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第二十七章 小雪

「美姫ちゃん、この建物に見覚えがあるだろう」

「ええ、あるわよ。これは、私の夢の中にいつも出て来る建物だわ」

「実は僕も見覚えがあるんだよ。そして、龍星君と優海ちゃんもだ」

「龍星さんと優海さんも?」

 美姫が写真から目を離して優海の顔を見る。

「そうなの、私も子供の頃、この建物を見た記憶があるのよ。五歳位の時かしら、でも変ね……」

「変って、何が?」

「私が新潟に来たのは大学生になってからなのよ、それなのになぜこの建物に見覚えがあるのかしら?」

 優海は新聞記事の写真を眺めて首を捻った。

「いや、優海ちゃんは子供の頃、新潟に来ているよ。僕達は子供の頃、この建物の中で一緒に過ごした時期があるんだ」

「えっ?」

 優海が振り向いて奉生の顔を見る。

「それはXXXX年XX月XX日からXX月XX日の間だけなんだけどね」

「それって、この建物が焼失する日の直前じゃない」

「そうなんだ」

「ちょっと待ってよ。私、この建物に見覚えはあるけど、この建物の中でみんなと一緒に過ごした記憶なんて無いわよ」

「それは記憶を消されているからさ」

「何ですって? 記憶を消されてる?」

 優海が奉生の返答を聞いて一瞬固まる。

「僕達はみんなXXXX年XX月XX日からXX月XX日の間だけ記憶を消されているんだ」

「奉生君、それ、どういうことなの?」

「それは……」

 奉生が優海に答えようとした時、店の自動ドアが開いてホステスの小雪が店の中に入って来た。

「あれっ? 小雪ちゃんどうしたの?」

「マスター、私、店でピアスを落としたみたいなの」

 裕二が小雪に声を掛けると、彼女は慌ててフロアー席に向かった。

「ピアスって、あの大きな真珠の付いたやつかい?」

「そうそう、それよ」

「そりゃ、大変だな。あれ、高いんだろう?」

「ええ、そうなの」

 小雪がフロアー席でピアスを探し始める。

(私、何処に落としたのかしら……)(大島に買ってもらった真珠のピアス)(アキモトのゴールデンパールジュエリー)(百万円のピアス)(あれが無いと大島に怒られるわ)(マンションを買ってもらえない)

 小雪はお尻を上げてフロアー席のあたりをごそごそと這い始めた。

「おい、美姫。小雪ちゃんのピアスを一緒に探してやれよ」

「はい、マスター」

 裕二が小雪を指差してキッチンから美姫に声を掛けると、美姫はカウンター席から立ち上がってフロアー席に向かった。

「俺も手伝うよ」

「済まないな、龍星君」

「いえいえ、マスター」

 裕二がキッチンから龍星に声を掛けると、龍星は裕二に軽く右手を上げて答えた。そして、カウンター席から立ち上がって美姫の後に続いた。

「美姫ちゃん、忙しいのに、ごめんね」

「大丈夫ですよ、この時間は暇ですから。それに小雪さんは大切なお客様ですから」

 美姫と小雪がお尻を上げてフロアー席の下を覗き込む。

 二人が四つん這いの格好になると、美姫のジーパンにはピチピチのパンティラインがくっきりと浮かび上がった。小雪のドレスは大腿部にスリットがあって、彼女が腰を動かすたびにピンクのパンティがスリットの間からチラチラと見え隠れしている。

 龍星はフロアー席の前に立って美姫と小雪のお尻を交互に眺めた。

(おっ、これは最高のアングルじゃないか!)(うわっ、美姫ちゃんのお尻は可愛いな)(おおっ、小雪ちゃんのお尻はエロいぞ)(くそう、二人ともバックでやりてえ)

 二人のお尻を眺めながら、龍星が卑猥な妄想を始めると、その意識は美姫の頭の中に流れ込んだ。

「んっ?」

 美姫が龍星の妄想に気付いて、右手で自分のお尻を隠す。

「こらっ! 龍星さん、何処見てるのよ! お尻ばっかり見てないで手伝ってよ!」

 美姫が振り向いて龍星を叱る。

(あっ、まずい、ばれた)

「了解です。姫様」

 龍星は美姫に敬礼をすると、股間を両手で押さえながらしゃがみ込んで、美姫と一緒にピアスを探し始めた。

「なんか大変そうだな、俺達も手伝うか」

 奉生がフロアー席の方を眺めながら優海の肩をポンと叩く。

「そうね、手伝いましょうか」

 二人はカウンター席から立ち上がって、フロアー席に向かった。

「お姉さん」

「きゃー!」

 奉生がフロアー席に座って小雪のお尻を右手の人差し指でツンツンと突くと、小雪は黄色い声を上げて振り向いた。

「ちょっと、あなた、何処触ってるのよ!」

「ああ、ごめんごめん、ピアスは見つかったかい?」

「まだ、見つからないわ」

「この店で落としたの?」

「ええ、たぶんね。この店に入る前はちゃんとあったもの」

「そうか、じゃあ僕が探してやるよ」

「…………?」

 小雪がフロアーにお尻をついて奉生の顔をポカンと眺める。

「お姉さん、誕生日を教えてくれるかい?」

「はっ? 誕生日?」

「誕生日と時間。それに生まれた場所」

 奉生が催眠術師の様な眼差しで小雪の瞳を見つめる。

「XXXX年六月三日」

(あれっ? 私は彼に誕生日を教えているわ……)

「生まれた場所は?」

「北海道」

「時間は?」

「時間は……朝の十一時二十二分だったかしら」

(なぜ、私は生まれ時間なんて覚えているのかしら……)

 小雪は首を傾げて店の天井を見上げた。

「よし、完璧だ!」

 奉生がポケットからスマートホンを取り出して、占星術アプリを立ち上げる。

「お姉さん、名前は?」

「小雪よ」

「それ、本名かい?」

「いいえ、違うわ」

「そうか、まあいいや、出生データーのファイルネームは《小雪》にするか」

 奉生は占星術アプリに小雪の出生データーを登録すると、スマホの画面に小雪のネイタルチャートを表示させた。

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