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眼の異世界転生  作者: ビッグツリー
第二章 目的~ビビレッジ編~
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二十四話 思惑紛れる温泉

 派手な大騒ぎの宴を開催していた大広間は、静けさを取り戻していた。楽しい時はあっという間で、お開きとなり各自解散したのだった。

 ジークは、ドドマエルとジル、シチセイを誘って温泉へと来ていた。脱衣所で四人が服を脱いでいると、ドドマエルが不思議そうな顔をしながら口を開いた。


「ここで服を脱ぐとは聞いていたが、ここにいる者が同時に湯に浸かるのか?」


 服を脱ぐ必要のないジークは、服自体を消し去って腰にタオルを巻き、入浴の手順をドドマエルとジルに説明していた。


「そうだ。中には大きな湯船があって、みんなで湯に浸かる場所を温泉と呼んでいる。脱いだ服は、このロッカーという箱の中にしまっておけ。鍵には手首に固定する為のバンドが付いているから、それを使って無くさない様にするんだ」


 シチセイはすでに慣れているので準備は終わり、ジルも器用にバンドを締めると入浴の準備が完了した。ドドマエルは大きな指で少し苦戦しながらも、嫌な顔一つせずになんとかバンドを締めることが出来た。

 四人が入浴の準備ができた所で、ふいに脱衣所の扉が開いた。


「お、旦那達じゃないっすか~。奇遇っすね!」

「ドドマエル様!」


 やって来たのは、ムタとレオニルの二人だった。一旦部屋に戻ったのか、二人は浴衣姿でほんのり顔を赤くしていた。おそらくアルコールが抜けきっていないのだろう。

 レオニルの姿を目にしたドドマエルは、きょとんと目を丸くした。


「レオニル、お主いたのか」

「いましたよ! 宴の席にもちゃんといましたよ! よくわからない状況だったので、馴染めずに隅のほうにいましたけどね……」


 遠い目をしながら天を仰ぐレオニルの肩に、ムタは優しく手を添えた。


「でも、そのおかげでローナちゃんと話せたじゃないっすか」


 ムタのその言葉に、ハッと我に返ったレオニルは力強くムタの肩を両手で掴んだ。


「そうだ! お前、髪飾りとやらを本当に手に入れられるんだよな!?」

「いたたた……。だ、大丈夫っす。もうすでに手配はしてあるっす! ハピで取り扱ってる店があるらしくて、俺っちの”コレ”が用意してくれるっす。女性目線だから、きっといい品なはずっすよ!」


 ムタは小指を上げながら答えると、レオニルはそれを理解したのか悔しそうに唇を噛み締めていた。

 その様子を見ていたジークは、腕を組みながら目を丸くしていた。


「お前ら、いつの間に仲良くなったんだ?」

「宴の最中っすかね~!」


 前に一歩踏み出したレオニルは、ジークに向けて深く頭を下げた。


「挨拶が遅れて申し訳ない、長官殿。俺はビースト部隊長『金色こんじきの獅子レオニル』。国王ドドマエル様のお命だけではなく、この俺と、しいては本国を救っていただき誠に感謝する。もはや取り返しは付かないが、一方的に攻め込んだ非礼をなんと詫びればいいものか……」


 レオニルの言葉に、ジークは少し首を傾げた。


「なあ、その厨二くさい二つ名は流行ってるのか? あと、あの戦争の真相を知っているかの口ぶりだな」

「ちゅうに? 二つ名は語ることで己の称号を自覚し、又、語られることで魔力増加の恩恵が大きくなるのだ。と言っても、大概は自己顕示欲として使われているな。長官殿のところにもいるだろ? 黒い閃光が。それとステールの奴の陰謀については、ロ……ローナから聞いた」



 後半、若干顔を赤くしながら口ごもるレオニルを尻目に、ジークは休憩の為に設置してある木製のベンチに座ると、足を組んで顎に手をやった。



 称号による魔力増加か……。おそらく上限値が増えるんだろうな。考えておくべきか? いや、そもそも俺には称号がなかったな。まあ俺は核と融合してるからか、元から異常なほど高い魔力上限値が設定されてるし、そこまで気に病むものでもないか。それにしても黒い閃光って、ミラか? それしか思い当たる節はないな……。ククク、今度使ってみよう。ローナって奴は、確かオペレーターの一人だったはずだ。戦後に事の真相を伝えたのはミラ、マイン、ルル、村長、司令室の奴らだ。……そういうことか。


「よし。とりあえず話は分かった。ここでいつまでも話しているわけにはいかない。後は中でゆっくりくつろげ」


 ジークは立ち上がると、取り残されていた三人と共に浴室へと足を進めて行った。



 中へと足を一歩踏み入れるなり、立ち止まって辺りを見回すドドマエルとジルを洗い場の椅子へと腰かけさせると、ジークは薬水などを指差しながら丁寧に指導をしていた。

 四人は一通り体を洗い終えると、中温の浴槽へ向かっては腰を下ろした。


「これは! 全身に染み渡るこの感じ、疲れが吹き飛ぶようだ」

「こんな贅沢が許されるなんて、私生きててよかったです」


 ジーク、ドドマエル、ジル、シチセイと並んで入浴する四人。快適な癒しの湯船に、各々がその身を浸らせているその中でも、満悦な表情でうっとりとするドドマエルとジルの姿があった。


 すると、ジークが目を閉じながら静かに口を開いた。


「温泉にはな、裸の付き合いというものがあるんだ」


 ジークのその言葉にドドマエルは目を丸くすると、湯船から腕を出しては、にこやかに力こぶを作った。


「裸のド付き合いとな」

「お前の耳は飾りか? ドはいらん。要は、腹を割って話し合える場ということだ」


 ドドマエルは恥ずかしそうに腕を引っ込めると、口元が隠れるくらいまで沈んでいった。

 すると、自分の世界に入っていたジルがジークの言葉に我に返った。


「そういえばジークさん、大陸をもらうとか言ってましたが、あれの意図はなんですか?」

「おお! 余も忘れておった! 思い出したわ!」

「それを話そうと思っていたんだ」


 ジークは頭に乗せていたタオルで一度顔を拭くと、真剣な表情で語りだした。


「大陸と言っても、全てじゃない。この辺り一帯、詳しい範囲としてはハピを含めるまでだ。村長、いいんだよな?」

「無論じゃ。わしはジーク殿から全て聞いておる。むしろ賛成じゃ」


 シチセイは何食わぬ顔で、湯船に浸っては満悦の笑みを浮かべていた。

 ドドマエルとジルは、説明を要求するかの眼差しでジークを見つめた。


「今回の結果で、本国は大騒ぎになっているはずだ。それもそうだろう。あれだけの部隊に、王もいる、敵は最弱の臆病犬ビビリ・ドッグ。誰も負けるとは思っていなかったはずだ。そして迫害をしていた奴らは恐怖しているだろう。仕返しされる、本国を攻められるとな」


 そこまで言うと、ドドマエルは表情を暗くして深く頷いた。それはジルも同じである。


「そこでドドマエル、お前が帰ったら説明するんだ。あの戦争は、ステールの陰謀を暴く為にこの村を殲滅すると見せかけた罠だったと」

「なっ! 民を騙すと言うのか!?」


 ドドマエルは立ち上がり、その大きな声が浴場に反響した。


「まあ落ち着け。物は言い用って言ってな、言い方は違えどその本質は間違っていないだろう? ステールは王の座を得る為に、戦争という罠をお前に仕掛けたんだ。それを俺が逆に利用したまでのこと。それにステールの計画通りに奴が王になっていたら、それこそ本国どころか大陸が堕ちたと思うぞ?」

「そ、そうだな……すまぬ」

「そしてお前は、俺達に大陸の一部を贈るんだ。さっき言ったハピを含むこの辺り一帯のな」

「だが、そんなに小さな地だけでいいのか? この大陸は広大だ。望めばもっと与えても良いのだぞ?」

「それではだめなんだ。本国の奴らもそうだが、周りの街にも今回の噂は広がる。変に大きく大陸を譲渡されてみろ。この村への強い恐怖心を抱く者が多く出てしまうことになる。あれだけのビースト部隊を退ける力を持っているなら、どんどん大陸を制圧していくのではないかと大陸の奴らは考える。そしていずれまたここを攻める連中が現れて、永遠にいたちごっこだ。だから、俺達に向けられるその心を変えねばならない」

「ど、どうすればいいのだ?」


 ドドマエルは落ち着かないのか、何度も立ち上がっては座りを繰り返していた。


「こう言うんだ。この村の協力のおかげで、ステールの陰謀を阻止することが出来た。本国を救ったことに協力してくれた彼らの功績を称えて、大陸の一部を譲渡するとな。そこを一つの独立国として確立し、友好関係を結ぶ。そして今後一切攻撃してはならない。破った者は極刑に値する。こんな感じだな」

「ふーむ、なるほどな」

「この村が交戦してビースト部隊を殲滅させたってのを、うまい具合に言葉で隠すんだ。陰謀を暴く為の戦争に”協力”してくれたってのが肝だ。それと、迫害して今まで関わってこなかったところが独立国になったなら、これからは公に関わらずに済むようになったと、迫害していた連中は思うはずだ。心の中で秘めさせているのが一番危険だからな。それに友好関係を結ぶとあらば、本国の中からも関わろうとする奴が出てくるはずだ。それはこちらの物資を手にしたり、こちらの話を持ち帰った者からの声で、より可能性は出てくる。本国の対応としてはそれでいいだろう。それにこちらとしても常に付きまとう危険を排除できるし、本国からの援助も受けれる。それになにより、臆病犬ビビリ・ドッグの連中からすれば、今まで迫害の対象としか見られていなかったのが、その見方が変わるというのが一番大きな利益となるだろう。隠れ住んでいた地が本物の居場所になるのだ。ハピまで含めるのは、俺があの街を見捨てるつもりがないのと、今となってはこの村とハピは共同しているようなものだからな」


 ジークの言葉にドドマエルは理解すると、深く頷いていた。ジルは感無量で涙を流しながら小さく何度も頷いた。

 説明を終えたジークは立ち上がり、三人を連れて露天風呂へと移動した。

 浴室とは打って変わった光景に、ドドマエルとジルは歩きながら景色を堪能していた。そして湯船を張る岩へと四人が腰を下ろし、足湯をしているとジークはニヤリと口角を上げた。


「実はな、温泉にはこんな風習もあるんだ。それは――”混浴”だ!」


 ジークのその言葉に、ドドマエルとジルとシチセイは、まるで少女漫画風の衝撃の表情を浮かべた。


「なんだその素敵な響きは!」

「絶対危ない香りがしますが……私、気になります!」

「ジーク殿! わしもその風習は聞いておらんぞ!」

 

 三人が異常なほど興奮していると、その場にムタとレオニルもやってきた。


「なに騒いでるんすか~旦那ぁ」

「おいムタ、お前軽すぎないか?」

「だいたい大丈夫っす~だいたい」


 ムタとレオニルも岩へと腰を下ろして並ぶと、ジークはここだと言わんばかりに、心の中で叫んだ。


(よし、いまだ!)


 すると、女湯との仕切りだった木製の柵の一部が扉のように開き、奥からはタオルで前を隠したミラ、マイン、ルルと他三名の女性達が現れた。


 それは、ジークが温泉へと向かう最中に仲間通話でミラとマインとルルの三人に繋ぎ、混浴システムの説明をしていたのだった。マインは何気もなく了承し、ルルもジークと一緒に入りたいと承諾、ミラは散々渋ったがジークの「お前との混浴の思い出を作りたいんだ」の決めセリフで、モジモジしながら承諾していた。後は適当に三名ほど連れてこいと指示をしていた。


「「「「「「おじゃまします」」」」」」


 六名の女性陣が湯煙に紛れながら神秘的な登場をすると、ジーク以外の五人は一斉に前かがみになった。

 ジルとシチセイは鼻血を出しながらそのまま失神して前から湯船に沈んでいき、ムタとレオニルとドドマエルは静かに湯船の中に腰を下ろした。

 女性陣はタオルを押さえながらゆっくりと湯船に沈んでいくと、ムタとレオニルはその光景にカッと目を見開いていた。


「レオニルさん……見えました?」

「いや、優れた動体視力の俺をもってしても無理だった」


 小声で話す二人の会話をしっかり聞いていたジークは大きく肩を落とした。

 視ることに特化しているジークは、意識せずとも普段から桁違いの洞察力を持っているので普通に見えたのだが、人間の三大欲求を失っているが為に、男であるのに何も感じないのがあまりにもショックだったのだ。


 ジークはドドマエルの隣に腰を下ろすと、腕を組んだ。


「腹を割って話せる場と言ったよな。お前に、俺の目指すものを教えてやる」

「ほう、興味があるな」


 ドドマエルはジークの言葉に不敵な笑みを零すと、同じように腕を組んでは横を向いてジークを視界に収めた。

 ジークはルルのことを手招きすると、笑顔で寄って来たルルを、あぐらをかく足の上にと乗せた。そして頭に手をやり静かに口を開いた。


「それはな、この子の未来を守ることだ。たとえ俺がいなくても、この子がいつでも安全に暮らし、笑い、学び、そして自分で選んだ道を進んでは……悔いのない生き方だったと思えるよう……そうさせてやりたいんだ。この子は言っていた……みんな仲良くすればケンカをしなくて済むのにと。だから俺は、種族間の忌み嫌われや大きな争いのない、”みんな仲良く暮らせる大陸”を作りたいんだ」


 ドドマエルはジークの話に、目を瞑っては真剣に考えた。それはドドマエルも一度は思い、いつの日か諦めてしまっていたことだった。


「それは余もかつては考えたことがある。全ての種族が手を取り、平和な世界を築きたいと。だが現実はそう甘くはない。全種族を敵に回し、四大陸を手中に収めねばならないのは……正直無理があると思うが? 気持ちは分かるが、お主は頭が切れるであろうに。そんな夢物語を可能としたいとは……お主は英雄にでもなるつもりか?」


 真剣な面持ちでそう語るドドマエルに、ジークは振り向くと同時にデコピンをかました。


「俺は物語の主人公じゃない。言っただろ、この子の未来を守ると。俺は自分の目に映る範囲の、こいつらが大切なんだ。世界中を視野になんか入れちゃいない。その為には、新たな概念の大陸を作り出せばいいんだ」

「どういうことだ? 譲渡する大陸のことか?」

「いや、あるだろ一つ。どの種族も関与していない大陸が」


 その言葉に理解したドドマエルは、信じられないものを目にしたかのように目を丸くすると、驚愕の面持ちで口を開いた。


「お、お主まさか――」


 ジークはドドマエルの反応を目にすると、口角を上げ、不敵な笑みを零した。



「ああ。『不可侵の大陸』だ」

「お、お主はなんてことを思いつく奴だ……。そんなこと、勝手に自分たちの大陸としたとしても、四大陸の王が認めねば今までと変わらず攻め滅ぼされるのがオチだぞ!?」

「だから、お前に腹を割って話すと言っただろ?」


 ドドマエルは完全にジークの意図を読み取ると、静かに体を震わせた後、頭の上に乗せていたタオルを取って豪快な笑い声を上げた。


「ガハハハハハハ! なるほどな! だからこその余であるか!」

「そういうことだ。で、どうなんだ?」


 ドドマエルは勢いよく立ち上がり、腰に両手を当てた。


「亜族の大陸王ドドマエルの名を持ってここに誓う! 『不可侵の大陸』を、お前達の大陸として認めようではないか!」

「そうか。これでまず一人だな」


 ドドマエルはすっきりした表情で軽やかに湯船に沈むと、ジークを見つめては語り出した。


「認めるしかなかろう。いや、それだけではない。余も協力させてもらう。お前は目に映る者と言ったが、その先まで見据えておるのだろう?」

「ほう。たまには頭が働くじゃないか。そうだな、俺はあくまでもこいつらの為だが……その結果として訪れる先には、お前の望む未来へと繋がるかもしれないな。それに元よりお前に協力を要請するつもりだった」

「やはりな。して、さっそくか! なんでも言ってくれ! 協力しようではないか! ガハハハ!」


 ドドマエルはさっそく協力することが出来ると思うと気分よく高らかに笑い、それを見たジークは自然な面持ちで、さも当たり前のように言い放った。


「そうか。なら、神之欠片かみのかけらをくれ」

「なんだそんなことか! お安い御用……ん? 今なんと言った?」


 高らかに笑うドドマエルはふと硬直すると、耳に手を当ててジークの顔へと近づけた。


「亜族の大陸が管理する神之欠片かみのかけらをくれ」

「正気かお主!? 『不可侵の大陸』を自分のものにするにとどまらず、アレに手を出すというのか!?」


 顔の近くで大声を上げるドドマエルに、ジークはしばらく自分の耳を塞いだ。そして声が止むと、ジークは呆れた表情で口を開きだした。


「『不可侵の大陸』は、言ってみれば神之欠片かみのかけら、核の為のものだろ? あれを封印してるからこそのものだ。だからあの大陸は、今では俺のだ。それに各大陸に神之欠片かみのかけらなんていう強力な宝具へとなりえる物が存在するからこそ、睨み合っては均衡を保っているだけだ。ならそんなもの俺が全部支配下に置いてやる。場合によっては消し去るつもりだ」


 ドドマエルは大きく頭を抱え込み、それから天を仰いでは、静かに一言呟いた。


「……え?」

「ああ、言ってなかったな。俺は核を持っている」

「……マジで?」

「マジだ」


 声にならない声を小さく上げながら、湯船に静かに沈み込んでいくドドマエル。慌てた様子でレオニルが引き上げると、ドドマエルは口からお湯を噴き出した。


「つ、ついに核の適正者が現れたのだな。それがお主とは……。いや、先の戦争やここでのことを見ると不思議ではないか。核の適正者と聞けば納得だ。四大陸が管理する神之欠片かみのかけらよりも遥かに強力な力を秘めた核なのだからな。しかし……神之欠片かみのかけらを譲ると言ってもなぁ……」


 腕を組んでは渋るドドマエルの姿に、ジークはここぞといわんばかりにルルに耳打ちをした。

 ルルはそのつぶらな瞳をウルウルと輝かせ、眉を若干下げては、上目遣いでドドマエルを見つめた。


「おじさん……おねがい」

「うっ……」


 ルルの必殺おねがい攻撃に、ドドマエルは心に軽いジャブを受けると、それを見ていたジークは次にミラとマインに目で合図を送った。


 ミラは片手で胸の位置のタオルを掴みながら、前かがみになってドドマエルの顔を覗き込んだ。


「国王様ぁ……だめぇ?」

「ぐふ」


 そしてマインがドドマエルの腕にしがみつき、秘密兵器の巨乳プッシュをしながら呟いた。


「ドドマエル……友の頼みだ」

「……マイン、お前がナンバーワンだ。ぐっはああああああ」


 ドドマエルはどこにも傷を負っていないのに、叫び声を上げながら湯船へと沈んでいった。

 そして救助班のレオニルが助け出すと、ドドマエルは小さくジークに呟いた。


「ジークよ、お主はズルイ奴だな」

「知らんな」

「まあ、いい。亜族の大陸の神之欠片かみのかけらにもし選ばれたとしたならば、好きにするがいい。それに、お主らに行ってもらったほうがいいのかも知れないしな」

「どういう意味だ? お前が管理してるんじゃないのか?」

「いや、実のところ直接的には何もしておらぬのだ。神之欠片かみのかけらには守護者がいてな、そやつが守っておるのだ。わしも伝承で聞いた限りだが、どうやら守護者はロックドラゴンらしい。ステールの奴が隠していたのが別のロックドラゴンだとしたら、おそらく神之欠片かみのかけらを手に入れる為に利用するつもりだったのだろう」

「卵から孵化し、自我もなかったぞ? 別物じゃないか?」

「はぁ……。やはりか。ただでは死なぬということか。おそらく守護者は同胞を失ったことを気づいておる。我らは怒りを買い、守護者により災いが持たされるかもしれぬ」

「なるほどな。それで俺達か」

「うむ……おそらく余が行っても無意味であろうしな」


 ジークは顔を下げ、少し思考するとドドマエルに向き直った。


「どっちにしろ行くつもりだったんだ。いいだろう。それとお前に一つ、ちゃんとした頼みがある」

「なんだ?」

「人間の大陸の王とは顔見知りなんだろ?」

「そうだ。我が父が生前、停戦を結んでからは、余も向こうとはそれなりの関係を築いておるつもりだ」

「それなら好都合だ。人間の王にも話をつけたい。お前が仲介として場を設けてくれ」

「そういうことか。よかろう! だが時間はかかると思っていてくれ」

「ああ、構わない」


 ジークは話を終えるとミラに目で合図を送り、それと共に女性陣は温泉から上がって行った。ムタが若干寂しそうな顔をしていたが、なかなかに長湯していたこともありみんな顔を赤くし始めていたので、切りよく温泉を後にすることにした。


 最上階にあるVIP専用の豪華な客室にて、ドドマエルは布団に入り暗闇の中で目を開けていた。


(今一度、夢を追いかけてみるとするか)




 心の中でそう一言呟くと、どこか無邪気な子供のように笑みを零しては、ゆっくりと目を閉じて眠りについていった。

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