第14話:二人を落とせ
第14話です。
選ぶということは、
必ず誰かを切り捨てるということ。
その現実を、突きつけられる。
「今回の試験です」
教育係の声は、いつもより低かった。
嫌な予感しかしない。
「三人の中から、一人だけを残してください」
その一言で、すべてを察した。
「……またか」
小さく呟く。
だが、前回とは違う。
「今回は、“上の評価”が直接入ります」
やっぱりな。
逃げ場はない。
「条件は?」
冷静に聞く。
「ありません」
即答だった。
「あなたの基準で選んでください」
一番きついやつだ。
正解がない。
全部、自分で決めるしかない。
「……分かった」
深く息を吐く。
「対象はこちらです」
扉が開く。
中に入る。
そこにいたのは――
三人。
だが、今回は違う。
空気が。
全員、ただ者じゃない。
「……」
目が合う。
それだけで分かる。
こいつら、強い。
「始めてください」
教育係が一歩下がる。
完全に任された。
俺は前に出る。
三人を順番に見る。
一人目。
落ち着いた男。
無駄がない。
二人目。
鋭い目の女。
隙がない。
三人目。
静かな青年。
だが、どこか危うい。
(全員いけるだろ……)
正直な感想。
レベルが違う。
「名前」
順に聞く。
答えも、態度も完璧。
隙がない。
「理由は?」
全員に聞く。
返ってくる答えも、悪くない。
むしろ、良い。
(これ、どうすんだよ……)
選べない。
いや――
選びたくない。
だが。
「……」
視線を感じる。
上から。
見られている。
完全に。
逃げられない。
「……くそ」
小さく吐き捨てる。
「判断を」
教育係の声。
時間はない。
決めるしかない。
「……一人目」
口が動く。
「落とす」
空気が揺れる。
男は一瞬だけ驚いたが――
すぐに表情を戻す。
「理由は?」
聞かれる。
「完成されすぎてる」
正直に言う。
「伸びしろが見えない」
静かな声。
男は少しだけ目を細めて――
何も言わなかった。
納得したのか、それとも――
分からない。
「……次」
二人目を見る。
女。
強い。
完成度も高い。
「……落とす」
言ってしまった。
一瞬、心が揺れる。
だが――止めない。
「理由」
「隙がなさすぎる」
言葉を続ける。
「崩れた時に、立て直せないタイプだ」
自分でも分かる。
かなり主観だ。
だが、それでいい。
女は、じっとこちらを見て――
ふっと笑った。
「……なるほどね」
それだけ言って、黙る。
残るは――
三人目。
静かな青年。
「……」
目が合う。
何も言わない。
だが、分かる。
こいつも覚悟してる。
「……通す」
静かに言う。
空気が止まる。
「理由は?」
最後の問い。
俺は、少しだけ考えて――
答えた。
「不安定だから」
その場の全員が、わずかに反応する。
「崩れる可能性がある」
続ける。
「でも、その分、跳ねる可能性もある」
静かに言い切る。
「それが見たい」
沈黙。
長い。
だが――
今回は違う。
「……面白い」
上から声が降ってくる。
見上げる。
ガラス越し。
あの連中だ。
「基準がブレてる」
別の声。
「だが、嫌いじゃない」
評価が分かれる。
だが――
「通す」
最終的な声。
その一言で、決まった。
「……」
力が抜ける。
終わった。
だが――
軽くはない。
「どうでしたか」
教育係が近づく。
俺は少しだけ考えて――
答えた。
「気分悪いな」
正直な感想。
女性は小さくうなずく。
「そうでしょうね」
否定しない。
「でも」
続ける。
「それでも選びました」
その言葉に、少しだけ救われる。
「……ああ」
うなずく。
逃げなかった。
それだけは事実だ。
「次に進みます」
教育係が言う。
「もうかよ」
思わず苦笑する。
「ここは止まりません」
冷静な返答。
まあ、そうだろうな。
「……いいよ」
覚悟は決まってる。
「全部やる」
それが、俺の選択だ。
部屋を出る。
だが――
頭の中には、残っている。
あの二人の顔。
あの視線。
忘れない。
忘れちゃいけない。
「……見て見ぬふりはしない」
小さく呟く。
それだけは、絶対に曲げない。
この世界で、唯一のルールだ。
読んでいただきありがとうございます。
第14話では、“選ぶ側の本質”を描きました。
正解のない選択。
そして、その責任。
主人公は葛藤しながらも、
自分の基準で選ぶことを選びました。
次回は、その選択がもたらす“結果”が描かれます。
引き続きよろしくお願いします。




