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眼の異世界転生  作者: ビッグツリー
第三章 神之欠片を求めて~亜族の大陸編~
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三十五話 裏オークション

 翌朝、目玉の姿のジークは窓を開けてミラとルルのいる部屋の中に入ると、ぐっすりと眠る二人の頭の間に移動した。マインとナオミはすでに起床し食堂へと向かい、まだぐっすりと夢の中にいるミラとルルを起こす為だった。


「ルル、朝だぞ」

「ん~……ジークお兄ちゃん……おはよぉ」


 ルルは毛布から片腕を出して、薄っすらと開くことの出来た目を擦っている。


 ジークはルルが起きたことを確認すると、反対側へと向き直っては毛布から出ている頭を細い腕でペチペチと叩き出した。


「おい、ミラ。朝だぞ起きろ」


 もぞもぞと動いては何事かとゆっくり顔を出すミラ。顔の上半分だけを毛布から出して、まだ寝ぼけている目でジークの姿を捉えるなりサッと反対側へ顔を向けた。頭の裏へと視線を躱したミラは、小さく呟く。


「おはよう……ございます」


 そんなミラの態度を目にしたジークは、体を斜めにしては首を傾げるような動作をしていた。



 先に起きてベッドから抜け出していたルルは、部屋に設置されている洗面台にて顔を洗い、タオルで拭いてから鏡へと向き直ると肩にジークが乗る姿を捉えた。


「あれ? お兄ちゃん、今日はルルの肩に乗ってくれるんだ!」

「あぁ、まだミラは寝ぼすけのようだからな。今日はオークションに行くだけだから支障もないし、たまにはルルのそばもいいだろう」

「わ~い!」


 鏡越しに姿を捉えて会話する二人、ルルは明るい笑みを零して元気な声を上げている。しかし、二人から離れた斜め後ろ、ベッドに座っているミラはそんな二人を横目で見つめていたのだった。



 顔も洗って身支度を整えたミラとルルは、階段を下りて一階にある食堂へと足を運ぶと、そこにはすでに席に着いているマインとナオミの姿があった。

 ルルが早足で駆け出しては二人に近寄り、朝から無邪気な笑顔を向けている。


「マインお姉ちゃん、ナオミお姉ちゃんおはよ~!」

「おっはぁ」

「おはようルル。朝から元気なものだな! ……ん?」


 ナオミは髪をクシで解かしながら空返事をし、マインは挨拶を交わすとルルの肩へと視線を動かした。


「おや、今日はルルの肩にいるのだな! ジーク殿もおはようだ」

「あぁ、おはよう」


 何気ない日常の会話。だが、一人後ろで離れてその光景を見ているミラの目には、微笑みながら言葉を交わすマインとジークの姿が妙に意識して映っていた。

 

「おはようございます」


 ミラは無表情とも言える面持ちで一言だけ言い放つと、静かに席へと着いてはテーブルに肘を突き、手に顎を乗せている。その視線はきょとんとしているみんなから外してどこか遠くを見つめていた。

 

 違和感に気付いたマインはそっとルルの隣に位置すると、肩に乗るジークに顔を近づけては耳打ちする。


「ジーク殿……何があったのだ?」

「まだ寝足りないんだろう、構わないでおけ。時期に目を覚ます」




 こうして、一人だけ浮いたように終始微妙な雰囲気を纏わせての朝食が済まされていくのであった。






 晴れ渡る空に、差し込む眩しい日差し、地球であれば冬に突入している季節だがまだまだ残暑が残っていそうな天気。そんな明るい太陽の光を浴びる四人プラス目玉の姿がカジノ前にてあった。


 到着を待ち構えていたグルーエルは、ミラ達の姿が見えると深く頭を下げて一礼した。


「おはようございます皆様。では、こちらへどうぞ」


 カジノへと手を差し伸べるグルーエルの背後に付くように、ミラ達は軽く挨拶を交わすと裏オークション会場へと足を進めていった。


 

 薄暗い従業員用通路を進んでいくと、壁に掛けられた一つの小さな案内板が目に入って来た。書かれていたのは矢印と、”裏オークション会場はこちら”の大きな文字。矢印の指し示す方には地下へと続く階段があり、長めのそれを下りきると真っ赤な両開きの扉が存在していた。



「この先が会場となります。中に入りましたら空いてるお好きな席へ掛けてください。そうそう、落札希望の際は難しいことはなく、手を上げて金額を申し出ればいいだけとなっております。一番高い落札希望額となった場合、入札完了となります。私は執務がありますのでここで失礼させて頂くことになりますが、どうぞ初めて参加される裏オークションをお楽しみになってください」


 グルーエルは最後に軽く頭を下げると、元来た道へと戻って行った。



 マインが代表するかのように扉へと手を添えると、重厚感のある独特な響きを放ちながら扉は開かれた。



 飛び込んできた光景は、一言で言うなれば怪しい雰囲気。天井に設置された複数の照明は淡いオレンジ色を放つ色彩の物のみ。広い空間のそこは映画館のような高低差のある観客用の椅子に、舞台には大きな赤い幕が張られていた。特に異様な雰囲気を放つ発生源は、そこにいる多くの利用者達であった。身元を隠す為か、目だけが隠れるマスクや仮面を付けていたりと、利用者の全員が素顔を隠していたのであった。


 ミラ達はとりあえず空いてる席へと移動し腰を下ろすと、それと同時に会場内の照明が全て消えた。

 幕上の天井に設置されているであろう照明だけが光ると、正面に捉える舞台の幕だけが薄っすらと照らし出されては、真っ赤な幕がゆっくりと上がっていった。


 幕が上がり切ると、舞台端を照らすように上からのライトが当たる。舞台端から現れたマイクを持った男を追いかけて照らすように、男の歩くスピードに合わせてライトが中央へと移動した。

 中央に位置したマイクを持つ男の背中には黒い翼があり、グルーエルと同族の者だと見て取れる。



 男は前にする多くの客に深く頭を下げて一礼すると、マイクを口元へと運んだ。



「お集まりの皆様、今週も裏オークション開催の時がやって参りました。今回も珍しい品を取り揃えてありますので、お気に召す一品をご提供できることをお約束致します。それでは大変長らくお待たせ致しました、これより裏オークションを始めさせて頂きます。まず最初の品はこちらです」



 天井から三方向のスポットライトで照らし出されたのは、中央に設置されている首の長いテーブル。その上には斜めになるように底の浅い箱が固定され、蓋が外されているので箱の中身が見えるようになっていた。箱の中には真っ赤な布の緩衝材が敷かれ、その中央には黄金の輝きを放つ指輪のような物があった。



「こちらは今回初のシャイニング・リング、別名”幸運の指輪”と言われる品です。その輝きから、身に着けるだけで災厄を跳ね飛ばし、幸運を引き寄せるといった効果を持っているようです。鑑定書付きで、鑑定者名はバーバラ。希望落札金額は五十エル銀貨からとなります」


 司会の男が商品の説明を終えると、座席の客達は各々ざわざわと口を開き始めた。



「バーバラは有名な鑑定師だよな? 本物じゃないか?」

「あの指輪は今回が初めての出品みたいね」

「戻ってくる出回り品じゃないなら本物か……怪盗ルパンに狙われる可能性はあるな」

「五十五エル銀貨!」

「六十エル銀貨!」



 出品された指輪が本物だと思い始めた客達は、各々手を上げては金額を吊り上げていき最終的に九十五エル銀貨で落札されたようだった。


 その後は宝石やグラス、絵画や武器や防具、数々の装飾品などが紹介され、何十品目かになると一つの輝く水晶が中央のテーブルに現れた。



「続きましてこちらは今回初登場、超希少と言われるプラチナ水晶でございます。これは幻獣ロックドラゴンが進化した際に、稀に落とすという鱗が変化した物と言われております。今では絶滅してしまった存在な為、見つけることはおろか手に入れることすら非常に困難な品となっています。鑑定書はございません、希望落札額は百エル銀貨からとなります」


 説明が終わると、会場内は不気味に静まり返っていた。欲しそうにする者も見受けられるが、どうやら鑑定書が付属していないということと、金額が気になるようで手を上げる者はいなかった。



「ダメか」


 会場内の客の様子を見ていたジークはそう小さく言葉を零した。紹介されているプラチナ水晶は、ミラ達が出品した物だったからだ。


 しかし、次の瞬間に一人の男の声が会場内に響き渡った。



「百エル銀貨!」


 その男の声で会場内は大きくざわめき、ジークは咄嗟に手を上げる男へ視線を移した。それは黒い仮面を被った小太りの男で、堂々たる風貌で手を真っ直ぐと上げていた。


 結局手を上げたのはその一人だけだったので、ミラ達の出品した水晶は自然とその男の手元へと渡っていったのだった。



 商品紹介も終盤となっており、ラストにはいよいよ目的である神之欠片かみのかけらの地図の番がやってきた。どうやらラストに紹介されるのは定番のようで、ちらほらと帰り支度を始める客も見受けられる。



「ラストは恒例の商品、神之欠片かみのかけらの地図でございます。三エル金貨からの入札となりますが希望のお客様は……いませんよね」


 地図が入ったガラス張りの透明な四角いケース。いささか業務的に紹介を済ませた司会の男が撤去の為にそれに触れると、会場内に一人の声が響き渡った。



「ちょっと待った! 三エル金貨!」


 目を丸くさせた客全員が視線を集中させた先、そこにいるのは堂々と手を上げるミラの姿があった。その目元には赤いバタフライマスクを着けている。

 会場内の様子にならうように、事前にジークが急遽作成してミラ達に手渡してあったのだ。



 どよめく会場、司会の男も固まっている。ハッと我に返った男は、マイクを口元に当てた。


「ほ、他にはいますか!? いませんね? で、ではステージへどうぞ」


 司会の男に促されミラは一人中央の通路へと出ると、前方の舞台ステージへと足を進ませた。凛とした表情とも無表情とも見受けられる面持ちをしながら、堂々と歩み進めてはステージへと上がる。



「ケースを開ける鍵は領主様がお持ちですので、この落札済証をお渡しします」


 男はそう言うと一枚のカードをミラへと手渡し、ミラは三枚の金貨を男へ手渡した。

 すると男は会場内に向けてミラを紹介する口ぶりでマイクを握った。


「皆様! 数年、いや数十年ぶりに地図を手に入れた者が現れました! 今後の彼女への期待も込めて、どうか暖かい拍手をお送りください!」


 男の言葉をキッカケに、会場内にて高々と響く拍手がミラへと送られた。しかし当の本人は無関心とでも思えるかのように、多くの拍手を尻目にステージを下りては元来た道へと足を進めていた。





 とりあえず神之欠片かみのかけらの地図の落札済証を手に入れたミラ達。これは言わば引換券のようなもので、グルーエルへ渡せば地図の入ったケースの鍵と交換してもらえる代物だった。

 ミラの持っていた三エル金貨については、半分は位置当てゲームの天使の塔で手に入れた物、もう半分はダイスゲームの六面天候の物なのだが、カジノ長が逃げ出してしまった為にグルーエルが責任を持って支払ってくれたのだった。






 ミラ達はグルーエルのいる執務室へと足を運ぶと、さっそく先ほど手にした落札済証を手渡した。すると、グルーエルは驚愕の面持ちで口を開く。


「こ、これは――。あなた達が求めていたのは神之欠片かみのかけらの地図だったのですか!?」

「そうです。もうお金は渡してありますし、鍵をください」


 淡々と答えるミラに、グルーエルは苦虫を噛み潰したような渋い顔を向けた。


「その……大変申し上げにくいのですが……」

「なんですか、早く鍵をください」


 もったいぶるグルーエルに、ミラは少し苛立ちを覚えながら鍵をよこせと急かしている。しかし、グルーエルが勢いよく頭を下げると驚愕の事実を口にした。


「すみません! 鍵は昔、怪盗ルパンに盗まれてしまって手元に無いんです!」


 グルーエルのまさかの発言に、一行は目を丸くしては口を揃えて言い放った。



「「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」」

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