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一年のしょっぱなから色々ありすぎです、もうちょっと小出しにして欲しいものです。
いつの間にか2月ももう終わり…?ヴァレンタインなんてそんなイベント都市伝説なんや…。
これからいいことがあると信じてボチボチ更新していきます。
街の賑やかさは、愛し子の花が咲き乱れた事によるお祭り騒ぎも原因だったようだ。人々は口々に「我が国にも愛し子様がいらっしゃった!」と喜び、騒いでいた。
「おおお、認識阻害の髪留めがなかったら、外になんて出れなかったわー」
ローブのフードさえ被っていればなんとかなると思っていた認識の甘さに若干反省しつつ、宿に帰って来た。あの国だけじゃなくて愛し子が他国でも歓迎されるのは、そこにいるだけで魔物を退けるという性質のせいなんだろう。特に今魔物の脅威に脅かされるこの国では歓迎されるもの頷ける。ん?ということは?
「ねぇ、皆が討伐いってる間は、待機って事でいいのよね?私がついていっちゃったら意味ないし」
「それについてですが…ああ、詳しい説明はテオ王子がしてくださるようですね」
部屋へ向かおうとロビーを横切ろうとしたら、ロビーのソファで片手をあげてこちらを見るテオがいた。
テオの話を要約すると、やっぱり私とヴィクトルはこの街で待機、その間に遠征帰りの食料品などの確保に他の団員と当たることになるようだ。やたらに多い魔術師は一部が私の護衛を兼ねたものでテオと一緒に残るとか。討伐の後衛にしても人数が多いと思ったんだよね。
「帰りの準備が終わって、リアムが帰ってくるまで観光でもどうだい?」
「観光ねぇ…」
ぞろぞろついてくるだろう魔術師さんたちを想像して、ちょっと行く気にならなかった。
「あ、でも魔石をギルドで売りたいかな。あとはお土産買いたい」
「だったらここのギルドじゃなくて、王都のギルドで売ってよ。魔術師団で買い上げるからさ」
「えー、ちょっとくらいはここのギルドで売ってもいいでしょ?ほかの街のギルドも見てみたいんだもん」
「仕方ない、少しならいいよ、火の魔石は売らないでくれるなら」
テオは火の魔術特性があるからだ。
「合間に私たちの食材も買いに行こうね、ヴィクトル」
「はい、ナツ様のお好きなものを作りましょう」
この国の名産は何かわかんないけど、美味しい食材を買い込めるといいな。
ついでに騎士団のみんなの帰りの食材の買い込みも任されているので、調査もしっかりして美味しいものをみんなに食べてもらいたい。美味しいものは正義!おいしさの前には身分とか関係ないからね!美味しいに白旗上げちゃう。そして中毒になるよね。
愛し子様の泊まってる宿から戻り、かわいい弟のいる兵舎の貴族用客室の扉をノックして入ると、リアムが酷い顔をしてソファに座っていた。
「なんだなんだ、酷い顔だなぁ。愛し子様には今後の説明をしてきたよ…おっと、こんな時までストーカー報告させてるのか」
「ストーカーじゃありません。彼女の後見人として些細なことも把握するのは当然です」
「どれどれ、俺にも見せてくれよ」
バサッと無造作にテーブルに放りだされる書類を手に取り、内容に目を走らせる。あー…これは…なるほど、機嫌も悪くなるはずだ。
「一つの串焼きを二人で分け合い食していた…と。ねぇ…」
「兄上、それを声に出すのは止めてくれ」
不機嫌をあらわに睨んでくるリアム。
「これくらいでそんな情緒不安定でどうすんだよ、ここまでの道中でも愛し子様を狙った間抜けを捕まえることができたし、そいつらから自白を引き出せればいずれバカ共は大人しくなるだろ」
「やはり私は反対だ…いくらアレが居たとしても…」
「計画変更はできないぞ、心配ならさっさと討伐終わらせて最速で帰ってこい」
「分かっている、私がいない間彼女を頼む」
「任せとけ」
深く長い溜息をついてソファに深く沈むリアムを視界の端に入れながら、俺は部屋を後にした。
相手は見せつけてるつもりがないのに、こっちにはクリティカルヒットしてるというね。
現実ではままある話ですw