おまけ ~皆の知らないお話~
アンニーナのお父さん ウイリアム・プロヴェンツァーレの視点です。
王の名前
・ウイリアム・プロヴェンツァーレ
以下アンニーナが訪問した順
・エーリオ・ウェール・オリエンス
・ラウル・アエスタース・メリーディエース
・セスト・アウトゥムヌス・オッキデンス
・ジラルド・ヒエムス・セプテントリオ
その魔女はとても美しいと言われていた。
出会う機会がある王族は皆恋に落ちるだろう。
王族の中では〝初恋泥棒〟と呼ばれていたりする。
ただしセプテントリオの王族はほとんど見られないことでも有名だった。
あそこの王族はこの人と決めたら国のことなんてお構いなしに愛を囁くからね。
本能的に好きになってはいけないって考えるんだろうな。
私は普段ならもう少し軽装をしている時間なのだがまだ正装を脱ぐことができなかった。
娘のアンニーナと夫となるエーベハルト君は仲良く穏やかに過ごしている。
まあ、エーヴィーから返却された作業を引き継ぎながら進めているから大変みたいだけど。
この国は次代の王になっても安定しているだろう。
魔女・ダーラに声をかけるために今滞在している客室に向かった。
ノックをする前に扉が開かれたのでそのままバルコニーまで進んだ。
バルコニーに備え付けられているテーブルセットの椅子には座らず、手すりの所に座り方足だけを投げ出していた。
「魔女・ダーラ、お風邪をひきますよ?」
「今日は良い風が吹いている。月も綺麗だ。こんな夜に月光を浴びずにどうする」
いつものような老婆の声ではなく本来の姿になったダーラは妖艶に微笑みながらこちらを見た。
ウイリアムは相変わらず美しいなと魔女・ダーラを眺めていた。
「そんなにあたしを眺めても何もでないよ」
フフフと笑いながらこちらへ向かってきた。
「さあ、移動しようか」
「はい、そろそろ時間ですしね」
私と、ダーラは人気のいない夜の廊下を歩いていた。
この廊下はダーラが滞在する部屋からしか行くことができない。
そしてこの廊下は王になる者しか使うことができない。
「ああ、そうだ。ウイリアムに話さなければいけない事があったんだよ。次のダーラはエーヴィーに決めたから。もう、例のものも刻んである」
「そうですか。弟夫妻には泣かれましたよ。私としてはアンニーナでも仕方ないと考えていました。」
「そうだねぇ~。魔力量を考えるとアンニーナなんだけど、あのセプテントリオの王子が着いてしまったからね。それに、魔力量はアンニーナの方が適正があったけど、魔術に興味をもっていたのはエーヴィーだったからまあ、本人も覚悟しているみたいだしいいんじゃないか」
「そうですね。エーヴィーの方が魔女になる運命だったのかもしれませんね」
「・・・よい魔女になるだろうね」
「エーヴィーが聞いたら泣いて喜ぶでしょうね。」
「・・・言うんじゃないよ。それと、エーヴィーの魔法陣の事もアンニーナに言うんじゃないよ」
「はい、かしこまりました。」
私はダーラに頭を下げると「そんなのはいいから」と言われた。
しばらくすると、質素なドアに到着した。
万が一誰かがその部屋に入っても王族が緊急時に使用する部屋かなと思うぐらいの広さだ。
「じゃあ、入るよ」
「はい」
ダーラが杖でそのドアをノックすると、質素なドアが一瞬で星空を散りばめたような不思議な模様の扉に変身した。
ダーラはそのドアを躊躇せずに開けて中に入った。私も後を追うように部屋に入りドアを閉めると、そのドアが消え壁の一部になった。
この部屋を使用している時に部外者が入れないようにする仕組みだ。
部屋の中にはテーブルと玉座ほどではないが豪華な椅子が2セットあった。
一つは王専用の椅子、もう一つは魔女・ダーラ専用の椅子だ。
テーブルの真ん中には大きな水晶のような球体が埋め込まれていた。
中を覗くと夜の中で星が流れているようなギミックが見える。
初めて見た時はずっと眺めてしまった。その姿をみたダーラが「王でも童心に戻るものかのぉ?」とクスクス笑っていたので少し恥ずかしかった。
「ウイリアム、もうそれを見るのはいいのか?」
私にとっては随分昔の話だというのにこうしてダーラはこの部屋に来るたびにからかってくる。
「はい。そろそろ定刻になるのでよろしくお願いします」
私の言葉を合図にダーラは球体に手をかざし何か呪文のようなものを唱え始めた。
特殊な呪文のようで私には音にしか聞こえない。
「繋げるぞ」
ダーラの言葉と同時にこの部屋はどこか別の空間に移動したように天井や壁、床までもが取り払われ浮遊していると錯覚してしまう。
しばらくすると、目の前にいたダーラの姿はなくなり周囲は豪華な会議室のような場所になった。
そして、普段なら集まることのできない現在在位している王たちが一堂に揃っていた。
ダーラの魔法によって疑似的に顔を合わせて話すことができる空間を作り上げてもらう。
「いや~、何度経験してもなれないな!」
幾つになっての元気なメリーディエース国のラウルが一番に話始めた。
「久しいの」
オリエンス国のエーリオも目を細めながら挨拶をする。
「アンちゃんとエーベは無事に戻って良かったね」
セプテントリオ国のジラルドも声を掛けてきた。
オッキデンス王はみんなを見て頷いていた。
『久しぶりの王族会議だろう。ゆっくりお話』
ダーラの声だけが部屋に響いた。
「では、まず私から。今回娘アンニーナの表敬訪問への協力誠に感謝する。多分?なにか成長しているような気がする」
私は各国の王に礼を述べた。色々あったけど楽しかったみたいだからね。
「その件についてだが・・・。」
普段はあまり自分から話しかけないオッキデンスの王が珍しく始めに話始めた。
「我が愚息がアンニーナ王女に大変ご迷惑をおかけした。申し訳ない」
頭を下げながら私に謝罪をした。たしか、二人の王子がアンニーナを魔物が多い森に置いていったという事件のことだな。
まあ、普通の王女だったら娘の親として激怒し正式な謝罪を求めるところなんだが・・・。
「セストよ。確かに、王子達の行いは良くないが・・・。まあ、相手がアンニーナなので・・・。うん。大丈夫・・・かな?他の王女にしちゃ駄目だとは思うけど」
さすがにピクニックみたいに魔物を討伐していたなんて言ったらアンニーナのお婿さんが見つからない・・・。あっもう大丈夫か。
「アンニーナはよく魔物を討伐しているからね。異国の地でどれだけ屠っていいのか分からないぐらいの事だったと思うよ」
私の言葉を聞いたオッキデンス国王は少し安堵した表情になった。
「セストの謝罪は終わったのかな?だったら次は僕だよ。ウイリアム、僕の国でもアンちゃんに酷い対応をしてしまってね。本当にごめんね。」
「ラル、お前は許さんぞ。どうして貴族牢に入れたんだよ」
一応ジラルドには文句を言っておかないとこれからの事もあるしね。
「だって、僕が対応する前にコンラートが前に出てたんだモン」
ジラルドがモジモジと言い訳をする。
「また、ラルは奥さんの後を追っかけて離れがたいと思っている間に息子に一本取られた感じか?」
ラウルがガハハと笑いながら核心を突いた。
「はぁ~。ラウルはもう少し言葉をオブラートに包むという技術を付けた方がいいと思うんだけど」
ジラルドが口を尖らせながらぼやいていた。
「ラウル殿がそのような事をし始めたら逆に警戒してしまいそうだけどね」
「エーリオも言うね~。」
ジラルドのツボに入ったのかハハハと笑いながらエーリオに突っ込んでいた。
「さて、話を戻すとアンニーナ王女に失礼な対応をしたのにも関わらず、コンラートの呪いにも対応しても洗った。国を代表してお礼申し上げる」
ジラルドは真剣な表情で私に向かってお礼を言った。
「さっきのセストの件と被るけど、アンニーナは魔物討伐得意だから、あまり気にしなくてもいいよ。それにコンラート王太子殿下に暴力をふるってしまったしね」
「その原因はこちらにあるのでそれこそ気にしないで欲しい」
こうして、我がプロヴァンツァーレ国とセプテントリオ国との軽いもめ事も解消した。
「そして、もう一点。先ほども言ったが今代はコンラートが『魔王』の素質を持つ者となっている。本人は我が国の第四王子のエーベハルトと同じ〝呪い〟だと思っているようだが」
その言葉に、王たちは黙ってしまった。
魔物は自然発生するものと思われているが、実は魔力が溢れ負の感情を持つと生み出すものという事が分かっている。そして、その者は魔力が多いどこかの国の王族になることが多かった。
「しかし、セプテントリオはコンラートを次の王にすることは決定してる。みんなの国に迷惑がかかるかもしれないがよろしく頼む」
珍しくジラルドが頭を下げてきた。
「まあ、どうしても困ったらアンニーナを向かわせるわ」
「そうだな、アンちゃん強いしね」
ラウルも腕を組みながらウンウンと納得していた。
「さて次の話だが、次代の魔女・ダーラが決定した。正式に引き継いだ時に紹介されるだろうが・・・。残念ながら私達が次代にお会いすることはないだろう」
「そうか・・・。」
私の言葉にどこかの王が呟くように答えた。
『案ずるな、まだまだ私はお前たちの綺麗なお姉さまだよ』
ダーラが私達のしんみりとした雰囲気をからかうことで和やかにした。
「以上で今回の会合は終了だ。何か他に報告したい内容とかはあるかな?」
私が問いかけると、他の王は一斉に首を振った。
「本来の外交は正式なルートをでやりあおう。」
そういうと、それぞれの王が用事のある王に軽く話しかけた。その会話も終了するのを確認すると
「魔女・ダーラ、今回は以上です」
『決められた平和 決められた運命 しかしそれを知っているのは統べる者のみ』
『お前たちの国の安寧を願っているよ』
その言葉を聞き終えるとまた何もない空間になってから元の部屋に戻された。
「さてと、寝るか・・・」
私は部屋を出て自分の寝室に向かった。
魔女・ダーラは疲れたのか戻った時に部屋にはいなかった。
本編終了から番外編を5話追加しました。
この物語はここれおしまいです。
物語を最後までお読みいただきありがとうございました。




