7.青い味
「これ、よかった」
夏哉は梅にここみんの新しいCDを差し出した。
「……もう自分で買っちゃた」
梅は近くに置いていたリュックサックから同じCDを取り出した。
「__はっ」
「だって、可愛かったから」
夏哉は手に持ったCD見つめていたところ、柏紫月が「あー、私聞いて見たいかも」と声を掛けた。
「ふ〜ん、いいね、ちょうだい。これあげるからさ、交換ってことで」
紫月さんはなにか浮かんだようで勝手に自己完結しつつ、手に持った映画のチケットを見せていた。
「あー‼︎私が貰おうと思ってたのに〜」
紫月の後ろの方で双葉檀がほんのり叫んでおり、蜜井裕晴はこうなったかとうっすら笑って見ている。
「あー、これなんか話題の」
テレビで見たなあと思いつつ言った。
「同僚の方に貰ったのだけれど、行けそうな感じの日がなくて__さ、どう?」
紫月はそして「交換しない?」と続けた。
「…………」
CDの値段と貰い物とで渋っていると……紫月さんは「うーんじゃあ____見ようか?未来」と言った。未来ってそういう風にも見れるのか?と思っていると「多少はそういうこともできるんだよね……内容はそこまで選べないし、私の見る未来は____不可逆だけれど、それでも良いならね」
絶対に見てもらわない方がいいが、興味が勝ってしまい「ではそれで」と話を受けた。
「どんな未来がいい?」
一応ねと言う紫月さんに「なんでも良いです」と返す。
「じゃあ、失礼するね」と言いつつ、紫月さんは右手で僕の左側の頰を、左手で右側のおでこに手を置いた。こういう形式なんだと僕は思い、僕らは紫月さんを待った。
しばらくして、紫月さんは少し汗をかいてきたあたりで手を離し、いつもより開いていない瞼でソファーに座りに行き、目をつぶった。何か声を掛けるかと、僕らは目を見合わせたが一先ずは待つということになった。そして僕は、紫月さん先に言ってくれよと思った。
二十分か三十分かして、紫月は目を開け、目で見て状況を把握すると「何から聞きたい?」と夏哉の方を向いて言った。
聞きたいことはそこそことあるが、とりあえず彼女の言う通りにしようと「何と言うのは?」と言いながら、夏哉は紫月の方に近づいた。
「答えるのは一つだけだよ」
まるで物語に出てくるなにかみたいだったが、”さっき何から聞きたい?“とか言ってなかったか?なんだ一つってと夏哉は思っていた。
「あー、じゃあ部活……とか?」
一瞬、進路のことが頭に出てきたが、確定するのを避けた。とはいえ、見ていれば変わらないような気もしているが……と半刻ほど前の言葉が思い起こされるのだった。
「部活…………いい線行くね__。偶には休みなね」
と言い、かくんとほんの少し彼女の頭が彼女の左側に落ち、「ごめんね〜、久しぶりでなんか思ったとおりにいかなかったー」といつも通りの彼女が話を再開させた。そんな紫月に「え、なんか大丈夫なんですか」と藤沢楽斗が声を掛けていた。彼は、荷物を片し終えたら場の空気が変わっていることに気づき『なにかあったんですか?』と周囲を気にかけつつ事情を聞いて心配して待っていたのだった。恋人である裕晴も遅れて紫月に話しかけ、「大丈夫ですよぉ〜……」と返されており、あんまりにも心配しているように憔悴しているように映ったのだろう、紫月は裕晴を手で摩っていた。だが、ほかの者にも紫月の様子はかなり気にかかったし、恋人である裕晴がそうなってしまうのもなにもおかしなことではないし、そんな裕晴の様子を皆『かなり心配しているな……』と思っていたため、手を摩られていることも当然の状況となっていた。
「あー、夏哉くんもごめんね」
とこちらを向いて言う紫月さんは疲れているのが窺える顔をしていた。
「……いえ、言い出したのは紫月さんですから」
と返す。なんだが、裕晴さんに見られている。
「__ありがとうね」
紫月を気にして不服そうな裕晴は、紫月に「いいのかよ」なんて言葉を言っていたが、紫月に宥められ、「迷惑かけんじゃないよ‼︎」と檀に頭をチョップをされていた。
その後、紫月さんは『今はほかの未来は覚えていないよ』『久しぶりで勝手がわからなくて、気をつけなくちゃだよね__まあ、やらないんだけれどねぇ』と言っていた。
そして、僕は映画のチケットと疲れ切った紫月さんの“未来”とここみんのCD交換した。その映画はその後に見に行ったのだが、かなり面白かった。そのため、僕は得をしたなと思い、映画はしばらくテレビや、人々の間などで話題にされることで果は結びと為るのだった。
自宅でCDを聴いていた紫月は、『可愛い……。夏哉くんって結構可愛いのが好きなんだな……。…………いや、それはわからないか』などと思いながらCDを楽しんだのだった。




