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炎罪  作者: お終い
第1章
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第20話

 エンブレイズはフタバとサクラを呼び、先ほどの部屋に戻る。

 さっきはあまり部屋の中を見ることはなかったが、よくみると最初の部屋と比べて格段に広い。天井は地下であるせいかあまり高くない。壁際には三段ほどの棚の中に大きなゴツゴツした岩がいくつものせてある。部屋の一番奥には人一人くらい余裕で入れそうな大きな窯があり、その前には先端の部分が人の頭程の大きさのカナヅチと一メートル程出っ張った台のようなものがあった。


「エンブレイズ君こっち来て」


 エンブレイズはダイジロウ・ササキに呼ばれて窯の方へと歩いて行く。


 ダイジロウ・ササキは棚から一つの岩を手に取り、そして台の上にのせた。


「その上に手を置いて」


 エンブレイズは言われた通りに岩の上に手を置く。


「ちょっと何も説明なしぃー?」


 サクラ・ハナミズキはダイジロウ・ササキに向かって何故か語尾を少し伸ばしてそう言った。ダイジロウ・ササキは返事もせずに小さなナイフをエンブレイズに向かって山なりに投げた。

 エンブレイズは難なくそれをキャッチする。


「どこでもいいからそれで切って血を出せ」


 エンブレイズは首をかしげながらも左手の親指の腹をピッと切って血を出した。


「うーん…それじゃあ足りないなぁ」


 ダイジロウ・ササキはエンブレイズからナイフを渡してもらい、いきなりエンブレイズの左手の手の平を十字に切り付けた。


「いって」


 軽く切っただけなので勿論傷は浅く、数日すれば普通に治るだろう。


「この上に左手をのせて。そしたら何があっても俺がいいって言うまで左手を動かすなよ」


 エンブレイズは言われた通りに手のひらを下にして岩にのせる。

 そして数秒程して左手に激痛が走る。傷口をえぐられるような鈍い痛み。


「―――ッ!!!」


 思わずエンブレイズは声をあげそうになる。別に声をあげても特に問題はないのだが、何故かエンブレイズは我慢した。

 だがその痛みも一瞬でやみ、後は血を吸われるようなこそばゆい感覚がするだけだった。


「よいしょっと」


 ダイジロウ・ササキはカナヅチを持って、何の前触れもなしにエンブレイズが手を置いている岩をエンブレイズの手ごと思いっきり叩いた。


 エンブレイズは左手に痛みを感じたが、さっきほどではなかった。そしてその後急にカナヅチが一瞬光って通常のカナヅチ程の小さなものになった。そしてそのカナヅチでダイジロウ・ササキは岩の側面をコンコンと軽く叩き始めた。



 そしてダイジロウ・ササキが岩を叩き始めてから六時間が経過した。


 エンブレイズは岩から手を離してはいないものの、まるで死にかけているかのようにぐったりしている。


 サクラ・ハナミズキ曰く、アルマを作るのにはその人の魔力が必要らしい。そして一番簡単に魔力を体外に出す方法が血を出すことなのだ。人間の血液の中には魔力が通っており、血を出すことがそのまま魔力を放出することになる。勿論他にも魔力を体外に出す方法は沢山ある。ただアルマを作るときは血を出すのが一番適しているというだけだ。

 そして魔力結晶は石事態も魔力を僅かにもっており、そこに外から時間をかけて魔力を送る。魔力を魔力結晶にまんべんなく送るために職人がカナヅチで叩く。どんな形でどんな効果があるものになるかは外から送られる魔力しだい、つまり人によって違うのだ。同じものは絶対に存在しない。

 因みにかかる時間はおよそ八時間。人によって多少変わるが、大体このくらいの時間かかる。


 つまりまだあと二時間程かかるのだ。

 サクラ・ハナミズキとフタバは二人で昼寝した後、どこかに出かけてしまった。

 エンブレイズとダイジロウ・ササキの二人だけの空間は、特に会話などなく血を抜かれ疲れ切ったエンブレイズがゼェゼェと荒い呼吸とコンコンとカナヅチで魔力結晶を叩く音だけが響いた。



 そして約二時間後、エンブレイズが手をのせている魔力結晶が青白く光り出した。


「んあっ?」


 とけてしまいそうな程だらんとしているエンブレイズが光に反応して素っ頓狂な声をあげた。

 先ほど帰ってきたフタバとサクラ・ハナミズキは魔力結晶を覗き込む。


 そしてだんだんと光が弱くなっていく。そして光が完全に消えた時、エンブレイズの手元にあった魔力結晶は跡形もなくなくなっていた。

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