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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました  作者: グミ食べたい


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第95話 ギルド勧誘

 リアルで会ったギルドメンバー達は、俺の想像と違い、三人ともがタイプの違う美女揃いだった。それはそれで驚きなのだが、元サラリーマンの無職、元声優の無職、不登校高校生、売れないバンドのベースと、社会の負け組のようなメンバーが揃っていることに、驚きを超えて、運命のようなものさえ感じてしまう。

 だが、そんな運命を感じたのは俺だけだったのか、オフ会後、ゲームの中で三人と顔を合わせた際には、三人ともいつもと変わらない三人のままだった。互いのリアルを知ったことで、何かが劇的に変わると期待していたわけじゃない。むしろ変わらない三人に安心した。ただ、心のどこかに少しの寂しさを感じてしまった。

 そんなわけで、俺達の中からオフ会の余韻が冷めていくように、アナザーワールド・オンラインの世界でも、アップデートによる興奮も落ち着きをみせ、いつもの日常が戻ってきていた。


 料理スキルのチート騒ぎの際には、俺の店には野次馬めいたプレイヤーが溢れていたが、今やすっかり落ち着いている。

 もっとも、落ち着いたといっても、いつも閑古鳥が鳴いていた以前の店と違い、今の店には途切れることなく客が来てくれている。

 あのインフェルノ討伐動画、あれがいい宣伝になった。インフェルノ初討伐のご利益に授かろうと、プレイヤー達の間では、重要な戦いに挑戦する前には、俺の料理を食べるというのが、俺の知らないところで秘かにブームになっているらしい。実際、俺の料理スキルはこのサーバーでもトップクラスだ。同じ料理なら、俺が作ったもののほうが良い効果がついている可能性は高い。迷信じみた話を信じてない合理的なプレイヤー達も、実利を取って俺の料理を買っていってくれるので、そのあたりのことも変な噂に拍車をかけているのかもしれない。


 そんな中、俺は一人のプレイヤーと最近親しくなっていた。

 まぁ、俺の方から積極的に関わっているわけではなく、向こうの方が店に何度もやってきて、俺によく話しかけてきているだけなのだが……。


「――というわけで、この前はネームドモンスター『白銀の狼』を俺達が討伐したってわけよ!」


 カウンター席に座り、俺に向かって武勇伝を得意げに語る男。その名はマテンロー。彼はギルド「蒼天の牙」のギルドマスターだ。しつこく頼まれて、フレンド登録もしてある。


「はいはい、それはすごいな。……でも、必要な料理を買ったのなら、そろそろ帰ってくれないか?」

「そう寂しいことを言うなよ。ショウだって、俺達のギルドに入れば、ネームドモンスターと戦えるんだぜ?」


 もう何度目かわからないその誘いに、俺はため息をつく。

 すでに別ギルドに所属しているプレイヤーへの勧誘自体は、珍しいものではない。だが、ここまであけすけにギルドマスターを勧誘する奴は珍しい。それは、「お前の作ったギルドを捨てて自分のギルドへ来い」という意味であり、普通なら失礼だと思って口にできないはずだ。

 だが、マテンローにはそういう意識がないらしい。彼の屈託のない笑顔には悪意がなく、むしろ本気で俺のためになると信じているかのようだ。

 彼のこの性格、ちょっと羨ましいよ。


「確かにネームドモンスターとは戦ってみたいとは思うけど、俺には大切なギルドメンバーがいる。俺にとってあいつらは、ネームドモンスターより価値があるんだよ」

「それなら大丈夫だ。何もショウだけに来いって言ってるわけじゃない。ミコト、メイ、クマサン、あの三人もまとめて俺の『蒼天の牙』に来てくれればいい」


 マテンローに悪びれた様子は依然としてない。彼の言っていることは、ギルドを丸ごと吸収することになる。

 状況によっては、喧嘩になってもおかしくないような話だが……はぁ、こいつが言うと、なぜか怒る気にはならないんだよなぁ。


「ショウ、聞いた話じゃ、あの三人、ほかのギルドから色々と誘いを受けているらしいぞ」

「――――!?」


 それまで半ば呆れて聞き流していた俺だったが、その一言で、急に心臓が早鐘を打ち始める。


「ミコトはもともと人気があったが、あの動画でプレイヤースキルが一段と評価されている。ヒーラー不足はどのギルドも一緒だから、レアアイテムの譲渡を条件に勧誘しているギルドまであるらしい。クマサンは今まで目立つ存在じゃなかったが、あの動画でタフさとタンクとしての技術の高さが一気に広まった。タンクなんてギルドにいくらいても困るもんじゃない。今や引く手あまただ。そして、メイは、鍛冶師として前からどのギルドも自分のところで抱えたいと思っていたプレイヤーだ。どこにも属さない孤高のプレイヤーだとみんな半ば諦めていたが、ショウのところのギルドに加入したと知ってからは、自分達のところに来てくれる可能性もあるかもって、また騒ぎ出している。サブマスター待遇で誘っている連中もいるらしいぞ」

「…………」


 冷や汗が止まらない。

 マテンローの話は、正直、俺が恐れていたことだった。あの動画を見たら、あの三人を自分達のギルドに欲しがる人達はきっと出てくる。むしろ、出てこない方がおかしい。

 でも、三人と話していても、ほかのギルドに誘われたなんて話は出てこなかったから、俺はてっきり杞憂だと思っていた。それなのに、まさか俺が知らないだけだったなんて……。


「まぁ、そんな好条件で誘われてるのに、三人とも『もうギルドに所属しているのに』の一点張りで、歯牙にもかけないらしいけどな」

「――――!」


 それを早く言え、このタコ! 心配でこっちは胃が痛くなりそうだったんだぞ!

 それに、クマサン、ミコトさん、メイ、三人とも疑ってごめん!

 俺も、みんなならそう言ってくれるって、心の奥では信じてたんだ!


「実際、俺も三人とも誘ってみたけど、全然相手にされなかったんだよな」

「…………」


 お前も誘ってたのかよ!

 よくそんなことを、ギルドマスターの前に言えたもんだな!

 俺は思わず振り上げそうになった拳を、なんとか押しとどめる。


「けど、ショウも含めて四人揃って俺のギルドに移れば、何の問題もないってことだろ?」

「……大ありだよ」


 俺はまた一つ盛大にため息をついた。


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