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軍神の娘  作者: 雨宮玲音
第弐章 上洛
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第33話 景勝①

「とにかく。虎姫様、早いこと若様と仲直りをなさるべきではないですか?」


「そうだけどさ……でも……」


 景勝と仲直りをしなければならないのは分かる。そうしないと周りの人達がどう思うか分からないし、何を考えているのか分からない人々がなにか良くないことを企むかもしれない。それが出来たら一番楽なのに。


「はぁ。仕方ありませんね」


「……?」


 もどかしいわたしの様子にため息をついた信綱が近づいてくる。


「失礼しますね。……ご無礼、お許しを」


「え、ひゃぅ!?」


 わたしは突然信綱に抱えられた。いや、わたしがまだ6歳の子供だから余裕なのかもしれないけど、これちょっと、恥ずかしい。


「千代丸、襖を開けてください」


「わかりました」


 千代丸はまるでこうなることを予測していたかのようにさっ、とすぐさま襖を開いた。


「どこにいくの……?」


「それはもちろん。若様のお部屋です」


「ちょっ!? そ、それは……!!」


 いきなり行くの??そんな急に?ありえないありえない。


「信綱もわたしの話を聞いてたでしょ?」


「ええ。聞いておりましたよ。……虎姫様、ジッとしていないと落ちますよ」


「わかってる! 今はそんなことはどうでもいいから! なんで、そんな急に?」


「虎姫様と若様を仲直りさせるにはこれが手っ取り早いと思ったまでですよ」


 それ、答えになってないし!でも、わかってるをこのままもどかしいことをしてても時間は進まない。なら、……やるしかないの?


「はぁ……。わかった。心に決めた。だから……信綱、さっさとわたしを下ろして!」


「承知しました」


 わたしの顔を見て信綱は微笑ましげに笑う。だから、その顔うるさいのよ。気がついたら、わたしの右には千代丸もいた。ここから逃げれる保険とかないパターンですか。これ。


 結局、景勝の部屋の前まで来てしまった。ここまで来てしまったならやるしかない……。もう、なるようになれ!


「……景勝」


 何を言えば正しいのかよくわからないけど、部屋の前でとりあえず名前を呼んでみた。このあとどういう話をするのかとか全くプランもクソもないけど、こうするしかない。そうするしかなかった。


 ……正直怖い。何を言えば、どうすれば、うまく話せるのか。景勝が今何を思っているのか、わからない。でも、やるしかなかった。


「……虎、来てたんだね」


 景勝の部屋の前の襖が開いた。開けたのはこの部屋の主である景勝だ。


「……うん」


 何を言えばいいのかよくわからないし、適当な返事をしちゃったけど、これじゃだめだよね?


「……あのね、話したいことがあるの」


「……わかった。虎、とりあえず中に入って。今。侍女たちにお茶を用意させるから」


「……うん」


 景勝の招きでわたしは信綱たちを下がらせて部屋に入った。

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