10.6巻の反響と7巻の制作
6巻が発売されると、大反響だった。
「美少女と美形が笑顔で夜の空中散歩?何それめっちゃ気になるっ!」
表紙にひかれて、1巻から6巻を目指して読みはじめて下さる方もいた。
「よろづ先生のイラストはキャラクターがイキイキしていて、どの表紙もとても楽しそうで、明るい気持ちになれました。作品と出会うきっかけになったよろづ先生にはとても感謝しています」
読者さんから編集部に力強いメッセージを頂く。
「カラーでのあの方の素敵なドアップ!あの方だけで良いのです。主人公には申し訳ありませんが、あのレオポルド様だけの1ページを見たい!……という情熱、それだけで本も買えるのです!」
ともかくレオポルドのカラーをドアップで見たいとのこと。何度も書いたけれど、出版社に直は効く。
「そんなに要望が通るものなの?」と思われるかもしれない。
実は出版社に、それも編集部にまで直接要望を送ってくる読者は意外に少ない。
販売サイトのレビュー欄に要望を書いても、それらの情報が販売サイトから出版社に提供されることはない。
もちろん誰でも見られるから、熱心な担当者はチェックするかも。けれどそれも人による。
それに読者さんの要望に応えることは、担当者にとっても報告できる仕事となる。著者がいくら訴えても通らないことでも、あっさりと決まりやすい。
また、別の方からはこんな要望も出ていた。
「表紙のシーンはネリアとレオポルドが本当に楽しそうで、これからの二人を楽しみにしています。図々しいお願いになってしまうのですが、錬金術師団のメンバーが大好きなのでよろづ先生のイラストで登場人物紹介があると大変嬉しいです。また登場人物が多くて、王子達の補佐官や魔術師団、竜騎士団のメンバーは名前を忘れがちなので、キャラクター紹介があるととても読みやすいな、と。ご検討頂ければ幸いです……」
これは常々、いろんな読者さんから言われていたことでもあり、7巻からキャラクターデザインの紹介と、人物紹介が入れられるようになった。
次巻はかかったけれど、ようやく9巻でよろづ先生のイラストつきの、きちんとした登場人物紹介がつけられた。
7巻の表紙は事前になろうの読者さんに「印象に残ったシーンは?」という質問でアンケートを取っていた。
実は最初から7巻の表紙は、レオポルドにすると決めていたので、表紙の候補となるシーンはいくつも書いていた。
その中から読者さんに選んでもらったシーンだ。まずは衣装をきちっと指定する。
「王都を離れて休暇を過ごすふたりの服装はカジュアルなもので。ネリアはラベンダーめメルのポンチョにイヤーマフといった装いです。レオポルドは林業従事者が着るような、カナディアンコートを着せて下さい」
次は場面の説明。
「エルリカの街の広場。夜空にはオーロラが輝き、かがり火の火の粉が飛んでいます。レオポルドの顔は明かりに照らされ、瞳は意志の強さを感じさせるように輝いています。かがり火は人々の暮らし、生命力の象徴でもあります」
さらにこんなお願いを、よろづ先生にはした。
「レオポルドの魅力を、これでもかと見せつけて下さい!」
よろづ先生からのシンプルかつベストな回答が、これだった。
もう言葉はいらないと思う。ここでも場面を彩る光が、見事に表現されていた。オーロラの輝きも人物の表情も、ただ描かれただけだというのに、まるでそこにあるかのような存在感を放っている。
「よろず先生の絵、とても魅力的で素敵で大好きです!!!!!
人物に華やかさがあって、存在感があって、キャラクターの姿だけで物語の世界観を描いていて、とっても大好きです!!!!!」
読者さんから『!』がいっぱいの感想を頂く。みなさん自分の言葉で書いて下さるから、ひとつひとつ違っていて、けれど思いはいっぱい伝わってきて、それがとても嬉しい。
なろうの作家仲間さんに、こんなコメントを頂いた。
「イラスト描く側からすれば『この魅力を伝えたい!』と、思える作品に出会えるのって、とても幸せなことなんですよ。そしてそれが7冊も続いている。
お互いに切磋琢磨できる関係って理想的ですね」
『魔術師の杖』1巻の制作段階で、すでに6巻分のプロットが出来上がっていた。5巻を目標に頑張ってきて、それが7巻まで出せたのだ。
すごい所まできたと思った。けれどそれが限界だった。
実は6巻制作中の2022年暮れに、父が倒れて入院していた。回復の見込みはなく、翌年5月に亡くなった。私は6月に7巻の発売を控え、葬儀の最中も表紙や挿絵の確認やフィードバックに追われた。
発売直後の夏は抜け殻のようで、頭の中で生き生きと活躍していたネリアたちも、彫像のように動きを止めてしまった。
「年内に短編集を」というのを翌年に延ばしてもらい、私はしばらく静養した。









