういうこと、きっとあったはず! それがいろいろと整備されて──。 マーティのような伝える人たちも大事!
[良い点] 完結、お疲れ様です。 もう自分くらいの歳だと、マーティ側の心境なんですよ。 『スマホがない時代の人付き合いはこうだった──』とかね(^^; 便利になったことを否定はしませんが、不便だった…
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