第二十五話 宿泊学習2日目
「うっ」
翌朝、俺は太陽の光で目が覚めた。
時計の時刻を見ると5:30。
起床時間の1時間程前である。
静かに窓の外を見ると朝焼けの空と昇る朝日が見えた。
「綺麗な朝焼けだな」
部屋にいる他のやつが起きないように小さくそう呟いた俺は外をぼーっと見た。
まあ部屋のやつって遥斗だけどな。
一応俺の部屋は遥斗と俺だけである。
ちなみに雫と薫ちゃんも同じく2人で同室である。
「何やってるんですかそこで黄昏た兄さんや」
その声がして後ろを見てみると起きた遥斗がベッドの上に座って俺のことを見ていた。
「お前びっくりさせんな」
「すまんすまん。いや起きたと思ったら窓の外見て黄昏ているから」
「黄昏れてねえよ。あと黄昏は夕方に使うものだから」
「へーえ。じゃあこういうときはなんと?」
「朝は彼は誰を使う」
「へーえ。って何で知ってるんだよ」
「国語得意だから。言ってなかったっけ?」
「初耳なんですけど。ちなみに中間考査は?」
「当たり前に100点。何なら中学から国語でミスしたことない」
「キッモ。国語100点はキモいって。日本人でも国語間違えるのに。てか中学からミス0とか」
「そうだよ奏汰君は国語の天才だからね」
「そうだな。って、うん?」
遥斗の言葉と一緒に部屋の入口の方に視線を向けるとそこには雫と薫ちゃんが立っていた。
「えっ。何で雫がここに?」
「奏汰君に会いたくて来ちゃった」
「私も遥斗に会いたくて・・・」
俺は時計で時間を確認する。
今はまだ朝の5:45。
起床時間より全然早いし、今は起きても自室にいなければならないはずだ。
しかも廊下には見回りの先生がいるはずだ。
でも何で2人はここにいるんだ?
「うふふ。奏汰君たら私達がどうやってここまで来たって考えてる顔してる」
「えっ、雫何で分かるの?」
「それは幼馴染だもの。長い付き合いだから顔だけで何を考えているかは分かっちゃうよ」
「へー。で、本当に2人はどうやって来たの?」
「それはね秘密だよ」
「そっか。俺に隠し事なんてするんだ。雫は幼馴染だから何でも話してくれると思ったけど・・・」
俺は俯きながらそう呟く。
すると雫は血相を変えて、慌てて話した。
「ちっ違う。私は奏汰君に隠し事なんてしないもん。えっと、言うから。ね?お願い機嫌直して。私、奏汰君に嫌われたら死んじゃうよ」
「分かったよ。言ってくれるなら機嫌は治るからそんな死んじゃうとか言わないの。俺だって雫が死んだら死んじゃうから。じゃあほら言ってみ?」
「あっ、奏汰君。言う前に一つだけ。私のこと引かないでくれる?」
「もちろんさ。雫の言う事を笑ったり、引いたりする訳が無い」
「分かった。じゃあ言うね。私は先生方の部屋にあった水に睡眠薬を入れて先生方が寝る前に部屋に置いときました。それを飲んだ先生方は全員寝てしまいました。なので監視もいないのでここまで来れた訳です」
雫がそう口にしたことを後ろでイチャイチャしながら聞いていた2人は雫を見て固まった。
俺も一瞬戸惑いかけたが理解することができた。
「どう奏汰君。やっぱり引いた?」
「いいや。むしろそんな方法があったのかと思ったよ。俺も雫に会いたいなと思っていたから、雫も同じような気持ちで嬉しいな」
「うふ、うふふ。そうだよね。そうだよね。やっぱり奏汰君とは気が合うね。奏汰君は私の事が好きだね」
「いやいや。そっちこそ。俺のこと好きだよな」
そんな会話をしながら雫と微笑み合う。
俺もちょうど雫と会いたいと思っていたので雫の方法は良いなと思った。
俺もやってみようかな・・・
そんな考えをしているそばでは遥斗と薫ちゃんがコソコソと何かを話していた。
「2人ともどうかした?」
「いっ、いやなんでもないぞ」
「うっ、うん。なんでもないから気にしないで」
「そう?」
結局2人がどんな事を話しているかは分からなかった。
◇◇◇
その後は雫と2人でいろいろな話をして過ごした。
これまでの生活や愚痴など様々な話で盛り上がった。
雫との会話は時間がすぎるのを忘れるぐらい楽しくて、気づけば起床時間10分前になっていた。
「あっ、奏汰君。そろそろ時間だから戻らないと」
「ええ、もうそんな時間か」
「続きは帰りのバスでたっぷり話そうね」
「うん」
「薫。そろそろ部屋戻ろう」
「うん」
「それじゃあお邪魔しました。また後でね」
「また後でね」
「うん。また後で」
「おう。また後で」
そう言って2人は自室に戻っていった。
2人が自室に戻った後、遥斗が呟いた。
「なあ、奏汰」
「どうした?」
「さっきの会話で言ってたことって本音?」
「さっきの会話って雫たちがここに来れた理由?」
「そう」
「ああ、あれは本心からの言葉だよ。雫がそんなに俺を思って来てくれた事が嬉しかったし、俺も同じように雫に会いたかったから嬉しかったって言うのが本音だよ」
「な、なるほどね」
「うん?どうかした?」
「い、いや。なんでもない。それより準備しようぜ」
「ああ、そうだな」
遥斗が何か言いたそうな顔をしていたけど何だったんだろうか?
まあ気にすることないと思った俺は朝の支度を始めた。
◇◇◇
起床時間となり準備を済ませて朝食を食べた後、俺達はキャンプ場を出発するためにバスに乗り込んだ。
今日の予定は山に登って山頂で昼食を食べた後、下山してバスに乗って帰るという予定だ。
なので山の麓まで行くためにバスに乗った。
30分ほどで山の麓に到着した俺達は、早速班ごとにまとまって山を登り始めた。
「奏汰君。自然がきれいだね」
「そうだね」
そんな事を言った隣の雫と会話をしながら山を登る。
ちなみに遥斗と薫ちゃんは前にいる。
2人とも楽しそうに山を登っている。
「あっ、奏汰君。リスだよ」
「えっ?どこ?」
雫にそう言われて、雫の指を指す方を見るとそこに可愛らしい2匹のリスがいた。
「ホントだ。夫婦かな?可愛いね」
「ウフフ。そうね可愛いね」
声に怒っているような感情が混じっている事を感じて隣の雫を見ると、雫の目のハイライトが消えていた。
「ウフフ。奏汰君はあのリスを可愛いって思うんだ。ふーん」
「雫?」
「あの夫婦のようなリスが可愛いんだ」
「ねえ雫」
「なーに?奏汰君?」
「リスより可愛い子が俺の近くにいるって言ったら誰か分かる?」
「奏汰君。もしかして別の女性がリスより可愛いって言うのかな?そんな子どこにもいないよね?ね?」
「君は誰のことを言ってるのかな?そんなの雫。君しかいないじゃないか」
「えっ!本当?奏汰君本当?私がリスより可愛いって思うの?」
「本当だよ。この世界の中で一番可愛いものは?って聞かれたら、すぐに雫と答えるぐらい雫は可愛いよ」
「うふふ。嬉しい。奏汰君がそんなに私のことを可愛いって思ってくれてるなんて。じゃあね、お返しに奏汰君は私が思う世界で一番カッコいい人だよ」
「本当かい?嬉しいよ」
そんな会話をしていると前にいた2人からの視線に気づいた。
「お前ら何やってるんだよ」
「何って。見たら分かるでしょ?雫が可愛いって話」
「それは見てたら分かるし、そうだなと思うけどさ」
「ねえ遥斗。私より雫ちゃんの方が可愛いって思うの?」
その声を聞いて、遥斗の隣の薫ちゃんを見ると薫ちゃんの目が暗くなっていた。
「それは薫の方に決まってる。雫ちゃんも客観的に見たら可愛いと思うけどさ、俺の一番可愛い子は薫に決まってる」
「ウフフ。嬉しい。じゃあさ、遥斗は将来私と結婚したい?」
「もちろん!」
そう遥斗は即答したのを見てふと思った。
(この2人婚約宣言してね?)
「ふふ。2人とも楽しそうだね」
「そっ、そうだな」
「ねえねえ奏汰君。奏汰君も将来は私と結婚してくれる?」
「それはもちろん。俺は雫と一生一緒にいるって約束したからね」
「うふふ。嬉しい」
そんな会話をしながら登っていく。
どちらも結婚宣言をしたような気がしたが、気にしないようにした。
会話をしながら山を登り始めて1時間半。
俺達は山頂へと辿り着いた。
「うわー。綺麗」
「そうだね。とっても綺麗だね」
山頂からの風景を雫と眺める。
この時期特有の青々とした葉が茂る山々と遠くに見える町や田園風景がとても綺麗だった。
他の班が着いたところでお昼ご飯を食べることになった。
お昼は事前に選んだお弁当を食べることになっていた。
「ここ良さそうだからここにしようか」
「うん良いな」
「良いね」
「良いね。流石奏汰君」
4人で座れるところを見つけて、そこに並んで座る。
左から俺、雫、薫ちゃん、遥斗の順に座った。
目の前には山頂からの景色が広がっていた。
『いただきます』
みんなでそう言ってお弁当を食べ始める。
俺は生姜焼き弁当、雫と薫ちゃんは海苔弁当、遥斗はアジフライ弁当を選んだ。
「う〜ん美味しい。綺麗な景色を見ながら食べると更に美味しいね。薫」
「うん。みんなで食べるから更に美味しいね」
2人の会話を聞きながらそうだなと思う。
「なあ奏汰。アジフライ一切れと交換で生姜焼き一枚くれないか?」
「全然構わないよ」
そう言って遥斗とおかずを交換する。
するとそれを見ていた雫が言った。
「あっ、おかずを交換するの良いね。奏汰君生姜焼き頂戴。私のおかずもあげるね」
「良いよ。じゃあ俺はちくわの磯辺揚げもらってもいい?」
「良いよ。はいどうぞ」
「ありがとう。はい、俺のもどうぞ」
「ありがとう」
こうやって、おかずを交換出きるのがみんなで食べるときの良いところだと思う。
そう思いながら雫からもらったちくわの磯辺揚げを食べる。
「どう?美味しい?」
「うん美味しいよ。分けてくれてありがとう」
「いえいえ。奏汰君が喜んでくれるならいくらでも分けてあげれるから」
「俺も雫が喜んでくれるならいくらでも分けるし、作っちゃうかな」
「そうだ!奏汰君。今度久しぶりに奏汰君の手作りお菓子が食べたい!」
雫がそう言ってそういや最近作ってないよなと思った。
俺はお菓子作りを昔、趣味としてやっていてよく雫に振る舞っていた。
「良いね。最近作ってないから作りたいな。何が良い?」
「え?奏汰菓子作れるの?」
「奏汰君はお菓子作りの天才だよ。昔よく食べてたけど何でも作れて、どれも美味しくて凄かったよ」
「へーえ。食べてみたいな」
「私もお菓子作ったりするから奏汰君がどんなの作るか気になる」
「じゃあ今度みんなで集まるか?」
「それ良いな」
「良いですね」
「’本当は私だけで食べたいし、一緒に作ったりしたいけど’うん。良いよ」
「じゃあ決まりね。今度連絡するから」
そうやって俺の作ったお菓子の試食会?が決まった。
久しぶりのお菓子作り。
しかも人に振る舞うので上手く作れるか不安だけど頑張りたいと思った。
そして何を作るか考えながら弁当を食べ進めた。
◇◇◇
お昼を食べ終えた後は少しゆっくりとしてから下山した。
そして下に着くとバスに乗り込み、後は帰るだけになった。
行きと同じ席に着くと、全員座ったかどうか先生が確認してバスは学校に向かって走り始めた。
帰りも2時間半ほどかかる。
バスに揺られてすぐに疲れたのか車内の生徒と先生は全員眠ってしまったようだ。
起きているのは俺と雫だけである。
それを静かに確認した雫は俺に小さい声で話しかける。
「うふふ。みんな寝ちゃったね。疲れてたのかな?」
俺は雫がそう言ってふと思った。
「雫また何かした?」
「うんうん。今回は何もしていないよ。本当にみんな疲れていたのかも」
「そっか」
俺は雫がまた何かしたのかと疑ったがどうやら本当に違うようだ。
「それよりさ、奏汰君も疲れた?」
「まあ、ほどほどに疲れたけど」
「それじゃあ」
その言葉の後、雫は俺の体を倒して、頭を雫の太腿の上に載せた。
「えっ、え?し、雫?」
「しっ。声が大きいとみんな起きちゃうよ」
「あっごめん。それより何でこうしたの?」
雫に声の大きさを注意されて小声に戻して雫に問いかける。
「うふふ。それはね私がこうしたかったからだよ」
「こうって膝枕?」
「それもだけどね」
その言葉の後、雫は俺の顔に顔を近づけて唇を奪った。
俺は一瞬頭が真っ白になった。
実際は1〜2秒程度のキスがとても長く感じられた。
「ウフフ。キスまたしちゃったね」
「えっ?何で?え?」
「ウフフ。焦っている奏汰君可愛いな」
「えっ?雫何でまた?」
「何でって前にファーストキスしたじゃん。その後ならいくらでもして良いよね」
雫のファーストキスという言葉に顔が赤くなる。
(あのキスは俺と雫両方のファーストキスだったんだ)
雫とファーストキスができたことに羞恥と安心感を抱いてなんとも言えない気持ちになった。
そんな事を考えてると雫がまたキスをしてきた。
今度はさっきよりずっと長い。
よく言うディープキスってやつ?だろうか。
羞恥と温かさなどの様々な感情で頭がおかしくなりそうだ。
「ふう。ご馳走様♡」
「し、雫?」
「ウフフ。瞳がトロンとして可愛い」
雫がそう言っているがもう何がなんだかわからない。
体が熱い。
でも安心感や温かさがあって・・・
「ウフフ。眠くなっちゃったかな?ウフフ。寝て良いよ。ゆっくりおやすみ。奏汰君」
そう言われてからすぐ俺は眠りについた。
◇◇◇
「ウフフ。奏汰君の寝顔可愛いな」
そう誰も起きていない車内で呟く。
誰も起きていない事をいいことに奏汰君とキスをした。
深く、そして甘くしたキスはとても心地よかった。
キスをした奏汰君は何がなんだかわからない様子だったけど私のキスを受け入れてくれた。
「あの瞳トロンとしていてとっても可愛かったな」
奏汰君のふやけた顔がまた頭に浮かんでニヤけてしまう。
そしてこの心地よい気持ちをうませてくれた寝ている奏汰君に声をかける。
「ウフフ。今日のキスとっても良かったね。今日はここまでだけど今度2人きりのとき、もっと先まで行きたいな、ウフフ。覚悟しといてね奏汰君」
私は膝の上で気持ち良さそうに眠る奏汰君の頭を撫でながら微笑んだ。
◇◇◇
「奏汰君そろそろ着くよ」
雫にそう言われて目を開ける。
「ウフフ。おはよう。よく眠れた?」
「おはよう。うん眠れたよ」
そう言いながら体を起こす。
周りはまだ寝ているようだった。
「そろそろ起こしてあげようか」
「うん。そうだね」
そう言って周りの人を起こしてあげた。
10分ぐらい経つとバスは学校に到着した。
バスから降りて荷物を持って軽いホームルームをして今日は解散となった。
帰りも雫と一緒に帰った。
そして家の前まで帰ってきた。
「宿泊学習楽しかったね」
「ああ。楽しかったな」
今回の宿泊学習は雫と一緒にいたから楽しかったと言っても過言ではない。
そんなことを思っていると、雫は距離を詰めて耳元で囁いた。
「今日の続き、またやろうね?」
「!」
「ウフフ。可愛い」
「そ、それはどういう意味で?」
「それはその時分かるよ」
そんな事を言われて今からどんな事をされるか少し怖くなった。
「それじゃあまた今度ね」
「あっ、ああ。じゃあな雫」
「じゃあね奏汰君」
そう言って雫は家に帰っていった。
1人になった俺は雫のことを少し考えた。
今日のあれは本気なのだろうか。
だからさっきあんな事を言ったのか。
真相はわからない。
でも雫なら自然といけるような気がした。
(まあ追々考えていくか)
そんな事を思って家に帰った。
そういやお菓子は何を作ろう?
遅くなりました。
なんかあれだなと書きながら思いました。
あれは察してください・・・
感想くれると嬉しいです。
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