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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 成り上がり


 

    第二章(終) 成り上がり


 第九十三話  「成り上がり」




 自宅待機に飽きた俺にガルフさん達が帰るので付き合ってもらえないかと誘いがあった。


 その時、俺はレミアの森に行けると思ったが……


 しばらくはサンカルムに居て欲しいと言われて却下となった。


 あの日からミナリも来ないし……



 そんなつまらない日々にやっと進展がある。

 キャプトマン王子の離宮に呼ばれたのだ。

 何かしらの説明があるらしいが、ラリィも来るようにと言うことだ……

 


 次の日、ラリィを連れて馬車でザッカーさん達とキャプトマン王子の離宮に行く。


 予定では昼食を離宮で食べて、トゥルフ王子との取り決めを話してくれるらしい。


 離宮に着くと、キャプトマン王子の家族が待っていてくれた。

 

 軽く挨拶して、妹のラリィを紹介した。


 「ぼ、僕達は7歳だけど、ラリィは何歳なの?」


 吸血族にそっくりなラリィに驚いたのか、サートゥランは緊張気味にラリィに話しかけた。


 「ラリィも7歳だの。 ……皆んな7歳?」


 妹のミュランも頷く。

 この3人…… 見事に背の高さが変わらない。


 「僕はもう1年も剣術の稽古をしてるんだ。 ね、お父様」

 「私も剣術を習う予定ですよ、お兄様。 でもお兄様とは違う先生がいいわ…… 例えばリュウ先生とか。 ふふ」

 「ミュランは女の子だから魔術練習だろ。 ラリィは何かしてるの?」


 相変わらず癖の強そうな妹姫だ。


 「お兄ちゃんとラザ兄からちょっと剣術とぉ、ユキナ姉ちゃんから魔術を教わってるだの」

 「えっ、もう魔術練習をしてるの?」


 ミュランが驚いて言った。


 「うん。 ラリィね、5個の属性があるからね、風とか出せるんだよ」


 風や氷、火に…… まだファイヤーボールなどの魔術は出来ないけど、生活魔術は出来ている。


 「す、凄いわね、ラリィちゃん」


 奥さんのターミナさんが言った。



 俺とラザノフは結構スパルタだったようだ。

 

 普通の貴族の男の子は、8歳以降に剣術を習うことが多く、女の子は8歳から魔術を習う。


 男の子は適正によって魔術も習うが、女の子が剣術を習うのは稀だ。


 護衛兼付き人は10歳になるまでに同性の人を2人選ぶ。



 ちなみにラリィは5歳から飛ぶことを習って、もう1年以上もユキナに魔術を習ってる。


 でも、不満はなさそうだからいいか……




 食事は豪華な昼食。


 流石に海の近くなので大きなエビや海鮮が並ぶ、皆んな来るからだろうけど豪華で美味しい料理、料理人がいるのは羨ましい。


 ここでラリィの必殺技、高速箸捌き、ほっぺに一旦ストックが発動! 俺は恥ずかしいと思ってしまった……


 ラザノフの影響が強すぎる! もう少し乙女のたしなみとやらを教えなければ。

 ……誰かが。



 食後にキャプトマン王子が話す。


 「トゥルフ王子と相談して決まったことを話す。 リュウはリズーン国のサーファレイ家の次男に生まれたが、優秀な兄ルークに負けない剣術の腕を持っていた。 その能力を勿体なく思った当主はリュウをナラサージュの子の居ない貴族に養子として出す。 リュウは同じ養子として引き取られた妹のラリィと暮らしたが、引き取り元の貴族が数年前に亡くなり、家督を受け継いだ。 っと言うのが大まかな筋書きだ」

 

 なるほど…… 


 「その貴族とは?」

 「架空なので後でナラサージュで家督が途絶えた貴族の名を選ぶがいい」


 つまり、俺はサー何とかではなくなるのか。


 「兄との繋がりが薄くないですか?」

 「それでもリズーンでサーファレイ家の書類を全て改ざんしてくれている。 もうリュウは紛れもないサーファレイ家の次男だったことになっている」


  まぁ、知ってる人からすれば思いっきり茶番だけど、他の国の書類まで変えてるならどうにも出来ないのかも……


 「実際にルークはリュウの兄だし、今回1番のナラサージュにとっての徳は、リズーン国との繋がりだ、これは本当にデカい」


 確かにリズーンは断トツ1番の国でナラサージュは2番〔ケツから〕の国だからな……

 繋がりが出来て嬉しいだろう。


 「それで階級は何になりますか?」

 「フハハハ、上級だ! ……まぁ、兵団を任せたいと思っているからな、そうなると上級しか出来んのだ」


 なるほどね……


 「素朴な疑問です。 貴族の名前に、例えばサーファレイ・アホカ・ルークとかあると思うんですけど、このアホカの位置にある名は何ですか?」

 「フハハ、それは納めてる領土の名だ。 主に家督を継ぐ当主にあるし、その子達にも付けられる。 が、その子達の家督を継げなかった子はその名は取り外さなきゃいけない」


 な〜る〜。


 「ルークは家督を継いだし俺も継いだ設定ですよね、真ん中にも名は必要なんですか?」


 覚えるのめんどくさい。


 「いや、領土を持ってない貴族も居るからな。 僕からリュウに与えるのは貴族街にある家や家具くらいだろう。 それとも領土が欲しいか」

 「いえ、大丈夫です。 でも…… 家とか貰えるんですね」

 「ああ、リュウは海の近くに家を持ってるみたいだが、貴族街にも持っててくれ」

 「そこに住まなきゃいけないんですか?」

 「リュウ、これは茶番だ。 茶番を茶番にさせないのは貫くことだ。 今までと違う生活環境にして交友関係もリセットする。 だけどそれだとリセットするのは竜族になってしまう、そんなの割に合わん。 茶番でいい、それを押し通すだけの後ろ盾はある」


 ふ〜ん。


 「ただ学校では本当は元リズーン国の貴族だったとしておいてくれ」

 「今更ですか?」

 「理由など説明しなくていい。 相手に読み取らすんだ」


 ウソでも空気を読めって感じか?


 ナラサージュの主要貴族にも同じように説明するらしい。


 「でも、フォルマップルによる危険はあると思っててくれ」


 後ろから刺される危険ありって感じか。


 「分かりました」

 



 その後、部屋を変えての貴族の務めについて。


 兵団  学校を卒業と同時に立ち上げる予定。


 護衛任務  大事な任務の時はあるが、それ以外は学生の仕事を優先する。


 王族の子供達への指南  現在8歳から12歳までの男の子は第二王子の4男、ギャビンが12歳。

 他はサートゥランが7歳、第二王子の5男のチチッパーが6歳。


 年俸  年4,000トア + 護衛費


 

 「兵団を束ねれば年俸自体が上がります。 それで、こんな感じですが何か質問はありますか?」


 ザッカーさんが説明してくれてる。


 「それじゃあ、先ず第二王子の4男に剣術を教えればいいんですね」

 「いえ、ギャビン様は剣術を習う最終年なので、今まで通りの先生に教わるでしょう」


 基本、8歳から初めて12歳まで続ける。

 後は本人次第。


 「それなら大事な護衛があるまでは自由ですか?」

 「サートゥランに教えてくれ、1年前から頑張ってるからな」


 キャプトマン王子が言った。



 教えるのは火曜と金曜で2時間、学校が終わってからでいいらしい。


 「私から見ても素質があると思うぞ。 ラリィも習ってるなら一度手合わせをしてみるか?」


 ラリィには本格的には教えてない。

 素振りの仕方と足捌きだけだ。

 ただ、基本練習や柔軟に体幹トレなど下地はしっかりしてるので、同学年なら男の子でもラリィの方が強い可能性がある。

 

 「ラリィは2年前から毎日やってるので強い可能性がありますよ」


 ラザノフも何かギャーギャー教えてる時もある。

 内容? ……知らん。 知ってたらギャーギャーって表現、使わないでしょ。


 「負けるなら負けるで構わん。 むしろもっと真剣に取り組む予感はある」


 確かに…… 分かりやすくラリィを気に入ってたからな。



 「冒険者は続けられますか? 俺、個人戦で優勝するつもりだったんですけど」

 「凄い自信だな。 冒険者の大会でぜひ優勝してくれ。 それがナラサージュの宣伝になる」


 今後が無敗で行きたいなら、必然的に優勝しかない。


 「ザッカー、地下で書を見て一緒に名を選んでくれ。 その後に例の家に案内してやってくれ」

 「かしこまりました」



 と、言うことで……

 地下室の書庫で見つけた名前候補の中で気になったのはこの3つ。



 シャートウ  これは佐藤っぽいし、『お名前は』っと聞かれた時に『佐藤龍です』と日本人みたいで嬉しい。

 ただ実際は『シャ〜トウ、リュウで〜す』って感じで外人訛りがある。 

 


 フノウ  今の俺にピッタリの名だ。

 ただ名前を言われるたびに心が傷つく。



 ガブリワン  喰いつくぞ。


 

 「シャーラさんはこの3つの中ではどれがいいですか?」

 「わ、私ですか? ……そうですね、フノウかな」

 「それじゃ、前にズットを付けて俺の名前を言ってください」


 ん? って顔でタムリーンさんは俺を呼ぶ。


 「ズットフノウ・リュウ様」


 ウギャアア! めちゃ傷つく……

 

 まぁ、もう面倒くさいからそれでいいや。


 「それでいいです」


 っと言うことで、俺のラストネームはフノウになった。



 

 その後にラリィを影に入れ、歩いて家を見に行く。


 「もう堂々と歩いて大丈夫なんですか?」

 「もう大丈夫です。 むしろフォルマップル国からの抗議があると宜しいんですが……」


 抗議の前に暗殺の可能性ありって感じか?


 「あの家ですよ」


 おおおお〜って声が出るほどの大きく美しい家。



 貴族の家


 東京ドームが1つも入らないけど大きな家。

 四方をラザノフの槍をいっぱい刺したような柵で囲み、内側には庭師が手入れした小さめな木が並ぶ。

 石畳の道を行くと白の外装の家がある。


 1階は3部屋とやたら大きなお風呂。

 2階はめちゃ大きなダイニングキッチンと小さな小部屋が2つと中くらいの部屋1つ。 ……子供部屋?

 3階はセットバックされたルーフバルコニーになってるので大きな寝室が1つとなっている。

 特徴としては子供部屋以外はどの部屋も広い造りとなっている。


 貴族街の西に位置するこの家は、王族が暮らす土地と上級貴族が暮らす土地の中ほどにある。



 「お兄ちゃん、ラリィこの部屋がいいだの」


 ラリィは2階の2つの小部屋を開けて言った。


 「いいよ、俺とお前だけだし。 下はラザノフに使わせるか」


 それにしてもこの家……

 そう思ったのが分かったのかザッカーさんが話す。


 「この家は王子達の次の夫人との暮らし用に建てられました。 しかし、どの王子も次の予定はありませんので、リュウ様に使っていただくこととなりました」


 王族は皆んないっぱい嫁をもらうからな。

 でも、最後の王子のキャプトマン王子はまだノルマの4人ではなく3人の嫁だ。

 まぁ、まだ予定はないのだろう。


 「こんな豪華な家、良いんですかね」

 「もちろんです、リュウ様。 ナラサージュのユーリス姫を救い、ナラサージュの国民のために自己犠牲でフォルマップルに捕まり、ルーク様との繋がりにより、リズーン国ともナラサージュは繋がった。 全てはリュウ様の功績で、王族の方の好意でこの家を譲り受けたとお思いください」


 まぁ、拷問は今までで一番死と隣り合わせになったからな……


 「分かりました。 ありがたく貰い受けます」


 こうして俺は成り上がりの貴族となった。



 

 俺の今後。


 家の使用人が必要。 ……ただ、ラリィが居るので信頼出来る人がいい。

 海の家には自由に行けて、そちらで暮らすのも自由となる。

 学校は直ぐに通える。


  

 「私の私見と致しましては、フォルマップル国から抗議があるまではこの家で暮らした方が宜しいかと存じます。 平民街にはもしかしたら暗殺者も紛れてるかも知れないからです。 学校は気をつけて通えばリュウ様なら大丈夫でしょう」



 フォルマップルから抗議が来た場合。

 

 フノウ・リュウ  

 出生地はリズーン国のナラサージュの上級貴族。


 フォルマップルは必ずリズーン国に問い合わせる。


 リズーン国から出生の書類やサーファレイ家の家系図などをフォルマップル国へ送る予定。


 こうなると茶番と分かっていても、ナラサージュ国の上級貴族を何の理由もなく引き渡し要求することは出来ない。


 また、暗殺などに失敗してフォルマップル国が指示したとバレた場合。

 他の国の貴族の暗殺関連は国際裁判によって裁かれる。 

 何らかのペナルティーがフォルマップル国にかかるだろう。


 

 「例えばどんなペナルティーですか?」

 「国家予算の削減でしょう。 リズーン国やコーラン国は痛くなくても、ナラサージュ国やフォルマップル国にとっては痛い。 ……元々少ない予算ですから」


 そこにナラサージュが入るのが悲しい。

 国家順位が関係あるって聞いたな……


 「リュウ様を狙うと言うことは、今やリズーン国と繋がりのある者を狙うと言うこと。 簡単には手は出せないと存じます」


 確かに俺が殺られればルークは黙ってないだろうし、ルークは頭がキレるので怖いぞ。


 

 「とにかく今日はこの家にお泊まりください」


 と言って帰ってしまったザッカーさん達。

 彼等も久しぶりに我が家に帰るのだろう。




 大きな部屋にポツンとラリィと2人。


 貴族街を回って食事処や買い物が出来るところを知りたいけど今は無闇に外に出ない方が良さそう。


 家具は揃っているけど…… これは冷蔵庫? 当然、中には何もないけど魔力を集める場所がある。

 それに魔力を滞納すると、30と書かれたメモリが満タンになった。

 しばらく放っておくとラリィが驚いたように冷たいと言ってたのでやはり冷蔵庫のようだ。

 まだ平民街には出回ってない代物だ。


 また、この家は魔力滞納型のシステムが多い。

 例えばお風呂は70のメモリが付いてたし、キッチンにも滞納するメモリが付いてるし……



 「やっぱり暗くなったら食材だけ買いに行こうか」

 「うん。 ラリィも何か作れるようにするね」


 それはありがたい。


 そんな感じでその日は過ぎた。




 朝の稽古は湖沿いに走り、適当な大きさの広場で稽古をした。

 なかなか良いルートなので明日も同じくここに来よう。


 そして学校…… っと言いたいが、やっぱりギルドを優先することにした。

 来年と聞いた大会だけど、もうその来年になっている。


 9時、ギルドが開く時間にラリィを影に入れて行く。


 まだ開いたばかりなのでユキナに先客はなし、ユキナを呼ぶとニコニコで走って来た。


 「リュウ君、ルークさんもパーティーに入れたからね。 ふふ、あの日のお礼にご飯までご馳走になったんだよ」


 あの日…… 俺はミナリとデートして、本当に最高に楽しかったのに最悪の終わりになった日だ。


 「久しぶりにユキナの明るい笑顔を見た気がするよ。 ユキナ、俺は貴族になったよ、でも俺は俺だからね、後で家の場所を教えるね」


 ラリィの家庭教師は週1回だけとなったが今も続いている。


 「うん。 絶対に変わらない人って知ってるよ。 それより大会?」

 「そう! 代表決まっちゃった?」

 「ふふ、ずっと待ってもらってたよ。 リュウ君だから待ってもらえたんだよ」


 優勝候補筆頭、予想らしい。


 「大会は当初の予定よりズレて4月の半ば、でも丁度パーティー戦から2年かな」


 ズレたから待ってもらえたな……


 「ねぇ、ルークさんは来るかな?」

 「そう言えばリズーンのパルモだったね。 でも、会えるかな?」

 「海の家は教えたよ、凄く驚いてた。 今度泊まって見たいってさ」


 あの家は2階から見る景色が最高だからな。

 特に俺の部屋は他の部屋に比べて微妙に良い気がする。


 「貴族街の家はどう?」

 「新しい王子の家族用に造った家で、お風呂とリビングダイニングがめちゃ大きくて、寝室も寂しくなっちゃったくらいに広いよ」

 「寂しくなっちゃったんだ〜。 女の子を適当に見繕って呼べば?」

 「え〜と、貴方とあそこの子とあっちの子、今日、俺の部屋に来なよ」


 適当に見繕って見ました。


 「うん…… 私だけ行く」


 ドキッとはするんだけどな〜。


 「と、とにかくまた来るよ。 学校に行かなきゃ行けないからさ」


 それからユキナに次の家庭教師の日は海の家に来るように言ってギルドを後にした。

 


 学校。


 もうとっくに授業は始まってるけど、俺はあまり気にしない。


 ガラッとドアを開ける…… 先ず見えたのはポルカ先生の驚いた顔。


 約1年ぶりの学校、まるまる2年生を休んでた。


 「リュ、リュウ君……」


 ここで授業が終わる鐘が鳴る。


 「もう少し早く来てね、今日は午前授業よ」


 入って10秒、これは遅刻扱いになるのか?


 「それと復学する時は連絡してね、勝手に残り10秒で復学されても…… プフッ、貴方なら有りかもね」


 少しは気にすれば良かった……



 それからクラスの皆んなと雑談してポルカ先生に復学届を書かされて学校を後にする。 

 ……しかし。


 「ちょっと待てや、リュウ!」

 

 誰だ? っと思って見ると白髪の知らない少年。 ……と、ミナリ。


 「ああ…… パンヤ君、だっけ?」

 「パミヤだ、ボケ! ミナリを泣かすとはどういうことだボケェ!」


 カナリと彼氏も側に居る。

 ダブルデート?


 「ミナリ……」

 

 少し…… いや、かなりショックだな。

 俺とのことを何て言ったのだろう?


 「勝負しろ、クソリュウ!」


 白髪の少年は獣人の血が入っているのか毛深い。

 背は低いが柔らかそうな筋肉をしてる。


 「する理由はない。 勝負したきゃギルドの大会にしろよ。 代表に選ばれなかった時点でお前じゃ役不足だ」


 リュウ〜! っと言いながら近づいていきなりのハイキック!

 スッと避けるとそのままクルンと回り後ろ回し蹴り!

 バシッと足を掴んでそのまま軸足を足払い! パミヤは俺に足を持たれ宙ぶらりん状態。


 軽いパミヤを地面に叩きつけようとしたところで、ミナリが『止めて〜!』っと叫んだ。


 仕方ない…… 労わるように軽く投げた。

 パミヤは流石に獣人の血が入っているからか、クルンと上手く着地した、これまでは計算に入っていたが……


 何の躊躇もなくフルスピードで俺の懐に入ったパミヤの左ショートアッパー!

 

 終わったと思って油断した、反応が遅れた俺の右目下辺りに滑るように当たる!

 そして流れるようにあびせ蹴りを仕掛けるパミヤ!

 ……が、左肘で防御、そのまままたパミヤの足を掴んだ。 ……またパミヤは宙ぶらりん。


 今度はミナリの声は聞こえないけど、また同じように軽く投げる。

 同じように上手に着地したパミヤがまた俺に向かう! ……が、パミヤは何かに気づきジャンプ一番、避けようとしたがタイミングが合わず巻き込まれて後ろに飛ばされた。 


 そう、軽く投げた後にウインドカッターを俺は撃っていたのだ!


 その飛ばされてる途中のパミヤを支えたのは、ござることラザノフだった。

 

 「リュウ! 早速トラブルとは、流石でござるぞ!」


 え〜と、褒めてらっしゃる?


 見るとパミヤは足を抑えて倒れてる。

 もう終わりでしょう。



 「ラザノフ、リコ連れて俺ん家に来いよ」

 「ああ、そう思ってたでござるよ」


 ここでサッと俺の前に来た人物…… ユーリス?



 俺の目の下はパミヤのアッパーにより、外傷の出血が見られた。

 その傷を優しくハンカチで拭く人物、ユーリス似の3年生。

 何度か話したこともあったし大会の代表でも一緒だった人、何とかサーラさんだったと思う。


 「ありがとう、サーラさんだよね」

 「はい、お城でお話しした以来、お話はしてませんね、リュ…… フノウ様」


 高位の貴族は俺がフノウを名乗っていることを知っているが…… それにしても情報が早い。


 「昨日、リュウ様が身分を隠していたと通達がありました。 フノウ…… 素敵なお名前ですね」


 不能ではないアクセント、ふ、のうと言ってくれてるので傷つかない。


 「リュウ、ラリィはどうした?」

 「影だよ。 ……それではサーラさん、ハンカチ汚しちゃってごめんね」


 機会があれば新しいハンカチでも買ってあげよう。



 パミヤは足を押さえて蹲り、ミナリは泣き崩れ、それを支えるカナリ…… 彼氏はボーッと突っ立ってる。


 俺には何て声を掛ければいいか分からず、ラザノフとその場を後にした。


 

 リコを連れて貴族の家へやって来た俺達は、先ずリコの家を作ってあげる。


 ラリィと海の家に戻るときはリコも連れて行くが、基本的には海の家よりここの方が広く庭に放し飼いが出来るのでリコも嬉しいだろう。


 「凄く広くて綺麗な家でござるな。 でも王族カラーは変えた方がいいと思うでござるよ」

 「もしかして真っ白? 俺も逆に目立つと思ってたんだよな。 何か色塗ろうかな」

 「それならポンタを使ってくれ。 アイツ、ユキナ殿に会えないから最近腐ってるでござるよ」

 「ああ、いいよ」

 「それとリュウ、後で土の粘土を出してくれ、バルコニーにバーベキュー台を作るでござる」


 それはいい。

 知り合いと毎日バーベキュー三昧だ。



 ちなみに平民が貴族街に入るには書類とバッチが必要になる。

 貴族証明するバッチやワッペンとは色が違う。

 貴族は金色のバッチかワッペンが服に付いてればいい(忘れても門番が分かっていれば大丈夫)。

 平民に渡す臨時のバッチは銀色になってる。


 っと、庭でラザノフと話していると、『リュウ様』っと声をかけられた。


 声の持ち主はセシルさん、そして ジルザルさんだった。

 


 家のリビング、セシルさんと ジルザルさん、ラザノフに紅茶を振る舞う。


 「な…… 美味しいです、リュウ様。 これは何ですか?」


 ラザノフ達も同じことを言う。


 「これはリズーン国で流行ってる紅茶というお茶です。 ターミナさんが持たせてくれました」


 そう言えば、ターミナ様の方がいいのかな? ま、いいか。


 「本当に不思議な味で美味しい…… あっ、そうだ、リュウ君、色々とおめでとう」

 

 登用と口にせずに色々と言うところが気を使わせてるな。

  ジルザルさんは兵団長なので事情は全部知ってるのか⁈


 「ありがとうございます。 今度、兵団のことを教えてください」

 「そのことなんだが、俺の兵団の臨時コーチを頼めないか? 兵団に付いて色々と分かることもあるだろうし」

 「構いませんよ、学校が休み…… じゃなくてもいいか」

 「リュウ様、ダメです。 私も明日からリュウ様にお弁当を作るので学校は休まないでください」


 弁当か…… ミナリはずっと作ってくれていたな……


 「では休みの時に頼もう。 良かったらラザノフ君も来てくれ」


 ちなみにラザノフはバッチとか要らない。

 ひと目で竜族だし、サンカルムでは出入り自由だ。


 「了解でござるよ」



 ここでブブブブーっと音が鳴る、ブザーだ。

 この家は門から家まで入れないし、今はリコも放たれてるからブザーを鳴らすしかない。



 貴族街の家はチャイムではなくブザーが多い。

 ブザーは魔力吸引式で鳴らした人の魔力を吸い取る。



 俺が外に出ると制服を着た女の子が2人、物を持って門の外に居た。

 ……同じ学校は分かるけど、知らない顔の気がする。


 「はい、なんですか?」

 「これ…… 引っ越したばかりで何もないかな〜と思ったので……」


 鍋に入った料理とドーナツのようなパン。


 「ありがとう、君達の名前を聞いていい?」


 知らない人から物は貰えない。


 「ジョシュラ・ミラーです。 ミラーとお呼びください」

 「ランベルト・コーサです。 今、コーサとお呼びください」


 ん⁈

 

 「コーサ、ありがとうね」


 真っ赤になって嬉しそうに目を細めるコーサ、可愛い子だ。


 「わ、私もお願いします!」

 「あ、ありがとう、ミラー」


 キャーっと言って2人は走り去った……


 う〜ん、なんだろう?



 

 戻るとラリィがめざとくパンを狙った。


 「お兄ちゃんがモテると嬉しいの。 ……食べていい?」


 どーぞ、と進めて席に座る。


 「今の時期に学校の復帰、更に貴族になるのは不味かったでござるな」


 セシルさんも不満そうな顔で頷く。


 「そうだね。 ……何で?」


 分かったふりをしようとしたけど止めた。


 「もう直ぐ拙者達は卒業でござるよ。 ……あっ、卒業したらスエメル迎えに行〜こうっと。 ござござるぅ」


 その説明では分かりません!



 しかし、その意味は次の日からの学校で明らかになった。

 お昼休みや放課後の貴族女からの呼び出し……



 例


 「フノウ様。 私はお城でフノウ様を見かけた時から、フノウ様をお慕いしておりました。 私はもう直ぐ卒業、ぜひ結婚を前提にお付き合い頂きたく存じます」


 丁寧過ぎて分からないけど、付き合ってくれってことなのだろう。

 ハァ〜、卒業直近の告白ってやつか。


 「すいません、今は誰とも付き合う気はないです」

 「そ、そんな…… 私が中級貴族だからですか?」

 「俺は平民も貴族も関係なく思ってます。 だから階級など全く関係ないです。 だけど今は付き合いません」

 

 

 だいたいがこんな感じだ。

 その後、泣かれることが多いが罵倒される時もあった。

 『成り上がりの癖に〜!』だって……


 好きで成り上がったわけじゃないっての。



 そんな毎日を過ごしたが、相変わらず暗い雰囲気のミナリとは話せてない。

 本当に仲直りしたいのに、俺にはどうすればいいか分からなかったのだ。



 そんな時にサーラさんからの呼び出しがあった。



 放課後、練習施設の裏まで行くと、相変わらず短いスカートのサーラさんが居た。


 呼吸を整え、サーラさんは話し出した。


 「私は卒業したら『ガーズ』と言う領土を待つ、サモア様の元へ嫁ぐことが決まっております。 リュウ様がお城で喧嘩した人の1人で、当時から私を気に入ってくれてました」


 1人はオルキンだったのは覚えてる。


 「そうですか、おめでとうございます」

 

 サーラさんはピクっとして、目に涙を溜めた。


 「私がお慕いしてるのは、あの時からリュウ様なのですよ」


 だよね、じゃなきゃ呼び出さない。

 でも、俺もそれ以外は言えない。


 「私はもし今度リュウ様に会えたらお願いしようと思い、何度も海の近くのリュウ様の家に行きました」


 お願いか…… 多分、聞いてあげられない。


 「平民街まで行ったんですね」

 「はい。 お綺麗な人と何度かお話をしました。 だけどリュウ様は生きてると言うだけで……」

 

 そんなことまであったのか……

 色んな人に心配かけたな……


 「それで、お願いとは?」

 「一度で構いません、デートをしてください」


 今、結構忙しい。


 今日からサートゥランの稽古を見てほしいと言われてるし(前の先生との引き継ぎに時間がかかった)、休みには兵団の臨時コーチにも行っているし、他にも色々だ。


 「そのサモアさんにバレたらマズいんじゃないですか?」

 「私は本当は貴族を捨てて貴方に付いて行きたいと思っておりました。 だけどリュウ様は貴族になってしまった…… だから一度だけのデートなのです」


 貴族になって悲しむ貴族女が居るとは思わなかった。

 でも、貴族を捨てる覚悟って凄いよな。

 まぁ、デートくらいはいいか。


 「分かりました。 ただ、どこに行くかはサーラさんが考えてください。 ちょっと俺、忙しくて……」

 「やった〜、あ…… わ、分かりました。 明日にでもお家にお尋ねして宜しいでしょうか?」


 貴族街の家、知ってるのか?


 「え〜と、貴族街の家だよね、何で?」

 「デートプランを考えて行きますよ、ふふふ」


 まぁ、この人にとっては重要なことなのだろう。

 ってか、もう俺があそこに住んでると知ってる人が多い。 ……やっぱり元は王子の新居用に建てられた物件だから、他の人が住んでると噂になるのかもしれない。


 「分かりました。 でも明日からは言葉使いはフランクでお願いします。 ……疲れるので」

 「あっ、はい。 ふふ、リュウ様」


 ユーリスに似てるけど、ユーリスほど背は高くない。

 ユーリスに顔が似ててめちゃ美人、おまけに胸の大きいのも似てる。

 短いスカートから見える足は細くもなく太くもない、ええ感じ。


 デートするって言ってからは可愛い態度、って感じの人だ。



 

 ここは王族専用の剣術道場。

 それほど大きくはないが、打ち込み台なども揃ってる。


 今日はサートゥランの初稽古。

 そこに居たのは……


 キャプトマン王子にターミナ夫人、娘のミュランと主役のサートゥラン。

 後は赤ん坊を抱いてる綺麗な人。


 俺は知らない女の人に軽く名を名乗った。


 「お初にお目にかかります、私はキャプトマン王子の第二夫人のヤモモと申します。 学校で貴方の2つ上の妹が居たのですよ」

 「ユーリス姫と同学年ですね」

 「ふふ、そう。 だから貴方のことは色々と聞いているのですよ。 うふふ、噂以上でドキドキしちゃいます〜」


 そんなのはいいけど、赤ちゃんが気になった。


 「抱っこしたいです」


 えっ? って顔をされたけど、直ぐに赤ちゃんを抱っこさせてくれた。


 きゃ、きゃわいい…… ミノ虫っぽいけどやっぱりアレに似てるか?


 「な、何これ〜、サルみたいでめちゃ可愛い〜、ヤダ〜、ラリィ、見てみなよ〜」


 ラリィがニュっと出て来て赤ちゃんを覗く。


 「可愛いだろ〜、赤ちゃん。 お前も可愛いかったのに今は……」


 ひと言多いガキ。


 「ラリィは今も可愛いだの!」

 「なあ、本当に赤ちゃんは可愛い〜」

 「ラ、ラリィもだの! お兄ちゃん、ボォケェ!」


 ハハハハっと笑い声が聞こえたので赤ちゃんを返す。


 「名前を聞いてもいいですか?」

 「ふふ、スモモって言う女の子ですよ〜。 お猿さんじゃないですよ〜、ね、スモモ」


 あ…… 失礼なこと言っちゃったか?

 まぁいい、可愛いのは変わらない。


 「ふふ、リュウ先生は子供好きなのですね。 私が大きくなったらリュウ先生の子を産んであげますね」


 ……はっ?


 「ゴホン、ゴホン…… まあ冗談だ。 妹のミュランも習いたいと言うので頼む」


 び、びっくりした……



 ミュラン  目が大きいが切れ長。

 透き通るような白い肌で、雪女の子供の頃ってイメージがピッタリ。

 上位亜人の子みたいな独特の雰囲気。



 稽古は身体を軽くほぐした後に柔軟と体幹トレーニングを丁寧にしていく。

 そして素振りをしてもらい、それぞれを正しく矯正する。


 とりあえず今日の稽古は終わり、夫人も加わり質問タイムにする。


 ターミナさんの感想。


 「ラリィちゃんのバランスの良さが目立ってましたね。 素振りでも、素人の私が見てもサートゥランとは違っていましたよ」

 「ラリィには素振りと足捌きしか教えてません。 ただ4歳から強制的に朝の稽古は連れてってます」


 夕方は無理の時が多い。

 それはまだ陽が出てる時が多いから。


 それでも朝だけでバランスの良さは手に入れている。


 「それは少し厳しくはないですか?」

 「知っての通りラリィは俺とラザノフが旅の途中で拾いました。 体力の全くない子だったので強制しました。 悪かったな、ラリィ」


 まぁ、苦しそうだとラザノフが直ぐに抱っこしてたけどな。


 「ううん、ラリィ、楽しかったよ。 思い出すね〜、川でお兄ちゃんを迎えに行った時とか、ユーリスお姉ちゃんと一緒に走った時とか」


 ここでラリィのそんなの知らねえよ、が発動!


 「ユーリス? ユーリスが何でラリィと走るんだ?」

 

 マズいのはラリィとユーリスの会話内容だ。

 それは口からこぼすなよ、ラリィ。


 「大会中にラザノフとラリィと本当についでで俺との稽古に、ユーリス姫も参加したんですよ」

 「そうだよね〜、朝のスープ美味しかった〜」


 ……ホッ、何とか大丈夫そうだ。

 でも、気になってしまった。


 「ユーリス姫はまだゴールタールですか?」

 「あ、そ、そうだな。 うん、何と言ったらいいか、まあそうだ」


 ユーリスにも何かあった……

 俺には調べる術はない、でも護衛の人達も含めて元気で居て欲しい。


 

 「私もいいかしら? リュウ様の剣舞が見たいです。 噂では見た女の人は一様にリュウ様に惚れてしまうとか」


 妹は何を姉に吹き込んでるんだ。


 「そんな呪いの剣舞はありません。 ところでキャプトマン王子はギルドの大会に来るんですか?」

 「ああ。 リュウが出ると言ったらトゥルフ王子が見たいって言ってな、ルークもくるんじゃないか」


 まぁ、リズーンだから来るとは思った。


 「リュウ先生、私も剣舞が見たいです」


 ミュラン…… 誤魔化せたと思ったのに。


 「僕も見たい、リュウ先生」

 「お兄ちゃんね、すっごいよ。 いっぱい凄いだの」


 ラリィがサートゥランを見て言った。

 ってか、2人共さっきから近くない?


 まぁ…… もうこの流れは変えられない。



 「ふぅ、仕方ない。 でも、それぞれの感想を聞かせてください」


 

 ー蓮撃ー


 この前、ゴルゾフさんとの戦いでは限界まで打ち続けた蓮撃。

 だけど何セットだったかは覚えてない。

 また新たにいい階段…… やっぱり俺からミナリに謝ろう。


 などと考えて20セットを超えても魔法陣は広がらず、訳わかんねぇな〜っと思ったところで終了。


 先ずはミュラン。


 「素敵です、リュウ先生。 早く大人になりたいです」


 参考外。

 

 ラリィ。


 「やっぱりカッコいいだの。 ラザ兄も感動するって言ってたよ」


 それは嬉しい。


 サートゥラン。


 「僕も出来るようになりたい」


 まぁ、子供っぽいよな。


 ヤモモさん。


 「ふふ、王子の前で感想は言えませ〜ん。 チルールに自慢し〜よお」


 妹の名はチルールね。


 ターミナさん。


 「紅茶をもっとあげたくなっちゃった。 ふふ、貴重なのよ、紅茶」


 まだリズーン国でしか手に入らないからね。

 これまた参考外。


 キャプトマン王子。


 「噂以上の美しさだ。 全ての動きに残像が付いてくる。 まるで高速のコマ送りのようだ。 リュウ、そこまでのレベルにしろとは言わん。 ただ学校の代表になれるくらいには鍛えてくれ」


 流石キャプトマン王子、こう言う感想が聞きたかった。 ……紅茶は要りません。



 初稽古はこれで終わり。


 次回からは俺が2人を離宮に向かいに行き、キャプトマン王子達は来ない。




 次の日の学校。


 俺の何が悪かったのかは未だに分からないが、ミナリに謝ろうと思う。

 いつも明るいミナリが、今は別人のように自分の席から離れないで静かにしてる。

 まぁ、チャンスと見た男達が話しかけてるけど……



 俺も話しかける。

 

 ドアの近くのミナリの席に行き声をかける。


 「ミナリ、あの……」

 「フノウ君、リュウ君、どっちが良いですか?」


 えっ、と思い見てみると、ドアには3年生のサーラさんが居た。


 「え〜と、リュウ君がいい。 どうしたのサーラさん」


 約束は放課後だったような……


 「じゃあ私はサーラがいい。 ふふ、ねぇ、今日は何時頃に行けば良いの?」


 やっぱりフランクな喋り方のほうがいいな……


 「4時頃でも大丈夫?」

 「大丈夫ですよ、リュウ君。 ふふ、もっと早く行ってもいい?」


 ポルカ先生から羅刹種の話があるって言われてるし、ポンタを迎えに行って貴族門を通さないといけないし……


 「多少ならね、もう考えたの?」

 「うん。 まだやることはあるけど直ぐに片付けて行くね」


 ふと視線が痛く感じたのは、サーラさんは人気者だからだろう。


 ……あっ、ミナリ……


 ガタッと席から立ち上がったミナリ、悲しそうな視線を俺に送って行ってしまった……


 ちょっと長引きそうな予感……



 

 ポルカ先生といつもの部屋。


 「羅刹種に関しての新事実、ノマノーラが近づくと動きが活発になる、よ」

 「どうして?」

 「分からないけど600年前の文献にで始めて、約100年で絶滅したと言われてる。 おかしいのは600年前以前の文献には羅刹種はほぼ出て来ないの」


 それでノマノーラと関係あると言うのはちょっと無理あるな。


 「そしてサンプルはとても少ないけど、羅刹種が書かれてる1,200年前にもノマノーラは近づいてるわ」

 「そのサンプルの数は?」

 「……2件」

 「少ないな。 でももう直ぐノマノーラが最接近するでしょ。 慌てなくてもそれで分かるんじゃない」

 「ふふ、そう。 私達はとても運が良い」


 なんて話をした。


 ちなみにノマノーラが最接近するのは、来年の10月ってユキナが言ってた。



 

 ポンタを迎えに行って俺の家まで連れて来た。


 「凄い家だな…… 見事に立場が逆転しちゃったな。 でも、ラザノフ君が卒業したら保証人になってくれるって言ってくれたんだぜ」

 「そうか、良かったな」

 「そうなったら、リュウのパーティーに入れてくれない?」


 俺とラザノフな。


 「別にいいけど、お前が1番弱いぞ」

 「ウグッ…… お兄さんもやっぱり強いよな?」

 「お前よりはな」

 「えっ? リュウより強いんだろ」

 「アホか、俺の方が強いっちゅーの」

 「だ、だよなぁ。 ちょっと安心したぜ。 強さは関係ねえ、俺はリュウより目立ってモテる!」


 まぁ、色んなモチベーションがあるさ。


 「一応書いといたから、こんなふうに塗ってくれ」


 ルーフバルコニーの立ち上がり部分とか寝室の上の屋根部分とかを青にする。

 イメージはミナリとデートした町の教会のような建物。


 ブブブブブゥ〜、っとブザーの音。

 まだ3時過ぎたばかりなのにサーラさんだろう。


 玄関まで行くと、ラザノフとサーラさんが一緒に居た。


 そう言えば…… ラザノフとサーラさんは同学年の、しかも槍代表の、しかも2人とも個人戦の優勝者だった……


 「早いね、ラザノフもサーラさんも」

 「ガハハ〜、ミルーで全部買えたでござるよ」

 

 食料を買って来てもらった。


 「リュウ君、サーラ、でしょ、ふふ」


 楽しそうだな……


 「ごめん、上がって」



 リビングダイニングに皆んな集まる。


 自分の部屋に居たラリィも来た。


 「リュ、リュウ、そ、その美しい人はもしかしてリュウの?」


 リュウの何よ。 ちゃんと言いなさい。


 「リュウ君の恋人のサーラです。 リュウ君がお世話になっております。 ……あっ、ラリィちゃんだったね、これお土産よ」

 「え〜、ラリィにお土産だの〜、開けていい?」


 いいと言う前に開けております。

 速攻で餌付けされたな。


 「ちょっと、何で恋人になってる。 ラリィ紅茶淹れて」

 「だってデートの日までは恋人でしょ。 ふふ、深く考えないの」


 それは得意だけど。


 「やっとリュウに告白したでござるな。 もっと早くすると思ったでござるよ、ガッハハ〜」


 サーラの気持ちを知ってたのか。

 まぁ、同じ専攻の同学年だからな、不思議じゃない。


 「リュウ君、突然居なくなっちゃったから……」


 ここでラリィが皆んなに紅茶を振る舞う。


 「リュウ…… 俺はお前と人生を代わりたい! 頼む!」


 頼まれてどうなるの?


 「俺は誰にも負けない努力をして来た。 苦しくても毎日毎日ね。 だからヤダ」

 「いや、あの〜、そっちはいいんだけどさ、モテる方を代わって欲しいな」


 そっちはいいって…… アホか。


 「それはサーラに聞きなよ」


 サーラはポンタを見て、ニコッと微笑んだ。


 「あ…… 結婚したい」


 ユキナはどうした!

 

 「ラリィちゃん、このお茶はなんて言うの?」

 「紅茶だの。 この前、サートゥランの母ちゃんがくれたの」


 本当にくれたのだ。


 「香りがいいでござるよな。 大会で買って来よう」

 「パルモにはないらしいよ。 まだリズーンの何だっけ、王都にしかない」


 トゥルフ王子が沢山持って来たくれたけど、まだ王族と俺くらいしか手に入れてない。


 「じゃあ、ルーク殿に頼もう」

 「ああ、会えたらね。 ……そろそろポンタは始めてくれるかな。 それとサーラ、上で話す?」

 「うん、リュウ君の部屋?」

 「寝室らしいけど、めちゃ広いよ」

 「うん、ドキドキするけど楽しみ……」


 デートプランの発表だけだろ。



 3階に上がってサーラを部屋に入れた。


 「凄く広い…… それに明るいね」


 ベッドが凄く大きくて真ん中にあったから、端っこに押しやった。


 2面がルーフバルコニーに面してるので、外の光が沢山入って来る。 ……ってポンタがチラチラ見ながら作業してるよ。


 「カーテン、閉めていい?」


 確かに露骨なポンタのいやらしい視線はキツい。



 カーテンを閉めてもこの時間のこの部屋は明るい。


 「リュウ君、デートプランの発表の前に1つだけ聞かせて」


 頷く。


 「この部屋に連れ込んだのは、何人目?」

 「ふ・ざ・け・る・な。 引っ越したばかりだっつーの」

 「ふふ、じゃあ私が初めてか〜。 直ぐに脱げばいい?」


 静香チンじゃなければ押し倒してるぞ!


 ふぅ、カーテンをパッと開ける。 ……と、ポンタが覗いてた。


 「ど〜ぞ脱いでください」


 どうだ。


 「あっちなら大丈夫だよ」

 

 視線の先にはベッド…… このベッドはカーテン付きだ。


 「いいからプランを発表して」


 この人とはほとんど話したこともなかったけど、親しみやすい人で人気があるのは頷ける。


 「ジャジャーン、先ずは卒業式の日です。 大丈夫?」


 卒業式の日にデートか、まだ充分日があるので調整出来るし大丈夫だ、頷く。


 「下町の海沿いの馬車乗り場から出発して、ザペッタと言う温泉町に到着しま〜す。 そこで温泉に入ったり…… ふふ、一泊して次の日もちょっと遊んで帰って来ます。 どうですか?」


 どうですか? って……


 「冗談でしょ、初デートで一泊するの?」

 「初デートでも最後のデートだもん」


 正直、俺の病気がなければ喜んでた可能性大。


 「ちょっと難しい。 船で海にでも行こうよ」

 「ふ、船まで持ってるんだ…… でも、もう全部予約しちゃったしお金も払ってもらったもん」

 「誰に?」

 「私の付き人だよ〜、それが証拠に外には1人しか護衛が居ません」


 パッとバルコニーに出て外を見ると…… 確かにサーラの護衛が1人しか居ない。

 払いに行かせたか……


 ポンタがガン見してるけどそれどころじゃない。

 やっぱり無理は無理だ。


 戻って話す。


 「ごめん、支払った分は返すし、デートの日には何かプレゼントもする。 だから船で遊びに行こう」

 「そんなに私が嫌だ……? 私に任せるって言ったのに…… ウワァァァ、もうヤダァ〜〜、酷いよおぉ〜」


 サーラの瞳から涙が溢れる。


 「ちょ、ちょっと落ち着こう、ね」

 「初デートなのに〜、忙しいって考えてくれなくてぇぇ、酷いよぉ〜」


 確かに……

 もっと誠実にサーラに接するべきだった。


 「ごめん、ちゃんと話すよ。 俺は去年の夏からアソコが機能しなくなったんだ。 泊まってそういう雰囲気になってもサーラを傷付けるだけだから……」

 「え…… 立たないの?」


 頷く。


 「何も感じない? 例えば……」


 カーテンは閉めてるけど、サーラはベッドの横に行って俺に見える位置でゆっくり上着を脱ぎ始めた。


 そして下着姿で話す。


 「本当に何も感じない?」


 目が離せなくなるほどボリュームあるねむ、じゃなくて胸に、運動をしてるからか引き締まってるウエスト…… でも……


 「鼻の穴は広がるけど、アソコはピクリともしない」

 「プフフ、鼻の穴が広がるなら大丈夫。 きっと治るしリュウ君は治す努力をするべき。 逃げないで、これから貴方を好きになる女の子達のためにも私が治してあげる」


 そう言われれば、そうなのかと思ってしまう。


 「サーラはそれでいいの?」

 「本当はしっかり結ばれたかった。 だって貴族の女なんて好きな人と結ばれることなんてないもん」


 確かにサーラが結婚するやつは…… 印象にないッス。


 平民になって俺と生きたいとまで思ってくれた貴族、しかも上級のサーラ。


 何人かの貴族女と付き合ったけど、全てを捨てる覚悟をしたのはサーラだけ。


 男と女は身体の関係だけではない。

 楽しい時間を共有してサーラの笑顔をたくさん見れるようにしよう。


 「分かった。 一緒に行こう」



 こうしてサーラと一泊旅行に行くことになった。

 

 でも……


 また鼻の穴だけ広がって終わりそうな気がする……

 長々と書いてしまった第二章が終わりです。


 次が最終章となります。


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