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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!  作者: グミ食べたい
第15章 タッグイベント編

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第265話 最強論争

 ネットの世界では、どのサーバーにも「最強キャラ論争」というものがある。

 とはいえ、役割の違う者同士を比べて「誰が最強だ」なんて語るのは不毛だ。だから自然と、「最強のタンクは誰か」「最強のアタッカーは誰か」といった、役割ごとの最強論争になる。


 たとえば、このサーバーの「最強タンク論争」では、「ヘルアンドヘブン」のフィジェット(ねーさん)、「片翼の天使」のガブリエル、「異世界血盟軍」のザ・ニンジャ――この三人の名前が常連だ。

 それぞれのファンが「〇〇こそ最強タンクだ!」なんて言い合って盛り上がっている。

 だが、俺としては――クマサンこそ真の最強タンクだと思っている。

 ……とはいえ、HNM相手に最前線で戦っている連中に比べれば、実績も知名度も足りないのが現実。悔しいけど、ネットの議論にクマサンの名前が出てくることはほとんどない。


 ヒーラーにも似たような論争がある。

 ただ、回復役という立場上、「最強」という言葉はあまり似合わない。

 だからこの場合は、「一緒に組みたいヒーラーは誰か」という形で語られる。

 ここで名前が挙がるのは、「ヘルアンドヘブン」のミネコさん、「片翼の天使」のラファエル、そしてもう一人――我らが「三つ星食堂」のミコトさんだ。

 たった四人の小規模ギルド所属なのに、ここで名前が出てくるのは正直すごい。

 ヒーラーの良し悪しは、数字やログでは計りづらい。だから、もしかすると容姿や人柄が多少影響しているのかもしれない。

 ――けど、一度でもミコトさんと組んだことがある奴なら分かる。

 あの安定感と、回復効率の高さを。

 一緒に戦えば、誰もが「もう一度組みたい」と思うはずだ。

 その「信頼感」こそが、彼女の真の評価につながっているんだと思う。


 そして――最も熱く語られるのが、「最強アタッカー論争」だ。

 アタッカーは派手で、火力が数字として目に見える。プレイヤー人口も多い。そりゃ盛り上がらないわけがない。


 このサーバーで常に名前が挙がるのは、三人。

 一人目は「異世界血盟軍」のギルマス――ソルジャー。

 職業が狂戦士である彼は、防御と体力を犠牲にして攻撃力を極限まで引き上げる超攻撃型のスキルを多数持ち、さらに数々のHNMから入手した強力な装備を身につけている。瞬間最大火力に関して言えば、間違いなくサーバーNo.1だろう。

 ネット上では、戦場の災厄(カタストロフ)なんて二つ名で呼ばれている。

 モンスターにとって彼と遭遇することが「災厄」なのはもちろん、同じ狩場にいたプレイヤーからすれば――「ソルジャーが来たら獲物が狩り尽くされる」という意味でも「災厄」だ。まさに二重の意味での大惨事だな。


 二人目は――今、俺の目の前にいる男。「片翼の天使」のギルマス、ルシフェル。サーバー最強の精霊使いだ。

 ソルジャーが近距離の物理特化型なら、ルシフェルは遠距離の魔法特化型。エルフという種族との相性、HNMドロップの高性能装備、そのどれもが完璧に噛み合っている。

 だが、こいつが「最強」と言われる理由は火力だけじゃない。

 敵との距離を保ち、戦場全体を見渡しながらスキルを選び、味方へのバフやデバフを的確に指示する――まさに俯瞰する指揮官。

 そうした戦術眼を含めて、彼は最強アタッカーの一角と呼ばれている……らしい。

 俺は一度も組んだことがないから、噂の域を出ないけどな。

 ちなみに、誰がつけたのか「堕天の貴公子」なんて二つ名でも呼ばれているらしい。

 ――どこが貴公子だよ。どう見ても性格は天使より悪魔寄りだろ。


 ソルジャーとルシフェル――どちらもサーバーを代表するHNMギルドのトップだ。そんな二人の名が挙がるのは当然のこと。

 けれど、その「最強アタッカー三人衆」の最後の一人が――実は、俺だったりする。


 料理スキルが攻撃に転用できると話題になった当初は、俺の名前も見かけた。

 だが「食材になるモンスター限定」という制約が知られると、話題は一気に下火になった。

 ――どんなに強くても、相手を選ぶアタッカーなんて論外、ってわけだ。

 それでも、「狂気の仮面」を手に入れて以降、状況は一変した。

 あの制約が消え、俺はどんな相手にも料理スキルを使えるようになった。

 高レベル狩場に出入りするようになってからは、再び俺の名前が最強論争に挙がるようになった。

 六人パーティが苦戦している横で、俺たち四人が同じ敵を先に倒す――そんな光景を何度も見せつければ、そりゃ噂にもなる。


 瞬間火力ではソルジャーに劣り、戦場対応力ではルシフェルに及ばない。

 けれど――敵の防御を無視した高ダメージと、燃費の良い料理スキルによる継戦能力。

 その二つを兼ね備えた結果、俺は“敵を選ばず戦い続けられるアタッカー”として最強の一角に数えられるようになった。


 ……ただ、納得いかないのが俺の二つ名だ。

 ソルジャーが「戦場の災厄」、ルシフェルが「堕天の貴公子」。

 それに対して俺は――「キッチンバーサーカー」。

 どう考えても悪意しか感じない。なぜもっとイカした二つ名をつけてくれなかったんだ……。


 ――まあ、それはさておき。

 俺とルシフェル、どちらも「最強アタッカー」と呼ばれる立場にいる。

 そんな中での、あいつのあの言葉。

 つまり、最強アタッカー候補から同じ最強アタッカー候補への――挑戦状ってわけだ。

 まるで、「俺なら一人でもやれるが、お前はそうではないのか?」と言われたのと同じ。

 この状況で引き下がれるはずがない。

 むしろ――どちらが真の最強アタッカーか、証明してやる絶好の機会だ。


「……いいだろう。だったら、別行動だ。どっちがより多くの敵を倒せるか――勝負だ」

「それでこそ、『1stドラゴンスレイヤー』だ。お前の力、見せてもらおう」


 こうして俺たちの戦略が決まった。

 それぞれが自由に動き、敵を倒しまくる――単純明快、知性の欠片もない作戦だ。

 だが、互いのフォローを考えずに済むというのは、意外と悪くない。

 何しろ、三人の最強アタッカー候補のうち二人が同じチームなんだ。

 ……ある意味、これこそ最適解かもしれない。


 気づけば、別ウィンドウに全タッグの組み合わせが表示されていた。


【ショウ&ルシフェル】

【クマサン&シア】

【ミコト&フィジェット】

【メイ&ソルジャー】

【ミネコ&ミカエル】

【アセルス&ザ・ニンジャ】

【アンディ&ミート】

【ロビン&ラファエル】

【バッファロー&ガブリエル】

【アシュラ&ベルゼバブ】

【ブロッケン&リュッカ】

【ウリエル&マテンロー】


 見事に別ギルド同士の組み合わせだ。

 これなら、ほかのタッグも意思統一に苦労することだろう。俺達のように、「各自自由行動」を選ぶところも、ほかに出てくるかもしれない。


 ――クマサンはシアとか。これはいい組み合わせだな。

 タンクとアタッカーという鉄板コンビだし、キング・ダモクレス戦や人狼の館でも共闘経験がある。お互いの動きを理解しているぶん、連携も取りやすい。

 クマサンのタンク能力は俺が誰よりも知っている。シアはシアで、レア武器「ダモクレスの剣」を手に入れ、最強アタッカー論争でも、俺達三人に次ぐアタッカーとして名前が挙がるほどだ。間違いなく手強いタッグになるだろう。


 ――メイは、最強アタッカー候補のもう一人ソルジャーが相手か。

 きっとメイがサブ職業を変えてヒーラーとして立ち回ることになるだろう。本職のヒーラーに回復能力では及ばずとも、メイならきっとうまく立ち回る。このタッグも注意すべき相手だ。


 ――ミコトさんは……正直、厳しいかもしれない。

 決してフィジェット(ねーさん)が弱いわけじゃない。むしろ、タンクとして最強の一角。

 だが、ヒーラーとタンクという組み合わせは、あまりにも攻め手がない。

 生存能力だけなら十二組中トップクラスだろうが、敵を倒す火力に欠ける。

 スターを拾ってポイントを稼ぐ以外に手がないというのは、かなり苦しい展開になりそうだ。


 仲間たちの組み合わせを確認しているうちに、開始時間が迫ってきた。

 スタートまで――あと十秒。

 カウントダウンが始まる。


 ……3、2、1――


 開始の鐘が街中に鳴り響いた。


「さあ――どっちが多く倒せるか、勝負だ、ルシフェル!」


 俺は包丁を片手に、奴より一歩先に飛び出した。


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