十四話 生まれ変わる村
午後、住人達はせっせと荷造りをしていた。村改造計画の熱が思ったよりも凄かったので、午後の訓練も取りやめて各自荷造りをさせることにしたのだ。
マインとムタに上限有りの指輪を渡し、マインとミラにはムタの指示の元、村の農作物等の回収を三人に行わせていた。
そして俺は村の外に行き、周辺の森林を伐採して『空間収納』に回収していた。
上空から見渡すと、中央に小さな村があり、その周辺はなにもない広い更地。そしてそれを多少の森林が取り囲む形になった。これは、計画上の区画整理を行う為の下準備なのだ。
それから森林の一部を更に回収し、俺はそのスペースに木造の仮設住宅を建てた。改造計画中に、住人全員が住むことが出来る為のものだ。ちなみにその横には『空間収納』にまるごと収めていたミラの家を移しておいた。
――そして二日後。
荷造りと農作物等の回収が終わったようで、これで心置きなく村を再建する準備が出来た。
全員を村の外へ出すと、俺は地面に手をつき『素粒子支配』を発動させた。
そして一瞬にして消える村。村があった場所はまるでそこには最初から何もなかったかのように全てが一瞬にして消え去った。分解したと同時に、村の全ての保有魔力は魔力タンクではなく人口魔石に保存させた。
住人達にとっては様々な思い出があるのだろう。村が消えた後はそれぞれ涙を浮かべたり、空を見上げては唇を噛み締めてる者もいた。だが、それも再建の為には必要なことだとみんな理解していたので、必死に零れそうな涙を我慢していたようだった。若干一名、村長は我慢できなかったのか、おいおいと号泣してはマインに抱きついていた。笑ってはいるが少し困り顔のマイン。泣きついてる村長の顔は、鼻の下を伸ばしていたのは見なかったことにしておこう。
全員を仮設住宅がある場所まで下がらせ、俺は再び地面に手をやると区画整理の予定となる大地をまっさらにした。ここからは実際に仕事の始まりである。
俺は住人達に伸縮性のある長いヒモと、地面に突き刺す色付きの杭を大量に渡した。
事前に決めていた役割通りに動き出す住人達。俺は翼を出して飛翔すると、『空間収納』から縮小版の見取り図を出してそれを見ながら指示を出しては細かい調整を行った。
夕方にはそれは完成した。ヒモと杭で、土地区画整理を行ったのである。
上空からだと村全体の土地区画は大きな四角形型となり、その中を十字に区切って、住宅区・観光区・工業区・農業区の四つに別けた。左下に住宅区、右下に観光区の予定だ。横の中心線はやや下げてある。なので、住宅区と観光区は全体からすると土地面積は少ない。だがそれでも、亜族の大陸は広大過ぎるので少ないと言っても十分すぎるほどにスペースを取ってある。そして縦の上半分の中心線をやや左よりにし、そこを工業区とする。そして残った右上の一番広い土地面積には農業区だ。
日も暮れるので、今日はここまでとした。
途中で女性陣には引き上げてもらい、ミラとマインと共に炊き出しを作らせていた。仮設住宅の近くでそれは行われ、みんなで一緒に食べる食事に住人達は自然と喜びの笑顔が溢れていた。
――そして次の日。
俺は工業区の一角に行き、『素粒子支配』にて大きな穴を二つと、深い溝の道を作った。大きな穴は横に二つ並ぶようにし、深い溝は外側の大きな穴から村をぐるっと一周通るようにしてある。村の内側に並ぶもう一つの大きな穴は、外側を一周する溝にぶつからない様に若干ずらしてあり、この穴からも同じように村を一周するよう溝が繋がっている。
なので、溝は村を二重に囲むように土地区画内にて、外側にある大きな穴からの一周と、その内側にある大きな穴からの一周という形だ。
これが何になるのかというと、上水道と下水道である。外側が下水、内側が上水の予定だ。
俺は『空間収納』から大量に作り溜めしておいた人口魔石を取り出すと、何本ものパイプ状に変化させた。このパイプには『素粒子支配』の能力の一部と『空気操作』を付与してあり、有機物排除の効果を持たせるのと、パイプ内に空気溜まりが出来ない様にしてある。簡単に言うと、パイプを腐らせない為だ。
そして、作業指示書を基に住人達がこのパイプを溝に設置していくのだ。
午前中の作業状況を見ていて思ったが、どうやら人手が足りないようだった。計算では間に合うはずだったが、慣れない作業に手間取っているみたいだ。ミラとマインも含めて総動員しているが、予定よりも作業が押していた。
俺? 俺は台座様に座って指示を出しているだけだ。この計画では、アホみたいに魔力を使うから、台座様の力を借りないと死んでしまうのだ。こうなっては仕方がない。あの男に応援要請をするしかない。
マインに代理を任せ、俺は奴の元へ全力飛行をした。
――コンコン。
「はいどうぞ」
「……」
ノックをする俺は、あえて帰ってくる言葉に返事をしなかった。ここは奴の部屋の前。そう、お掃除大好きジルだ。
返事がないことに不審に思ったのか、ジルの近づいてくる足音が聞こえた。俺は目玉の姿に戻り、身体をめちゃくちゃ小さく変化させた。
そして開く扉。廊下をキョロキョロと見回すジルを尻目に、俺は素早く部屋の中へと入った。
ジルが誰もいないことを確認し、首を傾げながら部屋へと振り返る瞬間、俺は人間の姿を解放しては振り返るジルの目の前に立ってやった。
「ごきげんうるわしゅう!」
「ぎゃあああああああああ」
廊下に派手に吹っ飛び転げまわるジル。最近この遊びが面白すぎる。
「それは流行っているのか?」
「誰が事の発端ですか!!」
「お前だろ」
肩を落として頭を抱えるジルを無視し、俺はソファーに脚を組んで寝ころんだ。
「はぁ。今度はなんの用です?」
「人手を貸せ」
「ヒトデ……ですか?」
俺は素早く立ち上がると、ジルの仕事机に近寄り、飾ってある”考える人の像”を掴んではジルにぶん投げた。
「――あ、危ないじゃないですか! 壊れたらどうするんですか!」
ジルは生意気にもうまくキャッチしやがった。何気に気に入ってたようだ。
俺はソファーへ戻り、脚を組んだ。
「今、村を改造している。人手が足りないから、住み込みで働ける者を……そうだな、どうせなら五十人ほど回せ」
「それはいいですけど、これは仕事の依頼ですか?」
「そうだ。金は払う。……お前がな」
「なんで私が払うんですか! お金を払うので働かせてくださいってどんな物好きですか!」
「あのバカが着服していた金の清算はまだなんだろう?」
「ええ。もう少し時間が……って、まさか」
「そこから払え」
「ダメに決まってるじゃないですか! 清算が終わったら、住民達へ返金するのですから!」
「まあ、考えがある」
俺はそういうと、組んでいた脚を逆にし、背もたれに両腕を乗せた。
「とある物資の販売権をくれてやる」
「販売権? というと?」
「村が再建したら、そこでしか作れないある物を生産し、それをこの街が販売する」
「く、詳しくお願いします」
「今はまだ生産すらしていない状態だ。詳しくは言えない。だが一つ言えることは、それは今の段階でも三種類考えている。しかもそれらは革命をもたらすだろうと踏んでいる。どうだ? 悪い話じゃないと思うぞ。その利益から住民達への返金に当てればいいだろう」
「あなたのことだ。きっととんでもないことをやらかすのでしょう。賭けの一つだと思って割り切りますか……。負けたら私の資産から返金に当てなければいけませんけど……。それに、依頼の話がなくてもどうせその話は持ち込んできたのでしょう?」
「察しがいいな」
「はぁ。分かりました。受けましょう」
その後、細かい打ち合わせを行い三日後には村へ向けてハピの住民を派遣する流れとなった。
これは、ちょうど貿易が始まるのと重なるようにしたのだ。すでに村を出ているムタが三日後にはここへ着くので、その時ムタが帰るのと一緒に村へ案内させる為だ。
そして俺はハピを出て、一度湿地帯へ足を運んでは、とある物を回収して村へと戻った。
――三日後。
午前中にパイプの設置作業が終わった。
「うぃ~。もどりました~」
「戻ったか」
「「「「「よろしくお願いしまーす」」」」」
「ああ、よろしく頼む」
ムタがハピの住民達を連れて戻って来たのようで、ちょうど昼時と重なっていた為にハピの住民達を含めて昼食にした。
事前に話はしてあったので面識のない者達も最初こそ緊張していたが、全員で囲む食事の雰囲気に徐々に心開いていったようだ。俺はみんなが昼食を食べてる間に、ハピの住民達用の仮設住宅を増設していた。
「ジークさん大丈夫ですか? はいこれ」
「ああ、大丈夫だ」
ミラが食事もせずに台座に座っている俺に、オレンジジュースを手渡してきた。
ミラは俺を心配しているのか、目の前でしゃがみ込んで顔を覗き込んでいる。
「大変だが、俺もこれで楽しんでる。いい村にするぞ、ミラ」
俺はそう言って、ミラの頭を撫でてやった。
「えへへ~。一緒にがんばります!」
ミラは嬉しそうに笑顔を浮かべるとと、軽く頭を下げてはトコトコとみんなの元へ戻って行った。
(意外と……可愛い奴なのかもな)
《ほ~う!》
つい無意識に心の中で言ってしまった言葉に、リーナが意味深な反応をしたが、俺は無視した。
食事も終わり、午後になったので次の段階へ進むことにした。
『空間収納』から大量の木材や鉱石と水晶を出し、様々な物を生み出した。下駄箱、タンス、ベッド、テーブル、椅子、照明器具などの生活用品だ。
そして住宅区へ行き、『空間収納』から再び大量の鉱石と水晶を出しては『素粒子支配』を実行する。
姿を現したのは三種類の異なる建物。
次に観光区へと行き、一つの巨大な建物を生み出した。
(やばい……。リーナ、ミラを呼んでおいてくれ)
《了解です! 変に追加細工しなければ、次で98%の確率で強制活動制限モードへ移行します》
そして、他に二十の小ぶりな建物を生み出すと俺は目玉の姿になって地面に落ちた。
「ジークさん!」
駆け寄って来たミラに俺は拾われた。両手で俺を抱えるミラは心配そうな表情を浮かべている。
「ミラ、俺を台座に頼む」
「もう! 無理しすぎですよ」
「これも計算の内だ。何回かこれを繰り返さないといけない」
「心配ですよ……」
大量の生活用品は、事前に打ち合わせをしてあるのと、マインの監督の下に住宅区に建設した建物の中へと着々に設置作業が行われていた。ハピの住民達も、マインに優しく教えてもらいながらどうにか形になっていた。
夕方になり、俺は台座様のおかげで魔力が全快したのでミラを連れて工業区へと向かった。
まず内側の大きな穴に行き、地面に手を触れ『素粒子支配』を発動した。
四角形の大きな穴は、オリハルコン鉱石製の頑丈な箱型に仕上げた。これにもパイプと同じく防腐加工がしてある。溝とも繋がっており、溝の中のパイプの大量のつなぎ目や箱とのつなぎ目も『素粒子支配』にて一本化させた。
そして、溝に設置されたパイプを埋めるように、大地と高さがズレないようにまっさらにした。大きな穴の箱の方も同じようにするのだが、中央には穴が開いたままにした。
次に外側の穴に行き、内側と同じにするのだが、ここに関しては箱型の下の更に地中に同じような箱型の空間を縦につながるよう二つ追加した。箱と箱の間にはパイプを通してある。
更に、一番下の箱には並列するようにもう一つ追加した。
外側の大きな穴の箱は、一番上から一層・二層・三層となり、三層目が二つ並列してる形だ。その並列している二つ目の三層の箱型と、内側にある箱型をパイプで縦に一直線に繋げてある。これで一応、全てが繋がる仕組みになっている。
ちなみに一層から二層までの距離は、それなりに取ってある。これは後で生み出すものに関係しているからだ。
そして俺は目玉になり地面に落ちるお決まりのパティーン。ミラの小さな胸に埋まりながら、台座へと帰って行く。今日は日も暮れるのでここまでだ。
次の日になり、生活用品の設置作業もとくに問題なく進んでいるようだった。マインの監督ぶりも素晴らしかった。ミラには俺の世話を任せている。というのも、ここからが俺にしか出来ない本領発揮の段階だからだ。そう長くない時間で旅立つことになるだろう――あの小さな胸へ。
俺は区画範囲から遠く離れた場所へと行き、村を中心とした半径四千キロメートル以内の地中に、小さな装置を大量に設置した。
これはまだジャブだ。
そして俺はミラを連れて工業区へ行き、ミラを離れた場所に待機させた。
俺は内側と外側の穴の間に行き、大量の鉱石と人口魔石と水晶を取り出すと、全身全霊を持って集中し巨大な装置をいくつか作り出した。
まずは、汚水浄化制御装置『のめるんです』と、上水制御管理装置『めぐるんです』。
外側の穴の上に汚水制御装置『のめるんです』を設置し、内側の穴の上には上水制御管理装置『めぐるんです』を設置した。
外側の一層目は、村から回ってくる下水を溜める汚水槽にしてある。パイプ自体や箱型の水槽にも防腐効果を施してあるので汚水にしては綺麗な水が入る仕組みになってるのだが、『のめるんです』によって汚水槽内の汚水は完全なる有機物処理と滅菌処理の制御が行われ、クリーンな水へと生まれ変わるのだ。
そして二層目にはタービン式の発電装置を設置した。これは、位置エネルギー変換発電装置『まわるんです』だ。一層目から二層目の距離を取ったのは、位置エネルギーを高める為だった。一層目の汚水槽からのクリーンな水が『のめるんです』の制御による空気圧力で勢いよく二層目へと押し出される。これによって水が通る所に設置されたタービンが回り、電気エネルギーを生み出す仕組みだ。そして水はそのまま三層目へと流れ込む。
三層目へと続くパイプの中でも『のめるんです』の制御が働き、最終的な安全処置と確認が施される。その水が入る三層目は、貯水槽だ。ここを第一貯水槽とし、横にある第二貯水槽へと流れ込む。そして遠く真上の地上部にある内側の穴、これが第三貯水槽として最終的にここへ流れ込み、クリーンな水が村全体へと行き渡る設計だ。
貯水槽の水は、『めぐるんです』により制御され供給と排出が行われる。水を引き上げる際には空気圧力が作用し、過剰な水量の場合は『めぐるんです』による気化排出が行われる。水量の低下に伴い、供給する場合は村周辺の地中に埋めてある地水吸収装置『あつめるんです』の全てが汚水槽と連結しており、それにより供給制御を行っている。
そして俺はまたもや、小さな胸へと戻って行くのだった。
午後になって完全復活を果たした俺はミラの元へ行き、もう最初から目玉の姿になって小さな胸へダイブし、工業区へ運んでもらった。
「なんか、ジークさん可愛いです!」
「うるさい」
目玉の俺の面倒を見るのに慣れたのか、母性本能がくすぐるのかは分からないが、ミラはニコニコしながら両手で俺を胸に抱きかかえていた。
工業区へと着くと、俺は大量の鉱石と人口魔石と水晶を取り出して、巨大装置を生み出した。
地熱エネルギー変換発電装置『あったかいんだからぁ~』と、光エネルギー変換発電装置『まぶしいんです』と、電力タンク制御装置『しびれるんです』だ。
地熱エネルギー変換発電装置『あったかいんだからぁ~』は、地中深くからの高温蒸気を利用してタービンを回すことによって、電気エネルギーを発電させる装置だ。温度や空気圧力を制御することによって、安定した発電を生み出せる。又、発電に使用した蒸気は上水制御管理装置『めぐるんです』からの制御により、冷却されて水となり汚水槽へと供給することも出来る。
光エネルギー変換発電装置『まぶしいんです』は、大量の太陽電池を搭載したメガソーラーにより、光エネルギーを電気エネルギーに変換させるものだ。又、夜間や太陽光を得られない場合は、『まぶしいんです』の制御により、メガソーラーを覆うように壁と天井が展開され、天井には発光石を利用した反射集中照射式の直接照明により、光エネルギーを得ることが出来る。
そして電力タンク制御装置『しびれるんです』は、各発電装置にて得た電気エネルギーをタンクに集め、『空間支配』による絶対固定効果で、普通なら逃げ出す電気エネルギーを長期間保存しておくことができる。そこから村全体へと電力を供給できる仕組みだ。
そして俺は、――事切れた。
「ミラ、台座へ頼む」
「はいはい、よしよ~し」
ミラが目玉の俺を抱きかかえては、まるで赤ん坊をあやすように撫でていた。
――そして次の日。
生活用品の設置作業も終わったようで、俺は必要工具や資材を大量に作って、住宅区の建築物の各部屋ごとなどに上水下水・電力の接続作業を住人達に行わせた。
俺とミラは観光区へ行き、一つある巨大な建物へと向かった。そして俺は『素粒子支配』で微調整を行い、それは完成した。
これこそ日本人の風情、温泉だ。
十階建ての旅館風に仕上げ、一階にフロント・休憩スペース・軽食スペース・遊戯スペース・大浴場を設けた。遊戯スペースについては、娯楽なぞ無いので後々開発するつもりだ。
ここの目玉は大浴場。室内にサウナ・水風呂・低温・中温・高温と別け、香りのいい木材に防腐処理を施し、湯船制御装置『しみるんです』によって完璧な温度調節が行われる。露店風呂も、もちろんある。石造りの風呂に、木製の仕切り柵と、癒し効果のある植物を設置してある。
ただ残念なのは、源泉はなかった為、疲労回復効果や美肌効果など様々な効果のある植物エキスを混合して作った人工温泉なのだ。これは仕方ないので、雰囲気を楽しめるようにした。
二階には、大広間・厨房があり、三階から十階は客室だ。
すると、ミラが首を傾げては口を開いた。
「温泉ってなんですか?」
「広くて大量のお湯に身体ごと浸って、ビバノンするところだ」
「ビ、ビバノン?」
「要するに、裸と裸のお付き合いの場所だ」
「ふぇぇぇぇぇぇ!?」
ミラは真っ赤な顔をしながら、なにやら妄想してるようだった。とんだ変態である。
男共のことを言えないな。
そして俺達は、初の農業区へとやって来た。
俺はある秘蔵の物を取りだした。それは、稲のような物と、とある木だ。
稲のような物は、マインを探しているときに湿地帯にて偶然見つけていた物だった。それをこの前回収してきたのである。
とある木は、ロックマウンテンに行った際に、山を精霊の大陸側に降りるとすぐに森林があったのだが、そこにこの木があったのを知っていた為、少しだけ精霊の大陸へお邪魔してはこの木をちょろめかしてきたのであった。これは、コーヒー豆の木のようなものだった。
まだちゃんとした栽培は落ち着くまで出来ないが、農業区はこの稲とコーヒー豆の栽培を中心にすることにする。後は家畜を育てたり、薬草や果物等だ。
とりあえず区画に合わせて、栽培条件の適した地質に変化させ稲と木を植えておいた。そしてお決まりの発明装置を作り出してはそれを設置した。
栽培制御装置『そだつんです』。状況によって各農作物等を囲むドームを展開させたり、地質から温度・湿度・風・水など様々な環境管理を制御することが出来る装置だ。
埋めた稲と木は、『そだつんです』に任せておこう。
「よし、ミラ戻るぞ」
「はーい!」
――それから一週間後。
全区画内による上下水・電力の接続作業が無事終了した。『千里眼』でリーナと一緒に最終確認をしたが、問題なく全行程が完了したようだった。
住宅区には住民用マンション・ホテル・集会所兼役所があり、そこにミラの家も移しておいた。
俺は村の外へみんなを集めると、一人前に立っては高く声をあげた。。
「諸君! よくやってくれた! 作業は無事終わり、予定通りの村が完成した! ここから新たなスタートが刻まれるのだ!」
「うおおおおお!」
「がんばってよかったー!」
「俺は男だ! 男だぞー!」
「やったわー!」
「ジーク様抱いてー!」
ハピの住民も合わさって、みんな嬉し涙を流しながら抱き合ったりしていた。村長が鼻の下を伸ばしながらマインに抱きついていたが見なかったことにしておこう。
「ジークさん! ジークさんのおかげで村が生まれ変わりました!」
ミラが一生懸命、背伸びをして話しかけてきた。
「当たり前だ。……だが、今回は俺だけじゃなく、みんなの協力の賜物だ」
「えへへー! あ、ジークさん! この村に名前を付けてください!」
「なに? 俺がか?」
「一番頑張ってたのはジークさんだもん!」
村長も含め、みんな微笑みを浮かべてはうんうん頷いている。
「そうだなぁ……臆病犬の村だから、ビビレッジでどうだ?」
まずい。安直過ぎたか?
「「「「「やっほーーーーーーい!」」」」」
みんなは大喜びしながら集まっては、俺を胴上げしてきた。どうやら決まってしまったようだ。
イヤな顔をしてる奴は一人もいないし、まあいいか。
こうして、生まれ変わった村は新たなスタートを切ったのだった。
その村の名前は――臆病村。




