レコード13:身体能力とアイカワ家
キーンコーンカーンコーン
セントが学校に通い始めた1日目。5時間目は体育だった。体育館でバレーをするらしい。アケミ達は9月になってから既にやっているけれど。まずは、バレーのパス、スパイク、サービスの練習をした。
先生「それではゲームをやるのでセントさんは、4班に入ってください」
01「はい」
セントが入ったのはなんと、アケミ達がいるチーム。ではなく、マサトがいるチームだった。
11「よろしくな」
マサトはまだ怯えながらだが、ニコッと笑いながらセントに手を出した。
01「はぁ…、最っ悪だ…」
01(なんでこいつと…)
しかし、セントは反対方向を向いてため息をついて手を握ろうとしなかった。
11(なんだよ…、こいつ…)
マサトは怯えながらではあるが、セントの態度に怒っていた。
今から1チーム7人の6チーム、15点先取の総当たり戦が始まった。が、
バンッ!
「あ…」
セントがいるチームはセントの活躍で15対0の圧勝で終わり、他のチームはセントのスパイクの音が大きすぎて試合に集中できなかったらしい。まぁ、元々セントはボールが来たらやる程度しか思ってなく、最初の時にすごいスパイクをやったがために、セントにスパイクをさせようと周りがボールをパスしてくるのが原因である。もちろん、行動範囲であれば、抜群なコントロールで他のメンバーが取れるようにパスをする。しかし、その人からもパスをされ結局、セントがスパイクをすることになった。
最後までそのまま勝っていき、なんと!セントのいる4班が1位になった。
11「よっしゃ〜!」
「勝った〜!」
そしてセント以外の4班のメンバーは喜んでいた。一方セントは、
01(いやいやいやいや、俺がいたから勝っただけでしょ…)
などと呆れながらそう思っていた。
キーンコーンカーンコーン
3時間目が終わった後、着替え終わったアケミ達が音楽室のセントがところにやって来た。
02「さっきのスパイク凄かったね!」
アケミが褒めてきた。
01「うるさかったでしょ?ごめんね」
セントが突然申し訳なさそうに謝ってきた。
03「いや別に謝る必要はないけど…」
アケミ達は突然謝ってきたセントに戸惑っていた。
01「いや〜、だって僕のスパイクの音に驚いてこっちに気を取られてそれで点とられてたでしょ?」
セントはまだ、申し訳なさそうにしている。
03「見てたの?」
02「それは、別に私たちが気にしなければいいだけだし、そもそも私達もそんなうまくもないし…」
アケミ達はセントのせいじゃないと誤魔化した。
01「そう…。もうすぐチャイム鳴るから座っといたほうがいいぞ」
02「分かった」
キーンコーンカーンコーン
6時限目は音楽だった。今回もギターの練習をするらしい。セントの場合はこの学校では初めてではあるが。
先生「本日はギターの練習をします」
ギターを一人一つ持って練習をしていた。ただ一人、完全にギターの練習どころか演奏している人が部屋の端っこにいた。その人はなんと、セントだった(分かってる人もいるかも知れないが)。
「すご…」
「あいつ、うまくね?」
その教室の人が、セントの演奏する曲を手を止めて聞いていた。
01「…」
セントはギターで弾き終わると、世界の知識に引きこもった。他の生徒はセントがギターを弾かなくなると、我に返って練習を始めた。結局セントは、もうギターを授業中に引かずに終わった。
キーンコーンカーンコーン
ホームルームも終わり放課後になった。セントはアケミ達と校舎から出ようとしてたが、
「ねぇねぇ、君さバレー上手かったんだよね?うちのバレー部に入らない?」
「ギターが凄く上手かったって聞いたんだけど、吹奏楽部に入らない?」
セントは他にも、バレーがすごく上手くて運動神経がいいと思ったのか他の運動部からも勧誘を受けていた。
01「…断る!」
なぜかセントは怒ったような顔で学校の外へ歩いていった。アケミ達はセントの対応に驚きながら、セントを追って歩いていった。勧誘してきた人達は、セントの対応に唖然としていた。
02「セント君、よかったの?」
アケミが心配して聞いた。
01「何が?」
セントが聞き返した。
02「さっきの勧誘」
01「まず、俺たちは魔法使いだ。悪いが部活をやる時間はないだろ」
セントは少し怒った口調で言った。
02「ごめん…」
アケミが申し訳なさそうに謝った。
01「それに、俺は学校に行きたいと言ってなかったからな!」
セントはアケミ達を睨みつけた。
03「そんなに嫌なら来なければいいじゃん」
ヒカリが少し怒った口調で言った。
01「あんたらが勝手に決めたんだろ?」
セントがニコッと笑いながら圧をかけてきた。
03「うっ…、それは…、まぁ…」
ヒカリは少し気まずそうにしていた。
01「はぁ…。ほら、行くぞ」
02「え?あ!待ってよ!」
セント達は本部の方へ走って向かっていった。
セント達は魔獣が出なかったのでいつも通りトレーニングをやって終わった。そしてアケミとセントはアケミの家に帰った。
02「ただいま〜!」
01「ただいま戻ったでありますよ」
14「おぉ、おかえり」
リビングには、アルトさんが仕事をしていた。
15「おかえり。もうご飯できてるから」
キッチンには、アケミのお母さんのユウナさんがお皿に料理を盛り付けていた。
02「分かった!じゃあ、お兄ちゃん呼んでくるね」
アケミは2階に上がり、兄であるマサルを呼んできた。
01「じゃあ運びます」
15「ありがとう」
セントはユウナさんが作った料理をテーブルに運んだ。
01・02・14・15・16「いただきます」
セント達はご飯を食べ始めた。
14「セント、今日の学校どうだった?」
アルトさんがセントに聞いた。
01「どう?と言っても…」
セントは答えに困っていた。
02「他の世界でも、学校に行ってたんでしょ?それと比べてどうだったの?」
アケミが聞いてきた。
01「まぁ、それと比べても、まだいい方だったね…」
ナゴムは少し嫌な顔をして言った。
15「どうしたの?」
ユウナさんがセントを心配して聞いた。
01「比べる対象は悪いところが多かったので、感覚が麻痺してるかもしれないですけど」
セントはまだ嫌な顔をしている。
16「どう悪いんだ?」
マサルさんが聞いた。
01「そこにいた人の性格とかが酷かった。いじめはあるわ、暴力も頻繁、ケガ人続出」
セントはものすごく恨みが出ている顔をしていた。
02「大変だったんだね…」
アケミは心配して言った。
01「まぁ、俺がぶっ飛ばしてからはなくなったけど」
14「は、はぁ…」
アケミ達はどう反応すればいいのかわからない顔をしていた。
01「そもそも良かったんですか?家に来て」
セントがアルトさんに聞いた。
14「あ、あぁ。別に構わないよ。アケミも寂しがってたし」
02「いや、別にそこまで…」
アケミはそう言われて少し恥ずかしそうにしていた。
01「…」
セントは何も聞いてないような様子でご飯を食べ進めている。
01「そういえば、家に武道場があるって凄いですね」
セントが興味深そうに聞いた。
14「あぁ、マサルが剣道をやりたいって言ってな、あまり使ってなかった大きい部屋をリフォームしたんだ」
アルトさんは笑って答えた。
01「へ〜」
セントは少し笑ってそう言った。
14「たまに、武道場で知り合いとイベントみたいなことをやったりもするね」
アルトさんは、嬉しそうに言った。
01「でもまぁ、そういうのってあまりやらないほうがいいんじゃないかなと思いますが。いわゆる、金持ちの特権とか」
一瞬、その場が静かになった。
02「セント君も金持ちとかって差別するの?」
アケミが少し暗い顔で聞いた。
01「別にそういうんじゃないよ。ただ、才能に恵まれない、お金もない、未来が見えない、希望が持てないっていう人にとっては絶望を振りまく存在になりかねないからね。お金をたくさん使っているということは、立派な家に住んでいるということは、お金にゆとりがあると思われる。有名な会社で働いている、あるいは偉い立場にいるということは、収入がたくさんあると思われる。それはつまり、空き巣、誘拐、殺人につながりかけない。また、お金がある人が善意で困ってる人を助けようとする。そしたら、その優しさに付け込んでくる人もいる。あるいは、自分自身に絶望して、死ぬ人だっている。まぁ、僕は自分自身に落ち込んでいる人を助けたいとは思う。でも、全員助けられたわけではない。こういうのが人間で、人間の難しいところだからね。とは言っても、僕自身が経験したことじゃなくて、ドラマとかアニメとかの話しがほとんどだけどね。でも、それは作者が考えたこと、つまり、誰かがそう考えるかもしれないこと。あまり考えなくていいことじゃないからね。気をつけておいたほうがいいと思うよ」
セントの話にアケミ達は口が閉じてしまった。
01「…ん?あれ、言い過ぎた?」
セントがやってしまったか?とでも言うような顔をしていた。
14「いや、別にセントが悪いわけじゃないから」
15「そうよ。逆に心配してくれてありがとうね」
アケミ達はセントが悪いわけじゃないと誤魔化した。
01「別に悪くないって言わなくてもいいんだけど」
ご飯を食べて、しばらくしてアケミがお風呂に入っていた。その頃、セントはただ家の中を少し歩いていた。広い訳では無いが。
01「武道場…」
キュッキュッ
武道場の中から音が聞こえてくる。セントは静かに武道場の中に入っていった。
16「フッ」
中ではマサルが竹刀を振っていた。
16「ふぅ…?いたのか?」
マサルさんがセントがいたことに気づいた。
01「すみません。ただ見ているだけだったんですが」
セントが申し訳なさそうに謝った。
16「別にいいよ。それに敬語使わなくてもいいよ」
マサルさんが言った。
01「あっ、そこは気にせず」
セントがニヤッと笑ってそう言った。
16「そうだ。ちょっと相手してくれるか?」
01「いいですけど…本気出したほうがいいですか?そちらが負けますよ」
セントはためらいもせずマサルさんを心配した。
16「っ!?…いや、それでもいい」
01「分かりました」
そうしてセントとマサルさんの勝負が始まった。初めはセントがマサルさんの攻撃を防いでおり、しばらくしたら、セントが攻撃に転じると、あっという間にマサルさんは負けてしまった。
16「ふぅ…、強いな」
マサルさんはセントの強さに感心していた。
01「そちらも結構強いと思いますよ」
セントがそう言った。
16「…そういえば、アケミはうまくやれているのか?」
マサルさんが聞いてきた。
01「ん〜…どうでしょうか?正直言って、今まで生き残れてきたことがすごいと言うぐらい弱いです。まぁ、今の魔法使いの中で、マサルさんに勝てる人はいないんじゃないですか?」
16「…そんなに弱いのか?」
マサルさんが驚いて聞いた。
01「いやぁ、初めて会ったとき、弱いはずの魔獣にボロ負けしてましたから」
セントが笑って言った。
16「なぁ、俺が戦ったら、勝てると思うか?」
〜ナゴムの解説〈マジカル⊕ワード〉のコーナー〜
『対魔獣防衛組織「ボーダー」』
対魔獣防衛組織、通称「ボーダー」とは、魔法使いをまとめ、育成する組織。ボーダーは、世界各地、そしてその地方ごとに支店が置かれている。本店は、最初に魔獣が現れ、今もなお最も現れている「チョウホン県」の近くにある。ボーダーの運営資金は国から支給されるが、それだけでは足りないため、スポンサーとなる企業からも支援されている。そのため、年2回、春と秋に「県大会」「国大会」、夏と冬に「世界大会」がある。また、ボーダー基地の中には食堂、休憩所、訓練場、研究室などがある。研究室では、様々な魔法の研究や新しい武器、装備の開発などをしている。魔法使いになるには、魔力量が多く、高校生以上にならないと入れない。魔法使いの最年長は54歳。少ないけど給料は支給される。
どうもこんにちは。稲荷Asです。ナゴム(セント)についてですが、何でも出来る主人公に憧れがなかったわけではありませんが(むしろあります)、何でも出来た方が色々と都合がいいんだろうなと、作者も本人も思っております。
また、ナゴムが「今の魔法使いの中で、マサルさんに勝てる人はいないんじゃないですか?」と言っておりますが、弱いのはあくまで、アケミ達であり、他の場所の魔法使い達は十分強いです。ナゴムは、まだそのことを知りませんので。
それではまた、次のお話で。




