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フィオディーナ修理店は、ギルドの施設内の空き部屋を借りることになった。受付のすぐ隣で、もともとは職員の更衣室に使われていたのだが、人数が増えて広い部屋を更衣室にしてから、使わなくなったらしい。
受付開始はやや遅めで、昼過ぎから。朝から昼にかけては、掃除の時間だ。部屋をもらってから、一日つぶして掃除をしたのだが、いかんせん長い間使われてなかった部屋だからか、綺麗にしても綺麗にしても、どことなく埃っぽく感じるのだ。
この店を開くにあたって、冒険者ギルドの職員の制服を貸してもらえるようになったので、お気に入りのドレスを汚してしまう心配もない。
朝からの掃除が終われば、昼ご飯の少し前に、倉庫からいくつか術具を持ってくる。
修理店を開く前に、一日かけて『すぐ終わりそうなもの』『割と大変そうなもの』『一日じゃ終わらないもの』『全く直せないもの』の四つに分けていた、魔力補充待ちの術具の中から、『すぐ終わりそうなもの』を二つ、『一日じゃ終わらないもの』を一つ部屋に置く。
『一日じゃ終わらないもの』を少しずつ進めながら、『すぐ終わりそうなもの』から数を減らしていく、という作戦だ。
部屋に物を置いて、お昼ご飯を食べ、そして修理店は開かれる。
たまに来る依頼を引き受けながら、地道に、倉庫にある術具の魔力補充を消化する。
それがここ最近の、わたしの毎日だ。
「フィー!」
声を掛けられ、古びたナイフに魔力を込めていたわたしの集中力が切れた。反射的に舌打ちをしそうになって、わたしは慌てて口を押える。
『トゥーリカに負けられない』というストレスから解放されたからか、前よりは怒りの沸点が上がったような気がするけれど、それでもやっぱりどちらかと言えば怒りやすい性格は治らない気がする。
こればかりは、フィオディーナとしてのわたしが強い状態ではなくならない限り、どうしようもないのかもしれないな……。
「アルベルト、ごきげんよう」
古びたナイフから目線を離すと、受付カウンター替わりの棚のところに、右耳にカフスを付けたアルベルトがいた。
カフスは受付代わりに置かれた机の上に、共用語で『御用の際はお使いください』と書かれた紙と共に常時置きっぱなし(ちなみにその言葉はマルシが書いてくれた)で、誰でもつけられるようにしてあるのだが、アルベルトが一番使っているように思う。
特に用事がなくても、彼が遊びにやってくる。これもまた、ここ最近の、わたしの日常だった。
おかげで愛称で呼ばれても違和感がないくらい、すっかり仲良くなってしまった。




