12.短編集①の制作
7巻でシリーズはすでに安定している。
「短編集はサブキャラクターが表紙でもいいですよ」と言ってもらえた。
(短編集はネリア以外の女性キャラを使ったものにしたい!)
ずっとイケメンが売りの表紙だったけれど、『魔術師の杖』にはネリア以外にも、魅力的な女性キャラがたくさんいる。
私は読者さんの癒しになるだろうと考えて、イケメンをたくさん登場させたのに、なぜか逆ハー疑惑をかけられてとても迷惑した。
ちなみにBLにも興味がない。
いいとか悪いとか、好きとか嫌いでもなく、まったく興味がない。人の趣味は否定しないので好きにやってほしい。
表紙候補のキャラクターは、〝毒の魔女〟ヌーメリアと、カーター副団長のひとり娘メレッタ。
魔道具師のメロディやニーナたちもいるけれど、彼女たちはまた別の機会にメインとして取りあげたい。
表紙の女性キャラが決まれば、相手役もおのずと決まる。
メレッタが表紙ならまた違った描き下ろしにしたけれど、読者さんにアンケートを取った結果、ヌーメリアが選ばれた。
「ヌーメリアのイメージは『ルパン三世カリオストロの城』のヒロイン、クラリスです。ルパンに出会うことがないまま、修道院で孤独に成長したら……と想像しました」
「髪と瞳は灰色で、控えめで大人しそうな女性。髪はふんわりしているけど長くない。肌の露出は少ないけれど、もともと貴族の令嬢なので、女性らしくラインの綺麗な服を着ています」
よろづ先生は、上品さをレースで表現することに決め、毒入りペンダントも素敵にデザインして頂いた。
ヌーメリアが表紙なら、書籍未収載の『ヌーメリアの帰郷』が外せない。 一緒に描いてもらうのは10歳の男の子、甥のアレクと決める。
書籍には入れてないぶん、本から知ってなろうを読みにきた人には、強い印象が残るようだ。
それにコミカライズの発表と短編集①の発売が同時なら、「どんな話か、まず短編集を読んでみよう」と思う人がいるかもしれない。
だから打診を受けたとき、短編集①の原稿はまとまりつつあったけれど、ひと月かけて内容を再度見直すことにした。
ババッと関係各所に連絡を取ってから、集中して話のまとまりを作っていく。
なろうでも短編集を連載しているが、そちらには『ネリアとレオポルドのじれじれな日常』という副題がついている。
もともとは季節イベントのSSを、自由に書きたくて始めた連載で、そちらはじれじれの甘々を楽しめるようになっている。
本編はストーリーの関係上、どうしても糖度が不足している。
(未読の人が読むとしたら、甘々な短編集からだと落差があるなぁ……読者さんが興味を持っている、グレンにまつわるエピソードや、サブキャラの過去について掘り下げようか)
時々思いつくと書いていた、バラバラのSSを時系列に並べ直し、それらをつなげるエピソードを加筆する。
エピソードタイトルを色別にし、『ヌーメリアの帰郷』は『青の少年』として収載された。
表紙はふたりを巻きこんだ事件が解決し、何の憂いもなくなったヌーメリアとアレクが夜空を見上げる場面だ。
よろづ先生には物語に登場する小物として、ヌーメリアのペンダントやアレクの腕輪を描き加えて頂いた。
「この巻の表紙が一番好きです」
そうおっしゃって、短編集だけをわざわざ買いにこられる方もいらした。
色調は一見暗いけれど、夜空に広がる花火に転送魔法陣、光に照らされる人物の輪郭や、ブラウスにあしらったレースなど繊細な美しさがあり、とても情感のあるイラストだ。
私自身、本になった時はそれほど思わなかったけれど、渋谷〇〇書店で展示するために、A4サイズでプリントアウトして初めて、細やかな描きこみに圧倒された。
(こんなに凄い絵を描いて下さったんだ……)
もうそれだけで、胸に迫るものがある。
よろづ先生の人柄というか、優しさがよく出ている。
彼女ははっきりとした色合いのイラストが得意だけれど、また新たな一面を引きだせたと思う。
コミカライズ決定を知らせるバナーは、黄色が強くてだいぶ恥ずかしい。目立たせたかったのだろう。
よろづ先生からはさらに、コミカライズお祝いイラストまで描いて頂き、これも短編集に収録された。
「楽しみにしている」という、よろづ先生のメッセージがついていたものの、「作画の方、綺麗ですね!」と、勘違いされる読者さんも多かった(汗
よろづ先生が描かれるイラストは、白黒でも凄く綺麗だけど、POD版ではあまり綺麗に印刷できない。刷り上がった本を見たら、少しがっかりした。
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4月26日、短編集の発売と同時にマッグガーデン社とのメディアミックス、コミカライズ決定が発表され、プレスリリースも流された。
なろうでも屈指の顔面偏差値と言われ、しかも長編でコミカライズは難しいと言われていたシリーズ。
誰もが予想しておらず、驚きをもって受け止められた。まだ何も始まっていないのに、ブックマークはいきなり千増えて、5月ひと月のPVは70万アクセスを記録した。









