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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!  作者: グミ食べたい
第15章 タッグイベント編

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第266話 最初の遭遇

 俺は周囲を警戒しながら、北の街ベルンの路地を進んでいく。

 店の扉は閉ざされ、NPCの姿もない。見慣れたはずの街並みが、まるで見知らぬ場所に変わったような違和感を覚える。

 後ろを振り返っても、ルシフェルの姿はない。おそらく別方向に向かったのだろう。


「さすがに一対二でまともに戦うのは不利だよな。不意打ちを仕掛けるか、同じように一人でいるプレイヤーを狙うか……」


 火力に自信はあるが、さすがに俺もバカじゃない。ほかのプレイヤーを見つけても、二人組なら正面から戦うような真似をするつもりはない。

 特に「狂気の仮面」装備中は、自己回復さえできない。

 だからこそ――確実に倒せる相手を、確実に仕留めていく。


「――むっ、あれは……!」


 警戒しながら歩いていたとき、前方の十字路に星型のブローチのような光る物体を見つけた。

 きっとあれがポイントアイテムのスターに違いない。


「これは幸先がいい!」


 敵を倒しても1ポイントなら、スターも1ポイント。拾うだけでノーリスクで得点できるなら、逃すわけにはいかない。

 俺は駆け出そうと足に力を込め――その瞬間、十字路の別の道から人影が現れ、素早くスターを拾い上げた。

 それは見覚えのある人物だった。


「ねーさん!」


 俺の声に反応して、スターを拾った姿勢のまま、フィジェット(ねーさん)がこちらに顔を向け、驚いた表情を浮かべる。

 先に拾えなかったのは残念だが、ねーさんを倒しさえすればスターは俺のものになる。このまま黙って見過ごすわけにはいかない。


「ねーさん、このスターは俺のものだ!」


 ここでねーさんを倒せば、撃破とスターで2ポイント。

 俺は迷いなく地を蹴った。

 彼女は「最強タンク論争」でも真っ先に名前が挙がる、サーバー屈指のタンクだが、俺の「料理スキル」は防御力を無視する攻撃。

 ねーさんのような防御型のタンクにとっては、まさに天敵だ。

 それを理解しているのか、ねーさんは拾ったスターを握ったまま、来た道を引き返すように走り出した。


「待て、ねーさん!」


 いつでも「自分こそ最強」とでも言いたげな、あのねーさんを追いかける――その状況が楽しくて、思わず口元が緩む。

 十字路を曲がった先で、再びねーさんの背中を捉えた。

 ミコトさんの姿は見えない。どうやら二人も、俺たちと同じく別行動を取っているようだ。

 タンクとヒーラー。どちらも生存能力が高い。

 なら、ペアで固まらず、分散してスターを拾う――

 そういう作戦なのだろう。


 ――だが、運が悪かったな。

 出会ったのが、よりによって「最強アタッカー」の俺だったなんて。


「逃げても無駄だ! 諦めるんだ!」


 叫んでも、ねーさんの走りは止まらない。

 このイベントでは、戦闘状態に入ると逃げる側に移動速度低下のペナルティがかかる。

 だから一度戦闘に持ち込めば、逃げ切るのは不可能。

 だが、今はまだ距離がある――交戦状態に入れない。

 もし発見した時にもう少し近ければ、開幕から一気に仕留められたのに。


 今回のイベントの制限時間は三十分。

 このまま鬼ごっこを続けるのは無駄だが、獲物を見逃すのも惜しい。

 そう思っていた、その瞬間――

 ねーさんが曲がり角の先へ消えた。


 ――しめた。


 あの先は行き止まりだ。

 前にクリアしたイベントのキーキャラがいた場所で、よく覚えている。

 ねーさんはそのクエストをやっていないのか。あるいは、HNMのことばかり追いかけていて忘れているのか。どちらにしろ、俺にとっては大チャンスだった。

 案の定、ねーさんは行き止まりの壁の前で立ち止まる。


「残念だけど、鬼ごっこはここまでだよ」


 戦闘可能距離まで近づいたところで、戦闘態勢に入り足を緩める。

 一度戦闘状態に入れば、双方が解除するか、一定距離以上離れるまで状態は継続する。

 逃げる側にはペナルティがつく以上、もう逃げ道はない。焦る必要などなかった。

 対人で料理スキルを使うため「狂気の仮面」を装備すると、包丁を片手に、一歩ずつ距離を詰めていく。

 あのねーさんを追い詰めている。

 その事実に、なんとも言えない高揚感がこみ上げてきた。

 ホラーゲームでは狩られる側の気持ちばかり味わってきたが――なるほど、狩る側はこういう気分なのか。

 ……絶対こっちのほうが楽しい。


「ねーさんに恨みはないが、俺のために死んでもらうよ」


 狩られる側となったねーさんをさらに追い詰めるつもりで、そんなセリフまで吐いてみせる。

 だが――そこで、違和感が胸に刺さる。

 追い詰められたはずのねーさん。

 その顔に、焦りの色がまったくない。

 ……観念した? いや、ねーさんに限ってそれはない。

 そう思った瞬間――


【フィジェットはショウに挑発】


 ねーさんのスキルが発動した。

 俺はターゲットをねーさん以外に切り替えられなくなってしまった。

 だが、一対一の状況では完全に無意味。

 他に狙う相手なんていないのだから。


 ――いや、待て。

 一対一じゃない……そんな可能性が脳裏をかすめる。

 嫌な予感に背筋が冷える。俺は反射的に振り向いた。


 そこには――ミコトさんの姿があった。

 きっとどこかに潜んでいたのだろう。

 俺はねーさんを追いかけるのに夢中で、まるで気づかなかった。

 こうして俺は、ねーさんとミコトさんに挟まれる形になっていた。


 ――だが、焦る必要はない。


 二人はタンクとヒーラー。

 火力面では圧倒的に俺が上だ。

 普通のアタッカーなら、ねーさんの鉄壁の防御力に阻まれ、耐久面で勝る二人にじわじわ押し切られるかもしれない。

 だが――俺のスキルの前では、ねーさんの防御力なんて存在しないも同然だ。

 問題があるとすれば、二人とも回復スキルを使えること。

 しかし、このゲームはもともと「プレイヤーより桁違いに体力の多いモンスター」と戦う仕様。プレイヤーへの回復よりも敵へのダメージの方が、圧倒的に大きく設定されている。

 対人イベントということで多少の補正はつくかもしれないが、俺の火力なら、二人分の回復量をまとめて上回れるはずだ。


「うまく俺を誘い込んだつもりかもしれないけど――相手が悪かったな!」


 俺はねーさんとの距離を一気に詰め、包丁を構え、料理スキルの軌跡を描きながら斬りかかった。


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