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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに! リアルでは女の子達と配信はじめます  作者: グミ食べたい
第2章 鍛冶師クエスト編

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第25話 白き守護者の記憶

 俺達は悟った。

 このままでは、何度戦ってもヌシには勝てない。

 だから――一から調べ直すことにした。

 手分けして、山と村を当たり直す。

 山の探索はみんなに任せ、俺は一人で再び村長の元へと足を運んだ。

 もしかしたら、何か変化があるかもしれない。

 だが、村長から聞けた話は、前回メイ達と一緒に聞いた内容と、何も変わらなかった。

 一度戦えば何か変わるかと思ったが、そんな甘い話ではなかった。

 メイが何度も戦っている以上、変化があるならとっくに起きているはずだ。

 それでも、今は一つずつ当たるしかない。


「村長、どこかに火を灯す祭壇がある、という話を聞いたことはありませんか? この村だけじゃなく、山やほかの場所でもいいのですが」

「いや、そんな話は聞いたことがありません」

「では、誰か知ってそうな人に心当たりはありませんか?」

「さぁ……。長老なら何か知っているかもしれませんが……」


 またあの長老か……。

 会話がかみ合わなかった前回を思い出し、俺は頭を抱える。

 とはいえ、無駄だと思えることでも今はとにかく当たっていくしかない。

 俺は重い足で長老の元へと向かった。


「おお、息子よ、珍しく村に帰ってきたのか」

「…………」


 長老の家に足を踏み入れると、長老はいきなりボケをかましてきた。

 悲しいのは、これがギャグとしてのボケではなく、本気のボケだということだ。


「すみません、長老さん。ヌシのことを何か知っていればと思って伺ったのですが、やはり何もご存じないですよね?」


 俺は長老に近づいていく。

 正直、何かヒントがもらえるとはほとんど期待していなかった。一から調べ直すと決めたので、何もないことを確認する程度のつもりだった。


「あんた、その体についているのは……」


 しかし、予想に反して、長老がこれまでと違う反応を示し、そばに寄った俺へとその手を伸ばしてきた。


 あれ? なんだこの反応は?

 前はこんな反応をしなかったぞ?

 だいたい、俺の体に何がついているというんだ?


 戸惑う俺をよそに、長老は俺の体から何かをつまみ取ると、それをじっと見つめた。その瞳には、かすかな驚きと懐かしさが混じり合っているように見えた。


 俺も長老の指先を凝視する。


 長老の指先に挟まれていたのは白い毛だった。

 俺のものじゃない。

 ――だが、この白は見覚えがある。

 いや、忘れるはずがない。


「――――! 長老、その毛は――」


 俺は思い出した。

 忘れようがない真っ白の毛を持つ存在を。

 そして、そいつが何度も俺達にその白い毛を飛ばしてきたことを。


「……これはヌシの毛じゃな」


 そう。

 長老の言葉通り、それはヌシの毛に違いなかった。


「ヌシのことを知っているんですか?」

「……ああ。ヌシは近くの山に棲む神聖な幻獣じゃ。この村ができて間もない頃、村を外敵から守ってくれた村の守り神のような存在だと、わしが子供の頃に、村の長老連中から聞かされた」


 長老の声は、先ほどまでのものとは明らかに違っていた。

 その変化にも驚いたが、それ以上に、俺は長老の言葉に衝撃を受けていた。

 敵だと思っていたヌシが、実は守り神だったなんて……。その話が事実なら、俺達の考え方が百八十度ひっくり返ることになる。


「長老はヌシを見たことがあるんですか?」

「ああ。子供の頃、一人で山に入ったとき、獣に襲われそうになったわしを、ヌシが助けてくれたんじゃ。獣を追い払ったあと、ヌシは静かに去って行ったが、そのときにこれと同じ白くて綺麗な毛が残っていた。ああぁ、あの時のことがはっきりと思い出せる……」


 遠い昔に思いを馳せる長老の瞳には、さっきまでとは明らかに違う、知性の光が宿っていた。


 ――ヌシの毛が、記憶を呼び戻したのか。


 しかし、俺には疑問が残る。

 なぜその守り神であるヌシがこの村の家畜を襲うのか、そこがわからなかった。


「長老、そのヌシがこの村の家畜を襲っています。何か心当たりはありませんか?」

「ヌシがそのようなことを? そんな馬鹿な……。この村では昔から、ヌシの棲む洞穴の前に『ヒ』を建て、感謝の意を示してきたというのに……」


 ん? ヒを建てた? キャンプファイアでもしていたのか?

 俺は少し混乱してしまう。


「待ってください、長老! その『ヒ』とは一体どのようなものですか?」

「ヌシの形を模した記念の『ヒ』じゃ。洞穴の前に昔から建っておる。わしが子供の頃には少々朽ち始めていたが……。そういえば、わしも年を取って足を悪くしてからは、あの『ヒ』を見に行っておらんなぁ……」


 長老は昔を懐かしむように、遠い目をして言った。

 俺はそんな長老を見ながら、彼の言葉を頭の中で整理する。


 記念の「ヒ」……。

 ――いや、待て。


 それって……「碑」じゃないのか?


 火じゃない。

 碑。


 ……そういうことか!


 そういえば――。

 ヌシの洞穴の前に、崩れた岩の残骸があった。

 あれはただの岩じゃない。

 あのとき妙に気になった違和感の正体は、これだったんだ。

 あれこそが、ヌシを模した記念碑の跡だったんだ。


 長老が子供の頃にすでに朽ち始めていたのなら、最近になって完全に崩れてしまったとしても不思議ではない。


 そうだとすれば、ヌシが「ヒ ヲ ササゲヨ」と言っていたのは――

 壊れた記念碑の代わりに、新しい碑を作って捧げろ――そういう意味だったのか。


 その瞬間、すべてが一つに繋がった。

 ヌシは、俺達がどれだけ近づいても自分から攻撃してくることはなかった。

 ただ、「ヒ ヲ ササゲヨ」と訴えていただけだ。

 守る代わりに、感謝を捧げる。

 それが、この村との約束だった。


 だが、その約束は、いつしか忘れられた。

 碑の意味も、ヌシの存在も。

 だから――ヌシは警告していたのかもしれない。

 感謝を忘れた村人に。


 だとすると、俺達は何も知らずにヌシに襲いかかっていたことになる。

 一方的に。

 守り神を。

 ゲームのはずなのに、背中に冷たいものが走る。


 いや、ちょっと待てよ。

 ヌシの毛を見て長老の記憶が戻ったということは、一度はヌシと戦闘をして、あの毛針を受ける必要があったということだ。

 自己嫌悪に陥りそうになるが、ゲーム的にはあの戦闘は必要なことだったと自分に言い聞かせた。


 ともかく、このことを仲間に伝えなければならない。

 ――ヌシが求めていた、本当の答えを。


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― 新着の感想 ―
鍛冶師関連で「ヒ」=「火」と思い込んでいましたが、なるほど「碑」だったんですね。
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