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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 サイドメニュー

 

    

    第二章  成り上がり


 第九十話  「サイドメニュー」




 サンカルムの隠れ家には4日目の朝、暗いうちに着いた。


 海沿いを昼夜飛んでリズーンの割と大きな港町、ハビィまでノンストップで行き、そこで体を休めながら情報収集した。


 その内容。


 ビジョンの森はハビィまで着く前に通ってきたらしい。

 確かに広大な森があった。

 いつか時間があればドリアードや側にいると言うレイモンから来た人を探したい。



 ギルドの大会があるパルモと言う街。


 ハビィからは遠い南東の方向らしい。

 でもリズーンは断然に王都カラカイッサムがおススメと言っていた。

 何でも貴族と平民の街を隔てる壁がなく、平民でもお城の近くまで行くことも可能なのだそう。

 なので王都はいつも賑わっている。 ……らしい。



 俺の今後。


 まだキャプトマン王子からの連絡待ち。

 ただ待たせてはいけない相手らしいので、早めに帰って来て良かったようだ。


 ……と言うことで暇人。



 しかし帰って来たことを何処から嗅ぎつけて来たのか、ポルカ先生は勉強を教えに、ミナリは暇つぶしに毎日顔を出す。



 ある日の午後、ミナリ編。


 「ねぇ、リュウ君。 パミヤ君って知ってる?」

 「ああ、柔らかいパンを売りたいパミヤだろ」

 「それはパン屋さん。 パミヤ君は1才年下の剣術クラスの特待生」

 「それがどうしたの?」

 「興味なさそうに聞かないで。 そのパミヤ君が私を好きみたいでさぁ」


 チラチラ見て反応を確かめないで下さい。


 「ミナリはモテるね。 可愛いし明るいし。 それで?」

 「何かリュウ君を知ってるみたい。 ちなみにプユスタールから来たって言ってたよ」


 プユスタール出身の特待生……


 「ふ〜ん。 まぁ俺はこの先どうなるか分からないから何も言えない。 実際に待機ばかりでアホらしいから王子無視して裏に飛ぼうとさえ思ってるよ」


 稽古がまともに出来てないのが苦痛。


 しばらくレイモンに行って、戦争を数年かけて止めて、それからリズーン辺りで違う名前で冒険者登録(保証人は、その時はラザノフかゴルゾフさん)して大人しく暮らす…… これがいいと最近思っている。


 「リュウ君…… 私も連れて行く?」

 「何でそうなる?」

 「1人じゃダメなの。 だから私を連れて行ってよ」

 「向こうではこちらの比じゃないくらいに無茶するつもり。 ミナリに危険な目は合わせられない」

 「た、大切なの?」

 「もちろん。 とてもね」


 嬉しそうに笑みを浮かべるミナリ。

 とても可愛い子だと思う。


 しかし、最近俺は悟ってしまった。

 俺は……


 女に大したこだわりがない!


 リリカだけちょっと違うけど、カミラさんやリシファさん、ユーリスにルイースと、誰とでも上手くやっていけると思う。


 要は誰でもいいのだ。


 

 だから今のミナリのようにゆっくり大切な人になった方がいい気がする。 ……えっ、パンヤ君に取られる?

 それならパンヤ君は俺以上な魅力があるのだろう。


 「パンヤ君は俺のこと何て言ってんの?」

 「一度、手合わせしたいって。 キャハハ、ミナリの奪い合いだね」

 「え〜と、俺とミナリの関係は何?」

 「だからリュウ君の憧れの女の子って言ってあるよ。 間違ってないでしょ」


 まぁ別にいいけど、自分でソレ言っちゃうかな〜。


 「奇跡的に復学出来たら覚えておくよ。 それでミナリの前でパンヤを火系の魔術を使って丸焦げにして黒々と固いパンにしてやる」

 「キャ〜、ジェラシーって感じ? でもね、何か気になるのよね〜、パミヤ君は」


 ふ〜ん。

 パミヤ君ね、覚えておこう。




 ある日の夕方、ポルカ先生編。


 ザッカーさんが慌てた様子で俺の部屋に来た。


 「今、ポルカ先生がこちらに向かっております。 しかし、ポルカ先生を尾行する男が2人、一応確認して下さい」



 誰かが付けられた時。


 三叉路の前の家に住む、キャプトマン王子の私兵のギブソンと言う人がザッカーさんに知らせる(何か合図があるらしい)。

 

 タムリーンさんが一本道のゆるやかな坂道を下って行くが、当然ポルカ先生とすれ違う。

 この時、タムリーンさんが何も言わずにすれ違うことでポルカ先生は尾行されてることに気づく(他の人にも打ち合わせ済み)。


 タムリーンさんは尾行している男達をさりげなく確認、更に男達を尾行する。


 ポルカ先生はこの家を素通りして山に入って行くが……

 

 

 「リュウ様、あの男達に見覚えは?」


 ポルカ先生が素通りした後に通った男達、全く見覚えなし。


 「知らないです。 逆にザッカーさんはどうですか?」

 「中級貴族、コルツ家の双子です。 フォルマップルとの繋がりを疑ったことはございませんが……」


 コルツ…… 知らん。


 「私もタムリーンと合流して付けましょう」

 「俺も行きます」

 「いえ、それはご遠慮ください」


 と言っても暇なので、俺も付いて行く。

 


 付けて行く途中に思い出す、ポルカ先生を殴っている奴等ではと…… 

 

 案の定、俺が住む隠れ家が見えなくなるとポルカ先生に近づく双子、俺達はまだ様子を伺う。


 

 「おい! ウキウキしながら山で何のようだ!」

 「え? グレー君にフォーリ君…… 貴方達こそ何してるの?」

 「兄貴が悩んでるのにお前は〜!」


 いきなりポルカ先生の頭を小突いた男、俺は何故か涙が出てきた……


 「痛っ!」

 「また最近嬉しそうにしやがって、兄貴が女に興味を失ったっていうのによぉ」


 コイツら……


 「リュ、リュウ様……」


 隣にいるタムリーンさんが涙が出てる俺に驚いている……



 ポルカ先生はシスターと似てるから初めから親しい人のように感じてた。

 でも、少し幸の薄そうな暗い目をすることがあった理由は…… 嫌なものだった。


 ちょっと遅れたけど、出て行く。


 「おい! 人の女に何してくれちゃってんの?」


 ヤバい、ルイースの時が頭をよぎって俺の女設定にしてしまった。


 「お前は…… 確かフォルマップル国に捕まった男では…… 出て来たのか」


 フォルマップルの手先では無さそうだな……


 「今の様子だと日常的にポルカを殴っているようだな。 ポルカに土下座で謝れ、それで許すかどうか決める」


 大人しく従うとは思ってないけど。


 「バカだろお前。 平民が貴族、しかも中級貴族に謝れとは殺すぞ小僧」


 ほら、やっぱり。


 「ちょっと待て、フォーリ。 コイツはポルカの生徒だ、恋人じゃないぞ」

 「マジか? やっぱりポルカ、俺かグレーを選べ、そしたらお前も晴れて中級になれる」


 ふ〜ん。

 やっぱりポルカ先生を気に入ってて、振り向いてくれないから暴力を振るってたんだ……


 「嫌です。 禁断の愛と言われようと私はリュウを選びます」


 乗ってきてくれた……


 「ふざけるな! お前達は恋人じゃない」

 「そ〜だそ〜だ。 だったらキスしてみろ!」


 アホか……

 

 って、ポルカ先生、口を尖らせて目を瞑ってるよ。


 小声で話す。


 「何やってんの、先生」

 「仕方ないでしょ、早くしなさい」


 とりあえず、指でポルカ先生の瞑った目を広げた。


 「なっ…… 目を開けたままがお好みなの?」

 「何でそうなる。 キスなんかしたらキャンセル先生にジャンセルされちゃうよ」

 「逆よ、逆。 ジャンセルがキャンセルよ」


 どっちでもいいけど、お子様のチューじゃないんだから口を尖らすのは止めてほしい。

 ちょっとだけポルカ先生がゴンバー(ゴンバリメタス3歳)に見えるぞ。

 

 仕方ない…… 肉付きがいいポルカ先生の頬っぺたをつまんでグイングイン動かしてみた…… ブフッ、面白い。


 「な、何やってんのよ、もう!」

 「クッ、もういい! イチャつきやがって…… 生意気な平民に制裁を加える! 行くぞ、フォーリ」

 「ま、待て。 ソイツはかなりの剣の腕前と聞いたぞ」

 「ふっ、だがアイツは武器を持ってない、そして俺達は持っている!」


 懐に隠してた長ドスのような短剣? をスラっと抜く男。


 「や、やる気だな、グレー!」


 もう1人も同じように短剣を鞘から抜いた。


 その時、ザッとザッカーさん達が出て来る。


 「何をしているのですか? コルツ・グレー君にフォーリ君、そんな物騒なものを持って」


 ギョッとした表情の双子……


 「あっ、ザッカー様…… えっ、どうなってんの?」


 グレーはフォーリと顔を見合わせた。

 ザッカーさんが話す。


 「貴方達にはフォルマップル国の間者の疑いがかけられている。 コルツ家全員が疑られてる訳ではないが、貴方達次第では分かりません。 大人しく取り調べを受けてください」


 ザッカーさんは助けたつもりでも、それだとポルカ先生の問題は解決できてない。

 だいたい短剣を隠し持ってポルカ先生に何するつもりだったんだ。


 「そんなのは後にしてくれ。 俺はポルカを殴ったコイツらと喧嘩する」

 「ザ、ザッカー様。 何のことかは分かりませんが、無礼が過ぎるその男を私達が制裁を加えるのを許してください」


 ザッカーさんは少し考えてから話した。


 「分かりました。 取り調べは制裁の後にいたしましょう」



 不用意にスタスタと双子に近づくが、2人は覚悟さえなかったのかあたふたするだけ。


 振りかぶっての当たり前のストレートを身体を窄めて逃げるフォーリ。

 ストレートを止め、短剣を待ってる右手首を掴んで捻りながらの投げ。

 手首を離さなかったのであり得ない方向に捻られる、そしてゴギッ、っと音がした。 


 「アギャァ〜!!」


 大音量の叫び声にグレーが怒る。

 小走りに短剣を振りかぶる!


 が、その前にフォーリから奪った短剣をグレーの足の甲に投げる。


 短剣はブスッと刺さり、そのままグレーはすっ転んだ。


 転がった短剣が俺の足元に転がってきたので拾ってうつ伏せで倒れてるグレーをひっくり返してマウントポジションになる。


 「さぁグレー君、目、鼻、耳のうち、どれを失うのがいい? ちなみに俺は目が得意だ」


 実績を積んでます。


 しかしその時、ポルカ先生が俺にタックルして来た…… が、俺を退かすには体重が足りない。


 「リュウ! もういい、止めて!」


 勢いよく転んだポルカ先生が俺に言った。


 「ヤダ」


 コレはラリィお得意の、無下だらけの受け答え。


 「な、何で…… 止めなければ別れる!」

 「その設定はもう古い。 さぁ、さっさと選べ、選ばなければ俺の得意の目にする」


 ガッと、こめかみ辺りを短剣の柄の部分で叩く。


 「ザッカー様〜! ギブソン様〜! お助けを〜!」


 悲鳴に近いグレーの叫び。

 ……確かに王子の私兵をしてるくらいだ、普通の兵士よりもずっと強いだろう。


 「ハハハハ、この青年は貴方達よりよっぽどこの国に必要な人です。 だいたい今は制裁中なのでは? どうぞ続けてください」


 絶望的な顔になるグレーと何故かポルカ先生。

 フォーリは蹲って手首を押さえてる…… でもチラチラとこちらを伺う。


 「リュウ君、お願い…… もういいから止めて」

 「コイツはさっき先生を叩いた、だからコイツは許さない」


 フォーリは手首が壊れただけで許してあげる。 ……そのフォーリは俺と目を合わせないで空気のように気配を消してる。


 「時間切れ」


 短剣で左目を抉るように…… っと、ポルカ先生がグレーの顔に覆い被さるようにしてきた。


 「お願いします…… リュウ君……」


 大泣きのポルカ先生にグレー、ついでにフォーリまで声を出して泣いてる。



 ふぅ、仕方ない……

 ポルカ先生を抱き上げて話す。


 「先生さ、俺に任すんじゃなかったの?」

 「グギャアア」

 「えっ? 何?」


 と言って下を確認するポルカ先生。


 グレーは俺の踵での蹴りで鼻を砕かれた。

 手応え…… じゃなくて足応え的に鼻の骨折。

 

 「ん? ぶつかっちゃったみたい。 あ、一応、注意だけはしておくね」


 鼻血を出しながらのたうち回るグレーと手首を押さえて固まってるフォーリに一言。


 「宣言通り今回は鼻を壊した。 次、ポルカ先生に手を出したらお前達の兄貴を含めて3人の目をもらう。 ……まぁ、今日は優しいポルカ先生に感謝するんだな」


 涙を流して鼻を押さえるグレーと目を逸らして固まっているフォーリ、とりあえずこれ以上ポルカ先生に絡む根性はなさそうに見える。


 「ハハ、終わりですね。 それではフォーリ君にグレー君、今からお城の地下で取り調べを受けてもらいます」


 とザッカーさんが言い、タムリーンさんを残してお城へと向かった。




 家に帰って来ると、ポルカ先生がタムリーンさんに問いかける。


 「あの…… 2人はどうなるのでしょうか?」

 「きっとリュウ様の件が収まれば、家に帰ることも可能でしょう」

 「え…… それでは何の関係もない2人がずっと拘束されると言うことですか?」

 「リュウ様がサンカルムに居ることを知ってしまった。 そして彼等はリュウ様の味方ではありません」

 「そんな……」


 ポルカ先生…… 優しすぎるだろ。


 「先生、何で止めようとしたの? 兄貴には裏切られて弟達には暴力を振るわれて、止めようとするなんて可笑しいよ」

 「貴方が恨まれるのが嫌なの。 後ろから狙われたら貴方だってただじゃ済まないのよ」

 「アイツらに後ろから狙う度胸はないよ」

 「それは絶対ではないわ。 貴方はいつも自分を犠牲にして人を助けようとする、嬉しいけど悲しいよ……」


 実際、頭のいい奴なら口だけでポルカ先生へのイジメを止めれるかも知れない。

 それでも平民が貴族に意見すれば、それなりに角は立つはず。


 「とにかく俺は俺のやり方がある。 大切な人を守れるなら俺が傷つくのは構わない。 でも俺…… 結構強いよ」

 「うん、知ってる。 でも貴方が傷つくのが嫌な人が居ることは分かって。 貴方は天然の女たらしなんだから女の人はほとんどよ」


 天然の女たらしじゃないっての! ラリィの影響を受けるなと言いたい。


 「ふふ、リュウ様、私も守ってね」


 タムリーンさん⁈


 「もちろん、美味しい料理のお礼が出来るね。 でもザッカーさんに言っちゃうよ」

 「それで別れたらリュウ様に責任を取ってもらおうかしら、ふふふ」

 「な、内緒で守ります」


  

 ポルカ先生の問題はこれで解決かどうかは分からない。

 でも、きっと俺はポルカ先生への暴力は絶対に許さない。

 裏に残してきたポルカ先生に似てるシスターやローチェが心配で堪らなくなるからだ。




 そんな暇な日々を過ごして、ついに呼び出しがある。


 ザッカーさん達と馬車でお城へ向かう。


 

 コトコトと音を立てて走る馬車、キャビンの中ではギブソンさんとタムリーンさんがフォルマップルでの潜入先のことを話してる。

 どんな話かと言うと……


 サンカルムは至る所に水路があるせいか、それとも下水道がしっかりしてるのか分からないが、平民の下町でも匂いがない。

 しかし、フォルマップルの王都ジーンライネの下町はとても匂うらしい。

 それだけが一番嫌だったと2人で笑いあっていた。


 ちなみに俺は匂いを感じるとかそれどころじゃなかった。

 街中引き回しの刑でしか下町には入ってないからだ。

 基本的にはいい匂いの部屋で、いい匂いを漂わせたルイースと一緒に居ただけだからだ。



 あ〜、あれから俺の下半身は元気にならない。

 ここまでが拷問のセット内容なのだろうか……

 

 『え〜と、拷問のチーズバーガーセットをお願いします」

 『はい、サイドメニューはノーおチンで宜しいですか?」


 ノーおチン! 何だそれ? ……まぁいいか。

 頷く。


 

 ラザノフ……

 俺があの時に頷かなければ、俺のおチンはノーにならなかったのか……? 


 それとも他のサイドメニューでも同じ結果だったのか……



 『拷問のドラ焼きセットをください』

 『はい、かしこまりました。 サイドメニューは静香チンで宜しいですか?」


 ドラ焼きだけに静香ちゃん、なのか?

 まぁいい、頷く。



 ラザノフ……

 俺があの時に頷かなければ、俺のおチンは静香チンにならなかったのか……


 ……って言うか、拷問のサイドメニューはこんなのしかないのかよ!


 

 ……あるよ。


 ん? ……天の声か⁈


 拷問ドラ焼きセットのサイドメニューは、他にのび太チンがあったぞ。


 クゥ〜、それが当たりか〜!



 そんなことを考えてる間にも馬車は進み、やがて止まった。


 城の中にある馬車を止まる場所に着くと、前と同じように執事の人? に案内されて城の一室に入った。


 『お待ちください』と出て行った執事とザッカーさん。

 皆でテーブルの後ろに立つ。



 この部屋は椅子が5個並ぶ長いテーブルが向かい合わせに6つある部屋で会議室っぽい。


 ただタムリーンさん達も俺も座って待てない偉い人が来るらしい。


 それまで雑談。


 「リュウ様、相手の方が入って来たら挨拶をお願いします」

 「ええ。 ……相手は誰ですか?」

 「ふふ、ザッカー以外は教えてもらってないのですよ。 でも、偉い人には違いないので、失礼のないようお願いします」

 「え〜と、俺は昔、存在自体が失礼な奴だったんですけど……」

 「大丈夫、今は立派な青年に見えますよ」


 ……と、言ったのはギブソンさん。

 背は低いが横幅があるので、ミニラザノフみたいな人だ。


 「その正装も似合ってますよ」


 ユキナに買ってもらったタキシードではなく、新しく新調した服。


 「タムリーンさんのドレスも似合って美しいですよ」


 

 タムリーンさんのドレス


 何か赤い服がビーっとなってスカスカな感じでとても綺麗なドレスだ。


 ……え、綺麗に思えない? 

 仕方ない……


 凄い赤い服がバーってなって何か変な感じでめちゃ綺麗なドレスだ。


 ……これでいい?




 コンコンっとドアを叩く音がして、執事の人を先頭にゾロゾロと男達が入って来た。

 その中の1人、キャプトマン王子が俺に紹介してくれたのは、リズーン国のトゥルフ第一王子だった。


 訳がわからないけど、とりあえず俺も名乗った。


 「ほう…… 聞いていた以上にいい男だな…… それに予想以上に背が高い」


 俺をキャプトマン王子から聞いていたのか?

 それにしても華妖の眼の効果は絶大だな…… 半年過ぎるとガッカリされるけど。


 キャプトマン王子の指示で俺と王子2人が向かい合わせで座る、他は後ろで立っている。

 俺の後ろは王子の私兵のザッカーさん達、王子達の後ろはトゥルフ王子の護衛達。


 

 トゥルフ王子

 亜人で顔に赤と灰色の模様があり、少し耳が尖ってる。

 キャプトマン王子とは同学年で面識はあったそうだが、じっくりと話したのは今回が初めてらしい。


 護衛達も特徴的だったので少し……

 4人居るが、一癖も二癖もありそうな面々。

 向かって右側のやたら首が長い人が目立つし怖い。

 隣の人は背が高く目の横に目がある。

 つまり、目が4つあるので見られてる感が強い。 ……あまり見ないで。

 その隣は丸々と太ってて、何もしてないのに息遣いが荒く汗が噴き出てる。


 『ほら丸太君がこんなに頑張っているのに龍太郎君は真面目に掃除しなよ!』

 『アホか。 俺の方が掃除してたわ』

 『嘘つき! 丸太君はこんなに寒いのに汗だらけで頑張ってるじゃない』


 見るとゼェ、ゼェ、言いながら汗が滴っている丸太がいた。


 『丸太は息をするだけで汗をかく男だ。 掃除は全くしてない』

 『ヤダ…… 最低!』


 っと言うように丸太は汗と仕事量が比例しない男だったが、周りには仕事をめちゃ頑張る男だと思われてた。

 この人も同じだろう。


 最後、左は凛とした女剣士が居る。

 他は武器を帯同してないが、この女剣士だけレイピアのような剣を待っている。

 


 リズーン国のトゥルフ王子が話す。


 「其方には依頼としてある男と戦ってもらう。 報酬は其方が貴族となる後ろ盾。

 フォルマップルにも手は出させないよ」


 ん? 何、勝手なこと言ってんの、この人。


 「え〜と、俺は貴族になんてなりたくないんですけど」


 と言うと、王子の後ろの面々は不満顔。


 「リュウ、君を守るには一度平民のリュウを消さなければならない。 この依頼さえ上手くこなせばもうフォルマップルの言いなりにならなくていいんだ」

 「キャプトマン王子、俺はフォルマップルの言いなりになった覚えはないよ」


 本来なら言いなりになってるのはナラサージュだとはっきり言いたい。 ……が、お世話になった人が多過ぎる。


 「それは分かっている。 君が裏に帰ろうとしてるのもザッカー達から聞いている…… だけど僕は君にナラサージュでやってもらいたいことが沢山あるんだ」


 まぁ、一緒に暮らして飯も同じなら俺の考えは伝わっているよな……


 「勝てたらリズーンの貴族でも歓迎するぞ」


 今さっき俺、貴族になりたくないって言ったよな⁈


 「貴族は遠慮します。 依頼はいいですよ、その男を倒すだけですよね?」

 「ちょっと待て、リュウ。 僕やザッカー達は君を何とかしたい一心で動いて来たんだ。 依頼後でもいい、詳しい話を聞いてくれ」


 話はいいけど貴族なんて嫌だ。

 だいたい偉いやつは偉そうだから嫌いなのだ。

 まぁ、キャプトマン王子やユーリスは違ってたけど。


 「分かりました、話は聞きましょう。 それで、どうすればいいのですか?」


 その時、不満そうに聞いていた後ろの首長族みたいな人が意見した。


 「トゥルフ王子、少しだけその青年と話をさせて頂きたい」


 王子がニヤッとして頷いた。


 「私は王子の護衛を任されてるジョーだ。 お前は平民と聞いていたが?」


 ジョーか…… 平民とかって関係ある?


 「だから?」

 「態度が悪過ぎる! この方々はお前を助けようとしてる王子だぞ!」

 「キャプトマン王子はだろ。 そっちの王子は何か理があるから動いてるんじゃないの」

 「この! ……本当に平民かよ」


 トゥルフ王子はこの不穏な空気にもあたふたしてない。

 逆にキャプトマン王子はあっち見たりこっち見たりで落ち着かない。


 「お前は貴族なの?」

 「小僧…… リズーンの平民なら殺してるぞ」

 「お前が? 無理だアホだ」

 「ムギュウ〜!」


 怒りの頂点に達しそうだな。


 「フゥ、俺は確信した。 お前は俺達の仲間には勝てない」


 四つ目君の言葉。

 お仲間は強いらしい。


 「そんなのはどうでもいい。 お前達は貴族なの?」


 二度目の質問です。


 「そうよ。 私が中級で後は上級。 そして失礼な貴方は下級でもない平民」


 女剣士が応えた。


 「そう…… それで何が違うの? 失礼なところまでそっくりじゃん、俺達」


 俺は偉い立場で偉そうにしない人は尊敬する。 ……例えばキャプトマン王子やザッカーさん達だ。

 でも、救ってやるから俺の自慢の部下と勝負してみろ、みたいな態度でくるなら相手が誰であれ思い通りにはさせない。


 「リ、リュウ、もうその辺りで止めてくれ」


 リズーンはいい国と聞いていたけど、こんな貴族が上なのかよ。

 まぁ、これ以上はキャプトマン王子に迷惑がかかると悪いから止めとくか。


 「いや、構わんよ。 ある程度は聞いていたからな、寧ろ聞いていた通りで笑えるくらいだ。 ワッハハ〜」


 誰に何を聞いたんだ。

 もしかして、ガルフさんとか竜族の人? ……まぁいい、さっさと終わらせてしばらくレイモンに戻ろう。

 そう思うと兄やシスターやローチェ、ソマルさん一家と会えるのが楽しみで仕方ない。


 「それで依頼の内容を詳しく教えてください」

 「グリモス、教えてやれ」


 グリモスとは四つ目の人。


 「かしこまりました。 ……お前は今からサンカルム郊外のブエネゼッタという地に馬車で向かってもらう。 そこで廃校があるので入って2階に上がってくれ、そこに我らが仲間が待っている。 貴様では絶対に勝てん仲間がな」

 「分かった」


 さぁ、さっさとこの変な依頼を終わらせてラザノフ達に事情を話して裏に帰ろう。

 そう思いスッと立ち上がった時に丸太が初めて喋った。


 「ちょっと待った。 行く前にお前はさっきの非礼を詫びて行け」


 何だコイツ…… っと思い丸太をギロッと睨めつけると、ビビった丸太の汗が噴き出た。 

 

 ……って嘘つきました、初めから丸太は汗だくです、仕事はしてませ〜ん。


 「ブフフッ」


 あっ、笑っちゃった。

 まぁいい。


 「どうせお前達のお仲間に俺はやられるんだからもういいでしょ。 よっぽど強いお仲間ちゃんにさ」

 「バカにしてるようだが俺達の仲間は俺達全員より強いぞ、アホが」


 首長族君…… アホ返しされた……


 「それは俺も同じだ、アホボケが」


 もうここまで行くと、俺と護衛達以外はクスクスと笑っている…… 後ろからも聞こえるぞ。


 『もう許さん』っとトゥルフ王子を見た首長族。

 トゥルフ王子かニヤニヤして頷くと、首を俺の方にヒョロヒョロ〜っと伸ばして、大口を開けて『ブハッ』っとドリルのような物体を吐いた!


 同時に丸太はさっきから汗を拭いていた小汚いハンカチっぽいのを投げる!


 俺はこの時点で確信する。

 コレはセット。

 つまり、コイツらと戦うのはサイドメニュー!


 なんて考えたのがいけなかったのか、土の盾を出したのはいいが……


 久しぶりの土の盾、いつもは小屋を作るのに出していたため、柔らかめになってしまったのだ……


 土の盾は汗つきのハンカチはブロックしてくれた、でも…… ドリルは勢いは失せたが土の盾を突き破ったのだ。



 ここからはスローモーションで……


 コロコロとタムリーンさんの足元に転がるドリル、しかし俺の視線はタムリーンさんの赤いドレスを見ていた。


 ドロドロの土が飛び散ってタムリーンさんのドレスにビシャーっとかかる……

 その時、『ヒィ〜、私の一張羅のドレスになんてことするのよ〜!』っと泣きそうな目をしたタムリーンさんと目がバッチリ合ってしまったのだ……

 

 首長族め〜! 一張羅のドレスを狙うとは許さん!

 今こそ、毎日の食事のお礼の時!


 バッと椅子を掴んで首長族に投げる!

 それをはたき落とす首長族だが、ジェットで俺も付いて来ている!


 空中でサッカーボールキックを首長族の頭に蹴り上げる。

 しかし、長い首がクッションの役割りになっているのか、元の位置まで戻ろうとする首長族の顔! ……が、回し蹴りで再度顔を蹴り上げる(ここまでがセット内容となっております)と、やっと首長族は吹っ飛んだ。


 次!


 今の攻防をしっかりと見ていたっぽい四つ目君の目を俺の4本指が襲う!

 

 しかし、四つ目は腕でカバー!

 構わず打ち抜きそのまま腕を掴む。

 そして捻りながらの投げ!


 ドカーンと椅子を巻き込み倒れた四つ目、そのまま腕を抱えてのたうち回る。


 次!


 振り向きざまに仕込んでいた虎峰を丸太の太い腹に撃つ!

 一瞬、効くのか? っと思ったけど、いつもと同じスッパーンという音がして丸太は女剣士を巻き込んで吹っ飛んだ。


 ……10秒くらい?


 「ほらね、言ったでしょ」



 驚愕の表情で見つめる王子2人。

 だけど俺の席は反対側なので反対側に回ろうとするが…… 途中、タムリーンさんと目が合ってしまった。

 複雑な表情で俺を見るタムリーンさん、綺麗なドレスは首長族のドリルのせいで見る影もない。


 仕方ない……


 「酷いことするよね、一張羅なのに…… それでも敵だけは討ったから」

 「えっ、でもこれはリュウ様の……」


 俺も、ちょっとそうかな〜くらいは思っていたさ。


 「依頼後に新しいドレスをプレゼントさせてください。 いいですか、ザッカーさん」


 一応、女性へのプレゼントなので付き合っているザッカーさんに聞いた。


 「ハハ、どうぞ、お願いします」


 パァ〜っと嬉しそうな顔になったタムリーンさん、機嫌が直って良かった。

 今度からは土の盾は、硬め濃いめで注文しよう。


 「ちなみに一張羅ではないですよ。 私だって家に帰ればお嬢様って呼ばれているのですから」


 そう言えばルイースと同じ中級って言ってたな……


 「一張羅だから弁償しようとしたのに…… お父様に買ってもらってください」

 「一張羅、一張羅です。 本当は一張羅で正解です」


 本当かよ…… まぁいい。 ……この前、泣かせたポルカ先生の分も買ってあげよう。

 



 ザッカーさん達がトゥルフ王子の護衛達に回復薬を飲ませて、皆んな所定の位置に着いてから話を再開させる。


 それでも四つ目と丸太は苦しそう……


 「いや、今の攻防を見てアイツが言った『普通なら勝てないでしょう』の意味が分かった気がするよ」


 俺を知ってるやつで1番強かったやつは白い男。

 亜人でもあるし可能性は高い。


 「ただ僕の知る男の中では最強。 彼のフィールドなら彼が勝つと思っているよ」


 確かに俺も海の中ならゴルゾフさんにも余裕で勝てる。



 依頼内容はブエネゼッタに四つ目君と女剣士ちゃんと向かい、廃校でお仲間さんと戦う。


 武器を使うのは自由だが、殺しはなし。

 これがたった1つのルールらしい。


 

 「さぁ、行きましょう」


 っと言う女剣士ちゃん、さっきと違い柔らかい眼差しに感じた……


 


 

 

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