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テレビを勝手につけて観るトカゲ

 俺の部屋は、アパート2階の角部屋だ。古いアパートだがベランダが広いので結構気に入っている。

 部屋に戻ると、俺はとりあえずソース焼きそばのケースを居間のテーブルに置いて、ゆっくりと蓋を開いた。トカゲは首を水から出し、プハーと息を吐き出した。

「うぇぇ、死ぬかと思ったぞ」

「うるせぇ、助けてやったのに文句言うな」

「そりゃそうだな。恩に着る」

「ま、別にかまわねぇけどな」

 しかし、いつまでもソース焼きそばのケースじゃかわいそうだ。

「ちょっと待ってろよ」

 そう言うと、俺は風呂場に行って洗面器に水を入れ、タオルと一緒に持ってきた。テーブルにタオルを敷き、その上に洗面器を置く。こっちの方が少しはましだろう。

「こっちに入んな」

「す、すまん。しかし、まだ体が動きにくくてな」

「まったく、世話の焼けるトカゲだぜ」

 俺は両手を洗面器に入れてトカゲをすくってやった。カエル、とは言わないが、思ってた以上にヌルヌルしている。よく見ると前足の指の間にヒレがついている。

「あんた、両生類なのか?」

 くだらない質問だった。

「ふぃぃぃ~、あぁ、生き返るわい」

「おい、俺の質問に答えろよ」

「あ、あぁ、すまん、ま、そうとも言えるな」

 なんだそりゃ?

 まぁいい。俺はポケットから煙草を取り出して火をつけた。まったく、なんて一日だ。

「ところで、あの写真の彼女、ヒトミちゃんっていうんだろ?可愛い子じゃないか」

 ゲホホ、ゲホッゲホッ!!!俺は思わずむせ返ってしまった。

「なんであんたが知ってんだよ!!??」

「お前さんの脳を読んだ」

 さも当然というように、トカゲがあっさり言った。思わず俺は片手で頭を隠してしまった。無駄な抵抗だが。

「俺の脳みそを勝手に読むなよ」

 俺は思いっきり煙を吹きかけてやったが、トカゲは屁とも思わず、逆に口を開いて舌をペロペロと出した。笑ってやがる。

「テレビやラジオと同じだ、開いていれば自然に読める。それにお前の思考は実に単純でわかりやすい」

 お前なぁ。

 さすがにブチ切れそうになった時、俺のスマホが鳴った。

「噂をすれば影というやつだ、愛しい愛しいヒトミちゃんからのラブコールだな」

「うるせぇよ!」

 俺はスマホを手にした。確かにヒトミからだった。しかし、なんでコイツにはわかったんだろう?

「もしもし」

<あ、タッちゃん?アタシ>

「あ、あぁ」

<どうしたの?>

「い、いや、なんでもない」

<変なの。明日さ、また行くけどいい?>

 そうか、そういや明日は金曜だったか。明日からは、いつも通り金曜の夜から月曜の朝までのフルタイムお泊りお楽しみコースだ。

「もちろんいいよ、ただ、さ」

<ただ、何?>

「実はペットを拾っちまってよ」

「私はペットではないぞ」

 とトカゲが俺を見て言った。

「うるせぇよ、ホントに!」

<え、何?>

「い、いや、ごめん」

<何、ペットって言った?犬?それとも猫?>

「い、いや、そのどちらでもないんだ・・・」

<変なの。じゃあ後で写メで送ってくれる?>

 見ると、トカゲが首を横に振った。

「い、いや、まぁ、明日来たらわかるよ。ただ、しっかり人間の言葉を理解できて、ちゃんと会話もできるヤツなんだ」

<何それ?タッちゃん、ひょっとして、それって、まさかスカートを履いてたりするペットじゃないでしょうね?>

 くっそぅぅぅぅぅぅ!!ヒトミが思いっきり疑っている。それを聞いてトカゲがまたニヤニヤと笑った。くそぅぅぅ。

「いや、少なくとも人間じゃないことだけは確かだから」

<それを聞いて安心したわ。じゃぁまた明日ね>

「あぁ。少し早いけどおやすみ」

<うん。おやすみぃ>


「みろ、ヒトミに疑われたじゃねぇかよ」

 俺はトカゲを睨みつけた。

「あ、そう気にするな」

「まったく、何が気にするなだよ」

 俺はまたタバコに火をつけた。どうにも落ち着かない。

「ところで、あれはテレビとパソコンだろ?」

「あぁ」

「観てもいいか?」

「いいけど、どうやってテレビをつけんだよ」

 リモコンがテレビの横にあるから、コイツにつけれるわけがない。そう思って俺はせせら笑った。

「なぁに、簡単なことだ」

 トカゲがテレビを見ると、すぐにパチっと音がしてテレビがついた。くだらないバラエティーがいきなり流れる。

「えっ?」

「ついでにパソコンも」

 すると閉まっていた蓋が開き、パソコンがしっかり作動し始めた。

「お、おい・・・!!!」

 俺はさすがに驚いた。一体全体どうやって・・・。

「そう驚くな。人間が作った物はたいてい操作できるのでな」

「人間って・・・。あんた、ひょっとして神様か?」

 言ってて自分が馬鹿々々しくなったが、そうとしか考えられない。なんだか触れてはいけない物に触れた気がして、俺は恐怖を覚えた。

「安心しろ、私はそれほど崇高ではない」

「じゃあ何だ?」

 自分でも掠れ声なのがよくわかった。

「それはいずれ教えよう。ただ、はっきり言っておくが私はお前の味方だ」

「それを聞いて安心したよ」

 しばらくテレビを見てから、俺は風呂に入った。とにかくこのおかしな気分と汗をとらなきゃ。

 風呂から出ると、俺はどんぶりに焼きそばを入れ、他の皿で蓋をした。

 居間がやけに涼しい。どうやらヤツがクーラーを入れてくれたようだ。

「ところであんたも何か食うか?」

「いや、特にはいらん」

 ヤツはずっとテレビを見続けている。

「そう言うなよ」

 俺は、いつもヒトミが味噌汁のダシに使っている煮干しの袋を持っていった。

「やせ我慢すんなよ」

 そう言って俺は3匹ほどをヤツの顔面に突き出した。

「わかった、せっかくの好意だ、ありがたくいただくことにしよう」

 ヤツは両手で器用に掴むと、ゆっくり噛み始めた。なんか、スルメを齧っているおっさんみたいだ。


 しかし、まったく、なんて一日だ。














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