第40話 覚醒の瞬間と新たな始まり
アキラ
俺が日記を手にしたのと、村の広場で「それ」が始まったのは、全くの同時だった。
「まただ!」「あの時と同じ、おぞましい光だ!」
窓の外から、村人たちの恐怖に満ちた声が聞こえる。
俺は、ベランダに飛び出した。広場の中心で、一人の男の体が、内側から不自然な赤い光を放ち、その輪郭が揺らめいているのが見えた。
そして、俺の鼻を、あの匂いが突き刺した。
甘ったるい腐敗臭と、焦げ付いた鉄のような苦い匂い。
かつて、俺の目の前で起きた、あの忌まわしい事件と同じ……圧倒的な「異常の匂い」。
だが、今の俺には、それだけではない、もっと多くの情報が、匂いとして流れ込んできた。
男を囲む村人たちの、熱狂と信仰の匂い。
それを遠巻きに見つめる管理者たちの、冷酷な観察者としての、感情のない匂い。
そして、この異常な空間全体を支配する、巨大で、人工的で、そして悪意に満ちた、偽りの「花の香り」。
全てが、分かった。
いや、感じ取ってしまった。
この村は、狂っている。
あの現象は、祝福などではない。
これは、ただの、残酷な「何か」だ。
じいちゃんの日記の、最初のページが、頭の中で蘇る。
『もしお前が「真実の匂い」に気づいたなら、この日記を読め』
俺は、今、確かに気づいた。
「じいちゃん……俺、分かったよ」
俺の中で、何かが、カチリと音を立てて繋がった。眠っていた、本当の力が、その目を覚ます。世界が、匂いの情報として、色鮮やかに、そして残酷なまでにクリアに見え始めた。
――その時だった。
背後で、静かにドアが開く音がした。
振り返ると、そこに、見知らぬ人々の影があった。彼らは、俺を真っ直ぐに見つめている。その瞳には、驚きと、そして確かな希望の色が浮かんでいた。
先頭に立つ一人が、静かに言った。
「ようやく、会えた。我々は、君を迎えに来た」
ここまで、お読み頂きありがとうございました。
本編の続きは、こちらで連載を続けさせていただきます。
https://note.com/otosuke5230/n/n61885bafc933




