1
祖父が、死んだ。
子どもの頃には死ぬわけがないと思っていた祖父が、死んだ。
享年八十三。肺癌だった。
おばあちゃんとの間に六人の子どもと、他の女(複数)との間に十二人の子どもを持った。
孫は、父とほか五人の兄弟姉妹に計十五人いる。曾孫は今のところ、六人だ。他の女との間に生まれた子どもたちとの間にも、多くいるのだろうが、そこまでは知らない。
俺は二十五歳で、五十歳の三男である父の一人っ子だった。父は真面目な市役所職員で、祖父とは違う人種だった。
俺は父よりも、祖父に似ていると言われることが多かった。
通夜もだったが、葬儀にも多くの参列者が来てくれた。みんなさめざめと泣いていたり、久しぶりに会った人たちとの再会の喜びを押し殺しつつ、悲しんだりしていた。初めて着る喪服に少し固くなりながら、俺は何となくそれを見ていた。
けれど誰もが、会場の祖父の遺影を見て微笑んだ。微笑んだあと、さらに激しく泣く人もいたが。
遺影の祖父はスーツ姿で、短く刈った白髪で目を細くして微笑み、会場の中心にいた。短髪の上に余分な肉が無いため、左耳の金のピアスが目立って見えた。
いつもの祖父だった。