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80/80

80.エンシスハイムにて

 クーデターから3週間後、俺は治癒師さんの頑張りですっかり回復。早々に魔族の国エンシスハイムに行くことになった。


 ヴィンセントや、今では新国王の側近となった元アガサギルドのメンバーたち。次期国王候補になったグレイブとロッズ――俺は彼らとの別れをそれなりに惜しみつつ、ルーファスとの新しい生活を楽しみにギベオン王国を去った。



 そしてエンシスハイムで俺を待ち受けていたものは――。


「お帰りなさいませ、魔王様! 我ら親衛隊一同、ルーファス様の無事のご帰還、誠に喜ばしく思っております!」

「すごいですルーファス様、単身敵国に乗り込んで人間との戦争を止めてしまわれるのですから!」

「キャーッ! ルーファス陛下こっち見てっ!! 抱いてーっ!!」

「何あの女、ルーファス様にくっついて忌々しいっ」

「ルーファス様がご結婚ですって!? あの女っ、許せないっ、ぶっ殺してやるっ!」


 エンシスハイムの王城――いわゆる魔王城。そこに到着した時、俺はてっきり魔王にあいさつでもするのかと思っていた。一応レイラはヴィンセント王の養女としてルーファスに嫁ぐ体裁があるわけだし。だから俺は魔王城に入ることを、何ら不思議には思っていなかった。


 しかし城に入るとルーファスへの熱烈なまでの帰還の歓迎と、レイラに向けられたあからさまな殺気。

 城内は見渡す限り女性ばかりで、俺は彼女たちから向けられる殺気で針のむしろ状態。


「……ルーファスさん、聞いてもいいですか」

「言おうとしていることは分かってるよ――そうだ、私が魔王だ。皆には男だと思われているから、申し訳ないけれど君も引き続きレイラとして女のふりをお願いしたい。我が妻よ」

「……女の人ばっかりなのは」

「この城には女性しかいないんだ。皆私を男だと思い込んでいる熱烈なファンで――もしかしたら君につらく当たるかもしれないけれど、何とか堪えて欲しい。すまない」


 え、何それ聞いてない。

 ルーファスが魔王ってことも聞いてないし、魔王城には女しかいないなんて……。とにかく女受けの悪いレイラが、アイドルの如く魔王として君臨するルーファスと結婚したらどうなるか? 答えは――ファンに八つ裂きにされる、である。



◆◇◆



 今思えば――おかしいと思うことはいくつかあった。


 ルーファスがただの魔族の貴族だとしたら、親衛隊なんているわけがないし、ギブリン大臣に対して結構強気の態度で接することが出来るはずがなかった。


 それに単なる魔族の貴族と人間が結婚するくらいでは、和解の象徴になるはずがないではないか。

 あぁだから俺はヴィンセント王の養女になっていたんだな、と納得。魔王と養女にとはいえ王女が結婚すれば、そりゃ和解の象徴にもなるわな。


 何でそんなことに気が付かなかったんだ、俺。

 ……仮に気が付いたとしても、ルーファスが魔王という理由で結婚を取りやめるのかと聞かれたら、答えはノーだけれど! せめて先にちゃんと知っておきたかった。こっちにも覚悟というものがある。



 女装してレイラとして生活することは、別に問題ではない。むしろ、美しいレイラを晒せるのは嬉しい。しかしこの魔王城には女しかいない。俺のレイラはすこぶる不評。何をやっても陰口をたたかれる。

 俺のスキルはどれも男にしか効果がないから、この城内では全く意味をなさない。男相手なら、スキル“魅了”で好感度爆上げさせることが出来るというのに。女相手では……。


「うぅ、ルーファスさんのファンの民度が低い……」

「本当に申し訳ない」


 本当に申し訳なさそうに謝るルーファス。いや、ルーファスが誤る必要はないんだけれども。


 連日俺はファンの女性方から厳しい洗礼を受けていた。

 魔王ルーファスの妻である俺に対して、あからさまに危害を加えるようなバカなことはしない。重要な連絡の伝達がされないとか、サラダに青虫が付いているとか、持ち物が無くなるとか、陰口叩かれるとか、その程度のレベルだ。しかし数が多い。


「うー、流石に気が滅入りますよ」

「女からの評判は駄目でも、男からの評判はいいじゃないか」

「勇者殺しの聖女とか言ってるあれですか? そうは言っても俺が直接手を下したわけじゃないけど……んーでも、何だかんだ言って俺のせいで勇者たちは全滅したわけだからやっぱり俺のせい?」

「ふふふ、1人で勇者を全滅させるとか私の妻は凄いね」


 俺はルーファスに膝枕をしてもらいながら、猫のように彼女に愛玩されていた。憂鬱な気持ちも彼女の顔を見ると吹き飛んでしまうから、不思議だ。


「色々大変だけど、俺はルーファスさんと夫婦を辞めるつもりないですからね」

「良かった、私もずっと君と夫婦でいたいんだ」


 そうやって笑い合えるのが何よりの幸福だと、今はただただこの平穏を大切にしたいと心から願うばかりである。

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これで本編完結とさせていただきます。

第二部を書くかはまだ悩み中ですが、『番外編』は来週末あたりから少しずつ投稿して行こうと思います。


ただ、このままこの作品ページにつなげて書くか、シリーズにして別ページにするか決めていません。

そのため、こちらの作品は一度「完結」扱いにさせていただきます。



一応番外編として考えているのは、


Sideルーファス

ルーファスとヴィンセント、大臣の関係

アリアとの関係

レイ君が途中からルーファス大好きっ子に変貌していった本当の理由

ルーファスが隠している色々なこと


Side元の世界の帰った勇者方

元の世界に帰れたの?

元の身体は無事だったの?

メス堕ちしていたアヤトはどうなった?

タケルの身体って……


その他

ロッズ&グレイブどうなった?

何度も出てきた爆弾って結局何?

ファームの皆は無事?


辺りです。

もしほかに書いて欲しい番外の内容がありましたら、感想でリクエストお願いいたします。


それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!


【追記】

番外編書き始めました。シリーズ設定しましたので、最上部のリンクから飛んでください。

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― 新着の感想 ―
実は主人公マゾ? 相手を想っていても毎日数の多い嫌がらせを受けて平気なのは異常なのよ。 性別公開したほうが双方のためでもあると思うけど、ハッピーエンド。。。?
[一言] すごく面白かったです!
[良い点] 遅ればせながら、完結まで読ませていただきました! 最後、女たちの意地悪には笑いましたが……ルーファスさんと幸せになれて良かったです。 思い切りの良い意外な展開の連続、とにかく面白かった…
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