↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/200

■七月二日 お色気水着 ブリーフィング

 ボクの名前は、儚内(はかない)薄荷(はっか)。

 『セーラー服魔法少女』なんだけど……ええっと、『科學戦隊お色気ピンク』にもなっちゃった。


 フェロモン諸島での撮影は、本当に大変だった。

 『服飾に呪われた魔法少女テレビシリーズ 第五話 キャプテンキッドの秘宝』全四パートと、『科學戦隊レオタン テレビシリーズ 第一話 恐怖の大王』全四パートの撮影が並行して行われた。

 とくに、ボクと、金平(こんぺい)糖菓(とうか)ちゃんは、両シリーズにでずっぱりだったから、またしても、眠る暇もない忙しさだった。


 『科學戦隊レオタン テレビシリーズ』なんて、『魔法少女テレビシリーズ』とは違って、素の自分とは別の役柄になっちゃってる。

 まるで、絵空事みたいなのに、事件は、実際起こっていて、沢山の魔獣や人間が死んでいく。

 ボクだって、沢山殺した。

 そうしなきゃ、自分が死んじゃうから――。


 ボク、巡業統括の毀誉(きよ)褒貶(ほうへん)氏に、喰ってかかったことがある。

 「ボクの両手は、もう血だらけです。これって、どこまでがホントのことなんですか?」


 そしたら、逆に、諫められた。

 「どこまでも、全部が、ホントの出来事です。ウソなんて一欠片もありませんよ。物語と、この世界の在りようを改変してしまった当人が、いまさら、なにを言ってるんですか」


☆


 六月二八日にクランクアップして、そのまま撤収作業が始まった。


 七月一日、アヤトリ市駅の軍用車両置場にて、天罰号への荷物の積み込みが完了した。


 天罰号って、ほら、各車両に、科學戦隊と魔法少女、計九人の絵が描かれた、あのラッピング列車だよ。


 荷物の積み込みで、一番大変だったのは、やっぱり科學戦隊の戦闘車両(ビークル)五台だった。


 テレビ番組では、『恐怖の大王』のラストは、戦闘車両(ビークル)五台が空を飛んで、巨門島を離れるところで終わっている。

 だけど、実際は、巨門島に再着陸して、戦闘車両(ビークル)を一台づつコンテナに収納し、ポンポン船経由で、天罰号へと積み込んだ。


 『服飾に呪われた魔法少女』と『科學戦隊レオタン』は、戦闘車両(ビークル)等の機材とともに、七月一日のうちにアヤトリ市駅を出立した。

 予定では、七月五日に科學戦隊基地駅に着く。

 科學戦隊員とボクは、天罰号ごと、そこに居残って、次の撮影。

 ボク以外の魔法少女四人は、ここで大陸横断鉄道に乗り換えて、一旦鹿鳴館學園へ戻る予定だそうだ。


 ☆


 今日――七月二日――は、ブリーフィングだ。


 走行中の天罰号に牽かれている客車のひとつに、主要メンバーが集められた。


 ○『服飾に呪われた魔法少女』たち。

 『スクール水着魔女っ子』の金平(こんぺい)糖菓(とうか)ちゃん。

 『運動部衣装魔法少女』の菖蒲(しょうぶ)綾女(あやめ)ちゃん。

 『文化部衣装魔法少女』のスイレン(睡蓮)レンゲ(蓮華)さん。

 『舞踏衣装魔法少女』の宝生(ほうしょう)明星(みょうじょう)様。

 そして、『セーラー服魔法少女』の、ボク、儚内(はかない)薄荷(はっか)だ。


 ○『科學戦隊レオタン』の隊員たち。

 リーダー『爆炎レッド』の南蛮(なんばん)増長(ぞうちょう)さん。

 サブリーダー『氷結ブルー』の北狄(ほくてき)多聞(たもん)さん。

 『雷撃イエロー』の東夷(とうい)持國(じこく)さん。

 『旋風グリーン』の西戎(せいじゅう)広目(こうもく)さんだ。

 そして、再び、不本意ながら『お色気ピンク』を押しつけられてしまった、ボク、儚内(はかない)薄荷(はっか)だ。


 ○作戦を遂行しているカストリ皇國軍関係者。

 軍属で巡業統括の毀誉(きよ)褒貶(ほうへん)氏。

 造兵廠研究官の蛇行(だこう)濁流(だくりゅう)少佐。


 このメンバーで集まると、褒貶(ほうへん)氏が、進行役となる。

 それに、話される内容は、闇烏(やみがらす)暗部(あんぶ)皇國軍参謀の意向に基づく、決定事項の上意下達だ。

 ボクたちの意見が、訊きいれてもらえるようなことなんて、ほとんどない。


 褒貶(ほうへん)氏が、今後の『物語』展開について説明している。

 「『物語』の、次の舞台は、南の『ジャングル風呂地帯』となりますです。『服飾に呪われた魔法少女テレビシリーズ』の第六話が『温泉合宿大作戦』、『科學戦隊レオタン テレビシリーズ』の第二話が『温泉お色気仲居修行』となりますです。ご存じのように、『テレビシリーズ』においては、途中のどこかで、『温泉+水着回』を入れることが、『お約束』になっており、外すことができないのですです」


 ――マタ、トンデモナイコト、イイダシマシタヨ、コノヒト……。


 そんな展開となれば、ボクなんて、生贄確定だ。

 ボクは、抵抗を試みた。

 「あのう……『温泉+水着回』って、ムリがありますよね。『服飾に呪われた魔法少女』は、呪われた服飾しか着れないし、呪われた服飾が水着なのは、糖菓(とうか)ちゃんだけですし……』


 「なに言っているですか。『服飾に呪われた魔法少女』は、呪われた服飾しか着れないだけで、それを脱ぐことについては問題ないと、第四話で、明らかになっているです。それに――」と、褒貶(ほうへん)氏が、糖菓(とうか)ちゃんに、手を差し出す。

 「お願いしたものは、お持ちいただけましたですか?」


 糖菓(とうか)ちゃんが「はい」と答えて、手にしていた「玉手箱」を差し出した。

 糖菓(とうか)ちゃんが『妙見珊瑚礁』に潜って、あれを手に入れたとき、ボクも同じ船の甲板にいた。

 だから、知ってる。

 あの中身は、『お色気水着』だ。


 褒貶(ほうへん)氏が受け取ろうとしたら、濁流(だくりゅう)少佐が横から手を伸ばして、それを、かっ攫った。

 素早く蓋を開けて、あちこちに紐の付いた、ピンク色のレース布地二枚を取りだした。

 ビキニのトップスと、ボトムスだ。


 布地を、鼻に近づけて、クンカクンカ臭いを嗅いで確認している。

 濁流(だくりゅう)少佐は、P(パーフェクト)A(アーマー)N(ネイキッド)2式をボクに渡すときも、臭いを確認していた。

 もしかしたら、嗅覚で、聖力や魔力の有無を確認できるのかもしれない。


 「間違いないであります。これこそが、伝説の防具『お色気水着』であります。伝説の勇者パーティーの防具『あ○ない水着』の、上位互換品であります。ああ、かくも神々しい防具に、直に触れて、研究できる機会が来ようとは――!」と、感激している。


 「さて、儚内(はかない)薄荷(はっか)さん」と、褒貶(ほうへん)氏が、ボクのことを意味ありげに、フルネームで呼んだ。

 「この、『お色気水着』ですが、銘に『お色気』と冠されているのですです」


 「はい、そうですね」と、ボクは、一歩後退る。


 「それから、この、『お色気水着』ですが、テカテカのピンク色なのですです」


 「はい、そうですね」と、ボクは、二歩後退る。

 褒貶(ほうへん)氏が言いたいことは、いくら察しの悪いボクでも分かる。

 「で、でも、ほら、これ、明らかにサイズが合ってないですよ。トップスは、Gカップだから、AAカップのボクにはスカスカ、ブカブカです。ポトムスは、こんなに布地が小さかったら、ボクのがいくら小さいからって、ぜったいに収納できませんって」


 「分からないのですか?」と、濁流(だくりゅう)少佐。

 「『妙見珊瑚礁』の御社(おやしろ)に、邪神であらせられた恐怖の大王烏賊(イカ)様がお護りしていた防具であります。力を持った神具に、違いないのであります。推測するに、『お色気水着』は、着用者の肉体に適合するよう、変形してくれるはずなのであります」


 ボクは、断固拒否した。

 「もはや、恥ずかしい云々じゃないんです。ボク、セーラー服なんか強要させられているけど、これでも、男の子なんです。なのに、こんなの着させられたら、もう、男子としての最後の矜持というか、プライドの最後の砦というか、アイデンティティというか、そんな大切なものが、粉々に砕けてしまう気がするんです。だから、お願いします。これだけは、勘弁してください」


 「いやはや、この場に闇烏(やみがらす)暗部(あんぶ)皇國軍参謀が、いらっしゃらなくて、良かったですです。参謀がいらしたら、薄荷(はっか)さんは、『甘えるな!』とか怒鳴られて、鉄拳制裁でボコボコにされてましたです」と、褒貶(ほうへん)氏が天を仰いだ。


 三人の女性兵士が呼ばれて、ボクは、隣の車両で、裸に剥かれて、強制お着替えさせられた。

 羽交い締めにされての、屈辱的なお着替えだった。

 そして、ビキニを着用させられて、再度、全員が待っている、元の車両に、放り出された。


 ☆


 みんなが待っている元の車両に、放り出された瞬間、ボクは、せめて、ちゃんと立っていようとした。

 なのに、それができなかった。

 身体のバランスが、オカシイ。

 下半身の前側が軽く、上半身の前側が重たい。

 ボクは、うつ伏せで、這い這いでもするような姿勢となり、起き上がれなかった。


 自身の身体の状態を確認すべく、視線を巡らす。

 ちゃんと『お色気水着』、つまり、ビキニは着用できている。

 ただ、胸部に、ばかでかい脂肪の塊が二つあって、その下が見えない。

 女の子座りに、なりながら、脂肪の塊を掻き分けるようにして、その下を覗き込む。

 すると、ボトムスの、股間のあたりが、あり得ないほどスッキリしている。


 つまりだ、『お色気水着』が、ボクの肉体に適合するよう変形したのではなく、Gカップビキニに適合するよう、ボクの身体の方を変形させたのだ。

 これは、性転換とかではないと、自覚している。

 『お色気水着』を脱いだら、ボクの肉体、つまり、発育不全の男子の肉体に戻ると、自覚している。


 それにしても、サイズ感がオカシイ。

 だって、『お色気水着』にボクの肉体を適合させたのであれば、胸と股間だけでなく、身体全体が大人の女性になっているはずだ。

 なのに、身長とか、身体全体のサイズは、ちんちくりんな、元のボクのまんまなのだ。


 これだと……いわゆる……『ロ○巨○』だ。

 うわーーっ、こんな自分を認めたくない。


 『お色気水着』側も、変化している。

 トップスに、ビキニ水着でありながら、セーラー襟が出現している。

 つまり、これって、『セーラービキニ』姿ってことだ。


 ボトムスのお尻を確認したけど、そこに白鼠様はいない。

 今後、『お色気水着』姿を強要されるのなら、せめてパレオが欲しい。


 濁流(だくりゅう)少佐が、興味津々で、『武具』としての性能確認を求めてくる。


 なので、拳を握ってみる。

 魔法少女としての力は、行使できそうにない。

 戦うのは無理だけど、衰弱する感じもない。


 『お色気水着』って、『神器』なのは確かだ。

 だけど、『武具』ではなくて、『衣装』だと思う。


 ボクが普段着用させられている下着は、AAカップのスポーツブラと、白パンツだ。

 もし、その下着姿で人前に出たら――そんなことやったことないし、やるつもりもないけど――たぶん、同じ状態になると思う。

 つまり、『お色気水着』は、『服飾の呪い』から、下着判定されているみたい。


 訊かれるままに、そんなことを答えていたら、濁流(だくりゅう)少佐から真顔で宣告された。

 「触診テストを実施します」


 ボクは、自分の胸を押さえて、「イヤ」っと、後退った。


 「兵装の開発責任者として、必要なテストです」

 濁流(だくりゅう)少佐は、両手の指を、わきわきさせている。


 糖菓(とうか)ちゃんが、ボクと濁流(だくりゅう)少佐の間に割って入った。

 「だめ、薄荷(はっか)ちゃんの胸を揉んでいいのは、うちら『服飾に呪われた魔法少女』だけなん」


 濁流(だくりゅう)少佐は、ボクへの触診テストを強行できる立場にある。

 今のボクは、皇國軍に徴兵された三等兵でしかないからだ。

 でも、濁流(だくりゅう)少佐は、強行しなかった。

 「仕方ないであります。『お色気水着』の所有権は、『金平(かねひら)水軍』にあるのでありますからな。では、糖菓(とうか)さん、自分に代わって、触診テストを実施して欲しいのであります」


 糖菓(とうか)ちゃんは、濁流(だくりゅう)少佐の指示に従って、ボクの全身をくまなく触りまくった。


 『お色気水着』の上から触る限り、ボクの全身は、間違いなく女性のものになっていることが確認された。


 ――しかも、かなり感度が、良さそう。

 ボクは、自分でそう思ったけど、決して口にはしなかった。


 興味深かったのは、『お色気水着』の下に手を滑りこませようと試みたときだ。

 ちょっとでも、『お色気水着』が、ボクの皮膚から持ち上がった瞬間、ボクの肉体は、元の貧弱な男子のものに戻ってしまう。

 そして、その状態で、手を離すと、今度は、豊満な女性へと戻る。


 我がことながら、驚きだった。


 ☆


 褒貶(ほうへん)氏による、非情な宣告で、この日のブリーフィングが終了した。

 「『服飾に呪われた魔法少女テレビシリーズ』の次話『温泉合宿大作戦』と、『科學戦隊レオタン テレビシリーズ』の次話『温泉お色気仲居修行』の撮影時、薄荷(はっか)さんには、『お色気水着』を着用していただきますです。覚悟を決めておくです」

~~~ 薄荷(はっか)ちゃんの、ひとこと次回予告 ~~~

■七月六日 温泉合宿大作戦 起 撮影

綾女(あやめ)ちゃん、レンゲ(蓮華)さん、そして明星(みょうじょう)様の三人は、鍍金(めっき)第二皇子と、その許嫁である牡丹(ぼたん)様のお二人と対面していた。

このタイミングで牡丹(ぼたん)様が登場してきたこと自体、驚きだけど、牡丹(ぼたん)様は、更にトンデモナイ、驚きの提案をしてきた。

かくして、ボクの知らないところで、温泉合宿大作戦が、動きはじめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。