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焦げ目しっかりバスクケーキ【竜】

「……違うわね」

 巨大な錬金釜から錬成された武具を見て、錬金学士ヴァレリーが呟いた。思っていたものとは違ってできてしまった武具は、いったん、保管をしそれからどうするか考えるとし、ヴァレリーは再度錬金釜に意識を集中させた。

 支給された深い緑のクロークにを身に着け、金色の髪は緑色のクロークに良く映え独特の雰囲気を放っている。額から生えた鋭い角にフレームの無い眼鏡をつけ、まるで刃のような鋭い瞳は錬金釜一点に注がれていた。女性でありながらどこか勇ましいのその姿は、ヴァレリーが属している部隊の中にはいないため、とっつきにくいという人もちらほら。けれど、当の本人からすればそれはどうでもいいことだと思っている。なぜなら、そんな感情を持っていたらできることもできなくなるし、最悪嫌なら話しかけなければ済むこと。わたしはわたしができることに最善を尽くすといった気持ちも相まってか、誰に対しても分け隔てなく接するが、それも必要最低限な会話で済ませ、あとはひたすら錬金に注力していたいといのは彼女の気持ちである。このことは、上官にも伝えてあり、許可ももらっている。だから、このことに対して文句があるのなら上官に言ってほしいと、ぶつぶつ言いながらヴァレリーのアトリエを出ていく連中を見ていると思うことが常々。

「……少し休憩しようかしら」

 雑念を振り払おうと、ヴァレリーは錬金窯から少し離れすっかり冷えた紅茶を口に含んだ。無骨な石を並べて建てられた城の一角のアトリエで、ヴァレリーはちびちびと冷めた紅茶を楽しんでいた。

「……今度、新しい茶葉の開拓でもしてみようかしら」

 いつもは錬金で忙しい毎日なのだが、唯一の楽しみは紅茶を飲んでいるときだった。たまの贅沢でお茶菓子やケーキなども揃えるのだが、今はそんな状況ではないため、いつか買いに行ける日を思いながら残り僅かな茶葉で入れた紅茶を少しずつ味わっている。

 そこへ、荒々しい鐘の音と共に兵士たちが緊急を知らせる笛を吹きながら城の中を走り回っていた。それを聞いたヴァレリーは紅茶を飲むのを止め、持ち運びのできる錬金窯を持ち作戦室へと走った。既に作戦室には何人もの兵士が集まり、状況を確認していた。ヴァレリーもその中へ入り情報を吸収しようと目や耳に意識を集中した。

 どうやらゴブリン族が攻めてきたとの報告があがっているが、それと同時に半人半鳥のハーピー族も同時にこちらへ攻めてきているとのことだった。ヴァレリーが所属する軍はそんなに大規模ではないため、戦力を割かざるを得ない。しかし、数が数なだけに遠征に行っている兵士を含めれば対処できなくはないが、今は残されている兵士たちでなんとかするしかなかった。

「……ぐずぐずしていられないわ。わたしも後方ではありますが戦います」

 そういうや否や、ヴァレリーは正門を潜り味方陣営の後ろに錬金窯をどんと置き、意識を集中させた。すると前線で戦っている兵士たちが望んでいた剣や盾などをすぐに錬成し、補給させた。その合間にヴァレリーは小型の大砲を錬成し、地上から攻めてくるゴブリン族や空から攻めてくるハーピー族を狙って攻撃をしかけた。

「まだまだ……こんなもんじゃないわよ」

 ヴァレリーの錬成は留まることなく行われ、剣だけでなく戦槌や重槍、中型のスリングショットなどを錬成し今いる兵士たちと連携し、攻めてくる魔物たちを一掃した。辺りを確認し、新手がいないことを確認すると、ヴァレリーは上官に報告を済ませ何やら一枚の要望書を提出。作戦室を出ていくときのヴァレリーの顔はいつもより綻ばせながら身支度を済ませ、どこかへ出かけて行った。

「上官。ヴァレリーさんは何を書いていかれたのですか?」

「ん? まぁ、ちょっとした買い物をしたいんだとさ」

「へぇ。珍しいですね」

 上官の手に握られている要望書には「休日申請:紅茶の茶葉開拓のため」と書かれていた。

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