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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに! リアルでは女の子達と配信はじめます  作者: グミ食べたい
第1章 料理人アタッカー誕生編

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第7話 ギルド

「昨日の戦いは本当にギリギリだったな……。思い出すと、今でも体が熱くなってくる」


 今日もクマサンは、俺の店のカウンター席に腰掛けたまま、上機嫌に語り続けていた。

 目の前の皿はすでに空。ハンバーグはきれいに平らげられている。それでも帰る気配はない。

 昨日の激闘を、何度も、何度も繰り返している。


「クマサンが最後までターゲットを引きつけてくれたから勝てたんだよ」

「いや、ショウがいてくれたからだ。ショウがあの驚異的なダメージを出し続けてくれなかったらあの勝利はなかった」


 何度目になるだろうか、このやり取り。

 けれど不思議と飽きない。むしろ、同じだけ――いや、それ以上に俺も楽しい。

 あの死線を越えたのは事実だ。

 だからこそ、互いを称え合うこの時間は、どこか誇らしく、くすぐったい。


 ――だが、そんな穏やかな空気を、鋭い声が切り裂いた。


「もう、イヤになります! ギルド勧誘がしつこすぎるんですよ!」


 勢いよく店に入ってきたのは、昨日のもう一人の殊勲者――ミコトさんだった。


 ……しかし、ギルド勧誘だって?


 彼女は確か、ギルドに所属していたはずだ。

 疑問に思い、俺は彼女の名前表示を確認する。

 いつもなら名前の横に表示されている、二本の剣が交差したギルドのシンボル――それが、ない。


「ミコトさん……入っていたギルド、どうしたの?」

「辞めてきました」


 あっさりとした言葉だった。

 けれど、その声音には怒りが滲んでいる。

 彼女はクマサンの隣にどさりと腰を下ろした。


「確かミコトさんは、サブギルドマスターだったよね? 辞めただなんて……何があったの?」

「……覚えてます? 昨日の、あの三人」


 アキラ、ジャッキー、クロ。戦闘中、ヘッドディスプレイのバッテリーを抜いて強制ログアウトした三人のアタッカーだ。

 結果だけ見れば、彼らが抜けたことが俺達の有利に繋がったという面もある。

 だが――仲間を置いて逃げたことも、反則じみた離脱方法も、到底肯定できるものではない。


「ログイン不能のペナルティが明けて、さっきログインしてきたんです。でも……」


 ミコトさんは拳をぎゅっと握りしめた。


「何も反省してないんですよ。『あれは最適解だった』って。しかも、ギルドチャットで話したら、他のメンバーまで『状況的には仕方ないんじゃないか』って……」


 声が震える。

 怒りだけじゃない。

 そこには、裏切られたような痛みが滲んでいた。


「ギルドマスターまで言ったんです。『三人が抜けたおかげで倒せたんだし、アイテムも独占できたんだから良かったじゃないか』って……」


 店内の空気が静まる。


「ショウさんとクマサンが、どれだけ必死に戦ってくれたか、何もわかってないんです。それに……もしあの三人が最後まで残っていたら、天女の羽衣だってロットしていたに決まってます。結局、自分の利益しか考えてないんですよ。同じギルドなのに!」


 彼女は唇を噛み、視線を伏せた。

 その姿に、昨日のことが胸をよぎる。

 勝ち目の見えない戦いで、クマサンもミコトさんも、俺を見捨てずに留まってくれた。損得だけなら、逃げた三人の方が賢かったのかもしれない。

 だが、ミコトさんはきっと、そんな損得で仲間を測れない人だ。だからこそ、それを「得したからいい」と笑える場所が、許せなかったのだろう。

 怒りに見えるその震えの奥にあるのは、たぶん、悔しさだ。


「……だから、辞めました。あんな場所に、もう居たくなかったので」


 絞り出すような、声だった。

 信じたかったのだ。

 同じ旗の下で、命を預け合える仲間だと。


「なるほど……」


 俺は小さく息を吐いた。


「それで勧誘が来るってわけか。ギルドシンボルが消えれば、無所属なのは丸わかりだしな」

「ええ。街を歩くだけで、さっきから何件も」


 うんざりした様子で肩を落とすミコトさんに、クマサンが苦笑を浮かべる。


「ヒーラーがフリーなら、どのギルドだって欲しがるさ。パーティの要だからな」


 その通りだ。

 ヒーラーやタンクは、パーティに欠かせないのに、なり手が少ない。地味で目立たない役回りだから、敬遠されがちなのだ。だから多少腕が足りなくても、「ヒーラー」というだけで声がかかる。

 それなのに――

 ミコトさんは可憐な美少女キャラで、ヒーラーとしての実力も一級品。

 さらに昨日手に入れた「天女の羽衣」が、今も背中でふわりと揺れている。

 その姿は、まさに天女。

 実力も実績も見た目も揃っているとくれば、勧誘が殺到するのも無理はない。


「初めて誘ってくれたギルドだったから、今まで我慢して続けていましたけど……でも、もう軽い気持ちでは入りません。ちゃんと見て、選ばないといけないって思い知りました。私のことも知らないで声をかけてくるところなんて、絶対に入りたくないです」


 そう言ってから、ふと思い出したようにクマサンを見る。


「そういえば、クマサンもずっと未所属ですよね? どうやって勧誘を断ってるんですか?」


 クマサンは、少し間を置いてから答えた。


「……誘われたことない」

「…………」

「…………」


 俺とミコトさんは同時に固まった。

 いや、タンクだぞ?

 昨日の戦いを見れば実力は明らかだ。

 優秀なタンクなんて、普通なら引く手あまたのはず――

 俺は改めて、クマサンを見た。


 ……熊なんだよな。


 猫型や兎型の獣人は人気が高い。

 熊型でも、愛嬌寄りやイケメン寄りに作れば十分魅力的になる。

 だがクマサンは、限りなくリアル寄りのデフォルト熊。

 もふもふというより威圧感。

 可愛いというより野生。

 しかも無口で不愛想。


 ……うん。

 これは確かに、初対面で話しかけるには勇気がいる。

 きっと、見た目と雰囲気が先に壁を作ってしまうのだろう。

 本当は義理堅くて、仲間思いで、誰よりも頼れるタンクなのに。

 それを知っているのが俺達だけなのは――少し、悔しい。


「……まぁ、なんだ。誘われるのが嫌なら、早めにどこか決めるしかないだろうね」


 これ以上クマサンの話題を広げるのは得策ではない。

 俺は自然に話を戻した。


「簡単に言いますけど……どうせ入るなら、信頼できる人がいるギルドに入りたいんです。困っている仲間がいたら、何も言わずに手を差し伸べられるような……そんなギルドに」


 ――理想だな。

 俺も昔は、そういう場所を信じていた。

 だが現実は甘くない。理想は時に、傷つく原因にもなる。

 それでも――ミコトさんの言葉を否定する気にはなれなかった。

 静かな空気の中、クマサンがぽつりと呟く。


「ないなら、自分で作ったらどうだ? ミコトなら顔は広いだろ?」


 ミコトさんは一瞬きょとんとした。


「簡単に言ってくれますね。確かにフレンドは多いですけど、信頼できる人っていうのはどこにでも転がっているわけじゃ――」


 そこで、彼女は言葉を止めた。

 ゆっくりと、俺を見る。

 次に、クマサンを見る。

 そして、ぱっと顔が明るくなった。


「……そうですよ! 自分で作ればいいんですよ!」


 ぱん、と手を打つ。

 ……嫌な予感がする。


「私達三人でギルドを作りましょう!」

「は!?」


 何を言ってるんだこの人は!?

 俺は料理人だぞ?

 いわゆる「ハズレ職業」だぞ?

 タンク、ヒーラー、料理人って、どういう構成だ!?

 ほら、クマサンだって呆れて――


「……いい考えかもしれない」

「おい!?」


 なぜ賛同する!?


「ねえ、どうですか? ショウさんもいいと思いませんか?」


 キラキラした瞳が、ぐっと近づく。

 待ってくれ。距離が近い。まぶしい。

 でも――

 これは、俺にとって初めての「ギルドへの誘い」だった。

 料理人がハズレだと知ったあの日から、そんな話は一生ないと思っていた。

 必要とされる側には、なれないと思っていた。

 正直、くすぐったい。

 そして――少し、いや、かなり嬉しい。

 ミコトさんが作るギルドなら……。


「……俺、料理人だけどいいのか?」

「職業が何かじゃなくて、ショウさんがいいんです」


 その言葉は迷いなく、真っ直ぐだった。

 胸の奥に、じわりと温かいものが広がる。


「……ありがとう」

「どういたしまして! じゃあ、ギルドマスターはショウさんってことで、設立よろしくお願いします!」

「……ん?」


 今、何か聞き捨てならない単語が混ざってなかったか?


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