第279話 タッグイベント順位発表
……ちょっと待て。終了だって?
残り時間を確認すると、確かに表示は「0」になっていた。
どうやら熱くなりすぎて、時間の確認がおろそかになっていたらしい。
それはクマサンやシアも同じだったようで、二人ともハトが豆鉄砲を食らったような顔で、ぽかんと立ち尽くしている。
どちらが上か、本気のバトルをしようとしていただけに、拍子抜けもいいところだ。
二人に何か声をかけようとした、その瞬間。
視界がぐにゃりと歪み、次に気づいたときには、二人の姿は消えていた。
俺はタッグイベントのスタート地点に立っている。
隣にはルシフェルがいた。どうやら俺だけに起こったイレギュラーではなく、イベントの仕様らしい。
「……終わったみたいだな」
「そうだな。……ショウの敵討ちができなくて残念だ」
そういえば、最初にやる気を見せていたのはルシフェルのほうだった。
それだけに、あの終わり方は、俺以上に消化不良なのかもしれない。
こいつ、俺のことを快く思っていなかったはずなんだが……。
もしかして、タッグを組んで戦ううちに、多少なりとも友情が芽生えたのだろうか?
考えてみれば、頼りになる男だった。
うちのギルドで純粋なアタッカーは俺一人。並んで前線を張れるアタッカーがいることが、こんなにも心強いとは、正直思っていなかった。
「……ありがとうな」
だからだろう。そんな言葉が、つい口をついて出た。
「――――!? な、何がだ!?」
ルシフェルが顔を真っ赤にして、あからさまに動揺する。
――くっ、俺ごときに礼を言われるのは、プライドが許さないってことか!
その赤い顔は、もしかすると憤慨のせいかもしれない。
余計なことを言わなければよかったな。
「……なんでもないよ」
「……え、いや、その……私も……」
ルシフェルが何か言いかけた、そのとき。
目の前に新たなウィンドウが展開され、「結果発表」の文字が浮かび上がった。
「来た。結果が出るぞ」
「え、あ……」
俺の鋭い一声に、ルシフェルは言葉を飲み込む。
何か言われる前に、別のことへ注意を向けさせる――我ながら、なかなかの高等テクニックだ。
もっとも、結果発表に集中したいのも本音だった。
俺は余計なことを考えるのをやめ、次のメッセージを静かに待つ。
【第12位から順に発表します。なお、ポイント数が同じ場合は、撃墜数が多いタッグを上位とします。ポイント数・撃墜数ともに同じ場合は、スター所持数が多いタッグを上位とします】
一斉に順位が出るのではなく、下位から順に発表される方式らしい。
このやり方、最下位は相当恥ずかしい。
【第12位 アンディ&ミート 撃墜数2 被撃墜数6 スター0 合計-4ポイント】
アンディは「ヘルアンドヘブン」のギルドメンバーで、ホビットの魔導士だ。
立ち回りのうまい魔導士だと思っていたが、それでも最下位。今回の参加メンバーのレベルの高さが、否応なく伝わってくる。
【第11位 ブロッケン&リュッカ 撃墜数2 被撃墜数5 スター0 合計-3ポイント】
【第10位 ウリエル&マテンロー 撃墜数2 被撃墜数4 スター0 合計-2ポイント】
今回戦ったマテンローは、なかなか手強かった。
だが、結果は10位か。
もし、あの場で俺達と遭遇していなければ――
被撃墜数は減り、スターも保持したままだったはずだ。そうなれば、順位はもっと上だっただろう。
……運がなかったな、マテンローよ。
【第9位 バッファロー&ガブリエル 撃墜数3 被撃墜数4 スター0 合計-1ポイント】
【第8位 アシュラ&ベルゼバブ 撃墜数3 被撃墜数5 スター1 合計-1ポイント】
【第7位 ロビン&ラファエル 撃墜数4 被撃墜数5 スター1 合計0ポイント】
【第6位 アセルス&ザ・ニンジャ 撃墜数4 被撃墜数3 スター1 合計2ポイント】
ここまで、今回遭遇しなかったタッグの順位が淡々と発表されていく。
だが、その撃墜数や被撃墜数を眺めていると、俺の知らない場所でも、間違いなく激戦が繰り広げられていたことが伝わってくる。
そして、6位でようやく合計2ポイント。
合計8ポイントを獲得している俺達の順位への期待は、自然と高まっていった。
【第5位 ミコト&フィジェット 撃墜数4 被撃墜数2 スター1 合計3ポイント】
ここでミコトさんとねーさんの名前が出てきた。
被撃墜数が2ということは、俺達に倒された分だけだ。
つまり、それ以外では一度もやられていない。
それでいて撃墜数は4。俺以外にも三人倒している計算になる。
……神降ろし状態のミコトさん、相当暴れ回ったらしい。
【第4位 メイ&ソルジャー 撃墜数5 被撃墜数2 スター0 合計3ポイント】
メイ達も、ミコトさん達と同じ3ポイントか。
こちらも被撃墜数は2。つまり、俺達以外にはやられていない。
二組とも、俺達との戦闘がなければ、被撃墜数は減り、スターも増え、優勝争いに加わっていたに違いない。
彼女達との二戦が、どれほど重要だったかが、こうして結果に表れている。
……それにしても。
二組とも「ほかに撃墜されていない」ということは、俺を倒したあと、同じ場所に居合わせた三組は、なぜか戦わずに終わったらしい。
クマサン&シアともすぐに遭遇したし、正直おかしいとは思っていた。
一体、あの三組の間でどんなやり取りがあって、互いに刃を交えずに別れることになったのか――俺には皆目、見当がつかない。
【第3位 ミネコ&ミカエル 撃墜数2 被撃墜数2 スター4 合計4ポイント】
そんなことを考えているうちにも、順位発表は容赦なく進み、ミネコさん達の名前が表示された。
内容を見る限り、無理に戦闘をせず、スター集めに徹したようにも見える。
……さすがミネコさん。堅実かつ的確な立ち回りだ。
――さて、これで残るは二チーム。
俺とルシフェルのタッグ。
そして、クマサンとシアのタッグ。
こうなる気はしていたが……やはり、か。
次の2位の発表で、同時に1位も確定する。
俺は無意識に息を詰め、次のメッセージを待った。
【第2位 クマサン&シア 撃墜数4 被撃墜数0 スター4 合計8ポイント】
被撃墜数0。
これは素直に感心するしかない。
体力に比べて攻撃力が高いこのシステムでは、犠牲を出さずに敵を倒すのは、決して簡単じゃない。
それを最後までやり切ったという事実に、思わず舌を巻く。
だが、クマサン達が2位ということは、当然――
【第1位 ショウ&ルシフェル 撃墜数6 被撃墜数3 スター5 合計8ポイント】
よっしゃああああっ!!
きた――っ!!
三大HNMギルドのメンバーが顔を揃えた、このタッグイベント。
その頂点に、俺の名前が表示されている。
この結果を、ほかの参加者全員が、今まさに同じ画面で見ているはずだ。
そう思った瞬間、胸の奥が一気に熱くなった。




