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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに! リアルでは女の子達と配信はじめます  作者: グミ食べたい
第4章 吟遊詩人クエスト編

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第66話 デートイベント?

 予想順位は9位。エルシーの実力と知名度が確実に上がり、ようやく上位が見えてきた。

 それを確認した俺は、翌日から小音楽劇場でのライブを積極的に打っていった。


 エルシーは小音楽劇場なら一人で埋められるようになり、ライブも黒字になった。

 そのため、練習は音楽学校でのものに切り替えた。

 序盤は雌伏していたが、実力を高めてきたエルシーなら、ここからでも挽回できるはずだ。


 とはいえ、可能ならエルシーの活動をブーストできる何かが欲しいのも確か。

 その「何か」として、俺が期待しているのは14日目のイベントだった。

 前回の「メロディア大音楽劇場使用チケット」以上の何かを得ることができれば、イングリッドにだって追いつけるはずだ。


 そして、その14日目を迎えた。


「さぁ、ルーレット、来やがれ! 今度こそ凄いのを引き当ててやる!」


 俺は拳を握り、ルーレット開始のメッセージを待った。

 だが、いつまで経っても表示されない。

 俺が拳を握ったまま立ち尽くしていると、エルシーが照れた様子を見せながらゆっくりと近づいてきた。


「ショウさん……今日は、ちょっと練習をお休みにして、公園でデートでもしませんか?」

「――――!?」


 突然のデートのお誘いに、頭が真っ白になる。

 どう返していいかわからず、ただ固まってしまう。


 ――くっ!

 恋愛ゲームなら選択肢が出る場面だが、これは違う。

 まさか、インフェルノ戦よりも困難な事態にこんなところで遭遇するとは……。


「私とデートは……いやですか?」


 エルシーが不安げな瞳を上目遣いでこちらへ向けてきた。その視線を受け、断れる男がこの世の中に何人いるのだろうか?


「いや、全然。むしろ、光栄だよ」


 思わず飛び出した俺の言葉に、エルシーは満面の笑みを浮かべ、ガッツポーズを取った。そんな可愛い仕草をされたら、俺はもう完全にノックアウトだ。


「やったぁ! それじゃあ、公園まで行きましょ!」


 彼女はスキップするように軽快な足取りで歩き出した。

 あまりにも楽しそうで、俺も自然と後を追った。

 スキップこそ真似しないが、どこか足取りが軽くなっている自分に気づいてしまう。


 ……もしかして、14日目のイベントって、選んだ女の子とのデートイベントだったりするのだろうか?

 期待していた「何か」とは全く違うものだが……これはこれでアリだと思う。




 公園までやってきた俺達は、二人並んでゆっくりと歩き始めた。

 心地よい風に、木々の葉が静かに揺れている。

 普段なら、クマサンのところのウェンディが子供達に物語を聞かせている公園だが、今日はその姿はなかった。

 クマサンにエルシーとのデート現場を目撃されずに済むと、心の中でほっとする。


「こうやって音楽とは関係なく、ショウさんと公園歩くなんて、初めてですね」


 エルシーが隣でそう言って微笑む。柔らかな笑顔に、俺は一瞬心を奪われる。

 なにこれ? 俺がやっていたのは恋愛シミュレーションだったか?

 何度も見てきたはずの公園が、今はやけに美しく映る。イベントの演出効果か――いや、違う。可愛い女の子と並んで歩くと、こんなにも風景が違って見えるものなのか。


「ベンチにでも座りませんか?」

「そうだね」


 同意しながら内心では焦っている。

 女の子と二人っきりでベンチに座った場合、何を話せばいいのだろうか?

 女の子と二人で話した経験なんてない――と思いかけて、俺はクマサンと二人で隣り合って座って喋ったあの日の夜のことを思い出した。


 そういえば、リアルのクマサンと一緒だった時は、ドギマギはしたが、何を話せばいいかわからないなんてことはなかった。

 考えるまでもなく、言葉が出てきたような気がする……。


 ゲームよりリアルの方がちゃんとできてるってどういうことなんだよ。

 そう考えたら、無性におかしくなって笑いそうになる。


「ショウさん、どうかしたんですか?」

「いや、なんでもない。それより、ベンチだよね」


 そう言って周りを見渡しベンチを探そうとして、俺達の前に人影が立ち塞がっていることに気づく。


「予想順位でこの私に負けてるのに、随分と余裕のようね」


 そこには、眉を吊り上げたキャサリンが、鋭い視線で俺達を睨みつけて立っていた。

 エルシーもその姿を認めたようで、びっくりしたように口を開く。


「キャサリン!? どうしてこんなところに!?」

「どうしてって、あなたを見かけて気になって――じゃなくて、そんなのどうでもいいでしょ! 今のあなたにこんなところで遊んでいる余裕はあるのかしら?」

「遊んでなんていないわ! これはちょっとした息抜きよ! 英気を養うのも大事なことなの!」

「そういうことは、やるべきことをやりきった人が言うことよ! 今のあなたを見て、亡くなったお母様はどう思うのかしら!?」

「――――!? お母さんのことを言うなんて……ひどい!」


 エルシーは息を呑み、怒りに震えた声を絞り出した。だが、キャサリンの言葉が胸に突き刺さったのか、彼女は背を向け、そのまま走り去ってしまった。あまりにも突然の展開に、俺が割り込む余地すらなかった。


 デートイベントだと思っていたのに、エルシーを慰めるイベントだったのか?

 さっきまでの楽しい雰囲気なんてすっかり吹き飛んでしまった。

 俺はエルシーを追いかける前に、恨みがましい目をキャサリンの方に向けた。

 レスバトルに勝利し、さぞ得意げな顔をしているのだろうと思って、彼女の顔を見てみれば――まるで迷子の女の子のように、泣きそうな表情をしていた。


 え? どうして? そんな感情が湧いてくる。

 すぐにエルシーを追うべきだ。

 だが、キャサリンのことも気になる。


 実際には見えないが、俺の前には、


【エルシーを追いかける】

【キャサリンに声をかける】


 そんな二つの選択肢が浮かんでいるような気がした。


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