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炎罪  作者: お終い
第1章
25/33

第24話

「おい!! これを見ろ!!」


 フタバ達の家には今ダイジロウとサクラも来ている。

 新聞を見ながら大きな声をあげたのはタロウだった。


 ハナコやダイジロウ、フタバ、サクラ、イツハ、エンブレイズの全員がタロウの開いた新聞を覗き込む。


 そこには太字で『シャーマ王国の国王、ホムラ・シャーマ結婚!!』と書いてあった。

 当然その文字に一番驚いていたのはエンブレイズだった。


「なんで…? ありえない…!!」


 エンブレイズはブツブツと小さな声で何かを言っている。


「エンブレイズ君、これは…どうなんだい?」


 ひどくおおざっぱな質問だ。


「どうも何も…正直困惑していて良く分からない。…ホムラは昔から女性関係は正直ひくほどにだらしなく一番ひどいときは八股していた。それが一人の女性と結婚するなど……何があったんだ」


 全員が『あぁ、そういう困惑』と思った。


「なんか……そういうんじゃなくておかしいところはないの?」


 フタバが若干呆れながらにエンブレイズに聞いた。


「おかしい……おかしいんだ!! あんな女たらしを受け入れる仏のような器の大きい女性がいるなんて!!!」


「オイ」

「オイ」

「オイ」

「オイ」

「オイ」

「オイ」


 全員のツッコミが一致した。


「……じゃあどうしてそんな人がどうして結婚なんてしたのかわかる?」


 フタバは呆れながらに丁寧に説明した。


「……確かに。なんで結婚なんかしたんだ? あいつ一生独身発言してたのに。……政略結婚だとしても全く意図が読めない」


 やっとまともな話になったと全員が安心した。


 確かに誰にも意図が読めなかった。まだ国王の一家皆殺しの事件から一年と経っていない。そして新国王が誕生してまだ国の基盤が出来上がっていないときに結婚。

 普通ならもう少し国の内情が落ち着いてからするものだろう。ゴタゴタが片付いていないうちに結婚。

 正直謎が深まるだけだった。








「はい、あなた。あーん」


「あーん」


 シャーマ王国の二十三代目国王であるホムラとその妻、ヒバナ。


「ありがとう、美味しいよ」


「とーぜんよ!! うちの手作りなのよ」


 体をくねくねとしならせて顔を赤くするヒバナ。

 元々ヒバナは国王とは全く関係のない人間だった。しいて言うならシャーマ一族を人よりも尊敬していた事くらいだ。だからホムラの両親が亡くなった時はひどく悲しみ、お墓にも毎日通った。

 毎日のようにお墓に通う彼女はホムラの目にとまり、すぐに二人は仲良くなった。


 年齢はホムラと同じで、腰あたりまである長い金色の髪。黄色い瞳に垂れた小さい目、小さ目の口。

 身長はあまり高くなく、巨乳だ。そしてなんといっても一番目をひくのが右足の義足だ。短いスカートの中の右足の付け根からは銀色に輝く鋼の義足だ。


 もっとも彼女もホムラもあまり気にしていない。


「お二人とも、ラブラブですね」


 二人を微笑ましく見守るのはシャーマ王国のシャーマ兵団の総団長、スパーダだ。巨体を青白い鎧で包んでいる。


「フフフ、ありがと」


 嬉しそうに笑うヒバナ。

 ホムラも同じように笑ってはいるが、どこか本心を隠している。


「悪い、ちょっとトイレ」


 ホムラはそう言って部屋から出て行った。


「ふぅ…全く、バカの相手も疲れるな」


 当然、ホムラは彼女のことなど愛していなかった。

 ホムラが彼女と結婚したのは彼女の膨大な知識と技術が目的だ。

 ホムラに匹敵するほどの知識といくつもの新たな道具を開発するひらめきと技術を持った者は、国内では二人といない。


 既に彼女はホムラの望むままにいくつかの武器や道具を開発している。

 どれも使いやすかったり、強力なものである。


 恋は盲目である。もし彼女がホムラに惚れていなければ強力な武器は開発していなかっただろう。元々彼女の争いの嫌いな性格もあって、冷静であれば戦うための武器は開発しない。


 因みにヒバナは戦闘に関しては全くの素人である。恐らく彼女に負ける者など殆どいないだろう。

 でも知識や技術に関しては彼女に勝てる者など殆どいない。


「そろそろこないだヒバナが開発した新武器を試してみないとな。あいつの為にも」


 ホムラの言うあいつとはヒバナの事ではない。


「いつ戻ってくるんだ、我が弟よ。何度でも来い。その度にお前の大事な物を壊してやる、何度でも叩きのめしてやる」


 ホムラはフフフと静かに笑う。

 ホムラの目的はエンブレイズの再戦。前回はわざと殺さなかった。そして次もその次も殺さない。理由はエンブレイズを生きて苦しませる為。死んだ方が楽だと思えるほどに、死んでしまいたいと思うほどに。

 ホムラの憎悪の炎は消えることはない。今でも彼の中で激しく燃えている。

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