未公開カット#1
「やあ、お早う」
「おはようございますハゼルさん」
「・・・・」
ログイン三日目、テントから出ると目をかっ開いたセド君がこちらを凝視していた。
「おまっ、なんで足が生えてやがるんだ?!」
「・・・多分異世界から来る奴は皆こんな感じだから」
「異世界すげぇ!」
答えつつ、僕はどうして昨日生えなかった足が今日になって元通りになったのか考えを巡らせる。
セーブした場所の違いによるものか、それとも経過日数か。要検証だな。
「セド君は僕が戻ってくるのを待ってたみたいだけど、何か問題でも起きたの?」
「親父に言われたんだよ、お前が森にいる間は見張っとけって」
「ふーん、で、セド君は何で『今度は』言いつけを守ってるの?」
大人の言うことを聞かず街に単騎駆けした奴が素直に命令に従うのはどういう心算だろうね?
「・・・俺はまだお前に恩を返しきれてねぇ。森の中も案内してやろうと思ったんだ」
明らかに嘘を吐いているが、渡りに船の申し出だった。
「キミがそういうなら、お言葉に甘えようかな」
「ちなみに拠点には入れないからな。あとメシ食わせろ」
「わかってるって!+3、また何か作ってくれないか?」
「どうせならじもとのしょくざいをいかしたメニューにしません?」
おお、ナイスアイデア!
「セド君、この森の食材をすこし取ってもいいかな?それを朝ごはんにしようよ」
「いいぜ。馴染みの食材がどう化けるのか俺も楽しみだ」
セド君曰く、昼の間ならばこの森は比較的安全・・・らしいので、手分けして食べられそうな実を集めた。鑑定をかけつつ毒など無いものを選んだはいいが、そのうちの半分はセド君の知識によりダメ出しを受けてしまった。すごく苦いだとか、たいして美味しくないなどの理由からである。せっかく採集したものを破棄するのももったいないし、うちギルドの薬学部の子へのお土産にすることにする。ゲーム内で食用以外の植物はだいたい薬の材料になるからね。
セド君は採集の合間に野生の鳥(飛ばずに地面を走るやつだ)を一羽仕留めることに成功したらしく、ドヤ顔で提供してくれた。
「で、+3、何が作れそう?」
「これは『きゅうり』的な味で・・・こっちのは『とまと』のあじにちかいようです」
+3にはいわゆる『味覚センサー』がデフォルトで搭載してあるらしく、口に含まなくとも、手で触れるだけで味覚を数値化できるんだとか。
「セドさんのトリと・・・ハゼルさん、めんとタマゴはあります?」
「あるある。それってもしかしなくても、」
「ひやしちゅうかにします」
*
セド君の案内で僕らは森の水場に到着した。
水はひんやりと冷たい。早速採取した野菜をザルに入れ、水に浸ししばらくの間冷やす。
「この実は冷やして齧るとうまいんだ。知ってたのか?」
「僕の世界にも似たような実があってね、暑い日にはよく冷やして食べるよ」
とはいえ冷やし中華ならば氷を添えて見た目も涼しくいきたいところ。
特殊家電 古代冷蔵庫 効果:内容物が『完全凍結』 備考:ちゃんと閉じないと・・・?
僕の【精密機械Lv.2】スキルはウサちゃんを作ったときに【精密機械Lv.3】に進化したのである。そしてこの冷蔵庫が作成可能になったのだ。しかしこの冷蔵庫、完全に見た目がペンギンであった。
ストレージから出したとたん水場に飛び込もうとした冷蔵庫の首根っこをあわてて掴む。製氷皿に飲料水を入れてスタンバイ。冷蔵庫のノドを絞め、たまらず冷蔵庫が嘴を開いたところで製氷皿を口内にぶち込む。
「ハゼル、それは何なんだ・・・?」
「冷蔵庫だよ。」
「そ、そうか。ちなみに氷はどこから出てくるんだ?」
「口からオエッって」
「それは大丈夫なのか・・・?」
「衛生面は保証するよ?」
「いやそのペ、冷蔵庫の心配をだな?いやもういいや」




