予備役(一般兵)2
5日後の夜。
俺はユリウスの野営地と来ていた。
小さなコテージが目の前にある。
コン・・コン・・コン
とノックをすると、
「ガイかい?」
「ああ。来たぞ。」
「悪い。今手が離せないんだ。鍵ないから入って。」
と回答がきた。
「邪魔する。」
そう言って部屋に入ると、タオルを持った全裸のユリウスが背を向けて立っていた。
「おま!」
「すまないね。今丁度湯浴みが上がりなんだ。」
「服着るまで待つぞ?」
「いや、時間がないからこのままで良いよ。
明日にはもう、魔界だからね。」
「そうか・・」
勇者という存在は、暗闇でも透き通った白い肌をしている。
美しい彫刻のようだ。
「魔王。それを討伐した暁には、フレアウォール王国の復興を約束させた。
チリジリになっていた、故国の民も、じわじわと戻ってきているんだ。」
勇者はゆっくりとこちらに正面を向けながらそう語る。
「元貴族の歴々も、当時の本人ではないけどね。大体は戦死しているし。
それでもその家族も戻って復興の先頭で頑張ってくれている。」
そういって、ちらりと此方を見た。
「けれど、重鎮が居ない。
信頼できる、唯一が居ないんだ。だから、」
勇者は正面を見て手を伸ばし
「ガイ。この国で私の補佐をしてほしい。」
そう懇願した。
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勇者は、綺麗な彫刻のようだった。
今までの冒険で、その全貌は見た事がない。
恐らく他のメンバーもそうだ。
あいつは、隠したかったのかもしれない。
その姿、今みたその姿は、男性ではなかった。
「ユリウス。その姿は?」
「ああ、先にそっちが気になるのか。
まあ、そうだよね。」
「ああ、すまん。話は聞いていなかった訳ではないんだが・・・」
「うん。
で、この姿だね。
勇者。魔王。それぞれは一定の絶望の中で、神の悪戯で与えられる足掻くための力なんだ。
だから、勇者になると、魔王になると、自分の望んだ、夢描いた姿になる。
僕にとって、魔王を倒すために得た姿は、コレだったと、いうわけだ。」
「・・・・」
「だから、ね。魔王を倒し、元の姿に戻れた時、返事を聞かせてほしい。」
「・・・・。ああ、すまん。思った以上に色々と・・・」
「うん。分かっている。分かっているから、
・・・さて、もう寝ないと。明日は魔界だ。」
そういって、俺を追い出そうと押しだす。
「え?ああ」
「ガイ、また明日。ね。君がいてくれれば、私は色々と戦える。」
「うん?うん・・」
「だから、こそ君は生き残って、私たちも生き残るから。」
そういって、パタンと扉が占められた。
・・・・色々と情報が入りすぎて・・・扉を背にしたまま、俺は
俺は、呆然として、
「帰るか・・・・」
どれくらい経ったのか、検討もつかないが、辛うじて立ち直った後、帰路へとついた・・・
何も纏まらず、何も考えられず、それでも、聞いた話だけは、ずっと耳に張り付いていた。