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ゴミ箱を投げつけられて死んだ僕がドラゴンに転生しました。  作者: おもち
第六章:ヘタレのジル、神の本拠地へ。
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誰も、欠けることなく

急な下り坂の隠し通路から落ちたエリシアは、小さく声をあげた。


「いった…た…た…」

「ぅおい…! お前ら退け! 重ぇ!!」


そんな声がエリシアの下から聞こえて、エリシアはのそのそとゼアスさんの上から降りた。

幸い、エリシアが地面に叩きつけられたわけではないので、お尻以外そんなに痛いところはなかった。

エリシアの横で、ソフィアもゼアスから降りた。


エリシアとソフィアの下敷きになっていた


「っ…たくよー…」


ゼアスさんはぶつくさ言いながら腰をおさえて立ち上がった。


「またあの急斜面を登らなきゃならねぇじゃねぇか」

「ゼアスおじさんがもうちょっと踏ん張ってくれればなぁ…」

「うるせぇ、無茶言うな。ふたりも勢いつけて滑ってきやがって」

「言い訳はいいよぅ」

「てめぇ…」


ゼアスさんとの言い合いはこれくらいにして…。

どうやって登ろうかな…。

エリシアはそう思いながら、後ろを振り返った。

エリシアたちが飛び出してきた隠し通路の出口は、意外と高いところにある。

壁もでこぼこしてるし、力がある人なら登れるかもしれないけど、正直エリシアには無理だ。

シルヴィとかだったら、ひょいひょい登っちゃいそうだけど…。


「エリシア、ソフィア、来い。俺が押し上げてやる」

「おぉー、流石ゼアスおじさん」

「てめぇわざと棒読みしやがったな」

「にしてもあの扉の先は、何のための部屋なんだろうね? あんな変な場所に作るなんて…」

「…さぁな。ただ、何か神の弱みを握れるかもしれねぇ」


ゼアスさんはそう言いながら、ソフィアを通路の中に押し上げた。


「先に行ってくれ! その斜面なら登れるだろ」


ゼアスさんのその言葉に、ソフィアは小さく頷くと、細い通路の暗がりの中に消えていった。


「次はお前だエリシア」

「ゼアスおじさんは来ないの?」

「おじさんじゃねぇ。俺も後から行く」

「登れるの?」

「俺をほかのひ弱な魔導師共と一緒にするな」

「…ふーん…?」


ほかの魔道士についてはエリシアもよく知らないからわからないけど、ゼアスさんは確かに、体系的にはギルドの人たちの中でもしっかりとしている方だ。

大剣使いである、レインさんのほうが線が細いようにすら見える。

エリシアは、ゼアスさんの言葉を信じてゼアスさんに持ち上げてもらい、ゼアスさんを踏み台にして通路へと入った。


斜面は急だけど…これくらいなら人間の姿でも登れるよね!


エリシアはそう判断すると、ときたま四つん這いになりながらも斜面を登り始めた。


滑り落ちてきた斜面をよじ登り、やっとの事で小さな扉の前にたどり着く。

そして、その中に体を丸めながら入った。

入口はとても狭く、エリシアでも通るのはやっとだった。

もしかしたら、ゼアスさんは入ってこられないかも…。

小さな扉のその内側はそこまで狭くはなく、天井はゼアスさんが普通に立っていても頭も当たらないくらいに高かった。

そんな部屋の中、エリシアよりも先に到着していたソフィアが立っていた。

じっと、何かを見下ろしている。

部屋は全体的に暗く、よく見えない。

けれど、部屋の奥に青緑色に光る物体が三つほど浮いているのは見えた。


「…ソフィア、ここは…なんの部屋なの?」


エリシアがソフィアを見上げながらそう問いかけると、ソフィアはよくわからないというように首を横に振った。

そんな時、エリシアがついさっき通ってきた扉の方からうめき声が聞こえた。


「…」


エリシアとソフィアが振り返ると、そこには案の定、狭い入口に突っかかった…というか、挟まったゼアスさんがうつ伏せで倒れていた。


「くっそ…やっぱ狭すぎるな…」

「ゼアスおじさんが太ってるからじゃない?」

「太ってねぇよ! ちょっと体格がいいだけだ! っつーか助ける気ゼロかよ!?」

「しょうがないなぁ」


だいの大人の男が部屋の入口に挟まってわめきたてる様子は、なかなかに面白かったけど、今はそんなこと言ってる場合じゃなかった。

エリシアは、ゼアスさんの片方の腕を掴んで、体を引き抜こうと引っ張る。


「い…いででで!!!」

「我慢してよ〜!」

「っつーか俺、入れたとしてどうやってこっから出るんだ!?」

「頑張れば出れるよ多分!」

「曖昧すぎんだろ!」


言い合っているうちに、徐々にゼアスさんの体は内側へとずるずる入ってきて、そして地面に埋まった野菜を収穫するかのようにぽんっと入口の穴からゼアスさんが抜けた。


「いってぇ…」


ゼアスさんは、その場でうずくまって骨盤の辺りを摩っている。

エリシアが手を差し伸べるとゼアスさんはエリシアの手に掴まって立ち上がった。


「んで…なんの部屋かわかったのか…?」


既に疲れ果てたようにゼアスさんはそう聞く。

その問いかけに、エリシアは頭を振った。


「ゼアスおじさん、思ってたよりも来るの早かったんだもん。目が慣れるよりも先におじさんが入口に突っかかったよ」

「だからおじさんじゃねぇっ…て、何だありゃ?」


ゼアスさんは、部屋の奥であおみどに光る三つの物体に目を凝らした。

そして、一歩を踏み出そうとすると、ソフィアが両手を広げてゼアスさんの歩みを止めた。


「…? どうかしたのか、ソフィア」


ゼアスさんのその言葉に、ソフィアは小さく頷く。

そして、膝を曲げて地面につき、地面に伏しているなにかに視線を向けた。

その何かに、エリシアとゼアスさんも視線を向ける。

そして段々と暗さに慣れてきたエリシアの目が捉えたもの…それは、見覚えのある水色の髪をもつ少女だった。


「え…? シル…ヴィ?」


エリシアはかがみ込んで、シルヴィに呼びかける。

けれど、シルヴィからはなんの返事もない。


「ねぇ、シルヴィ、起きて…」


エリシアがそうシルヴィを揺すろうとして手をシルヴィの肩に触れた時、エリシアは手に違和感を感じて引っ込めた。

そのエリシアの手には、べったりと赤い液体がついていた。


「…」


倒れ伏しているシルヴィは、身じろぎすらしない。


「ねぇ、ねぇ! シルヴィ!」


エリシアがシルヴィの肩を掴んで揺すろうとした瞬間、ゼアスさんがエリシアの手を掴んだ。


「待て、エリシア。微かに息してるぞ」


ゼアスさんは冷静な眼差しでシルヴィのことを見つめている。

そして、シルヴィの体をそっと抱き起こした。


「…ひでぇ怪我だな…こりゃあ…」


シルヴィの体には、無数の傷がついていた。

脇腹には深い刺し傷のようなものが、そして、体のあちこちには、切り傷がある。


「…誰が…こんな…」

「…神か…? けど、こんな狭い部屋で戦ったとも思えねぇし、ここまで弱らせてトドメを刺さずにここまで連れてくる意味もわからねぇ…となれば、ここは結構危険な場所なんじゃねぇか」

「…ねぇソフィア、シルヴィの怪我、治してあげられる?」


エリシアの問いかけに、ソフィアは頭を振った。


「…まだ、もう一度治癒が使えるほど、力が戻ってない…」

「そんな…。ゼアスさん、シルヴィを運ばなきゃ…」

「何処へだよ。シルヴィを抱えて斜面を登って、マアヤの所へ運ぶなんて不可能だぞ」

「じゃあ…じゃあ! どうしたらいいの!」


エリシアの目には、涙が浮かんでくる。

こんな所で、泣いちゃいけないって分かってるのに、それなのに鼻の奥がつんとして、目の前がぼやけてくる。


「俺がマアヤを呼びに行く。ソフィア、シルヴィの止血だけでしてやってくれ」


ソフィアは、ゼアスさんの言葉に小さく頷いてシルヴィの特に出血のひどい腹の部分から止血を始めた。

泣きそうになってるエリシアのことを、ゼアスさんは一瞥すると、大きな手をエリシアの頭に置いた。


「死なせねぇよ。全員揃って帰るぞ」


力強いゼアスさんの言葉が、エリシアの胸に響く。

エリシアはゼアスさんを見つめて小さく頷いたあと、零れそうになっていた涙を乱暴に拭う。

そして力強く頷いた。


「…うんっ…!」

最後まで読んでくださりありがとうございます!

ブックマークなど、宜しくお願い致します!

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