7.個性がないから技術を磨いた
何でも描けるから『よろづ』なのだろう。そう思っていた方が、こう考えていらっしゃったのが驚きだった。
「私の絵は個性がないから、イラストレーターとして名を売るのは難しいと考え、ひたすら技術を磨きました」
確かによろづ先生は、他のイラストレーターさんみたいに、SNSでイラストを投稿することはあまりない。では描いていないのかというとそうではなくて、お仕事でほぼ毎日、バリバリと描いていらっしゃるようだ。
「仕事で描いていると、あまり趣味絵を描かなくなって」
そんなことを言われたことがある。描くときもウケを狙うより、楽しみながら新しい手法を試されている印象だ。
よろづ先生の絵の凄さは、自分で描く方にはハッキリ伝わる。まず骨格がちゃんとしているし、デッサンに狂いがない。パースもしっかりしていて、見ている方にも安心感がある。色使いや光の表現もすばらしい。
渋谷〇〇書店の店頭でもよく「弟子入りしたい」「この方に絵の指導をしてほしい」と、その道を目指す人や実際に働いている人に言われることがある。
どうやらお仕事先でも、新人の指導的な役割も担っていらっしゃるようだ。そうすると自分でバリバリ描く機会が少なくなってしまい、フリーランスとしてライトノベルの表紙も描くようになったのかもしれない。
ありがたいことに『魔術師の杖』という物語を、よろづ先生も楽しみながら描いて下さっている。作品を創りあげるというのは、どんな時でも楽しいものだ。
(でももっと楽しんでもらうには、どうしたらいいだろう)
そんなことを考えて、4巻の時は読者さんに呼びかけて、よろづ先生あてにメッセージを直接、出版社に送って頂いた。
それまでも私あてに来たものから、絵にふれられていた部分をピックアップして、よろづ先生にはお届けしていた。
けれどフリーランスのイラストレーターさんには、出版社に直接メッセージを送って頂いたほうが、お仕事の評価にもつながる。
一部省略したものの、できるだけ原文のまま紹介させて頂く。
『よろづ先生、紙書籍で欲しかった1番の理由は表紙イラストを直に見たかったからで、4巻は特に美しく、魚や珊瑚など海の中の風景に日々癒されております。
3巻表紙のライアス&ネリアのランデブーも大好きで、どこかの巻の表紙になるであろうレオポルドとのツーショットも今から楽しみです。
次巻のリクエストは「奈々」とレオポルドのダンスシーンが見たいと思いますので、もしできましたらお願いします。
各巻表紙と数枚のイラストですが、それを見ただけで自分の頭の中で各キャラクターが動き、語ってくれる力のある素晴らしいイラストだと思いますので、次巻もよろしくお願いします』
『4冊まとめて先ずは一言言わせてください!
よろず先生
もっと挿し絵プリーズ!!
足りなすぎて、うなっちゃいました。
やっぱり、紙ベースと電子書籍ベースは必須ですね。
何度も何度も読むには、紙ベースだと、よれよれになってしまって。
なんだかもったいない。
で、持ち歩きに便利な電子書籍。
本を買ったのは、よろず先生の挿し絵があるかもと思って、大人買い( ´艸`)
でも、足りなくては。
私個人的にですけど、挿し絵たっぷりと、本文たっぷりの分厚い本がほしくなりました』
『小説の表紙の生き生きとしたイラストから、こちらの作品を読んでみて、ファンになった者です。読み出すと止まらないですね!
巻を追うごとに、物語の人物の厚みも、お話の奥深さも増しますます楽しみにしています。
表紙イラストの色合いも美しくて、いつも目を引きます。
次回は、お話の流れ的にどんな表紙になるかなー?と楽しみにしてます。
(いつか錬金術師団の朝ごはん風景とかも、挿絵で見られたらなぁと。楽しそうですよね)』
『粉雪先生の作品に出会えたのは、よろず先生の挿し絵から読んでみたいと手に取りました。
いろんな思いを抱えながら、前に進もうとするネリアが好きです。
特に、レオポルドと夜会で踊るシーンが好きです。
いつか、よろず先生のイラストでコミックが読めたら嬉しいなぁ~など思ってます。
特に夜会シーン。
あの話の部分だけでも、ふんだんにイラストを使われたのをみてみたいです』
それまでなろうで連載していた私には、読者さんの感想はよく届けられていたけれど、イラストレーターのよろづ先生に届けられるメッセージはなかった。
「私の描いた絵が読者さんを物語の世界に招く、扉の役割をしたのでしたら光栄です」
よろづ先生はそう言うだけで、ご自分の仕事をことさらにアピールすることはない。それでもとても喜んで下さった。ほめ言葉はなんぼあってもいいものだ。
それに読者さんの反応を生で知れたのは、よろづ先生にいい影響があったと思う。
5巻以降は明らかに絵が変わってきた。描かれるキャラクターの表情に、内面がにじみでるようになってきた。
1巻発売時に頂いたイラスト。
私はこの絵のネリアがとても好きで、今も渋谷〇〇書店でデカデカと飾っている。
下は発売から2年半たって、よろづ先生が描いたネリア。
キャリアとしてはベテランのイラストレーターさんなので、線画自体はそれほど変わっていない。どちらもよろづ先生の絵だとハッキリわかる。けれど明らかに塗りが変わった。
個性がないからと磨いた技術が、今ではしっかり『個性』となって輝いている。
よろづ先生の絵がこれだけ進化したなら、中身の文章だって負けてはいられない。彼女の成長に負けないように、自分も成長したいと思っている。
ちなみに……挿絵の枚数を決めているのは出版社です。
増やしてもらうには出版社に直で要望をお送りください。
私も「挿絵10枚にして、口絵もつけて下さい!」と訴えています。
あきらめず、いつか実現させます。









