第二十三話 宿泊学習の準備
「え〜それではまず宿泊学習の班を決めたいと思います」
昼休みが終わり眠くなる五時間目の授業の冒頭、担任の藤堂先生のその言葉にクラスが湧く。
うちの学校では1年生は6月に宿泊学習、2年生は11月に修学旅行がある。
1年生の宿泊学習では環境や自立をテーマとしてここからバスで数時間かかる山にあるキャンプ場へ行く。
そこで様々な体験をしてロッジに宿泊して帰ってくる一泊二日の旅行である。
そしてこの宿泊学習はテーマの自立に基づき4人1組の班で宿泊以外の様々な事をこなすことになっている。
なので今から班を決めるというわけだ。
「ルールを説明すると、班は4人1組で男女2人ずつの班にすること。それ以外は自由。できたら俺に報告するように。それじゃあ開始」
そう藤堂先生が説明したところで班ぎめがスタートした。
「奏汰。一緒の班になろうぜ」
「ああ、構わないよ。よろしくな遥斗」
隣の席の遥斗が同じ班になろうと声を掛けてきたため喜んで応じる。
正直仲の良い男子は遥斗くらいだったので助かった。
男子2人が決まれば後は女子なのだが、そう思っていたとき声が掛かった。
「遥斗。同じ班になろ」
そう遥斗に声を掛けてきたのは遥斗の恋人の出雲薫ちゃんだった。
薫ちゃんの隣には雫がいる。
どうやら2人で班を組んだらしい。
「うん。構わないよ。奏汰もいいよな?」
「うん」
「うふふ。それじゃあよろしくね遥斗、奏汰君」
「ああ。よろしくな」
「こちらこそよろしくね薫ちゃん。そしてよろしくな雫」
「うん。よろしくね奏汰君。あと遥斗君もよろしくね」
「ああ。よろしくな雫ちゃん」
そういうことで俺達の班は決まった。
もう一度メンバーを確認すると、冴島奏汰、河村雫、小野遥斗、出雲薫の4人だ。
「じゃあ私先生に報告しに行くね。雫ちゃん一緒に来て」
「え?う、うん。わかった」
そう言って薫ちゃんは雫と一緒に先生に報告しに行った。
それを見送ったあと遥斗が話しかけてきた。
「良かったな雫ちゃんと同じ班になれて」
「ああ。本当2人に感謝だよ。今も他の男子からの視線で分かるけど雫を狙ってたっぽいしな。もし俺と同じ班じゃなくて他の男子にちょっかいかけられたら、俺どうなるか分かんなかったよ」
「一応さ、聞くけどそうなってたらお前どうなると思う?」
「多分みんなの居ないところに呼び出して、カッターとナイフで脅してトラウマ植え付けてそいつを死なない範囲で八つ裂きに・・・」
「ストップ、ストップ。それ以上はヤバいから。いやもうヤバいからやめよう。それじゃあ本当に今回は良かったな」
「ああ。俺としても俺が暴走しなさそうで良かったよ」
「それに関しては本当に良かった。死人が出る」
そうやって遥斗と会話しているうちに雫達が戻ってきた。
今回は本当に雫と同じ班で良かったと思うし、残りの2人も安心できる人で良かったと思う。
少し憂鬱な班ぎめも少し楽しくなり、どんな宿泊学習になるか少し想像を膨らませた。
◇◇◇
少し時間は遡り、班ぎめがスタートした頃。
私は奏汰君と同じ班になるためにどうするか早速考えていた。
後ろを少し見ると、奏汰君は遥斗君と一緒の班になるようであった。
それじゃあ、私と一緒に班を組んでもらう女子はこの子しか居ないな。
そう思って、その子に声を掛けた。
「ねえ薫。一緒の班にならない?」
「うん。良いよ。何ならちょうど私も雫に声を掛けようと思ってたんだ」
そうやって女子のもう1人の薫が決まった。
後は男子2人だが。ここはこの2人以外誰も居ない。
「ねえ薫」
「うん?」
「後は男子2人だけど、後ろの2人で良いよね?」
「うん。構わないよ」
「オッケー。じゃあ声掛けて」
「了解」
そうやってやり取りをした後、薫は遥斗君に声を掛けた。
交渉あっという間に承諾され、私達の班は決まった。
班が決まった後、薫が先生に報告をするということで私もついていくことになった。
先生のもとに向かって歩いている中で薫が声を掛けてきた。
「良かったね雫。奏汰君と同じ班になれて」
「うん。私が望んだ通りになって良かったよ」
「そっか」
そして薫は急に小さな声で私の耳元で話してきた。
「あと、雫なら気づいていると思うけどさっきから女子の視線が痛いんだよね」
「うんわかってる。多分奏汰君狙いで私達に取られたから妬んでいるんだよ。あ〜あ。私の奏汰君を取ろうとする泥棒猫達は八つ裂きにしてやりたい」
「雫。心の声漏れてるよ」
「あっ、ついやってしまった」
「気をつけなよ。そういや私は遥斗と一緒になるから、雫が奏汰君のこと独り占めできちゃうね」
「うん。この前約束したから当然だね。私と奏汰君は一生一緒にいるの」
「へ?いつの間にそんな約束を・・・」
「この前のテスト勝負で勝ったからその時に」
「へ〜私もやろうかな?」
「遥斗君と一生一緒にいたいならやることをオススメするよ〜」
「じゃあ、今度やろっと」
そうやって薫と会話する。
薫が言ってたように私は他の女子からの視線は気づいている。
でも、そんな視線が気にならないくらいに私は上機嫌である。
奏汰君とどんな宿泊学習を過ごせるか今からワクワクしてしょうがない。
そんな事を考えてるうちに薫と一緒に先生に報告をして、待っている2人のもとに戻った。
◇◇◇
班が決まった後、先生から宿泊学習の旅程や持ち物が告知されたりと様々な事を確認したりした。
それを六時間目まで続けて、今日の学校は終わった。
放課後雫と一緒に帰っているときに、今日の宿泊学習の話になった。
「ねえ奏汰君。宿泊学習楽しみだね」
「そうだな。今から楽しみだよ」
「そうだね。あっ、あと」
その言葉を言った瞬間、雫の目からハイライトが消えて暗くなった。
「私と一生一緒にいるって約束したから、必要最低限以外他の女子に話しかけないように。薫は例外だけど」
「うん了解。約束は必ず守りますから」
「よろしい」
「あと雫」
「うん?」
その瞬間俺の瞳も暗く黒く染まる。
「雫も必要最低限の会話以外男と話さないこと。できれば視界になるべく入れない事。俺だけを見て話してね。一応遥斗は例外ね」
「うふふ。そんなのわかってるよ。私は奏汰君のことだけを見て話すからね」
「うん。よろしくね」
「うん」
この言葉のあと2人は、もとに戻り笑顔を浮かべた。
2人が楽しみに待つ宿泊学習はもうすぐである。
あら、雫はたまに目のハイライトが消えていたけど、今回は奏汰も消えてしまった。
この相思相愛具合宿泊学習は波乱が起きる?
てかしれっと雫が薫に束縛を提案してる・・・
しかもそれを薫が承認してる・・・もしや薫もヤンデレ?




