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パティシエ シュクレのスイーツコレクション  作者: 冬厳@主夫ロニア
おすすめセット13 暑さに負けるな! クールなスイーツ(夏休みストーリー)
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ラムネとカシスのクリームソーダ【魔】

 青く澄んだ空に今にも蕩けそうな雲があちらこちらに浮かんでおり、耳にはセミの大合唱が響いていた。太陽が照り付ける道の先には陽炎がゆらゆらと踊っており、その中を暑さ対策ばっちりの一人の少年と一匹のファミリアが楽しそうに歩いていた。

 少年の名前はナタリオ。魔術の才能を持つ少年で、とある魔術学園の入試試験の際に得意の召喚魔法を披露した。その時に呼び出したのが、今ナタリオの肩でうきうき気分の蛸の魔物─メーアである。本来はクラーケンを召喚しようと詠唱を始めたのだが、本人も気が付いていないところで詠唱ミスがあり、結果可愛らしい蛸の魔物を召喚した。呼ばれたメーアはというと、辺りを見回した後、ナタリオを主人と認識してから何度もすり寄り甘えてくる仕草をみせた。その姿にナタリオはこれから一緒に頑張るお供として、学園生活を過ごしていた。

 魔術学園にも大型の夏休みというものがあり、クラスメイトたちは少し寂しいけどまた休み明けに会おうと約束し、学園を後にした。だいたいは旅行に出かけたり、魔術の研究をしたりという生徒が多いなか、ナタリオは少しだけ違っていた。それは、異世界への冒険だった。度々耳にする異世界という言葉にわくわくしていたナタリオは、学園内での夏試験の成績が優秀だったら行ってもいいという両親の約束をきちんと守り、異世界の生活へと出発した。そこはナタリオのような魔術を得意とする人ばかりでなく、一般人も獣人もすべてが等しく住んでいるというものだった。大きなトラベルバッグにこれでもかと荷物をぎゅうぎゅうに詰め込み、辿り着いたのは夏の太陽が照らすトーキョーと呼ばれる場所だった。たくさんの人でごった返し、何度もぶつかりながら慣れない乗り物を乗り継ぎ、宿に到着するころにはすっかり日が暮れていた。暑さと熱風で体力をごっそり持っていかれたナタリオは、宿につくや否や椅子に腰かけすっかり温くなった水を一気に煽った。隣ではメーアも心なしかすぼんでみて、別のボトルに用意しておいた水をメーアに与えた。少しずつ水分を取り入れてからは徐々に元気になっていき、すっかり回復したメーアを見たナタリオはふっと頬を緩ませた。

「ナタリオ様。お部屋の準備が整いました。ささ、足元に気を付けて」

 見たことのない服に身を包んだ女性がナタリオを案内する。色とりどりの花のような模様があることに興味を持ったナタリオは、女性にそれは何かと尋ねた。すると女性はにこりと笑いながら「これは着物っていいます。こう見えて結構動きやすいんですよ?」と言い、その場でくるりと回って見せた。ひらりと舞う袖がなんとも美しく見えたナタリオは、ぜひとも母親に買ってあげたいなと思った。

「さ、こちらがナタリオ様とメーア様のお部屋です。ごゆっくりお過ごしください」

 靴を脱ぐところから始まり、部屋へと入ると若草色の香りがふわりと舞い、ナタリオとメーアの鼻を優しくくすぐった。また、自分の世界にはないものが部屋の中に溢れていて、さっきまでのぐったりしていた様子はどこへやら。終始、興奮しっぱなしだった。

「これ、お母様喜びそう。あ、こっちはお父様にも……異世界ってすごいなぁ」

 メーアも主人であるナタリオが喜んでいることが嬉しいのか、小さく手を挙げて喜んでいた。それから時は経ち、入浴と食事を済ませふかふかの寝具の中でぐっすりと眠りに就いた。


 翌朝。心地の良い朝の風にくすぐられ、先に目が覚めたのはナタリオだった。まだ少しだけ眠い目を擦りながらうんと伸びをすると、隣でメーアが気持ちよさそうに寝息を立てていた。メーアを起こさないようにゆっくりと身体を起こし、洗顔を済ませているとメーアもまだ少し寝足りないのか目を擦りながらナタリオの肩に止まった。

「おはよう。今日は『ぷーる』っていうところに行くからね。準備をしっかりして出かけよう」

 ガイドマップに書いてあったこの宿の近くにオープンした「ぷーる」という場所が、今回の冒険の目玉だった。勉学も必要だがこうした思い切ったアクティビティも大事だと思ったナタリオはしっかり計画に組み込んでいた。用意された食事を手早く済ませ、部屋で忘れ物がないかをしっかり確認をし、暑さ対策ばっちり向かった。鍔広の帽子をしっかり被り、冷たいドリンクも忘れず用意。メーアも今から楽しみなのか、ナタリオが用意してくれたメーア専用のサングラスをかけ、今か今かとうきうきした様子が見て取れた。

 陽炎がゆらゆら揺れる中、目的地に到着し受付を済ませるとレンタルの水着を選び更衣室へと向かった。着替えを済ませ、プールに入る前のお店で水の中でも身体が浮く輪っかや、水中でもしっかり見える眼鏡なども追加でレンタルをしてからいざプールとご対面。

「……わぁ……すごい! ね、メーア!」

 プールはすでに沢山の人で賑わっていた。水の力で流れているプールや、大きな滑り台や巨大な波が襲ってくるプールなど種類が豊富だった。今まで深海しか知らなかったメーアもうきうきとわくわくが全面的に出ており、ついナタリオよりも先にプールへと飛び込んでいった。

「メーア……喜んでもらえてよかった」

 実はここに来ることが不安だったナタリオ。自身もそうだが、メーアもどちらかといえば人見知りをするタイプで、ぎこちなかったり不審な動きをしていたらどうしようなどど色々考えていた。しかし、考えても仕方ないと思い切ったのだ。結果は大成功。メーアも初めて見る場所を気に入り、大いにはしゃいでいた。身体が浮かぶ輪っかでのんびりしたり、大きな滑り台でスリルを味わったり、プールサイドのグルメに舌鼓を打ったりと自分たちの世界では味わえない体験を目いっぱい楽しんだ。

 プールの営業時間終了間際。たっぷり遊んだナタリオとメーア。帰る頃にはすっかり辺りは暗くなっており、ぽつぽつと灯る街灯を頼りに宿へと戻った。宿に着いてからすぐに入浴を済ませ、それから豪華な食事を堪能し昨日と同じふかふかの寝具に包まれながら、あっという間に深い眠りへと落ちていった。


 最終日。気持ちよく起床ができたナタリオは、すぐに帰りの支度を済ませた。もちろん、名残惜しさもあるのだがその名残惜しさは次回を楽しむための材料スパイスだとし、最後にトラベルバッグの口をきつく締めた。忘れ物、それと旅の思い出を落とさないようしっかりと。入口で鍵を返却し、挨拶を済ませてからお世話になった宿を出たナタリオとメーア。最高の思い出になったと胸を弾ませ、帰路へと就く。


 その頃、ナタリオの家に丁寧に梱包された箱が届いた。

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