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そんな寝起きだったからか心地よい目覚めとは言えず、気分は最悪。でも、睡眠自体はしっかりとれたので二度寝する気にはなれない。わたしは諦めてベッドから降り、伸びをする。
ふと、窓から見えた外の様子に、一瞬固まってしまう。その後、すぐに窓へ近寄り、開け、身を乗り出すようにして外をうかがう。
宿の隣に出ている屋台が、一日ずれている。
宿の隣に出店している屋台は、曜日によって違う。五つの屋台が日替わりで出店しているのだ。
明日出店するはずの屋台が、今日店を開いている。
――……もしかして、丸一日、寝ちゃった……?
昨日はそんなに疲れるようなことをしただろうか。いや、確かに遠出をしたのは事実だけども。だからって、一日寝込むような疲労ではないはずなのに。
ただ――なんとなく、見当はついている。
目が覚めてから、妙に頭がすっきりしているのだ。
そして、記憶の検索が非常にしやすい。フィオディーナの記憶に対しても、前世の記憶に対しても。
フィオディーナとしてのわたしが強かったときは前世の記憶が、逆に前世のわたしが強かったときはフィオディーナの記憶が。それぞれ思い出すのに時間と言うか、手間がかかった。そのときに感じたことも、考えたことも、どこか他人事のようにすら思えた。
けれども、今はスッと思い出すことが出来る。
「…………」
正直、人格としてのわたしが、どちらが強いかは分からない。同じくらいか――それとも交じりあってしまったか。
新しい人格というわけでもないのに、フィオディーナとしてのわたしと前世のわたしが両立している。
トゥーリカへの嫉妬心。怒りと焦り。
前世で生きた世界への郷愁とこの世界への不安。
どちらもわたしの感情として、わたしの中にある。混ざり合ったからか、過去のように強烈なものではないけども。
少し不思議な気分だ。ただ、どちらか片方の記憶が強かったときより、精神的に落ち着いている気がする。
「そりゃあ、睡眠は記憶の整理ともいうけれど」
まさか一晩でこんなに変わるなんて。……いや、丸一日寝ていたのなら一晩というのは少し違うかも?
こうやって落ち着けるなら、前世を思い出した後すぐに、こうなってくれればよかったのに。……いや、前世の方を強く思い出したから、こうなったのかも。
「……何はともあれ、早く身支度をしないと……。丸一日寝ていたってことは、店を放置してしまったっていうことよね!?」
わたしは慌てて服を着替え、部屋に備え付けられた洗面台の前に立つ。
顔を洗って、髪を整えて。そして――ふと鏡を見ると、なんとなく、違和感がわいてきた。
「――わたし、こんな顔だったっけ?」
二人のわたしが両立しているからだろうか。かすかに、顔へ違和感を覚えた。何か違う気がする。
でも、そう思ったのも一瞬のことだ。
すぐに「急がなきゃ!」ということを思い出し、身支度を始めれば、ほんの少しの疑問など、簡単に霧散していた。




