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眼の異世界転生  作者: ビッグツリー
第二章 目的~ビビレッジ編~
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二十二話 戦場の戦利品

 ジークはロックドラゴンとの死闘後、空を飛翔して帰還する際に途中でミラ、マイン、シチセイ、ドドマエル、ついでにビースト部隊の部隊長というレオニルを回収後ビビレッジへと戻ってきていた。

 村へと戻ると、帰りを待っていたのか村中の住人達が入り口前の広場に集まっていた。


「「「「「おかえりなさい!」」」」」


 全員が息ぴったりと出迎える中、人込みをかき分けてジークに飛びつくルルの姿があった。


「お兄ちゃんおかえりなさーい!」

「ああ、ただいま」


 ジークはルルの頭を優しく撫でて微笑んだ。その光景をミラとマインとシチセイも微笑みながら見つめていた。

 ドドマエルに簡易手当てをしたものの、きちんと処置をするために一度旅館へと足を進めることになった。人型に戻っているとはいえ、三メートルはある巨体なので並みの住居では手狭だったのだ。

 シチセイがドドマエルを一人で背に担ぎ歩き出すと、住人達の先頭にいる臆病犬ビビリ・ドッグ達が騒ぎ出した。


「だ、誰だあの世紀末覇者は!?」

「巨人を背負っているぞ!」

「人型のミサイルかもしれない!」

「旦那逃げて! 超逃げてー!」


 慌てふためく臆病犬ビビリ・ドッグ達にジークは深いため息を尽くと、事情を説明した。


「あのむさくるしいのは村長だ」

「「「「「な、なんだってー!」」」」」


「そして背中で寝てるのは、国王だ」

「「「「「なにゆえーー!?」」」」」


 臆病犬ビビリ・ドッグ達だけではなく、住人全員がきれいにハモった。


「とりあえず国王を安静にさせて、意識が戻ったら色々と話をするつもりだ。もう戦争は終わった。思うところはあるかもしれないが、捕虜ではなく村の客人として接するように心がけてくれ」

「皆の衆、わしからも頼む」


 ジークの言葉にシチセイも加わると、住人達は落ち着いていった。


「旦那、村長、了解っす~! でも、とりあえず……お祝いなんかしちゃったりはいいっすよね?」


 ムタがヘラヘラしながら探るように上目遣いでジークを見つめた。


「そうだな。だがドドマエルが起きたらだぞ? それまでに準備をしておけ。お前に任せるから派手にやれ」

「っしゃああああ!」


 ムタは大きく仰け反り、ガッツポーズを取った。






 旅館へと着くと、ドドマエルを大広間に寝かせてリーナの回復魔法を使用した後、マインとミラに看病を任せた。一段落したら村の女性陣と薬師に交代してもらい、二人には休めと言っておいた。村長にはドドマエルを運ばせた後、すぐ休ませた。ルルにはリーナの指示の元、村の防衛設備の点検をお願いした。


 そして俺はというと、一人で外にいた。ちなみに3軍のビースト部隊の死体の山の上に立っている。3軍の表部隊の連中にはこちらの勝利と、王は数日こっちに滞在してから国へ戻るそうだとでっち上げておいた。

 だが肝心なのはそれじゃない。なぜここにいるかというと、それは後始末の為だ。


 なんの後始末かって? 大量の死体だ!

 こんな大量な死体を放っておいたら疫病で大陸が汚染されるからに決まっている。そしてその一番の適任者が俺だということを、自分で一番分かっているからだ。



「まったく……。戦利品ならともかく、戦争で敵の死体まで片づけるお人よしなんて聞いたことないぞ……」


 俺は溜息を吐きながら、髪から数百本の触手に変化させると、辺り一帯に転がる二十万の死体に張り付いては分解して吸収した。

 そして体に流れ込んでくる多くの情報に、俺はハッと顔を上げ笑みをこぼした。


「これは……ククク」

《あ、ジークが悪だくみしてるです》


 リーナが何か言ってるが無視だ。それどころではない。さすがにここまでは予想もしていなかった珍事だ! これはひょっとすると、ひょっとするぞ!


(リーナ! 次のエサを回収しに行くぞ!)

《エサって……了解でーす》


 俺は緩む口元と、高まる衝動を抑えきれずに2軍がいた場所へと全速で向かった。




 そして2軍の死体の山へと辿り着くと、上空から辺りを見渡し優越感に浸っていた。


「ククク。見ろリーナ! ゴミのようだぞ」

《……私にはあなたがゴミのように見えますが》

「ほう。村に帰ったら、あのむさくるしい村長の首にお前をかけてやろうか?」

《やめて! それだけはやめて! 私はまだ乙女でいたいです!》


 リーナの叫びを無視し、俺は触手を伸ばしては死体に張り付かせた。


「さあ! 俺の糧となるがいい!」


 そして更に二十万の死体を吸収すると、俺は空中で目を片手で隠しながら、大きく体を仰け反って高らかに笑った。


「ククク……ハハハハハ! 思った通りだ! レベルアップしたぞ!」


 そう、それは3軍を取り込んだ時に感じたもの。ロックドラゴンを倒した時に得た魔力と、3軍の二十万人いたビースト部隊を吸収した時に得た魔力で、魔力タンクがもうすぐ満タンになるのが分かったのだ。そして2軍の二十万人のビースト部隊を吸収したことで、ついにレベルAへとアップしたのだ。


 だが、それだけではない。得たものは魔力だけではなく、強力なビースト部隊計四十万人もの人体情報だ。


「これで、マインを超えた!」

《気にしてたんですね》


 正直、少し気にしてた。俺に仕えると言ってきたマインのほうが、進化した今では明らかに俺より強いのだ。瞳術や反射眼を使えば話は別だが、使わなければおそらく負けるだろう。主としての威厳がどうのこうので、マイン本人はともかく俺は気にしてたのだ。

 だが、それもさっきまでの話だ。


「どうだリーナ!」

《はい。完全解析完了です。解析データと『視覚支配』、『聴覚支配』を統合・適正化し、新たに『身体能力支配』を特性に組み込んだです。これで単純な身体能力だけでもドドマエルにすら余裕で勝てるです。軽蔑します》

「いちいちうるさい奴だな。俺は長官、そしてこれは正当な戦利品だ。で、スキル解放のほうはどうだ?」

《レベルAにアップしたことにより、ユニークスキル『位上昇』が解放されたです》

「どんなものだ?」

《特性の位を、任意の段階上げることが出来るです。ただし、対象は一つのみ。一度使うと位の上がった特性はそのままですが、ユニークスキル『位上昇』は消えるです。又、すでに最上級の位である支配系には使用出来ないです。どれに使うか慎重に選ぶべきですね》


 ふーむ。特性を一つ、任意の段階へ上げることが出来るスキルか。簡単に言うと、特性のレベルアップが可能ということだな。


 特性には位というものが存在する。当然上位のほうが効果が高い。特性の種類を大きく分けると「無」、「基本」、「特殊」の3つだ。「無」の特性には位は存在しない。俺の持つ『魔力感知』がそれだ。「基本」の特性には「操作→強化→超強化→支配」の順で位が存在する。しかし、身体機能に関しないものなどの一部は強化と超強化の過程がないという例外もある。「特殊」の特性には位はあるが「基本」のように決まった型というのがない。又、「特殊」の特性を使いこなし極めたとしても、次の位へと上昇するには特殊な条件下でしか起こらない。俺でいうと『自己再生→超自己再生』になったり、『高速思考→光速思考』などだ。攻撃耐性や状態異常耐性が、無効へと上昇するのも「特殊」の位が上がったものだ。


 そして俺は少し思考した後、答えを導き出した。


(リーナ、『時間操作』を上げる。そして適正化しろ)

《……ファイナルアンサー?》

(いいから早くしろ)

《つまんなーい》


 俺はリーナの処理を待つがてら、1軍のいた場所へと飛翔した。






 ビビレッジの旅館にある温泉にて、三人の姿があった。ミラ、マイン、ルルだ。

 ドドマエルの驚異的な自然治癒能力も相まって、凄まじい勢いで回復に向かっていたので後は村の女性陣達に看病を任せ、ミラとマインはとりあえず休息前のお風呂タイムにしたのだった。ルルもリーナの指示の元に村の防衛設備の点検を終えたところに、通話回路を通してミラから一緒にお風呂にと誘われたのだった。

 ちなみに今回のこともあり、リーナが通話回路を一部いじって魂の回路がジークと繋がっている者は、意識すれば個別通話や仲間通話といったグループ通話が可能になったのだ。言わずもがな、魂の回路の繋がりがない者との連絡は、魔通機にて取るしかない。



「ルル、頭洗ってあげるね!」

「わーい! ミラお姉ちゃんに洗ってもらうー!」


 先に体と頭も洗い終えたミラが、ルルにそう声をかけるとルルは両手を上げて喜んだ。マインは体を洗い終え、青く長い髪を丁寧に洗っている最中だった。

 マインは手串で保湿や潤い成分のある薬水を丁寧に髪になじませながら、横目でミラがルルの頭を洗ってあげている光景を見ていた。


(こうして見ていると、ほんとに仲のいい親子だな。いや、姉妹か?)


 そして微笑みながら髪をお湯で流すのだった。



「はい! おしまい」

「ありがとうミラお姉ちゃん!」


 ルルの頭を洗い流したミラはそう言うと、マインの方を見てふと口を開いた。


「それにしてもー……マインさんって、裸になると人間にしか見えないですよねー。いつも被っている三角帽を取ると、イカの頭みたいに三角っぽくなってるのかと思ってましたけど、なにもないんですもん! ずるい! 私も人間みたくなりたいなー。そうすればジークさんと……」


 後半モゴモゴと話すミラは、両手の人差し指をツンツンとしていた。


「そうか? まあ、私は魚人とはいえ亜種だからな。それといつも被っているピンクの三角帽は、お気に入りなんだ。小さいころに被りだしたのがキッカケでなー。前にも言っただろ? 私はからまれやすかったのだ。それは力が強いというのもあるが、人間のような外見をしているのも一つの理由でな……それで私のベースであるイカを表現する為に被りだしたのだ。本来ならあの三角帽はコンプレックスを隠す為のようなものだったが、被りだした幼い頃に……あれを可愛いと褒めてくれた奴がいてな」

「もしかして、ジルさん?」


 ミラのその言葉に、マインは一つ頷いて答えた。それを見たミラは、頬に両手を当てて、顔を少し赤くしてはキャッキャしていた。


「わー。やだ、どうしよう! なんか……いいですね! そういうの!」


 ミラがあまりにもはしゃぐせいで、少し恥ずかしくなったマインはちょっと照れくさそうに口を開いた。


「ま、まぁ……褒められて悪い気はしないがな。そ、それに! ちゃんと外見での人間との違いだってあるのだぞ! ほれ!」


 マインはそう言うと髪の一部を十本の触手に変化させ、ウネウネと動かしてはミラの体に絡みつかせた。


「ほれほれどーだぁ? こんなことが人間にできるかな? ここか? ここがいいのかぁ? これが触手プレイという禁断の大人の遊びだ!」

「えっ! ちょ、ちょっと! マイン……さん! あっ……。やだぁ……そ、そこは……。あっ、あぁーーーーーーーーーんっっっ!」


 ミラの艶かしい声は、浴場内で反響し高々と響き渡ったのだった。






 1軍のいた場所へと到着した俺は、もはや作業になりつつある吸収を行うと、ある異変に気付いた。


(おいリーナ、こいつら魔力がないぞ)


 そう。吸収したのはいいが、魔力が補充されなかったのである。


《死へと誘った対象が近くにいない場合、二十四時間後に魔力は星へと返還されるです》

「なにぃ!?」


 つい声に出してしまった。せっかく吸収したのに、魔力が得られないならば、本当にただのムダ骨である。この先に転がっているであろう先行部隊の魔力も、星へと返還されてるのは間違いなかった。

 俺は肩を落としながら荒野に落ちてる先行部隊と、その先へ飛翔して森の中のゴミ共を掃除した。

 すると、リーナがどうやら終わったようだ。


《完了です! 『時間操作』が『時間支配』へと変わり、ユニークスキル『位上昇』は消失したです。そして『時間支配』と『空間支配』、『素粒子支配』の一部を統合・適正化し、新たに『時空支配』を特性に組み込んだです。これと同時に『空間収納』は『時空支配』の能力の一部下位互換である為、新たに『次元収納』へと現在保管してある物を、それぞれ別の次元に保管してあるので各自そのまま使用可能です》

(そうか、御苦労。思った通りだ。ククク……それに、これであれが使えるはずだ)


 俺は掌で右目を隠しながら、笑みをこぼした。


《転移ですね?》

(さすがに察しがいいな。可能なはずだが?)

《可能です。但し転移に関しては二つ条件があり、座標データが必要となりますので一度直接見るか『千里眼』で確認済みの空間ならば転移出来るです。もう一つは、対象の魔力を軸に転移する方法です。個別魔力を座標へと応用しますので、魂を持たない無生物は対象外です。私が個別魔力のデータを登録済みの相手であれば転移可能です。ですが、直接転移すると対象内に入り込んでとんでもないことになってしまうので、対象の付近へと転移する形になるです》

(十分だ。一つ確認したいが、この星以外、もしくは他次元に存在する星へは転移出来るか? 俺が過去に見たことある場所も適応されるなら、地球へ行きたいのだが)

《それは不可能です。特性である以上、この星の理を超えることは出来ないです》

(そうか……。星の理を超えるなんてこと可能なのか?)

《ジークはすでに星の理を超える力を有しているです》

(なんだと?)

《それは、完全支配瞳術です。神之欠片かみのかけら、核の有する力とジークの生前の脳・眼の力とが相まって生まれた異常イレギュラーなその力は、星の理を超えているです。ちなみに通常の進化ではなく、ジークの力を介して異常イレギュラー進化した存在であるミラ、マイン、ルル、シチセイも星の理を超えることが出来る可能性を宿しているです。今はまだその4人は、星の理を超える力を有していないですが、今後の鍛錬や成長などにより取得する可能性はあるです》


 

 そうだったのか。どうりで瞳術は、危険なほど強力なのも頷ける。星の理を超える力か……俺自身が異常イレギュラーなんだ、有り得なくはないのだろう。

 さて、転移も出来るようになったことだし、これで空を飛ぶよりも早く移動できるからピンチのときにすぐ助けに駆けつけることも出来るようになった。

 まずは試行がてらに適当に飛んでみるか。


(力に関しては解った。とりあえず転移を試してみたいんだが)

《それならばミラ達のところへ”試し”に転移してみましょう!》


 ん? なんか一部強調してたような気がするが、気のせいか?


(そうだな。『空間収納』のことも話しておきたいから丁度いい。よし、転移だ!)






 ミラ、マイン、ルルは浴場内で一騒ぎした後、湯船に浸かる為に浴槽へと足を踏み入れていた。


「うー! あったかーい」

「足だけでもこの気持ちよさはたまらんな」

「ルルにはちょっと熱いかも」


 三人が浴槽へ足を踏み入れ、各々感想を漏らしていると急に前方の空中に人影が現れては浴槽へと落ちていった。



――バシャーン!


「な、なんだ!? お湯?」


 ジークは転移した後、急に少しの落下を感じるとお湯の中へと落ちて座り込んだ。

 そう、ミラ達の目の前に現れたのは、ジークだったのだ。


「きゃっ! あ、え? ジーク……さん?」

「おやジーク殿、奇妙な登場だな」

「お兄ちゃんどうやってきたの?」

「あ、ああ。転移できるようになったから試してみたんだが……その、すまん」


 ジークの謝罪により、ミラが自分の姿を確認すると、驚いた拍子にタオルを落としてしまっていたので素っ裸だった。一瞬で状況を理解したミラは、みるみる内に全身が真っ赤になり、大きく叫びをあげた。


「きゃぁーーーーーーーーーーーーーーっ!」

(リ、リーナ! ジルだ! ジルの元へ転移!)

《はいはぁーい》


 やけに嬉しそうなリーナの声をろくに聞かず、俺は逃げるようにジルの元へ転移した。




 


 一仕事終えたジルは、開け放った窓の傍に立ち、休憩の為に街を眺めていた。


「ジークさん……大丈夫でしょうか」


 そう呟くジルの目の前に、急にジークが現れては目が合った。


「あ」

「うわああああああああああああ」


 ジルが驚いて後ろへと吹っ飛び、机の上の書類やらなにやらが散乱するのを宙を落ちながら一瞬だけ確認できると、俺は軽やかな身のこなしで地面へとスッと降り立った。


「うーむ。一度転移先は確認してからのほうが良さそうだな。リーナ、個別魔力による転移も調整しておけ」

《了解でーす》

「それとお前、ミラ達が入浴中だったの知ってたな?」

《……》


 クソ。またやられた……そのだんまりが肯定なんだよ!


 俺は軽く肩を落とすと、上を見上げては脚に力を込めてジャンプした。開け放っている二階のジルの部屋へと窓から侵入すると、ジルは自分が散らかした書類などを整理していた。

 窓から部屋へと入って来た俺の姿を確認すると、ジルは口を開いた。


「まったくあなたは! って……なんでびしょ濡れなんですか?」

「あ、ああ。”水も滴るいい男”という言葉があってだな、それを模しているんだ」


 首を傾げるジルを尻目に、俺は歩きながら『素粒子支配』を使用して、服が吸い込んだ水分を全て除去した。そしてソファーにふんぞり返っては脚を組んだ。

 ジルも向かい側に座り、俺を見つめては口を開いた。


「あなたがここに来たということは……」

「ああ。勝った」

「うぅ……ありがとうございます。ありがとうございます」


 ジルは俯き、両手で顔を覆ってはボロボロと涙を流していた。


「敵の主戦力はすべて俺のエサ……じゃなくて、闇に葬った。国王は無力化させたんだが、戦いによる影響で意識を失ってるからこちらで保護している。じきに目を覚ますだろう」

「そう……ですか。大陸最強と言われるあの国王様を……。あなたは化け物ですね」

「それなら、一人で国王を倒したマインが化け物ということになるが?」

「なあああああ」


 ジルはその言葉にソファーごと後ろへと大きく倒れた。重たいソファーを座ったまま倒すとは、なかなかの足腰の強さである。だてに転げ回ってはいないということだろう。


「いたた……。まさかマインが。昔から強かったですが、それほど強くなっていたのですね」

「僕が君を守るとか言ってたのに、逆に守られたな」

「ひいいいいいいい」


 ジルは両手で顔を覆っては、ソファーの上で転げ回った。


「ところで、ドドマエルが目を覚ましたら宴を開く。そこにお前も来い」

「私も……ですか? 確かに一度ビビレッジの方には挨拶にも行かなくてはと思っておりましたが」

「お前も含めて、ドドマエルと話をする。今後の話だ」

「あぁ、なるほど」

「そういうことだ。じゃあ報告も終わったし俺は帰るぞ」

「分かりました。本当にありがとうございます!」


 ジルは頭を下げるのに立ち上がると、その瞬間に目の前からジークが消えた。


「うわあ! き、消えた……。ありがとうございました」


 ジルは、もう目の前には誰も座っていないソファーへと、深々と頭を下げたのだった。






 俺は村へと戻ると、ムタと話をしていた。どうやら準備が終わったようだ。なにやら催し物を準備したそうで、何度も「ララには内緒っすよ!」と言われた。一体なにを用意したんだこのバカは。

 そうこうしているうちに、ミラの声が頭の中に入って来た。


(ジークさん、国王様が目を覚ましましたよ!)

(わかった。大広間に行く)


 そうやらドドマエルが目を覚ましたらしい。宴の準備が終わったところだからタイミングはいいが、こんなことならジルを連れてくればよかったと、微妙なタイミングの目覚めだった。


「ムタ、王のお目覚めだ。すぐ取り掛かれ。俺は今からジルを迎えに行ってくる」

「旦那、ジルさんを村に連れてくるんすか?」

「そうだ」

「それならジルさんにも、催し物のことはララには内緒って言っておいてください!」

「なにを企んでるのかは知らんが、まあいいだろう」

「っしゃああ! ハッスルするっすよー!」


 何を言ってるんだこいつは? 

 俺はとりあえず無視して、またジルの元へと飛んだ。今度は『千里眼』でジルの姿を確認したので問題はない。




「おい」

「おおーーー……お?」

「お前、キツネじゃなくてゴリラなんじゃないのか?」


 消えたはずのジークがいつの間にかソファーに座って、声をかけられたことでジルは少しだけ驚いていた。


「失礼ですね! それで、なぜ戻られたのですか?」

「ドドマエルが目を覚ましてな。お前を拉致しに来た」

「え、今からですか? もうすぐ日も暮れますよ?」

「問題ない。準備はいいか?」

「いやいやいや! ちょっと待ってください!」


 ジルは慌てふためきながら会話の出来る水晶でメイドへ出かけることを伝え、余所行きの灰色でビシッとしたスーツのようなものに着替えた。


「えーと、はい! 準備できました」

「よし」


 俺はおもむろにジルの肩へと手を添えると、村へとジルごと転移した。






 とりあえず村の入り口を進んだところにある広場へと転移すると、ジルは周りをキョロキョロと見渡していた。


「は? え? は? ここは? 未来?」

「ビビレッジだ」

「――!」


 ジルは状況を把握すると、ぐるぐる回るように村を眺め始めた。


「なんというか……建設物も見たことがありませんよこんなの。村を改造したと言ってましたが、まさかこんなことになっているとは……。亜族の大陸とは、もはや考えられない別の地ですよ! 人間の知識と技術力は、こうも進化しているのですね。素晴らしいです」

「そうか。それなら結構だ。あとは歩きながらにしろ」

「あ、はい!」


 そして俺はジルを連れて旅館へと向かったのだった。


 戦争に勝利した盛大な宴と、国王ドドマエルと話をする為に。





――そして、この会話が今後の運命を大きく左右することになるのだった。

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