第55話 パーティ競争型クエスト
メイが口にした「パーティ競争型クエスト」という言葉に、俺は首をかしげた。
パーティとは本来、協力して困難を乗り越えるためのものだ。競争というのはどういうことだろう。
まず思い浮かぶのはPvP――プレイヤー同士の対戦。だが、このアナザーワールド・オンラインにはPK機能はない。……まさか、今回のアップデートで実装されたのか?
「それって、パーティ同士で争うってことですか? 私はそういうのはあんまり好きじゃないんですけど……」
ミコトさんが少し困った顔で口を開いた。どうやらPvPは苦手らしい。
俺も本来は否定派だ。だが今は、最強アタッカーの一角。もし実装されたのなら、試してみたい気持ちもある。
そんな俺達とは対照的に、メイは余裕の顔で首を横に振った。
「違う、違う。パーティ同士で争うわけじゃない。パーティ内で競い合うんだ」
「パーティ内で?」
ミコトさんは首をかしげているが、俺はピンときた。
パーティ同士ではなく、身内だけの対人戦。いきなり全体で解禁すれば荒れるから、まずは身内から、というわけか。
「なるほど、わかったぞ。要は身内でバトルロイヤルってことだろ? いいじゃないか。最強アタッカーの力、思い知らせてやる」
俺は不敵に笑い、周囲を見回す。
クマサンとミコトさんは火力不足。後回しでいい。
問題はアイテム豊富なメイだが、先に潰せば勝ちは揺るがない。
俺は勝利を確信した――が。
「違うぞ、ショウ。身内で殺し合うクエストなんてあるわけないだろ。ネットで『最強』なんて言われて調子に乗ってるな? まったく……昔のショウはもっと謙虚で可愛げがあったのになぁ」
メイは大袈裟に頭を抱え、ため息交じりに言い放つ。
見透かされていたらしい。少し恥ずかしくなった。
「だいたい、プレイヤー同士で戦うことになっても、ショウさんの料理スキルは、人相手には使えないんじゃないですか?」
うっ……。
ミコトさんの指摘に、俺はぐらりとよろけた。
俺の料理スキルは、相手が「素材」であることが前提だ。
つまり、人間相手には使えない。
……人間を材料にするなんて、さすがにごめんだ。
そう思いながら、ふと視線がクマサンへ向く。
……熊型獣人か。ほとんど熊だよな。
……もしかして、効くんじゃないか?
「……ショウ、今、何か失礼なこと考えてなかったか?」
「そ、そんなことないよ!」
クマサンに睨まれ、慌てて否定する。
今日はやけに勘が鋭い。
とくにクマサンの目は怖い。
……逆に俺が料理されそうだ。
しかし、パーティ内のバトルロイヤルじゃないとすると……何をするんだ?
疑問を抱きつつ、俺は再びメイの方へ視線を向けた。
すると、彼女はニヤリと笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。
「パーティ内で競い合うってところまでは正解だが、それは戦闘じゃないんだ。今回は、それぞれのプロデュース力やマネージメント力を競い合うのさ」
「プロデュース力?」
「マネージメント力?」
ミコトさんとクマサンが疑問の言葉を口にする。
俺も、VRゲームでそんな単語を聞くとは思わなかった。
「新しく実装されたクエスト『微笑みのディーヴァ』では、プレイヤーがそれぞれ吟遊詩人の女の子のプロデューサー兼マネージャーとなって、誰が一番の歌姫を育てられるかを競い合うんだよ」
「――――!?」
なんだそのギャルゲーみたいなクエストは。
あの熾烈なインフェルノとの戦いのギャップが凄い。
だけど――
たまにはこういうクエストをみんなで楽しむのもいいかもしれない。
「……なかなか楽しそうじゃないか。一丁、みんなでやってみるとしようか」
「ショウがやるって言うのなら……」
「私もみなさんがやるのなら構いませんよ」
こうして、俺達は吟遊詩人クエストがあるという、音楽の街「メロディア」へと向かった。




