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魔王の娘は剣聖に拾われ伝説となる ~勇者への仇討ち目指して冒険者始めます~  作者: 茶巾丸


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9. ゴブリンの長

 ゴブリンの住処を見つけたレナとエメリーは洞窟奥へと突入を開始した。

 レナは脇差ではなく鉄の模擬刀を手に持ち進み出す。

 入口から進むと奥は少しずつ狭くなっていき、暗さを増していく。


「このままだと見えないんで、灯りの魔法を使いますね『光の精霊よ、我が元を照らし、光で導き給え!光源の魂(アークライト)!』


 エメリーが使った周囲を照らす魔法を見てレナは素直に関心して賛辞を送る。


「へえ、僧侶は光の魔法が使えるのか、便利だな助かるよ」


「これは光の精霊が持つ力を呼び出して、光を灯すんで魔力の消費も少ないんですよ」


「例えばだけど、光の出力を高めて目眩ましとかも出来るのか?」


「ええ、出来ますよ。魔力を込める量を大きく上げれば目を潰せる位明るく出来ます」


 自信満々に伝えてくる娘の声を後ろ手に聞きながら更に奥へと進んでいく。

 その中でエメリーはレナが手に持っている武器について気になり質問をする。


「レナさん、手に持ってるのは偽物の武器ですが何故そちらを使ってるのですか?」


「こんな狭い場所で剣を振り回したら、岩にあたり刃毀れが起きるだろ。これは鉄製だからコイツで最初に敵の頭を殴って、動きを止めた後に刀で仕留めるんだ」


「そんな事まで考えてるんですね、まるで熟練冒険者じゃないですか」


 洞窟のかなり奥まで進んできたところで、通路が直線上になる。

 レナは突如と立ち止まり、周囲の状況を見回し探り出した。

 突如として何かの音が遠くから響き渡った。


──ヒュン!


 暗闇の中、風を切り自分たちへ飛んできた物体をレナは鉄の模擬刀で軽々と叩き落とすと、足元に矢が折れて落ちていた。

 状況が掴めずエメリーは、問いかけてきた。


「えっ、なんですか?」


「弓矢だ、奥からだな。エメリー物陰に隠れろ」


「は、はいっ」


 レナは弓による今の攻撃について考えていた。

 (たったの一匹でエメリーを狙って矢を撃ってきた……後衛を負傷させ、前衛の動きを止めた後に一気に襲いかかる腹づもりか、次はどう撃ってくる?)

 娘の予感は当たっていた。

 奥から次々と矢が放たれる自身に飛来する矢を何本も叩き落とすが埒が明かない。

 レナは機転を聞かせて飛んできた矢の一本を脇にはさみ負傷したように見せかけ地面に足を付ける。


「レナさん!!」


 物陰から飛び出ようとするエメリーに対して、レナは大声で静止して踏みとどまらせる。


「エメリー、出てくるな!!」


 相手が負傷したと見たら敵は必ずこちらへトドメを刺しに来る。

 そう考えレナはその場で動かずに苦しそうなフリをして敵が近づくのを待つ。


「エメリー、合図したら魔法を使って光を最大出力してくれ」


「わ、わかりました」


 敵はこちらが動かないと見て、奥から六体のゴブリンが武器を持ち走ってきた。

 侵入者を排除するため棍棒に短刀と小さい斧を振りかぶり襲いかかってくる。


「今だ!」


「光れ!精霊よ!」


 エメリーの言葉と共に周囲一体に大きな閃光が走り、不意打ちを食らったゴブリン達は目を眩ませてその場で暴れてお互いを攻撃しあい混乱している。

 その隙を狙ってレナは武器を脇差に持ち替えゴブリン全員の心臓を全て一突きして全ての敵を絶命させていく。

 レナは更に奥へと進撃を続け、弓を使っていたゴブリン二匹の首を落とし、待機していたゴブリン達も次々と倒して行く。

 一匹、また一匹と確実に息の根を止めながら進み、敵の気配が無くなったところでエメリーを呼んだ。


「この辺にいた敵は倒したぞ、奥に行くので着いてきてくれ」


「敵を倒したなら、もう撤退でいいのではないですか?」


「いや、この奥に物凄い気配を持った奴が一体いる、そいつを仕留めて終わりだ」


「物凄い気配って……もしかしてゴブリンロードやチャンピオンとかじゃないんですか?」


「そんな階級があるのか?」


「ええ、ゴブリンの群れを統率する上位種がロードで、相当な強さを持っています。チャンピオンは更にそれより強い存在で、初心者冒険者に勝てる相手じゃないですよ!」

 

「そうか、この辺りのゴブリンを統率しているなら手合わせしないとな」


「ちょっとレナさん!人の話し聞いてました!?ギルドに報告するため撤退しましょうよ!」


「相手が強かったら逃げるのか?ここで拙者らが逃げたら奴らはまた仲間を集わせてて人を襲うぞ?ギルドの依頼なら元を断つべきだろう?」


「はあ、もうわかりましたよ……危なくなったら逃げるって約束してください」


「お主がそう願うのなら了解した、危険だと判断したら即逃げよう」


 お互い危険だと察した場合、逃走するとの約束を交わして、二人揃って奥へと進んで行く。

 歩いた先に大きく開けた場所に辿り着くと、全長三メートルはあろうか巨大な体を持ち、右手に強大な鉄の斧を持ったゴブリンの長らしき者が待ち構えていた。

 突然現れた二人に対して、その長らしき怪物は声を発した。

 

「ギサマラ、ナニモノダ?」


「ほう……人語を介す魔物とは初めて見たな、お前がここの主か?」


「ワガナバ、ゴブリンロードダ。ギザマハナカマヲ、タクサンコロシダ、ダカラコロス!!」


「それはお互い様だろう、お前らも人間を襲い殺している、なぜ人を襲う?食べるなら野生動物でもその辺りにいるだろう」


「ニンゲン、ラグニゴロセル、ダカラオゾウ、ソレダケダ!」


「そうか……話し合いで決着は無さそうだな」


「レナさん!相手はゴブリンロードですよ!!逃げましょうよ!」


 エメリーが忠告するが、レナは落ち着いた雰囲気で、相手に手を向け指全体でこちらに戦うよう挑発して攻撃を誘う。


「かかってこい。相手をしてやる。エメリー後ろに下がってろ」


 下がるように伝えられた娘は、近くにある物陰に隠れて大声で叫ぶ。


「もう、大怪我しても知りませんよ!!」


 挑発されたゴブリンは怒り心頭なのか、自慢の斧を振り上げて叫んだ。


「ギザマ、ゴロス!!」


 ゴブリンロードは右手に持った巨大な斧を、レナを叩き切ろうと物凄い速度で振り下ろす。

 攻撃が近づいた瞬間に、レナは離れた場所に円を描くような動きで、強力な一撃から身を躱《かわ》す。

 地面に叩きつけられた斧は、地面にめり込み破片を飛び散らせるほど強力な一撃だ。

 だが、レナは一向にたじろがず、剣を備えた腰に手を掛けて抜く準備をしていた。


「スバシコイヤヅメ!」


 ゴブリンロードは何度も斧を振り回し、レナへ攻撃を繰り返す。

 横に切断しようと斧を振り、左手で相手を掴もうと動くが、レナは相手の攻撃を完全に見きっているのか全く攻撃が当たらない。

 相手の攻撃を最低限の動作で避け続けながら、何かを狙っているような動きを見せる。


「ソレナラバ、ゴウシデヤル!!」


 ゴブリンロードは斧の持ち方を変えて、切断ではなく巨大な先端で相手をハンマーで叩き潰すように上から振り下ろす。

 その瞬間を狙っていたのか、レナは剣を抜き相手の攻撃に合わせて敵の手首に刃を合わせて片腕を切断した。


「ギャアアアアア!」


 ゴブリンロードが腕を切断されて、怯んだ瞬間にレナは次の行動に移っていた。

 相手の体を登り刀を相手の首元に向かわせ、頑丈そうな首を一刀両断して敵の頭を地面へ落とし遠くに離れる。

 大量の血しぶきを天井に飛ばし、ゴブリンロードはその巨体を背中から後ろに倒れた。

 絶命の間際にゴブリンロードは、断末魔とも悔しさとも取れる言葉を放ち絶命する。


「ゴンナゴブスメニ……コロサレル……ドハッ!」


 ゴブリンロードに対してたったの二撃で仕留めた、仲間を見てエメリーは驚きの声が漏れていた。


「ゴブリンロードをたったのニ回の攻撃で……レナさん一体何者」


 地面に落ちた相手の首から片耳を切り落とし、エメリーへと投げる。


「その耳を仕舞っておいてくれ」


 指示された娘は、驚いていたが落ち着いた雰囲気で討伐用の袋の中に耳を仕舞って相方の元へ近づいていく。

 レナは刀に着いた汚れを布で拭いて、持っていけないと判断したのかその場に捨て置いた。

  脇差しを腰に仕舞い、当然の事のように相手の強さについて語る。


「まあまあ強かったが、本気を出すほどでも無かったな。所詮ゴブリン程度だな」


「本気じゃない……!?今の攻撃で本気じゃなかったって事ですか」


「ああ、その証拠に脇差しだけで倒しただろう?本気なら腰の愛刀を抜いている」


「はあ、私こんな化け物みたいな人と組んで、やっていけるのかしら……」


 レナはそんなエメリーの言葉を聞き、労いとも取れる言葉を彼女へと伝える。


「接種は一人でも戦える、そう感じていた。だけどエメリーが居たおかげでゴブリン討伐が早く済んだ。仲間との連携による戦いも悪くないと想ったよ。これからも迷惑かけると思うがよろしくな」


 レナは右手を差し出しエメリーへと握手を求めた。

 エメリーは相手の手を握り強い握手を交すと、感触に若干戸惑いを覚えた。剣術を修行しすぎて、鉄のように固くなっている男性のような硬さの手だった。


「それってこっちの台詞ですよ……まあいいです、仲間としての勤めを果たさせていただきます!」


「それじゃあ、任務完了したからギルドへ報告に戻るか。エメリー行こう」


「はい、わかりました!」


 こうして二人は初の任務ゴブリン討伐を成し遂げた。

 だが、この仕事が新たな波乱を呼び込むとは、二人共想像していなかった。

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