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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!  作者: グミ食べたい
第17章 真インフェルノ編

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325/325

第325話 1/60秒の攻防

 ――来ると思っていた。


 俺だけが最後まで狙われない、なんて都合のいい話があるわけがない。

 インフェルノブレスがランダムの攻撃なら、死は平等に訪れる。

 なにか法則や条件があったとしても、見つけられないのなら、ないのと同じだ。


 真インフェルノから超巨大火球が吐かれるまで、まだ数秒ある。

 そのわずかな時間で、俺は必死に思考を加速させた。


 まず一番大事なのは、この場から離れることだ。

 今はほかの近接アタッカー達と左後ろ脚に固まっている。このままここでインフェルノブレスを食らえば、近接アタッカーは全滅だ。

 アシュラのように死ぬギリギリまでダメージを取り続けることはできない。

 とはいえ、空いている右後ろ脚に向かえば、何発かスキルを入れる時間はある。

 おそらく、それが最善だ。


 だが――それしかできないことが悔しくてたまらない。

 インフェルノブレスが一度のダメージではなく、継続ダメージならば、聖域のときのように「火加減調整」のスキルで耐えられたかもしれない。

 けれど、単発ダメージのブレスが相手ではどうしようもない。


 ――いや、ちょっと待て。


 俺は思い出す。

 紅蓮災雨の豪翼撃を食らったときに、スキルウィンドウの中で「火加減調整」のスキルが一瞬だけ白く輝いたことを。

 そもそも使えないスキルなら、表示が白くなることはありえない。

 たとえ一瞬でも、白くなったのなら――

 使えるタイミングがあるということじゃないのか?


 これはただの思いつきだ。

 使える保証なんてない。

 それでも俺は、左後ろ脚へは向かわず、真インフェルノから離れる方向へ走った。


 みんなは何も言わない。

 きっと巻き込まないために離れたと思っているのだろう。

 だけど、違う。

 俺はこのわずかな時間の中で、考えを切り替えていた。

 死ぬ前に何ができるかではなく、死なないために何ができるかを。


 俺はてっきり「火加減調整」は一度食らってから使用可能になるスキルだと思っていた。

 だが――

 もしそうなら、スキルは光らない。


 ――なら、使えるはずだ。

 当たる瞬間、ほんの刹那だけ。

 スキルを差し込めるタイミングがあるに違いない。


 格闘ゲームのジャストガードを思い出す。

 通常のガードとは違い、相手の攻撃が当たる瞬間に入力することで成立する、特殊なガードだ。

 俺がやろうとしていることは、それに近い。

 格闘ゲームの判定は、1/60秒単位で行われる。

 今回の判定も、同じレベルだ。

 スキルが光るのを見てから反応していては間に合わない。

 見るべきは、スキルウィンドじゃない。

 インフェルノブレスそのものだ。

 それが俺に触れる瞬間に、スキルを使う――


 自分で言っていてなんだが、ほとんど博打だ。

 予想通りに使えたとしても、耐えられる確証はない。

 それでも――

 これしかない。

 生き延びる方法があるとしたら。


 真インフェルノと敢えて距離を取ったのも、奴の吐く超巨大火球を見切る時間を、わずかでも稼ぐためだ。

 俺は誰も巻き込まない場所で立ち止まり、奴の開いた口の前で膨れ上がる巨大な炎の塊を睨みつける。

 あの火球の速度は回避できないほどの高速。

 瞬きしている余裕はない。

 吐かれる瞬間を見逃さない。


 きっとみんなは、これで俺は死ぬと思っているだろう。

 俺の分も戦おうとさえ思ってくれているかもしれない。

 でも、俺は――俺だけは、まだ生きることを諦めちゃいない。


「来やがれ、インフェルノブレス!」


 叫んだ直後、超巨大火球がわずかに揺れ――放たれた。

 ただでさえ巨大な火球が、一瞬で視界を覆うほどの巨大さになり、俺へと迫る。

 だけど、俺は顔を背けるどころか、瞬き一つしない。

 俺に触れる、そのわずかな瞬間。

 時間が、スローモーションのように引き延ばされる。


 ――今だ。


 思考より先に、指が動いた。


【ショウは火加減調整のスキルを使った】

【真インフェルノはショウにインフェルノブレス ダメージ156】


 炎が俺の全身を覆った。

 すべてを焼き尽くす灼熱の炎。


 ――だが、倒れない。


 炎が消えても、俺は立っていた。


 ――生きている。


 俺はまだ、この戦場に立っている。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 思わず雄叫びを上げた。

 心が、身体が――歓喜に震える。


【ミコトはショウにヒール 体力が156回復】


 すかさずミコトさんのヒールが飛んできた。

 そうだ。

 生き延びた余韻に浸っている場合じゃない。

 真インフェルノは健在。

 ただ、命を繋いだだけに過ぎない。

 すぐに真インフェルノの右後ろ脚に向かって走り出す。


『さすがです、ショウさん!』


 感極まったようなミコトさんの声。

 続いてメイの声も飛び込んでくる。


『けど、火加減調整っていつでも使えるスキルだったのか?』

「ブレスが当たる直前、一瞬だけ使えるタイミングがあった。……ぶっつけ本番だったけどな」


 全員に聞こえるように、ユニオンチャットで答えを返した。

 簡単にできることだと思われても困る。

 今のは、ほとんど偶然を掴んだだけだ。


『それにしても、四桁ダメージをたったの150程度に抑えるなんて、すごいですね』


 確かにミコトさんの言う通りだ。

 俺にとってはありがたい限りだが、効果が大きすぎる気がする。


 ……あ。

 戦闘前に食べた料理の効果を思い出す。

 「???」でついた特殊効果「スキル属性効果超アップ」。料理スキルによる攻撃は無属性だから、俺には効果のないスキルだと思っていたが、火加減調整は文字通り火属性スキルだ。その恩恵を受けたに違いない。


「料理の特殊効果でスキルの属性効果が大幅にアップしてたおかげだ」

『……ショウの料理はいつだって奇跡を起こすんだな』


 クマサンの静かだが気持ちのこもった声だった。

 クマサンの口から出ると、言葉の重みが違って聞こえる。


 だったら――

 もう一つ、起こしてやる。

 真インフェルノを倒すっていう、最大の奇跡を。


 俺は右後ろ脚に戻り次第、すぐに料理スキルを叩き込む。


「おかえりなさい、ショウさん!」


 顔だけ向けてシアが微笑んだ。

 シアからもらう二度目の「おかえり」だ。

 今度も、ちゃんと帰ってこられた。


「ただいま!」


 自然と声が弾んだ。


「戦いの中で対抗策を考え、実践してみせる――たいしたものだ」

「私も負けていられません!」


 ソルジャーに続いて、ミカエルの声。そのどれもが力強い。

 ただ殺されるだけだったインフェルノブレスに耐えた――その事実が、俺が思っていた以上に、みんなの背中を押しているのがわかった。


 ――これなら、いける!

 そんな思いが一気に強くなる。


 しかし――


 グワァァオォォォォォ!


 大気を震わす真インフェルノの声が響いた。


【真インフェルノは咆哮を使った】


 ログを見る。

 俺を含め、残ったメンバーの三分の二が動けなくなっていた。

 耳栓をしているミートは無事だが、ほかのヒーラーは全員レジスト失敗。

 タンク二人が耐えているから、即座に崩れることはない。

 だが、もう一人の耳栓役のエイルがいない分、全体の回復は確実に遅れる。

 せっかくこっちが反撃にかかろうとしていたところだったのに、それを見透かしたかのように嫌なタイミングで使ってきやがる。

 思わず歯噛みするが――奴の動きはそれだけではなかった。


 ガァフォォォォォォン!


【真インフェルノは覚醒の咆哮を使った】


 初めて聞く声に初めて見るログ。

 俺達のログは出ないので、咆哮のようにこちらに影響を及ぼす技ではなさそうだ。

 だったら三度目の強化かと思えば、これまでのように真インフェルノを覆う紅い光が強くなった様子はない。

 とはいえ「覚醒の咆哮」だ。

 何かしら奴の力が覚醒したと考えるべきだろうが――


【テイルインフェルノはアセルスに攻撃 ダメージ562】


 予想外のログに一瞬頭が混乱する。

 何が起こった!?

 テイルインフェルノって何だ!?


 咆哮の影響で動けない中、首だけを動かすと、アセルスの後ろに小型のドラゴンがいた。

 スケールこそ何十分の一というサイズだろうが、その姿は真インフェルノとまったく同じ。

 いつの間にこの戦場に近づいてきたんだ?


【テイルインフェルノはアセルスに攻撃 ダメージ557】

【アセルスは死亡した】


 俺達は、呆然と見つめることしかできなかった。

 咆哮で動けないアセルスが、逃げることさえ許されないまま――

 一方的に、殺された。


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