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第九章 ペンタグラム

 ――サイレン音。

 デッキの外からサイレン音が聞こえて、窓の外に警官とレスキュー隊員達の姿が見えた。駅舎の向こう側には赤い点滅ランプが幾つも光っている。

 四人が窓の外に視線を向ける。

「この電車は、警察の現場検証が終わるまで動かない。君達、電車から降りないか?」

(そう言わなくても、君達は電車を降りるんだけどな……)

 奉生は窓から視線を戻して二人に尋ねた。

「えっ、奉生さん、電車を降りるんですか?」

 美姫が驚いて奉生に尋ねる。

「ああ、君も一緒だよ」

「えっ、私、降りるって言ってないですよ」

「いや、君も降りるんだ」

「そんな……」

「君は電車が止まる前に『お母さんと赤ちゃんが線路に落ちる』と大声で叫んでしまったからね。周りの乗客達は変に思っているはずだ。共犯の疑いが掛かるかも知れないから、このまま電車に乗り続けるのは危険だ」

「あっ、そうか! あれは、まずかったわね!」

 美姫が焦って両手で頭を抱える。

「どうする?」

 奉生は、もう一度、二人に尋ねた。

「俺は電車を降りる」

「私も電車を降りるわ」

「よし、決まった。それじゃあ、降りる準備をして電車の先頭車両に集合だ」

 奉生がそう言うと、二人は頷いた。

「君達、名前は?」

 奉生が二人に名前を尋ねる。

「俺は大地龍星」

「私は桃原優海」

「大地龍星に桃原優海か……どこかで聞いた事のある名前だな……」

(気のせいかな……)

 奉生はどこかで二人に出会っている様な気がした。

「君達、どこかで僕に会っていないか?」

「さあ……?」

 二人が顔を見合わせて小さく首を振る。

「まあ、いいか……あっ、そうだ。重要な事を忘れていたな。優海ちゃん、誕生日を教えてくれるかい?」

 奉生が催眠術師の様な眼差しで優海の瞳を見つめる。

「XXXX年九月三日」

(あれっ? 私は彼に誕生日を教えているわ……)

「生まれた場所は?」

「東京」

「時間は?」

「時間は……朝の五時十二分だったかしら」

(なぜ、私は生まれ時間なんて覚えているのかしら……)

 優海は首を傾げて客車の天井を見上げた。

「よし、次は龍星君、誕生日を教えてくれるかい?」

 奉生は振り向いて、また、催眠術師の様な眼差しで龍星の瞳を見つめた。

「XXXX年十二月一日」

(あれっ? 俺は彼に誕生日を教えているな……)

「生まれた場所は?」

「新潟」

「時間は?」

「時間は……夜の十一時三十四分だったかな」

(なぜ、俺は生まれ時間まで覚えているんだろう……)

 龍星も優海と同様に首を傾げて客車の天井を見上げた。

「OK! 完璧だ!」

 奉生が二人の誕生日をキーボード入力して、出生データーをモバイルPCに登録する。

「まずは、優海ちゃんから」

 奉生がモバイルPCの画面をタッチすると、画面にホロスコープが表示された。

「これは……そうだ、小惑星のプラネットを追加すれば……キローン、セレス、パラス、ジュノー、ベスタ……」

 ※プラネットは星(恒星、惑星、衛星)のこと。

 奉生がモバイルPCを操作してホロスコープに小惑星のプラネットを追加すると、アスペクトを結ぶ線が画面に追加された。すると、ホロスコープのアスペクトパターンは見事な七角形を示した。

「グランド・セプタイルだ!」

 奉生が画面を見つめて目を細めると、みんなは奉生に顔を近づけてモバイルPCの画面を覗きこんだ。

「このホロスコープは綺麗な七角形になっているわね」

「このアスペクトパターンは、グランド・セプタイルって言うんだ」

「グランド・セプタイル?」

「とても珍しいホロスコープだよ」

「じゃあ、私と同じね」

 美姫がホロスコープを指差して奉生に話し掛ける。

「そうだね。美姫ちゃんの場合はグランド・セクスタイルだから星と星の角度が六十度の間隔で並んでいるんだけど、グランド・セプタイルは星と星の角度が五十一・四度の間隔で並んでいるんだ」

「ふーん、そうなんだ」

 美姫は画面を眺めながら頷いた。

「よし、次は、龍星君だ」

 奉生がモバイルPCを操作して出生データーを選択すると、画面に大地龍星のホロスコープが表示された。

「わっ、今度は綺麗な八角形だわ!」

 美姫が更に画面を覗き込む。

「これは、グランド・セミスクエアだ」

「グランド・セミスクエア?」

「そう、星と星の角度が四十五度の間隔で並ぶパターンだ」

「へぇー凄いわね」

 美姫が感心してまた頷く。

「これで、パーフェクトフォーメーションの持ち主は四人になったな」

「えっ、四人? もう一人は誰?」

「もちろん、僕さ」

 奉生がモバイルPCに自分の出生データーを入力すると、画面に見事な五角形のホロスコープが表示された。

「あっ、五角形だ! それに内側の線が星の形になってる!」

「僕もパーフェクトフォーメーションの持ち主なんだよ。僕のパターンはグランド・キンタイル。星と星の角度が七十二度の間隔で並ぶパターンだ」

 美姫が画面を指差して声を上げると、奉生は画面から目を離して美姫に微笑んだ。

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